2021年春時点のプリンター新機種を徹底検証 新機種と旧機種を徹底比較 同系統・同価格帯のエプソン・キャノン・ブラザー製品を徹底比較 (2021年7月11日公開・9月13日更新)
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毎年、9〜10月の年賀状シーズンには家庭向けの複合機が一斉に新製品に入れ替わり、春にはビジネス向けやプロ向け、タンク方式の機種など、特殊な機種に新製品が登場することが多い。今回も、エプソンからエコタンク搭載複合機とビジネス向けプリンターが各1機種登場し、キャノンからもギガタンク搭載のビジネス向け複合機が登場している。例年より少ないのは、新型コロナウィルスの影響で、製品自体が常に品不足状態になっており、新製品を投入する余裕がないからか。 もう一つ、2021年3月31日をもって「消費税転嫁対策特別措置法」が終了した事に伴い、税込み価格表示が義務となった。そのため、各メーカーの販売価格だけで無く、印刷コストなども含め全てが税込み価格に切り替わっている。それに従い、当ページでも、今回より「実売価格」「印刷コスト」「インク価格」「各種パーツの価格」など価格表示を税込み価格で表示している。その関係もあり、これまで春は、新製品と関係のあるライバル製品のみの比較記事としていたが、今回は全ページを税込み価格へ切り替えたものとしている。それでは、最新のラインナップがどう変わったのかメーカー別に見ていこう。さらに、その下では、 ●新機種が旧機種とどう変わったのか1機種ずつ徹底比較 ●同系統・同価格帯のエプソン・キャノン・ブラザーの製品で、どの機種がオススメかを徹底比較 のページを用意しているので、そちらも合わせて見て頂きたい。
エプソンの新製品はEP-M553TとPX-S6010のみだ。EP-M553Tは型番からも分かるようにEP-M552Tの後継モデルとなる。実はEP-M552Tは2020年末の時点で販売終了しており、一時的にラインナップからEP-M550番台は姿を消していた。ところが、年が明けた2021年2月26日に突然新機種での復活となった。EP-M552Tはエコタンクモデルの中では非常に低価格で、4色インクとはいえ他機種と異なり染料4色で写真印刷も可能で、USBポートにメモリーカードリーダーを接続すれば、SDカード等からダイレクト印刷が可能であるなど、家庭向けのエコタンクのローエンドモデルとして、比較的人気が出そうな機種であった。ところが、スキャナ部が特殊すぎた故に敬遠されてしまった機種と言える。通常はカバーを開けるとガラス面があり、そこに原稿を載せると、読み取りセンサーが移動しながらスキャンする「フラットベッド方式」となっている。ところがEP-M552Tは、「シートフィード方式」といって、スキャナ原稿の挿入用のすき間に原稿を挿し込むと、原稿が徐々に送られながら、スキャンされている方式だ。つまり読み取りセンサーではなく原稿の方が移動する。モバイルスキャナがくっついていると考えればわかりやすい人もいるだろう。この方式だと、本や冊子などの立体物をスキャンする事は不可能だ。それどころかEP-M552Tは、普通紙やそれに近い用紙しか対応せず、写真用紙やハガキは通せなかった上に、対応サイズもB5〜A4と、小さな用紙にも対応しなかった。挿し込むだけでスキャン又はコピーという方式は分かりやすいと言えば分かりやすいが、対応できる原稿が少なすぎた。複合機ではほぼ見ない方式だけに、そこがネックとなっていたようだ。新製品EP-M553Tでは、ある意味、そのスキャナ部だけを、通常のフラットベッド方式にした機種と言える。もちろん、最新機種にならって、Bluetooth LEを利用したスマホからの簡単初期設定などは新たに搭載し、本体カラーも液晶回りと操作パネルをブラックとしていたEP-M552Tから変更し、全体と同じホワイトとし、インク残量を知らせるLEDバーも水色に光る様にし、爽やかなデザインとしている。 一方PX-S6010はPX-S5080の後継モデルとなる。PX-S5080と同じ世代のモデルで見ると、複合機PX-M5081FとPX-M5080Fは、既にPX-M6011FとPX-M6010Fの新モデルに、エコタンク方式の複合機EW-M5071FT(これはもう1世代前のモデルがベースだが)もPX-M6712FTとPX-M6711FTという新モデルに移行している。さらにPX-M6711FTのプリント機能だけのPX-S6710Tも登場しており、PX-S5080だけが旧世代に取り残されていた。今回PX-S5080も、他モデル同様6000番台のPX-S6010となった。基本的にはPX-M6011Fのプリンター部だけのモデルと言え、PX-S6710Tのカートリッジモデルとも言える製品だ。そのためPX-S5080よりプリントの高速化や無線LANの強化などが行われ、コンパクトになっている。また液晶がPX-S5080では2.2型のモノクロ表示だったが、PX-S6010では2.4型のカラー表示となった。単機能プリンターではコピーなどの操作がないため、操作パネルは簡略化されることが多く、PX-S5080ではモノクロ表示だったが、PX-S6010ではカラー化され見やすくなっている。また複合機のPX-M6011Fと異なるのは、背面給紙がトレイ式の連続給紙では無く、1枚ずつの手差し給紙となっている事だ。PX-S5080と同等とは言えるが、複合機のPX-M6011Fや、そのエコタンクモデルのPX-M6711FTだけでなく、エコタンク方式の単機能プリンターPX-S6710Tも背面給紙はトレイ式だっただけに、PX-S6010だけ特殊と言える。しかし、背面給紙をトレイ式とするとそれなりに大きくなり、高さもある。複合機のPX-M6011FやPX-M6711FTでは、スキャナー部の上面と背面給紙トレイの高さが揃えてあったが、単機能プリンターではスキャナー部が無くなる分だけ高さが低くなってしまう。実際、PX-S6710Tでは背面給紙部分だけ高くなっており、やや不格好であった。PX-S6010では背面給紙を手差しとすることで、スキャナー部を無くした高さに揃えることが出来、高さの低い場所にも設置しやすくなった。 新モデル「PX-S6010」と旧モデル「PX-S5080」、参考モデル「PX-M6011F」を比較
キャノンの新モデルは、全く新しいGXシリーズの2モデルだ。GXシリーズはギガタンク搭載の複合機だが、従来のGシリーズの顔料ブラック+染料カラー3色の4色構成ではなく、全色顔料インクを採用した、ビジネス向けモデルである。MAXIFYシリーズのギガタンクモデルといえる。エプソンも当初は顔料ブラック+染料カラー3色モデルだったが、その後、染料カラーを4色として写真印刷にも使える機種、さらに、染料4色のみの機種や、染料を5色の計6色インクの機種などをバリエーションを増やしていたが、昨年春には全色顔料インクとした、ビジネス向けモデルをA3対応複合機2機種、A4対応複合機1機種、A3対応プリンター1機種を発売していた。遅れること1年、キャノンも同系統の製品を登場させたことになる。前面給紙2段カセットでファクス機能付きのGX7030と、前面給紙1段カセットでファクス機能無しのGX6030の2機種だ。また、印刷コストもGシリーズではカラー文書が1.0円、モノクロ文書が0.5円又は0.4円だったが、GX7030とGX6030ではカラー文書が2.2円、モノクロ文書が0.8円と高くなっている。しかし、エプソンの4色顔料の機種もそれぞれ2.2円と0.9円に上がっており、これにぴったり合わせた格好とも言える。また、ブラックインクはGシリーズと同じ6,000ページ印刷可能だが、カラーインクはGシリーズの7,700ページから14,000ページに倍増されており、インクボトル1本は、ブラックが4,730円、カラーが各6,160円と、高価になっている。印刷速度や各種機能は、MAXIFYシリーズに近い機能となっている。ラインナップ上は、ギガタンク搭載モデルはファクス機能付きがGX7030とG7030、ファクス機能なしがGX6030とG6030、G3360となる。ファクスの有無で同じ数字となりわかりやすい反面、型番に「X」が付くかどうかだけの似た型番が存在することになり、間違いやすいとも言えるだろう。 その他、長年継続販売されていたPIXUS XK70が販売終了となった。初めてPIXUS XKシリーズが登場したとき、上位モデルのPIXUS XK70と下位モデルのPIXUS XK50が発売され、下位モデルはその後、毎年PIXUS XK80、PIXUS XK60、PIXUS XK90と変遷してきており、型番上は下位モデルと上位モデルが逆転するなど、分かりにくい状況になっていてた。また、PIXUS XK70には「クリエイティブフィルタ」と「有線LAN接続」という特徴はあるものの、新機種全体に搭載された機能が非搭載で、どちらが上位モデルか複雑な状況になっていた。今回PIXUS XK70が販売終了となり、後継モデルも登場していないことから、PIXUS XKシリーズはPIXUS XK90の1モデルのみとなる。 また、カタログや公式ページ上は製品として残っているが、PIXUS TS3330の製造が特に遅れており、2ヶ月待ち状態となっている上に、一部量販店やネットショップでは完売扱いとなっているところも存在する。このまま新製品に移行することも考えられる。 新モデル「GX7030」と参考モデル「MAXIFY MB5430」「G7030」を比較 新モデル「GX6030」と参考モデル「MAXIFY MB5130」「G6030」を比較
ブラザーは2021年春には新製品は登場していない。2020年末から全機種が継続販売となる。
エプソン、キャノン、ブラザーのラインナップを、並べて比較してみよう。対応用紙サイズ、さらにインク色数で分けて、エプソンのカートリッジ方式とエコタンク方式、キャノンのカートリッジ方式とギガタンク方式、ブラザーのカートリッジ方式(標準サイズ)とファーストタンク方式それぞれの機種を並べている。 各製品の型番と写真と共に、インク構成も記載している。例えば同じ4色インクでも、全色染料、全色顔料、黒顔料+カラー染料という様に、違いがあることがお分かり頂けるだろう。
新旧の比較とは別に、新製品を含む同系統の製品、同価格帯の製品での比較をしてみよう。 |
(ファクス無し/有り) |
EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5630CDW |
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(4万円以上) |
EW-M873T EW-M752T PIXUS XK90 |
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(カートリッジ方式・3万円台) |
EP-883A PIXUS TS8430 |
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(カートリッジ方式・2万円前後) |
EP-813A EP-713A PIXUS TS7430 PIXUS TS6330 DCP-J987N |
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(カートリッジ方式・1万円台前半) |
EW-452A PIXUS TS5330 |
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(カートリッジ方式・1万円以下) |
EW-052A PIXUS TS3330 |
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(タンク方式・4万円以上) |
EW-M873T EW-M752T EW-M630T GX6030 G6030 |
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(タンク・大容量カートリッジ方式・4万円以下) |
EP-M552T G3360 DCP-J988N |
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(写真向きの染料ブラック搭載機) |
EW-M873T EW-M752T EP-M553T |
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(顔料ブラック+染料カラー3色搭載機) |
EW-M670FT EW-M630T G7030 G6030 G3360 MFC-J1500N DCP-J988N |
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(文書向きの全色顔料搭載機) |
PX-M791FT GX7030 GX6030 |
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(カートリッジ方式) |
PX-M6011F PX-M6010F MFC-J6983CDW MFC-J6583CDW |
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(タンク・大容量カートリッジ方式) |
PX-M6712FT PX-M6711FT MFC-J6999CDW MFC-J6997CDW |
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(カートリッジ方式・3万円前後以上) |
PX-M885F MAXIFY MB5430 MAXIFY MB5130 TR8630 MFC-J903N |
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(カートリッジ方式・2万円前後以下) |
PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130 |
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(タンク方式・大容量カートリッジ方式) 【近日公開】 |
PX-M791FT EW-M670FT GX7030 G7030 MFC-J1500N |
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PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030 |
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SC-PX1VL imagePROGRAF PRO-1000 |
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(カートリッジ方式・6万円以上) |
SC-PX1V SC-PX7VII imagePROGRAF PRO-G1 PIXUS PRO-S1 |
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(カートリッジ方式・5万円以下) |
EP-50V PX-S6010 PX-S5010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830 |
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(タンク・大容量カートリッジ方式) |
PX-S6710T HL-J6000CDW |
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(カートリッジ方式・1万円以上) |
EP-306 PX-S855 PX-S740 TR703 MAXIFY iB4130 |
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(カートリッジ方式・1万円前後以下) |
PX-105 TS203 |
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(タンク方式) |
G5030 G1310 |
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PX-S380 PX-S270T PX-S170T PX-S160T PX-K150 GM2030 |
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PX-S06 PF-71 TR153 |
(H.Intel)
今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/ ブラザーホームページ https://www.brother.co.jp/ |