小ネタ集
2021年末時点のプリンターを徹底検証
新モデルと旧モデルを徹底比較
(2021年9月21日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧モデル・参考モデルからの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧モデル1・参考モデル1からの変更点となります

新モデル「DCP-J1200N」と旧モデル「DCP-J988N」、参考モデル「DCP-J4140N」を徹底比較する

 DCP-J1200Nは、ギガタンク搭載の新モデルだが、旧モデルのDCP-J988Nの直接の後継モデルはDCP-J4140Nとなっており、DCP-J1200Nは新たに登場した下位モデルとなる。下位モデルだけあって、かなりの機能が削減されているが、その一方で3年ぶりの新機種だけあって、機能面で進化された部分もある。今回は、旧モデルのDCP-J988Nと徹底比較しているが、その新モデル、つまりDCP-J1200Nの上位モデル DCP-J4140Nも同時に表に掲載し、簡単に比較している。

プリント(画質・速度・コスト)
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
発売日 2021年9月上旬 2018年9月中旬 2021年9月上旬
発売時の価格(税込) 30.800円 39,500円+税
(消費税10%換算で43,450円)
40,700円
インク 色数 4色 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 ファーストタンク方式
(カートリッジ方式・各色独立)
ファーストタンク方式
(カートリッジ方式・各色独立)
ファーストタンク方式
(カートリッジ方式・各色独立)
顔料/染料系 染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存100年/耐光性50年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存100年/耐光性50年)
顔料
インク型番
414
3135(超・大容量)
3133(大容量)
416XL(超・大容量)
416(大容量)
ノズル数 420ノズル N/A(840ノズル?) 840ノズル
ブラック:210ノズル
カラー:各70ノズル
N/A(全色:各210ノズル?) 全色:各210ノズル
最小インクドロップサイズ 1.5pl 1.5pl 2pl
最大解像度 1200×6000dpi
(macOSでは1200×3600dpi)
1200×6000dpi 1200×4800dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 28秒 14秒 14秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 9.0ipm 10.0ipm 19.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 16.0ipm 12.0ipm 20.0ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー
10.0秒
8.5秒
5.9秒
A4普通紙モノクロ
6.5秒
8.0秒
5.8秒
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 16.2円 超・大容量:11.0円 超・大容量:12.5円
A4カラー文書 5.5円 超・大容量:4.1円 超・大容量:4.1円
A4モノクロ文書 0.9円 超・大容量:0.8円 超・大容量:0.8円
インク1本の印刷枚数
ブラック 2,500ページ 超・大容量:6,000ページ
大容量:3,000ページ
超・大容量:6,000ページ
大容量:3,000ページ
カラー 1,500ページ 超・大容量:5,000ページ
大容量:1,500ページ
超・大容量:5,000ページ
大容量:1,500ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 2,200円 超・大容量:4,400円
大容量:3,300円
超・大容量:4,400円
大容量:3,300円
カラー 各2,310円 超・大容量:各5,500円
大容量:各2,750円
超・大容量:各5,500円
大容量:各2,750円
同梱インク セットアップ用インクカートリッジ セットアップ用インクカートリッジ セットアップ用インクカートリッジ

 まずは、販売価格を見てみよう。販売開始時の価格はDCP-J1200Nは30,800円となっている。DCP-J988Nが発売時は消費税が8%で、10%になる前に値下げしているが、発売当初の値段に消費税を10%とすると43,450円となる。DCP-J1200Nは12,650円も安いという事になる。また上位モデルDCP-J4140Nの40,700円と比べても、約1万円安く、この価格差と機能差でお得かどうかが鍵となる。
 それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。DCP-J1200Nは4色インク構成で、DCP-J988Nと同じである。DCP-J988Nの後継モデルDCP-J4140Nが、全色顔料インクになったのとは異なり、DCP-J1200NはDCP-J988Nと同じ顔料ブラック+染料カラーの組み合わせだ。普通紙印刷が綺麗で耐水性もある顔料インクはブラックインクだけだが、代わりにカラーを染料インクなので、写真印刷の場合に発色が良く光沢感も綺麗に出る(とはいえ写真印刷時にブラックインクが使えないので画質が良いとは言えない点も同等だが)。また顔料インク非対応の用紙もあるため、DCP-J4140Nほど普通紙印刷画質には優れていないが、幅広い用紙にそれなりに綺麗に印刷できる点では家庭向けの製品と言えるだろう。DCP-J1200Nの写真の耐保存性も、DCP-J988Nと同じくアルバム保存100年、耐光性50年をうたっている。
 画質に影響のある最小インクドロップサイズと印刷解像度も、DCP-J1200NはDCP-J988Nと同じく、1.5plで1200×6000dpiとなる。DCP-J4140Nでは2plで1200×4800dpiに変更されているが、DCP-J1200Nではインク構成もプリントヘッドの性能もDCP-J988Nを引き継いでいる。ただし、macOSで使用する場合は、印刷解像度は1200×3600dpiに制限される。
 ノズル数に関しては、DCP-J988Nでは非公開ながら海外の同機能のモデルより全色210ノズルと予想されるが、DCP-J1200Nではブラックは210ノズルだが、カラーは各70ノズルとなり、カラー3色で従来の1色分のノズル数しかない形となる。当然印刷速度に影響が出ており、L判写真印刷速度は14秒から28秒に半減している。一方、カラー文書の場合はDCP-J1200Nでは9.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷面数)と、DCP-J988Nの10.0ipmから微減で、モノクロ文書に至っては16.0ipmと、DCP-J988Nの12.0ipmから高速化している。これはDCP-J4140Nの速度を見れば分かりやすく、DCP-J4140NではDCP-J988Nと同じノズル数で、写真印刷速度は変わらないながら、文書の印刷速度はカラーが19.0ipm、モノクロが20.0ipmへと高速化しているのだ。写真印刷速度を見ると、ノズル数の減少によりカラーの印刷速度は半分になっていると考えられるが、新モデルと言う点では高速化しているので、DCP-J4140Nの19.0ipmの半分に近い9.0ipmの速度が出ているようである。一方モノクロに関してはブラックのノズル数は同等なので、新モデルの高速化の恩恵がそのまま出た事になる。MFC-J4140Nの20.0ipmより遅い16.0ipmだが、これはモノクロ印刷でも、完全な黒色以外のグレーの部分はカラーインクを重ねて表現するため、カラーインクのノズル数の少なさの影響を多少受けた可能性と、最小インクドロップサイズが小さい分、ドット数が多く必要な可能性が考えられる。DCP-J1200Nではノズル数は少ないが、写真印刷以外では高い勝手は悪くなっていないと言えるだろう。ファーストプリント時間もカラー文書こそ、DCP-J1200Nは10.0秒と、DCP-J988Nの8.5秒より遅いが、モノクロ文書は6.5秒と速く、DCP-J4140Nの5.8秒に迫る速さになっている。
 DCP-J1200Nのインクの方式は「ファーストタンク方式」と呼ばれる、大容量のカートリッジ方式である点ではDCP-J988Nや、DCP-J4140Nと同じだ。しかし、その容量と印刷コストは異なっている。DCP-J988NとDCP-J4140Nは顔料、染料の構成こそ異なるものの、超・大容量と大容量の2サイズが用意され、カラー文書を印刷した場合、超・大容量はカラーが6,000ページ、ブラックが5,000ページ、大容量はそれぞれ3,000ページと1,500ページの印刷が可能という点では同じだった。しかしDCP-J1200Nでは、1サイズのみで、しかもブラックが2,500ページ、カラーが1,500ページとなっている。この印刷可能枚数は、DCP-J988NやDCP-J4140Nと比べて、カラーは大容量と同等、ブラックは大容量より少ないという枚数となる。一方、カートリッジの価格は、DCP-J988NやDCP-J4140Nは超・大容量がブラックは4,400円、カラーは各5,500円なのに対して、DCP-J1200Nはそれぞれ2,200円と各2,310円となる。印刷枚数はブラックが41.7%、カラーが30%しかないが、価格はそれぞれ50%と42%になるので、印刷枚数が少ないわりには価格は下がっていない事になる。結果、印刷コストはカラー文書で、DCP-J988N/DCP-J4140Nの4.1円から、DCP-J1200Nでは5.5円に、モノクロ文書は0.8円から0.9円に上がってしまっている。ただ、カラー文書に対して、モノクロ文書は0.1円と価格差が小さく、モノクロ文書メインならば印刷コストの差はあまり気にならないといえる。そもそも、これまでもファーストタンクの機種は、エプソンのエコタンクやキャノンのギガタンクに対して印刷コストでは太刀打ちできていなかったが、それでもカラー文書よりモノクロ文書の方が価格差が小さかった。そのことから、ブラザーではモノクロ文書重視の傾向が見て取れ、今回もモノクロ文書だけは印刷コストの上昇を小さく抑えたと言えるだろう。ちなみにDCP-J988N/DCP-J4140Nで大容量インクを使った場合、DCP-J1200Nと比べてブラックはやや印刷枚数が多いが価格は1.5倍、カラーは同じ印刷枚数だが価格が高い事を考えると、DCP-J988N/DCP-J4140Nで大容量インクを使う場合と比べれば、DCP-J1200Nの方が印刷コストは安くなる事になる。また、L判写真の印刷コストは16.2円で、DCP-J988Nの11.0円やDCP-J4140Nの12.5円より上がっている。これには写真用紙代4.2円が含まれているので、これを除くと12.0円、6.8円、8.3円となり、76.5%又は44.6%アップとなり、カラー文書の34%アップよりも更に差が大きくなっている。 だだ、通常のインクカートリッジ方式のモデルDCP-J926NではL判写真が22.2円、カラー文書が9.4円、モノクロ文書が2.9円なので、これと比べると十分低印刷コストだ。

プリント(給紙・排紙関連)
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4 L判〜A4 L判〜A4
長尺用紙 長さ297mmまで 長さ355.6mmまで 長さ355.6mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
前面 【カセット】
(150枚/50枚/20枚)
【カセット】
(150枚/50枚/20枚)
【カセット】
(150枚/50枚/20枚)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(ボタン選択式) ○(カセット収納連動) ○(カセット収納連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、DCP-J1200Nの給紙、排紙機能を比較してみよう。DCP-J1200Nの対応用紙はL判〜A4までという点では同じだが、実際にはDCP-J988N/DCP-J4140Nはアメリカなどで使われるリーガルサイズである355.6mmの長さまで対応しているが、DCP-J1200NはA4の長さである297mmまでだ。実用上の差は小さいだろうが、違いの一つとなる。一方で、給紙方式や枚数は全く同じだ。セットした用紙のサイズと種類の登録機能も搭載されているが、DCP-J1200Nは液晶を搭載しない(後述)のため、大きく異なっている。DCP-J988N/DCP-J4140Nでは、前面給紙カセットを抜くことによって設定画面が表示され(メニューからも設定画面は表示できる)、セットした用紙のサイズと種類を自由に設定できる。この設定と、印刷時の設定が異なる場合、メッセージが表示される機能だ。DCP-J1200Nは液晶は無いが「A4」「ハガキ」の表示とそれぞれにLEDランプがあり、ボタンを押すことによってLEDの点灯が切り替わる形で選択できる。「A4」はA4サイズの普通紙、「ハガキ」はハガキサイズのその他光沢紙となる。そして、両方のLEDが点灯した状態は「カスタム」となっており、あらかじめスマホ向けのアプリ「Brother Mobile Connect」を利用して登録することで、もう一種類の用紙サイズと種類を利用できる形となっている。A4普通紙と光沢ハガキ以外に2種類以上の用紙を常用するなら非常に不便と言える。また、常時ランプが点灯しているため、前面給紙カセットとは連動して表示が出るわけでは無いため、設定し忘れないように注意が必要だ。

プリント(付加機能)
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
自動両面印刷
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 3.0ipm 10.0ipm
A4モノクロ文書 3.0ipm 11.0ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
特定インク切れ時印刷 ○(クロだけ印刷・最大30日) ○(クロだけ印刷・最大30日) ○(クロだけ印刷・最大30日)
自動電源オン/オフ −/○(USB接続・単体使用時) −/○(USB接続・単体使用時) −/○(USB接続・単体使用時)
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてDCP-J1200Nのその他のプリント機能を比較してみよう。DCP-J988N/DCP-J4140Nとは異なり、DCP-J1200Nは自動両面印刷には対応していない。その他、クロだけ印刷や、自動電源オフ(無線LAN接続時は使用不可)機能は同等だ。

スキャン
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
原稿サイズ A4
(215.9×297mm)
A4
(215.9×297mm)
A4
(215.9×297mm)
読み取り解像度 1200dpi
(1200×2400dpi)
1200dpi
(1200×2400dpi)
ADF使用時は1200×600dpi
1200dpi
(1200×2400dpi)
ADF使用時は1200×600dpi
センサータイプ CIS CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF 原稿セット可能枚数 20枚 20枚
原稿サイズ 215.9×355.6mm〜148×148mm 215.9×355.6mm〜148×148mm
両面読み取り
読み取り速度 カラー N/A N/A
モノクロ N/A N/A
スキャンデーターのメモリカード保存 ○(JPEG/PDF/TIFF) ○(JPEG/PDF/TIFF)

 DCP-J1200Nのスキャナー機能を見てみよう。スキャン可能な原稿サイズや読み取り解像度は同じだ。表には記載が無いが、入力が30bit、出力が24bitで、100dpiスキャン時のカラースキャンが4.4秒、モノクロスキャンが4.3秒という点まで完全に同じだ。ただし、DCP-J988N/DCP-J4140Nには、20枚までの原稿を連続で読み取るADFが搭載されているが、DCP-J1200Nには非搭載だ。複数枚の原稿のスキャンやコピーの手間は大きな違いがある。また、DCP-J1200NにはメモリーカードリーダーやUSBポートは搭載されないため(後述)、DCP-J988N/DCP-J4140Nのように、本体だけでスキャンしてSDカード(DCP-J988Nのみ)やUSBメモリーに保存する機能は搭載されない。

ダイレクト印刷
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード SD
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG JPEG
色補正機能 フチあり/フチなし
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
フチあり/フチなし
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/− −/−
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷

 DCP-J1200Nのダイレクト印刷機能を見てみよう。DCP-J988NはSDカードとUSBメモリーに、DCP-J4140NはUSBメモリーに対応しており、これらに保存された写真を本体だけでプリントできたが、DCP-J1200Nにはその機能は搭載されていない。

スマホ/クラウド対応
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Brother Mobile Connrct Brother iPrint&Scan Brother Mobile Connrct
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 4.03以降
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応
Wi-Fi接続支援機能 ○(NFC(Android)) ○(NFC(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
SNS
写真共有サイト
スキャン アプリ経由/本体 ○/− ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
メールしてプリント ○Eメールプリント
(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文)
○メール添付印刷
(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT)
本体でのプリント操作必要
○Eメールプリント
(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文)
LINEからプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 DCP-J1200Nのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリはDCP-J988Nが対応していた「Brother iPrint&Scan」から「Brother Mobile Connect」へと変更された。これは、DCP-J4140Nも同じで、今年のモデルから一斉に移行している。エプソンの場合は新アプリ「Epson Smart Panel」へ移行後も、新モデルで旧アプリ「Epson iPrint」を利用できるが、DCP-J1200Nでは「Brother iPrint&Scan」は使用できない。対応OSもiOSが11.0以降から13.0以降に、Androdiが4.03以降から5.0以降に変更されているので注意が必要だ。
 アプリが変更になり、操作方法は大きく変わったが、機能面では同等だ。写真や文書ファイル、Webページのプリントと、スキャンが行える。ただし、DCP-J988N/DCP-J4140Nでは、Wi-Fiダイレクト時の接続設定で、タッチするだけで設定が行えるNFCに対応していたが(AndroidでNFC対応端末の場合のみ)、DCP-J1200Nには搭載されていない。また、iOSや、NFC非対応のAndroidからWi-Fiダイレクトで接続する場合は、手動でSSIDを選択してセキュリティーキーの入力が必要だが、この確認が液晶上で行えたDCP-J988N/DCP-J4140Nに対して、液晶の無いDCP-J1200Nは用紙にプリントして確認するしかない。本体の「Wi-Fi」ボタンと「用紙」ボタンを同時に押すと、情報シートが印刷される。初回のみとはいえ手間がかかってしまうのは仕方が無いことだろう。
 クラウドへのアクセスも可能で、クラウド上のデーターをプリントと、スキャンしてクラウドにアップロードする事が可能だ。ただ、DCP-J988N/DCP-J4140Nでは、アプリ「Brother Mobile Connect」上でアクセスする方法と、本体の液晶を使ってアクセスする方法の両方に対応していたが、DCP-J1200Nではアプリ上でのアクセスしかできない。
 もう一つ変更になった点として、メールを利用したリモートプリント機能で、「メール添付印刷」機能が「Eメールプリント」機能へと変更された事が挙げられる。昨年のモデルより変更されており、DCP-J1200Nでも変更になった。従来の「メール添付印刷」では、送信すると専用のクラウド上に保存されるため、24時間以内にプリンター本体からの操作でクラウドにアクセスし、送信元のメールアドレスを選択してプリントという手順が必要だった。「Eメールプリント」では、本体の操作が必要なく、メールを送信すると、自動的にプリントされるようになった。また、「メール添付印刷」ではWord、Excel、PowerPoint、PDF、TXT、BMP、GIF、JPG、PNG、TIFF形式に対応しているが、添付ファイルのみの印刷でメール本文は印刷されなかった。「Eメールプリント」では対応ファイル形式は同じながら、メール本文を印刷するか選べるようになった。これらの設定は、ブラウザ上から行え、ドキュメントと画像でそれぞれ画質と用紙サイズ、さらにドキュメントは両面印刷をするかどうかも設定できるようになった。ソフトウェア的な変更のみだが、同機能の使い勝手は大きく向上している。

コピー機能
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
等倍コピー ○(A4普通紙/光沢ハガキ/カスタムサイズのみ・フチありのみ)
【アプリ上から】
○(各種サイズ・用紙対応/フチあり・フチなし対応)
拡大縮小 倍率指定
【アプリ上から】
○(25〜400%)
○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
【アプリ上から】
定型変倍
【アプリ上から】
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) −/−
【アプリ上から】
○/○
○/○ ○/○
その他のコピー機能
【アプリ上から】
濃度調整
地色除去コピー
濃度調整
地色除去コピー
裏写り除去コピー
インク節約モードコピー
濃度調整
地色除去コピー
バラエティコピー
【アプリ上から】
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)

 DCP-J1200Nのコピー機能を見てみよう。液晶を搭載しないため(後述)、細かい設定は一切行えない。DCP-J1200Nは、前述の「普通紙」「ハガキ」の表示とそれぞれにLEDランプがあり、ボタンを押すことでLEDの点灯が切り替えられるので、これを利用してコピーサイズを指定する形となる。「普通紙」はA4サイズの普通紙、「ハガキ」はハガキサイズのその他光沢紙で、等倍のフチありコピーとなる。さらに、両方が点灯した状態は「カスタム」となっており、スマホ用アプリ「Brother Mobile Connect」を利用して、好きな用紙サイズと種類を登録しておける。少しでも自由度を高めようとした工夫と言えるだろう。とはいえ、DCP-J988N/DCP-J4140Nでは、各種用紙サイズ・種類に対応し、原稿サイズを自動で認識し用紙サイズに合わせて拡大縮小する「オートフィット」や、原稿と印刷する用紙サイズの組み合わせを指定して拡大縮小コピーが行う「定型変倍」の他、25〜400%の間で1%刻みで拡大率・縮小率の設定がマニュアルで行え、様々な拡大縮小コピーが利用できた事を考えると雲泥の差だ。カラーとモノクロのスタートボタンがあるため、カラーかモノクロかは選択できる他、コピーボタンをコピー枚数分押すことで、複数枚のコピーも行える。特定の用紙への等倍コピーしか行わないのであれば、ある意味、設定内容を気にすること無くスタートボタンを押すだけという点では簡単とも言える。
 ただし、スマホ用アプリ「Brother Mobile Connect」上でコピー操作を行う事で、DCP-J988N/DCP-J4140Nと同じく各種用紙サイズと種類を設定し、拡大縮小コピーも可能になる。フチあり、フチなしの設定も可能だ。また、DCP-J988N/DCP-J4140Nの機能として、2枚又は4枚の原稿を1枚の用紙に縮小して並べる「2面割付」や「4面割付」、「濃度調整」、背景色を消して見やすくしインクも節約できる「地色除去コピー」、免許証などの裏表をそれぞれスキャンする事で1枚の用紙に並べてコピーできる「2in1IDコピー」、本のとじ目部分や周囲に出来る影を消す「ブックコピー」、コピー文書に透かし文字を入れられる「透かしコピー」、さらに1枚の原稿を、2枚、4枚、9枚に分割し、貼り付ける事で大判コピーが行える「ポスターコピー」機能を搭載するが、これらの機能もDCP-J1200Nの本体だけでは当然設定が出来ないが、「Brother Mobile Connect」上では設定が可能だ。ただし、DCP-J988Nが搭載していた、「裏写り除去モード」と、太い文字やべた塗りのグラフなどをフチを残して内側を薄い色とする事で、見やすさを維持したままインクを節約する「インク節約モード」に関しては、「Brother Mobile Connect」を使っても利用できない。これはアプリの制限では無く、上位モデルのDCP-J4140Nの本体でのコピーでも省かれている事から、今年の新モデルより搭載しなくなった機能と言える。また、ADFを搭載しないため、複数枚の原稿を複数部コピーを行う場合に1部ずつプリントする「ソートコピー」機能も搭載しない。
 普段は等倍コピーしか行わなわず、極たまに拡大縮小や割付、透かしコピーやポスターコピーなどを行うという程度なら、アプリを利用することで何とか対応できるようになっている。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新モデル
旧モデル
参考モデル
型番 DCP-J1200N DCP-J988N DCP-J4140N
製品画像
液晶ディスプレイ 2.7型
(角度調整可)
2.7型
(角度調整可)
操作パネル 物理ボタン タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.14.6〜
(AirPrint使用)
Windows 10/8.1/8/7 SP1
Mac OS 10.11.6〜
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.14.6〜
(AirPrint使用)
耐久枚数 N/A N/A 10万枚
外形寸法(横×奥×高) 435×359×161mm 435×341×195mm 435×343×180mm
重量 6.1kg 8.7kg 8.8kg
本体カラー ホワイト ホワイト&グレー ホワイト

 最後にDCP-J1200Nの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。前述のように液晶を搭載しておらず、2.7型のタッチパネル液晶を搭載するDCP-J988N/DCP-J4140Nとは比べるまでも無く、本体での設定などはほとんど行えない。またDCP-J988N/DCP-J4140Nでは、操作パネルは前面に搭載され、持ち上げることで角度調整が可能だったため、低い位置に置いても高い位置に置いても操作が可能だった。対して、DCP-J1200Nでは本体正面の左手前に並んでいるため、高い位置に置くと本体操作がしにくくなる。
 DCP-J1200Nにあるボタンは「用紙」「Wi-Fi」「ストップ」「モノクロコピー」「カラーコピー」の5つだけだ。電源ボタンも独立しておらず、ストップボタンと兼用になっており、電源オフの場合はストップボタンを長押しする必要がある。「用紙」ボタンを押すことで、「A4」LED点灯、「ハガキ」LED点灯、両方のLED点灯(カスタムサイズ)に切り替えられる。「Wi-Fi」ボタンの横にもLEDがあり、接続中、接続完了、接続切れなどの状態を表している。また「インク」LEDは、インク残量が少なくなると点滅、無くなると点灯する。「警告」LEDはエラーが発生したときに点灯または点滅するが、「インク」LEDと「電源」LEDを含めた3つのLEDの点灯、点滅の組み合わせ、また点滅のテンポによって、トレイのエラー、用紙詰まり、用紙サイズ間違い、カートリッジのカバーが開いている、メモリー不足、廃インク吸収パッド満杯など、各種エラーを知らせてくれる。このように少ないボタンとLEDランプでできる限りの設定と情報を提供しているが、特にエラー内容に関しては、点灯・点滅のパターンを憶えておくことが難しいため、DCP-J988N/DCP-J4140Nのように日本語でエラーメッセージが表示されるのと比べると非常に分かりにくいと言えるだろう。
 インターフェースはUSB接続と無線LAN(Wi-Fi)接続が利用できる。一方でDCP-J988N/DCP-J4140Nの対応する有線LANには対応しないため、安定して接続したい、家庭内LAN配線がある、無線LANの設定が難しいといった場合に有線LANを使用しようと考えていた場合は注意が必要だ。
 対応OSには変更点がある。Windowsの場合、DCP-J988NではWindows 7 SP1以降となっており、DCP-J1200Nでもこの点は変わっていない。ただし、Windows 8が非対応となり、Windows 8.1にアップデートしないと使えなくなった。MacOSも10.11.6以降から、10.14.6以降となり、より新しいOSのみ対応となっただけでなく、専用ドライバーが提供されなくなり、OS標準のAirPrintを利用したプリントとなった。これにより用紙厚さ設定などが利用できない他、一部の設定もブラウザ上であらかじめ行う必要がでている。これに関しては、上位モデルDCP-J4140Nでも同じなので、低価格モデルでの制限ではなく、新モデルでの変更点となる。耐久枚数はCP-J1200Nでは非公開で、その点はDCP-J988Nと同じだ。一方で上位モデルDCP-J4140Nでは10万枚と公表されているので、これよりは低い可能性が高く、家庭向けの機種と同等(1万〜1万5000枚程度)の可能性も捨てきれない。
 本体デザインは、液晶もADFも無いため非常にスッキリしており、DCP-J988N/DCP-J4140Nインクカートリッジの取り付け部だけ横幅が大きくなっているという事も無いため、白い箱といったイメージだ。本体サイズは435×359×161mmで、DCP-J988Nの435×341×195mmやDCP-J4140Nの435×343×180mmと比べると、横幅は全く同じ、奥行きは16〜18mm大きく、高さは19〜34mm小さくなる。横幅は同じとは言え、DCP-J988N/DCP-J4140Nの様に上部は横幅が抑えられているのとは違って、DCP-J1200Nでは全体に435mmの幅があるため、奥行きと相まって少し大きめに見える。高さはADFが無い分、小さくなったと言えるだろう。最近のプリンターとしてはやや大きいが、それほど問題となるほどの差ではないといえる。



 DCP-J1200Nは、ファーストタンク方式でありながら、機能をギリギリまで削ることで、本来は印刷コストが安く、本体が高い所を、約30,000円まで下げているのが特徴だ。エプソンやキャノンでは、従来型のインクカートリッジ方式のモデルでは、同様のモデルが存在するが、エコタンク、ギガタンクモデルではここまで徹底した下位モデルは存在しない。その点では印刷コストにはこだわりたいが、機能はシンプルなもので良いというユーザーに合っていると言えるだろう。機能はシンプルながら、印刷速度は十分に高速だし、低価格機種にありがちな背面給紙では無く、前面給紙カセットであるため用紙を常時セットしたたまにしておき、どんどん印刷するのに向いている。コピー機能もA4又はハガキの等倍コピーしか使わないなら、逆に操作が簡単というメリットがあるし、カスタムサイズを登録できることで自由度を増している。また、スマホに対応している事を上手く利用して、アプリ上からならこれまでと変わらない様々なコピーが出来るという点も、いざという時を考えれば安心と言えるだろう。残念なのは、他のファーストタンク方式の機種より印刷コストが上がってしまっていることだ。ファーストタンク方式はエコタンク方式やギガタンク方式と比べると印刷コスト面では不利だった所に、さらに印刷コストが上がってしまった。結果、モノクロで2倍前後、カラーでは5.5倍の差になる。できれば、DCP-J988Nなどのインクカートリッジをそのまま使える様な機種であってほしかったといえる。とはいえ、従来型カートリッジモデルと比べれば印刷コストは安いし、DCP-J988N/DCP-J4140Nではインク1セットで5,000〜6,000ページも印刷可能で期限内に使い切れないというユーザーもいるだろう。もう少し印刷枚数は少ないが、印刷コストにこだわりたいという人には選択肢の一つとなるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


DCP-J1200N