小ネタ集
2021年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2021年10月15日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります

新機種「DCP-J926N」と参考機種「DCP-J987N」を徹底比較する

 DCP-J926NはDCP-J987Nの後継モデルだ。型番上は数字が下がっているため、下位モデルの様にも見るが、実際には正式な後継モデルだ。ブラザーでは毎年数字が5ずつ上がっており、このままだと来年には使い切ってしまうことから、早い段階で型番をリセットした物と思われる。では、どのような違いがあるのだろうか。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
発売日 2021年10月中旬 2018年9月中旬
発売時の価格(税込) 24,200円 21,450円
インク 色数 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存100年/耐光性50年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存100年/耐光性50年)
インク型番 LC411 LC3111
ノズル数 840ノズル N/A(840ノズル?)
全色:各210ノズル N/A(全色:各210ノズル?)
最小インクドロップサイズ 2pl 1.5pl
最大解像度 1200×6000dpi 1200×6000dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 14秒 14秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 16.5ipm 10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 17.0ipm 12.0ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 22.2円 20.5円
A4カラー文書 9.4円 9.4円
A4モノクロ文書 2.9円 2.9円
インク1本の印刷枚数
ブラック 375ページ 375ページ
カラー 500ページ 500ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 1,078円 1,078円
カラー 1,078円 1,078円

 まずは、販売価格を見てみよう。販売開始時の価格はDCP-J926Nは24,200円となっており、旧モデルDCP-J987Nより2,750円のアップだ。新型コロナウィルスによる世界的な半導体不足の影響もあると考えられる。
 それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。DCP-J926Nでは、4色インクでブラックが顔料インク、カラーが染料インクという構成なのは同じだ。ただし、最小インクドロップサイズが1.5plから2plに変更されており、その分若干ながら画質面ではスペックダウンと言え、粒状感がやや強くなるだろう。とはいえ、そもそもインク構成から写真を高画質に印刷する目的の機種では無いため、大きな問題にはならないと思われる。一方、印刷速度に関しては大きく改善された。写真の印刷速度は14秒のままだが、エプソン、キャノン共に最高速モデルが10秒台なので、これ以上の高速化をする必要は無いだろう。一方、文書の印刷速度に関しては、DCP-J987Nではカラー文書が10.0ipm(image per minute:1分あたりの印刷面数)だったが、DCP-J926Nでは16.5ipmに、モノクロ文書は12.0ipmが17.0ipmに大きく向上した。カラーは65%、モノクロは42%の高速化というのはかなりのものだ。またこの速度は、家庭用インクジェットプリンターとしてははかなり高速な部類だ。一方でノズル数はDCP-J987Nでは非公表ながら、同機能の海外モデルを参考にすると、各色210ノズルで、DCP-J926Nも変化しておらず、この点で高速化したわけでは無い。最小インクドロップサイズが大きくなったことも影響しているだろうが、給紙や紙送りなど、何らかの改良がなされたと思われる。
 インク構成は同じで、インクカートリッジのセット方法なども同じだが、カートリッジは変更されている。DCP-J987NではLC3111番だったが、DCP-J926NではLC411番となった。ただ、印刷可能枚数はA4カラー文書を印刷した場合、ブラックインクが375ページ、カラーインクが500ページという点は変わっておらず、カートリッジの価格も1色1,078円で同じだ。また、写真の耐保存性も、アルバム保存100年、耐光性50年というのも変わっていない。インクの発色などが改良された可能性もあるが、不明だ。インクカートリッジが変更されたからといって良くも悪くもなっておらず、気にする必要はあまりないが、買い換えで余ったインクカートリッジを流用しようと考えている場合は注意が必要だ。
 また印刷可能枚数もインクカートリッジの価格も据え置きであるため、カラー文書、モノクロ文書共に印刷コストは全く変化していない。ただし、写真印刷に関してはDCP-J987Nの20.5円からDCP-J926Nでは22.2円へと高くなっている。印刷コストの測定条件は変更されていないので、最小インクドロップサイズの変化が影響したと思われる。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4 L判〜A4
長尺用紙 長さ297mmまで 長さ297mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
前面 【カセット下段】A4〜A6/ハガキ
(100枚/40枚/20枚)
【カセット上段】
L判/ハガキ/ポストカードのみ
(−/20枚/20枚)
手動切り替え
【カセット下段】A4〜A6/ハガキ
(100枚/40枚/20枚)
【カセット上段】
L判/ハガキ/ポストカードのみ
(−/20枚/20枚)
手動切り替え
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット取り出し連動) ○(カセット取り出し連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、DCP-J926Nの給紙、排紙機能を比較してみよう。DCP-J926Nは、DCP-J987Nと全く同等だ。大小2段の前面給紙カセットと、背面手差し給紙となっている。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
自動両面印刷
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 5.5ipm 3.0ipm
A4モノクロ文書 5.5ipm 3.0ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
特定インク切れ時印刷 ○(クロだけ印刷・最大30日) ○(クロだけ印刷・最大30日)
自動電源オン/オフ −/○(USB接続・単体使用時) −/○(USB接続・単体使用時)
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてDCP-J926Nのその他のプリント機能を比較してみよう。DCP-J926Nは自動両面印刷とレーベル印刷に対応している点ではDCP-J987Nから変化はない。ただし、自動両面印刷の速度は改善されている。DCP-J987Nではカラー、モノクロ共に3.0ipmだったが、DCP-J926Nでは5.5ipmに高速化している。片面印刷速度が高速化したので当たり前に思えるかもしれないが、片面印刷速度からの低下率で言うと、DCP-J987Nは、カラーが30%、モノクロが25%まで低下していた。しかし、DCP-J926Nではカラーが33.3%、モノクロが32.4%となっており、自動両面印刷時の速度低下率も改善している。自動両面印刷を多用するならうれしい改善点だ。

スキャン
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
原稿サイズ A4
(215.9×297mm)
A4
(215.9×297mm)
読み取り解像度 1200dpi
(1200×2400dpi)
ADF使用時は1200×600dpi
1200dpi
(1200×2400dpi)
ADF使用時は1200×600dpi
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF 原稿セット可能枚数 20枚 20枚
原稿サイズ 215.9×355.6mm〜148×148mm 215.9×355.6mm〜148×148mm
両面読み取り
読み取り速度 カラー N/A N/A
モノクロ N/A N/A
スキャンデーターのメモリカード保存 ○(JPEG/PDF/TIFF) ○(JPEG/PDF/TIFF)

 DCP-J926Nのスキャナー機能を見てみよう。原稿サイズや解像度、ADFの原稿セット可能枚数なども全く同じとなっている。

ダイレクト印刷
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード SD SD
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG JPEG
色補正機能 フチあり/フチなし
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
フチあり/フチなし
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷

 DCP-J926Nのダイレクト印刷機能を見てみよう。DCP-J926NではSDカードとUSBメモリーに対応し、フチなし/フチありの他、明るさとコントラストを5段階から調整できる点まで、DCP-J987Nと全く同じだ。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Brother Mobile Connect Brother iPrint&Scan
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 4.03以降
スマートスピーカー対応
Wi-Fi接続支援機能 ○(NFC(Android)) ○(NFC(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
SNS
写真共有サイト
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
メールしてプリント ○Eメールプリント
(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文)
○Eメールプリント
(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文)
LINEからプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 DCP-J926Nのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリは「Brother iPrint&Scan」から「Brother Mobile Connect」へと変更された。エプソンの場合は新アプリ「Epson Smart Panel」へ移行後も、新モデルで旧アプリ「Epson iPrint」を利用できるが、DCP-J926Nでは「Brtoher iPrint&Scan」は使用できない。対応OSもiOSが11.0以降から13.0以降に、Androdiが4.03以降から5.0以降に変更されているので注意が必要だ。
 アプリが変更になり、操作方法は大きく変わったが、機能面では同等だ。写真や文書ファイル、Webページのプリントと、スキャンが行える。クラウドへのアクセスも、本体上とアプリ上の両方で可能なのも同じだ。

コピー機能
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/○
その他のコピー機能 濃度調整
地色除去コピー
濃度調整
地色除去コピー
裏写り除去コピー
インク節約モードコピー
バラエティコピー 2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)

 DCP-J926Nのコピー機能を見てみよう。各種拡大縮小や2面/4面割付は同等だ。一方、その他のコピー機能として、濃度調整と、地色除去コピーは搭載しているが、裏写り除去コピーとインク節約モードが無くなっている。インク節約モードは全体に色を薄くするのでは無く、文書の文字はそのまま残しつつ、見出しなどの大きな文字や、グラフ、色囲みなどは、輪郭だけを残して内側の色を薄くすることで、見やすさを落とさずにインク使用量を減らすことができるという、エプソンやキャノンには無い機能だったが、省かれてしまった。2in1IDカードコピーやブックコピー、透かしコピー、シートコピー、ポスターコピーといったバラエティコピー機能は引き続き搭載されている。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番 DCP-J926N DCP-J987N
製品画像
液晶ディスプレイ 2.7型
(角度調整可)
2.7型
(角度調整可)
操作パネル タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.14.6〜
(AirPrint使用)
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
外形寸法(横×奥×高) 400×341×172mm
レーベル印刷時は後方に10cm以上のスペースが必要
400×341×172mm
レーベル印刷時は後方に10cm以上のスペースが必要
重量 8.4kg 8.6kg
本体カラー ホワイト/ブラック ホワイト

 最後にDCP-J926Nの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。DCP-J926Nの液晶のサイズは2.7型と変更されておらず、タッチパネル液晶で、液晶右に物理ボタンを3つ搭載する点も同じだ。液晶内の操作方法も変更されていないが、背景色が黒から白へと変更され、明るい印象になった。インターフェースは同じだ。
 対応OSには変更点がある。Windowsの場合、DCP-J987NではWindows 7 SP1以降(Windows 8は非対応)となっており、DCP-J926Nでもこの点は変わっていない。一方、MacOSは10.13.6以降から、10.14.6以降となり、より新しいOSのみ対応となっただけでなく、専用ドライバーが提供されなくなり、OS標準のAirPrintを利用したプリントとなった。これにより用紙厚さ設定などが利用できない他、一部の設定は本体で行う必要がでている。
 本体デザインは、操作パネルの位置やADFの形状、インクカートリッジ取り付け部の形状まで全く同じだ。ギガタンクモデルでは、カセットの持ち手部などが新モデルで変更されていたが、DCP-J926Nに関してはそのようなこともない。そのため、本体サイズは全く同じとなっている。ただし、本体カラーはブラックとホワイトが選べるようになった。実はDCP-J987Nの前のモデルDCP-J982Nまではブラックとホワイトが選べるようになっていた。しかし、DCP-J987Nはカタログ上はホワイトのみとなり、一部量販店限定でブラックモデルが販売される形となっていた。今年のモデルではカタログモデルにブラックが復活したと言えるだろう。また、液晶の背景色が白になったため、ホワイトモデルでは液晶まで全てが白となり、スッキリした印象になっている。



 DCP-J926Nは、旧モデルのDCP-J987Nと見た目も一見すると同じで、機能的な変更点も少ない。しかし、細かな部分の改良や新機能では無く、印刷速度というメインの部分が改良された。しかも、1割程度の速度向上では無く、カラーが65%、モノクロが42%の高速化というのは、かなり高性能になったと言える。それと同時に自動両面印刷速度も改良されたため、文書印刷のストレスは大きく軽減されたと言えるだろう。それでいて、本体価格はやや上がったが、近年では新モデルが出る度に上がることが多い印刷コストは据え置かれているのもポイントだ。最小インクドロップサイズはやや大きくなったとはいえ、見比べても分かるかどうかの差であり、また写真印刷向けの機種では無いため、この程度の画質低下は問題ないだろう。それよりも、インク節約モードコピーなど一部の機能が無くなった点は残念な人もいるだろう。とはいえ、文書印刷とコピー中心のユーザーにとっては、安くて速くて使いやすい機種としてオススメできる製品になっている。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


DCP-J926N-W
(ホワイト)
DCP-J926N-W
(ブラック)