2021年末時点のプリンター新機種を徹底検証 新機種と旧機種を徹底比較 同系統・同価格帯のエプソン・キャノン・ブラザー製品を徹底比較 (2021年9月13日公開・2022年3月26日最終更新) |
毎年、9〜10月の年賀状シーズンには家庭向けの複合機の多くが新製品に入れ替わり、春にはビジネス向けやプロ向け、タンク方式の機種など、特殊な機種に新機種が登場することが多い。しかし、今年は新型コロナウィルスの影響により、少し状況が異なっている。7月27には早々にブラザーが新製品を発表し、9月上旬から一部販売を開始した。2ヶ月以上遅れた10月5日にはキャノンが新製品を発表、10月14日には一部販売を開始した。エプソンはなかなか新製品が出ず、10月28日になってようやく発表され、11月11日に販売を開始となる。このように、発表・発売の時期にバラツキがあった。またブラザーはA4複合機は全機種が入れ替わり、機能的な変化も大きい年であった。キャノンは家庭向けPIXUSシリーズの4機種のみではあったが、一風変わった製品もラインナップに加わった。エプソンは、家庭向けカラリオシリーズは新製品が無く、エコタンクモデル3機種のみの新製品で、しかも最新機種に合わせた変更点がほとんどで、変化の少ない新製品だった。 それでは、最新のラインナップがどう変わったのかメーカー別に見ていこう。さらに、その下では、 ●新機種が旧機種とどう変わったのか1機種ずつ徹底比較 ●同系統・同価格帯のエプソン・キャノン・ブラザーの製品で、どの機種がオススメかを徹底比較 のページを用意しているので、そちらも合わせて見て頂きたい。
エプソンの新製品はエコタンク搭載機種の3機種と、年賀状作成機能を持ったプリンターのみだ。家庭向けのカートリッジ方式のカラリオシリーズは毎年何らかの新機種が登場していたが、今年は発表が無かった。エプソンによると「製造現場への新商品切り替えに伴う高負荷を避けるため」という事だが、新型コロナウィルスによる世界的な半導体不足や製造の問題が影響している物と思われる。カートリッジ方式の機種は年明けの発表となっている。ただ、カートリッジ方式の機種は、毎年大きな変化がない事が多く、何年かに1度の大幅なモデルチェンジの際や、ラインナップに新しい方向性の機種が追加されるので無ければ、新製品に移行する必要はあまりない。また、店頭での価格を見ていると、通常は10月頃に新機種が発表され、年末に向けて値下がりし、その後しばらく値下げは落ち着いた後、翌年の新機種発表前に大幅に値下げ、新機種で元の価格に戻るというパターンをとなる事が多かった。しかし、去年の新機種は年末になっても春になってもほとんど値下げしていないことが多く、今年は新機種が出ないために価格を維持しているのではないかとも予想された。プリンターは去年からひどい品薄状態が解消されておらず、需要が増える年末に新製品に移行するために、旧機種の製造を減らすなどの調整をしている場合では無いという事なのだろう。 なお、EP-883Aは、本体色がホワイト、ブラック、レッドが選べたが、このうちレッドに関しては先行して製造が終了している。また年賀状作成機能を持ったプリンターPF-81-2021はPF-81-2022に移行したが、基本のPF-81という型番が変わっておらず、年号だけが変化していることからも分かるように、内蔵のデザインを2022年に合わせただけのものであり、基本機能は一切変わっていない。また、写真プロ向け製品である「プロセレクション」の下位モデルSC-PX7VIIが販売終了している。 では変化のあった3機種を見てみよう。EW-M754TはEW-M752Tの後継機種だ。エプソンでは家庭向けの機種は型番の下一桁が毎年1ずつ上がり、今年は「4」(正確には14)であるため、「754」となった。昨年の機種より、Bluetooth LEを用いて、スマートフォンから簡単に初期設定が行える機能を搭載しているが、EW-M752Tは2年前の機種であるためこの機能を搭載していなかった。同じエコタンクの上位機種EW-M873Tと下位機種EP-M553T、家庭向けカートリッジ方式の上位機種は搭載しており、売れ筋のEW-M752Tだけ搭載されていないという状況は良くないという事からか、新機種へ移行している。特に本体カラーブラックに関しては昨年追加されただけに、1年で次の機種が登場した事になる。ただし、その点だけでは新機種というのには変化が少なすぎるため、いくつか他に変更点がある。まず、排紙トレイの自動伸縮機能が搭載された。上位機種EW-M873Tや、カートリッジ方式EP-883Aには搭載されており、印刷を実行すると排紙トレイが自動で伸張する機能だ。EW-M752Tには自動電源オン機能が搭載されており、プリントを実行すると自動で電源が入ったが、トレイは手動で引き出すまで印刷が実行されなかったためせっかくの自動電源オンが使いづらかった。この点は無事に解消されている。また、EW-M752T同様、本体カラーはホワイトとブラックから選べるが、EW-M752Tではホワイトでも、液晶回りにブラックのフレームがあり、アクセントとなっていたが、これもホワイトに変更された。またインク残量不足を知らせるLEDバーが、EW-M752Tではブラックの背景に白色LEDだったが、EW-M754Tでは下位機種EP-M553T同様、ホワイトの背景に水色LEDとなった。液晶回りと合わせて明るくスッキリした印象になった。ブラックモデルは引き続き全体がブラックで、LEDバーの背景もブラックのままだが、LEDは水色に変更されている。対応OSもWindowsは変化が無いが、MacOSは、10.6.8以降から、10.9.5以降に変更されている。なお、型番も違いが出ている。EW-M752Tの場合は、当初ホワイトモデルだけが登場し、本体カラーを区別する型番が不要なため、ホワイトを表すWが付いておらずEW-M752Tであり、翌年にブラックモデルが追加された事、こちらだけブラックを表すBが付いてEW-M752TBとなっていた。そのため、EW-M752Tというと、ホワイトモデルだけを表しているのか、シリーズ全体を表しているのかが分かりにくかった。今回は同時発表という事で、ホワイトがEW-M754TW、ブラックがEW-M754TBとなっている。 EW-M674FTはEW-M670FTの後継機種、EW-M634TはEW-M630Tの後継機種となる。EW-M670FTはエコタンク方式のカラープリントの機種では、販売されている中では最も古い2017年9月発売、EW-M630TはEW-M670FTからファクス機能とADFを省略して、タッチパネル液晶からボタン操作に変更した製品で、基本はEW-M670FTと同じだ。そのため、新機種への移行は順当と言える。EW-M670FTとEW-M630Tは発売が古いため、2018年機種から対応するフチなし吸収材が満タンになってもフチあり印刷は継続できる機能や、2019年から対応する、QRコード読み取り(iOS)や本体での許可操作(Android)だけでスマートフォンとWi-Fiダイレクト接続できる機能、さらに2020年から対応する、Bluetooth LEを使用してスマートフォンから簡単に初期設定が出来る機能には対応していなかった。それどことか、スマートフォン用のアプリもEpson Smart Panelではなく、旧アプリであるEPSON iPrintのみ対応であった。これらは、上位機種、下位機種の違いでは無く、その時期以降の新製品は基本的に全て対応するだけに、これらに対応しないのは古い製品というイメージだった。今回、EW-M674FT、EW-M634Tとなりこれらは全て解消されている。また、従来の機種では外見はほぼ同じながら、EW-M670FTの前面給紙カセットは250枚給紙、EW-M630Tは150枚給紙と差が付けられていたが、EW-M634Tでは250枚となり、EW-M674FTとEW-M634Tに差は無くなった。これ以外に旧機種との違いはほぼなく、インクや印刷速度、各種機能は同等だ。対応OSも、前述のようにEW-M754TではMacOSが10.9.5以降に変更されたが、EW-M674FTとEW-M634Tではビジネス利用も考慮してか、MacOS 10.6.8以降を踏襲している。外見もほとんど変更が無く、操作パネル部に細かい模様が入ったくらいのものだ。ただし、旧機種では本体カラーがブラックとホワイトから選べたが、EW-M674FT、EW-M634Tではホワイトのみとなった。EW-M670FTでは当初ブラックのみで、ホワイトは後に追加されているが、今回はホワイトのみである。なお、エコタンク方式の写真向けを除く機種の型番は、ビジネス向けの機種と同じで必ずしも下1桁が発売年を表しているわけ無いが(EW-M670FTは下一桁が0(正しくは10)の時の製品なので一致しているが、同時期にEW-M571Tがあるし、EW-M630Tは翌年発売なのでその法則に従うとEW-M631Tでなくてはならない)、EW-M674FTとEW-M634Tに関しては、今年の機種である「4」となっている。 新機種「EW-M674FT」と旧機種「EW-M670FT」を比較 新機種「EW-M634T」と旧機種「EW-M630T」を比較
キャノンの2021年末の新機種は、PIXUSシリーズである家庭向けの複合機4機種のみだ。PIXUS XK100、PIXUS TS8530、PIXUS TS7530、PIXUS TS5430の4機種となる。一方PIXUS TS6330は販売終了となり、PIXUS TS6000番台は消滅した。PIXUS TS6000番台は5色機としてPIXUS TS8000番台とPIXUS TS5000番台の間の機種だったが、PIXUS TS7000番台が登場して以来、一部の機能ではPIXUS TS7000番台の方が上である物の、操作性やコピー機能などはPIXUS TS6000番台の方が上で、どちらが上位機種なのか分かりにくい2機種が存在していた。今回はPIXUS TS7000番台に統一されたわけだが、海外ではPIXUS TS7000番台に相当する機種がPIXMA TS6000番台として登場しており(PIXMAはキャノンの日本以外でのブランド名)、そもそも併売されていなかった事を考えると、当然の結果と言える。また、型番の百の位が毎年1ずつ上がっており、去年の新機種は4だったため今年は5で統一されるかと思われたが、旧機種+1という法則になった。そのため、PIXUS TS5000番台以外は昨年新機種(百の位が4)が登場しており、今年は5となったが、PIXUS TS5000番台だけは昨年は新機種が登場していなかった事から3から4となりPIXUS TS5430となった。百の位が1違うと1世代変わるという縦の流れは分かりやすいが、同時期の新製品に5と4が混在する事になり、横のつながりは分かりにくいといえる。これ以外に、A4単機能プリンターであるTR703が販売終了となった。これによりキャノンから、写真印刷画質のA4単機能プリンターが無くなった事になる。複合機の登場以来、徐々に隅に追いやられていた単機能プリンターから、ついに5色インク以上の機種が消えたのは、時代の流れだ。 一方、ギガタンク方式は新機種は登場していない。GX7030とGX6030が新機種とも言えるが、発表が早かったこともあり、春・夏の新製品として既に紹介している。海外では6色インクのギガタンク搭載複合機であるG600番台が登場しており、日本でも登場が期待されたが、実現しなかった。ちなみにG600番台は、4色インクのG3360をベースに、右側のタンクを3色から4色に、左側のタンクを1色から2色とし、基本4色にレッドとグレーを含めた染料6色インクとした製品だ。エプソンのエコタンク6色インクであるEW-M873Tは顔料ブラック+染料カラー5色で、写真印刷は5色で行うのに対して6色全てが染料で画質的には上回る事も考えられる製品だ。とはいえ、ただでさえ印刷速度が遅いG3360の4色用のヘッドを6色で分け合うのでノズル数が更に減り、印刷速度がかなり遅い他、背面給紙だけで自動両面印刷もSDカードからのダイレクト印刷もできず、液晶もモノクロの2行文字液晶というスペックで、画質は最高レベルで他の機能は最低レベルという製品だった。画質も他の機能も最高レベルのEW-M873Tには対抗できず、日本では合っていないという判断なのだろうか。キャノンでは型番の10の位が発売する国で異なっており、日本向けは30となっているが、G610からG690までの内、日本向け製品の型番となると思われるG630だけが存在していない形となる。 今回の新製品で共通の事項を見ていこう。まず、4機種共通では無いが、PIXUS XK100とPIXUS TS8530に共通なのは、前面給紙カセット周辺のデザインだ。キャノンでは2016年末にPIXUS MGシリーズからPIXUS TSシリーズに移行した際に本体を大幅に小型化したが、奥行きを小型化しすぎたためか、前面給紙カセットにA4/B5用紙をセットすると、完全に本体に収納できず、35〜45mm飛び出してしまう形となった。そのことがデザイン面でスマートさに欠けるという問題があった。今年の機種では、カセット部だけで無く、その左右の部分も同じ奥行きとなるデザインに変更された。とはいえカセット小型化する事はできないので、左右も同じ位置まで飛び出すように変更したのであって、本体の下部が液晶や操作パネルより前に飛び出すデザインになっている。しかし、これでカセット「だけ」が飛び出しているのではなく、本体の横幅いっぱいまでツライチとなった他、飛び出し部分も曲面でデザインすることで、従来より飛ばしていることが気にならなくなりスッキリしたデザインとなった。また奥行きも若干小型化され、従来はカセットを伸ばすと364mmあったが、新機種では345mmとなっている。今回このデザインが採用されたのはPIXUS XK100とPIXUS TS8530だが、従来より前面を斜めにしていたPIXUS TS7530も含め、3機種がカセットが飛び出さないようなデザインとなった。新機種ではPIXUS TS5430だけがカセットが飛び出すデザインを継承している。なお、これら3機種ではA4サイズより横幅が大きいレターサイズは前面給紙カセットに入れられなくなっている。 4機種の共通の新機能としては、Wi-Fiダイレクト(ダイレクト接続)時の設定支援機能が変更された。従来は、iOS端末の場合は本体の液晶に表示されるQRコードを、標準カメラアプリで読み込めば設定が完了する方法で、これは変更されていない。新機種では、Android端末でも同じくQRコードを読み取る方式が採用された。従来はBluetooth機能を使いあらかじめペアリングを行っておくことで、ダイレクト接続時に簡単に接続出来るようになっていたが、Bluetoothで一度接続する必要がある分二度手間であった。ただし、AndroidでQRコードを読み込む方法はAndroid 10.0以降に限定される。エプソンではアプリ内で機種名を選び本体液晶で許可を選択するという方式を採用しており、Android 5.0以降で使用できるのと比べるとかなり新しい端末だけに限られる点では注意が必要だ。 また、Mac OSの対応バージョンが変更となり10.13.6以降となった。Windowsは変更が無い。 インクカートリッジが変更になっている機種が多く、PIXUS XK100、PIXUS TS8530、PIXUS TS7530は新しいインクカートリッジとなった。また、これまでPIXUS TS8000番台とPIXUS TS7000番台(今回消えたPIXUS TS600番台も)は同じインクカートリッジで、グレーインクの有無だけの違いだったが、今回は別のカートリッジとなった。PIXUS XK100もPIXUS XK90とは異なるカートリッジである。PIXUS TS5430だけはPIXUS TS5330と同じカートリッジだ。これにより、PIXUS XKシリーズとPIXUS TSシリーズは継続販売の機種も含めて全機種でインクカートリッジが異なるという異例の状態となった(PIXUS XK100はN20/N21、PIXUS XK90はN10/N11、PIXUS TS8530は330/331、PIXUS TS7530は300/301、PIXUS TS5430は360/361、PIXUS TS3330は345/346)。非常にわかりにくい上に、同時期の製品間でもインクが流用できないという問題がある。 印刷速度がやや高速化され、これまで5〜6色インクの機種ではPIXUS XK90を除いてL判写真は18秒という速度が続いていたが、今回16秒となった。文書の印刷速度は旧機種と変わらない。また、4色のPIXUS TS5430は高速化していない。 それでは新製品を細かく見ていこう。なお、より細かな比較は、この項目の後半にある「新機種と旧機種の比較」ページを参考にしてもらいたい。PIXUS XK100はPIXUS XKシリーズの新機種だが、PIXUS XK90の後継機種ではなく追加機種となる。PIXUS XKシリーズは、写真高画質と(カートリッジ方式としては)低印刷コストが売りのシリーズだが、PIXUS XK100では画質をやや下げつつ、低印刷コストを更に追求した製品となっている。インク構成は5色となったが、写真印刷は十分に可能な画質である。インクカートリッジは新たにN20/N21となり、顔料ブラックが825円、染料4色が各627円と価格を下げたことから、印刷コストは写真8.9円、カラー文書3.9円、モノクロ文書1.5円まで下がっている。一方、レーベル印刷や自動両面印刷、SDカードからのダイレクト印刷機能などは搭載している。ただし自動両面印刷機能は、ハガキにも対応するが、インクジェット光沢郵便ハガキには非対応というやや特殊になっている。液晶は2.7型と小型化された。タッチパネル液晶だが、ホームやスタートボタンが物理ボタンで用意されているなど、今回消えたPIXUS TS6330と似た操作パネルとなった(こちらは液晶が3.0型だが)。ただし違いもあり、新たに液晶内の表示を「仕事/学習モード」に切り替えられるようになった。また、ホーム画面で「モノクロスタート」「カラースタート」を押すだけで、コピーが行われるようになった。さて、約40,000円という価格と、5色インク、低印刷コスト、インクカートリッジ1セットで3,300円程度、自動両面印刷とダイレクト印刷、タッチパネル液晶というのを見ると、ある機種に似ていることが分かる。それが、エプソンのエコタンク搭載機種EW-M752Tである。印刷枚数1,000枚程度の小型のエコタンクを搭載することで、本体価格と機能と印刷コストのバランスを取った製品で、インク1セット3,300円と購入しやすく、手軽なエコタンク搭載機種である。インクカートリッジの機種からの乗り換えを目指したもので、5色インク、本体価格約44,000円、自動両面印刷とダイレクト印刷、タッチパネル液晶という点で似ているといる。キャノンもギガタンク搭載機種に力を入れており、ギガタンク方式として出せれば良かっただろうが、前述のようにキャノンはギガタンク方式では4色機種しか存在しておらず、印刷枚数も6,000枚以上と多く、ビジネス向けの機種を除くと、モノクロの文字液晶の機種しか無いため、ダイレクト印刷機能を搭載できないなど、文書の大量印刷向けの機種しか無い。手軽な写真印刷向けは全く新しい機種を用意する必要がある。そこで、とりあえずカートリッジ方式で対抗機種を出した様に見える。印刷コストもEW-M752TがL判写真9.5円、カラー文書3.0円、モノクロ文書1.3円となっており、これに近い印刷コストになるようにカートリッジ価格を下げたように見える。これまで存在していなかったEW-M752Tのライバルと言えるだろう(詳しい比較は、「同系統・同価格帯の製品の比較」の「A4複合機(4万円以上)」を見て頂きたい)。 PIXUS TS8530はPIXUS TS8430の直接の後継機種だ。インクカートリッジが変更され、印刷コストがL判写真22.1円、カラー文書12.2円、モノクロ文書4.3円までやや上がっている。また小容量カートリッジが無くなり、大容量と標準容量だけとなった。その他の変更点は前述の写真印刷速度の向上、前面給紙カセットのレターサイズ非対応、Android端末でもQRコードによるダイレクト接続設定が可能になった事、対応OSの変更、本体デザインの変更により前面給紙カセットだけが飛び出る点の解消などとなる。ただし、液晶は、ホーム画面が「コピー」「はがきコピー」「SDカード印刷」「お手入れ」「インク」のボタンだけとなる「簡単モード」に切り替えが可能になっている。 PIXUS TS7530はPIXUS TS7430の後継機種だ。インクカートリッジが変更され、印刷コストがL判写真31.8円、カラー文書18.8円、モノクロ文書5.5円と、1.7〜1.9倍に上がった。また大容量・標準容量・小容量のサイズが無くなり、1種類のみとなった。また無線LANが、IEEE802.11aと5GHz帯に対応した。その他の変更点は前述の写真印刷速度の向上、前面給紙カセットのレターサイズ非対応、Android端末でもQRコードによるダイレクト接続設定が可能になった事、対応OSの変更などとなる。前面を斜めにすることで、前面給紙カセットが飛び出さないデザインは旧機種と同等だが、角が全体に丸められた他、排紙口の左側だけがへこんでおり前面がコの字型の左右非対称だった旧機種から、左右対称のデザインとなり、スマートからやわらかなデザインに変更されている。また液晶の下に操作パネルが並んでいたが、液晶の右に変更され、PIXUS TS5430に近いデザインになっている。本体カラーは3色ながら、ネイビーが無くなりブルーとなった。ブルーと言っても水色に近く、この点でもイメージがやわらかになっている。 PIXUS TS5430は最も変化が少なく、Android端末からのQRコードによるダイレクト接続設定対応と、対応OSの変更くらいだ。本体カラーもブラック、ホワイト、ピンクという点は同じだが、ピンクはより淡い色に変更さている。 新機種「PIXUS XK100」と参考機種「PIXUS XK90」を比較 新機種「PIXUS TS8530」と旧機種「PIXUS TS8430」を比較 新機種「PIXUS TS7530」と旧機種「PIXUS TS7430」を比較 新機種「PIXUS TS5430」と旧機種「PIXUS TS5330」を比較
ブラザーの2021年末は最近では珍しくラインナップに大きな変化があった。まず、型番が大きく変更された。ファクス機能無しの複合機DCP-J987Nの後継機種はDCP-J926Nとなった。型番が下がったが機能が下がったわけではない。これまで型番は毎年「5」ずつ増えていたため、DCP-J982Nの後継機種としてDCP-J987Nとなったが、ファーストタンク方式の機種としてDCP-J988Nという機種があった。2020年末発売の(従来型)カートリッジ方式と、2018年末発売のファーストタンク方式という大きく異なる製品が、1番違いの型番で分かりにくかったのも事実だ。また、このままではあと2年で上限までいってしまうという問題もあったかもしれない。そこで、今回は型番を大きく後退させDCP-J926Nとした。2011年にブランド名がPRIVIOでは無くMyMioだった頃の製品にDCP-J925Nという似た型番の製品があるが、さすがに11年前の製品なので問題無さそうだ。ファクス機能搭載機種は、これまでの法則通り型番が1増えてMFC-J904Nとなった。一方のファーストタンク方式の機種は、ファクス無しがDCP-J988N、ファクス有りがMFC-J1500Nと型番の桁数も違う他、ファクス無しは(従来型)カートリッジ方式の機種と近い型番なのに対して、ファクス付きは全く異なるという分かりにくい型番だった。そこで、今回から、ファーストタンク方式の機種は4桁とし、4000番台にまとめられた。また下位機種の1000番台も登場している。これにより、(従来型)カートリッジ方式の機種のA4モデルは900番台、ファーストタンク方式の機種は1000番台および4000番台、A3対応機種は6000番台と、とりあえずまとめられたことになる。 ラインナップも強化され、DCP-J988Nの後継がDCP-J4140N、MFC-J1500Nの後継がMFC-J4440Nとなったが、加えてファクス付きの上位機種としてMFC-J4540Nが追加された。また、ファクス無しの下位機種として、DCP-J1200Nも追加された。A4のファーストタンク方式の機種が2機種から4機種へと増えた形となる。従来型カートリッジ方式の機種は機種数そのまま、DCP-J926NとMFC-J904Nという新製品に移行しているが、DCP-J926Nでは本体カラーがブラックの機種が復活した。2年前までは上位機種900番台ではホワイトとブラックが選べ、下位機種の500番台はホワイトとなっていたが、去年下位機種が無くなると共に、上位機種もホワイトのみとなっていた。実際には一部量販店モデルとしてブラックが販売されていたが、カタログ上には掲載が無かった。今年は正式にブラックもラインナップされ、2色から選べる形となった。 今回から、インク構成にも手が加えられた。これまで、A4対応の機種は家庭向けで、顔料ブラック+染料カラー3色構成、A3対応の機種はビジネス向けで、全色顔料インクであった。今回、ファーストタンク方式の機種は、A4対応ながらDCP-J1200Nを除いて4色顔料インクとなった。また、これまでのブラザーの全色顔料インクは、マゼンダの一部に染料インクが含まれているため、マゼンダは普通紙への画質や耐水性で劣る可能性があるという、厳密な意味での全色顔料インクでは無かったが、今回より晴れて「完全な」全色顔料インクとなった。これに伴い、インクカートリッジも416番へ変更された。なお、去年までは超・大容量が3135番、大容量が3133番と容量によって型番が異なっていたが、今回は超・大容量416XL番、大容量が416番と、XLの有る無しで区別され分かりやすくなった。一方で、従来型カートリッジ方式の機種であるDCP-J926NとMFC-J904Nと、ファーストタンク方式の下位機種DCP-J1200Nではこれまで通り顔料ブラック+染料カラーの構成となっている。ただしインクカートリッジは変更され、DCP-J926NとMFC-J904Nが3111番から411番に、DCP-J1200Nは414番となった。 印刷解像度と最小インクドロップサイズも複雑になった。これまでは全機種が最小インクドロップサイズは1.5plで、印刷解像度は顔料ブラック+染料カラーの機種は1200×6000dpi、顔料4色の機種は1200×4800dpiだった。しかし、新製品の内、全色顔料になった3機種は2plで1200×4800dpiと最小インクドロップサイズが少し大きくなった。では顔料ブラック+染料カラーの機種は従来通りかというと、印刷解像度は1200×6000dpiのまま、最小インクドロップサイズは2plに変更された。ただし、DCP-J1200Nは従来の1.5plで1200×6000dpiを踏襲する。上位機種より下位機種の方が最小インクドロップサイズが小さいという不思議な状態となった。 印刷速度の向上も、新製品の見どころだ。これまではカラーは10ipm、モノクロが12ipmで共通だったが、これが顔料4色の機種では19ipmと20ipmへ、DCP-J926NとMFC-J904Nも16.5ipmと17ipmとなった。ノズル数は全色210ノズルのまま増えていない事もあって、写真の印刷速度は14秒で据え置きだが、普通紙印刷は大幅に高速化した。DCP-J1200Nはカラーのノズル数が70ノズルと少ないが、9.0ipmと16.0ipmと健闘している。また、それ以上に自動両面印刷の速度が向上している。これまでカラー、モノクロ共に3.0ipmだったが、全色顔料の機種ではカラーが10.0ipm、モノクロが11.0ipmに、顔料ブラック+染料カラーの機種はカラー、モノクロ共に5.5ipmとなった。 一方、印刷コストに関しては、インクが変更されたものの普通紙の印刷コストは据え置きだ。ただ、写真印刷に関してはファーストタンク方式の機種が11.0円から12.5円に、従来型カートリッジ方式の機種が20.5円から22.2円に上がっている。またDCP-J1200Nはファーストタンク方式だが、従来より小型のカートリッジとなっている事から、写真は11.0円から16.2円、カラー文書は4.1円から5.5円、モノクロ文書は0.8円から0.9円に上がっている。 その他、共通の変更点がいくつかある。スマートフォン・タブレット用のアプリが一新され、従来の「Brother iPrint&Scan」から、「Brother Mobile Connect」となった。iOSが11.0以降から13.0以降、Androidが4.03以降から5.0以降になっている。また、昨年の新機種より「メール添付印刷」機能が「Eメールプリント」に変更されており、今年の新機種でA4対応のものはは全機種がEメールプリントとなった。メールに画像や文書ファイルを添付して、プリンターのメールアドレスに送信すると印刷される機能だが、「メール添付印刷」では、プリンター本体でプリント操作が必要だった。「Eメールプリント」では、受信すると自動で印刷される他、メール本文の印刷も可能となった。対応OSも変更となり、昨年の新機種よりWindows 8に非対応となったのが全機種へ広がった他、MacOSは10.14.6以降となった。またMac用のドライバーが提供されなくなりAirPrintを利用したプリントとなる。これにより用紙厚さ設定などが利用できない他、一部の設定は本体で行う必要がある。全色顔料インクの機種は耐久枚数も公表された。いずれも10万枚とかなり高耐久になっている。 その他、新機種と旧機種の細かい違いは以下の各ページをご覧頂きたい。 新機種「DCP-J926N」と旧機種「DCP-J987N」を比較 新機種「MFC-J904N」と旧機種「MFC-J903N」を比較 新機種「DCP-J1200N」と旧機種「DCP-J988N」、参考機種「DCP-J4140N」を比較 新機種「DCP-J4140N」と旧機種「DCP-J988N」を比較 新機種「MFC-J4540N」「MFC-J4440」と旧機種「MFC-J1500N」を比較
エプソン、キャノン、ブラザーのラインナップを、並べて比較してみよう。対応用紙サイズ、さらにインク色数で分けて、エプソンのカートリッジ方式とエコタンク方式、キャノンのカートリッジ方式とギガタンク方式、ブラザーのカートリッジ方式(標準サイズ)とファーストタンク方式それぞれの機種を並べている。 各製品の型番と写真と共に、インク構成も記載している。例えば同じ4色インクでも、全色染料、全色顔料、黒顔料+カラー染料という様に、違いがあることがお分かり頂けるだろう。
新旧の比較とは別に、新製品を含む同系統の製品、同価格帯の製品での比較をしてみよう。 |
(ファクス無し/有り) |
EW-M973A3T EP-982A3 EW-M5610FT TR9530 MFC-J5630CDW |
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(4万円以上) |
EW-M873T EW-M754T PIXUS XK90 PIXUS XK100 |
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(カートリッジ方式・3万円台) |
EP-883A PIXUS TS8530 |
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(カートリッジ方式・2万円台 |
EP-813A EP-713A PIXUS TS7530 DCP-J962N |
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(カートリッジ方式・1万円台前半) |
EW-452A PIXUS TS5430 |
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(カートリッジ方式・1万円以下) |
EW-052A PIXUS TS3330 |
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(タンク方式・4万円以上) |
EW-M873T EW-M754T EW-M634T GX6030 G6030 DCP-J4140N |
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(タンク・大容量カートリッジ方式・3万円前後) |
EP-M553T G3360 DCP-J1200N |
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(写真向きの染料ブラック搭載機) |
EW-M873T EW-M754T EP-M553T |
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(顔料ブラック+染料カラー3色搭載機) |
EW-M674FT EW-M634T G7030 G6030 G3360 DCP-J1200N | |||||||
(文書向きの全色顔料搭載機) |
PX-M791FT GX7030 GX6030 MFC-J4540N MFC-J4440N DCP-J4140N |
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(カートリッジ方式) |
PX-M6011F PX-M6010F MFC-J6983CDW MFC-J6583CDW |
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(タンク・大容量カートリッジ方式) |
PX-M6712FT PX-M6711FT MFC-J6999CDW MFC-J6997CDW |
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(カートリッジ方式・3万円前後以上) |
PX-M885F MAXIFY MB5430 MAXIFY MB5130 TR8630 MFC-J904N |
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(カートリッジ方式・2万円前後以下) |
PX-M730F EW-M530F MAXIFY MB2730 MAXIFY MB2130 |
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(タンク方式・大容量カートリッジ方式) |
PX-M791FT EW-M674FT GX7030 G7030 MFC-J4540N MFC-J4440N |
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PX-M380F PX-M270FT PX-M270T PX-M160T GM4030 |
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SC-PX1VL imagePROGRAF PRO-1000 |
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(カートリッジ方式・6万円以上) |
SC-PX1V SC-PX7VII imagePROGRAF PRO-G1 PIXUS PRO-S1 |
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(カートリッジ方式・5万円以下) |
EP-50V PX-S6010 PIXUS iP8730 PIXUS iX6830 |
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(タンク・大容量カートリッジ方式) |
PX-S6710T HL-J6000CDW |
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(カートリッジ方式) |
EP-306 PX-S855 PX-S740 PX-105 MAXIFY iB4130 PIXUS TS203 |
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(タンク方式) |
G5030 G1310 |
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PX-S380 PX-S270T PX-S170T PX-S160T PX-K150 GM2030 |
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PX-S06 PF-71 TR153 |
(H.Intel)
今回の関連メーカー エプソンホームページ http://www.epson.jp/ キャノンホームページ http://canon.jp/ ブラザーホームページ https://www.brother.co.jp/ |