小ネタ集
2021年末時点のプリンターを徹底検証
新モデルと旧モデルを徹底比較
(2021年10月19日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧モデル・参考モデルからの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧モデル1・参考モデル1からの変更点となります

新モデル「PIXUS TS8530」と参考機種「PIXUS TS8430」を徹底比較する

 PIXUS TS8530はPIXUS TSシリーズの最上位モデルで、PIXUS TS8430の純粋な後継モデルだ。一見すると違いは少ないように見えるが、機能面だけで無く、印刷コストやデザイン面にまで変更が加えられている。どのような違いがあるのか細かく比較してみよう。

プリント(画質・速度・コスト)
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像



発売日 2021年11月上旬 2020年8月6日
発売時の価格(税込) 37,950円 35,750円
インク 色数 6色 6色
インク構成 顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番 330XL/331XL(大容量)
330/331(標準容量)
380XL/380XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
ノズル数 6656ノズル 6656ノズル
C/M:各1536ノズル
GY/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
C/M:各1536ノズル
GY/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
最小インクドロップサイズ N/A N/A
最大解像度 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 16秒 18秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 10.0ipm 10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 15.0ipm 15.0ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 大容量:22.1円
標準容量:24.8円
大容量:19.9円
標準容量:21.4円
小容量30.7円
A4カラー文書 大容量:12.2円
標準容量:12.4円
大容量:10.8円
標準容量:10.9円
小容量:16.3円
A4モノクロ文書 大容量:4.3円
標準容量:4.2円
大容量:3.5円
標準容量:3.7円
小容量:4.9円
インク1本の印刷枚数
顔料ブラック 大容量:600ページ
標準容量:400ページ
大容量:600ページ
標準容量:400ページ
小容量:200ページ
染料ブラック 大容量:4,530ページ
標準容量:2,270ページ
大容量:4,530ページ
標準容量:2,270ページ
小容量:740ページ
カラー 大容量:802ページ
標準容量:502ページ
大容量:802ページ
標準容量:501ページ
小容量:251ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料ブラック 大容量:2,200円
標準容量:1,430円
大容量:1,793円
標準容量:1,331円
小容量:1,012円
染料カラー 大容量:2,090円
標準容量:1,320円
大容量:1,914円
標準容量:1,133円
小容量:803円
カラー 大容量:2,090円
標準容量:1,320円
大容量:1,914円
標準容量:1,133円
小容量:803円

 まずは、販売価格を見てみよう。PIXUS TS8530の販売開始時の価格は37,950円で、PIXUS TS8430の35,750円より2,200円高くなっている。新型コロナウィルスによる世界的半導体不足や製造や輸送の問題もあって、製造コストが上がったことも要因と思われる。
 それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。インク構成や印刷解像度などは全く同じだ。印刷速度は、L判写真が16秒となり、PIXUS TS8430の18秒から若干の高速化が図られた。文書の印刷速度は、カラー、モノクロ共に同等だ。
 インク自体は発色などが改良された記述はなく、写真の耐保存性も「ChromaLife 100」という点で同じだが、インクカートリッジは新しくなった。PIXUS TS8430では380/381番だったが、PIXUS TS8530では330/331番となった。また、PIXUS TS8430では、大容量、標準容量、小容量の3サイズがラインナップされていたが、PIXUS TS8530では大容量と標準容量だけとなった。PIXUS TS8430同様、大容量は6色セットは用意されず、ばら売りのみとなる。そのことから、いままで通り、一般的には標準容量が使われ、どうしてもよく使う色だけ、大容量カートリッジを購入するというパターンとなると思われる。
 インクカートリッジの変更に伴って、印刷コストが上がっている。L判写真の場合、大容量カートリッジを使った場合、PIXUS TS8430の19.9円からPIXUS TS8530では22.1円に、標準容量カートリッジを使用した場合は、21.4円から24.8円になった。それぞれ11%と15.9%アップとなる。カラー文書の場合、大容量カートリッジでは10.8円から12.2円に、標準容量カートリッジでは10.9円から12.2円になり、13%程度上がっている。モノクロ文書の場合大容量カートリッジでは3.5円から4.3円に、標準容量カートリッジでは3.7円から4.2円になった。それぞれ22.9%と13.5%アップである。全体的に印刷コストが10%以上上がってしまったのは、残念だ。かつては印刷コストの安いキャノンと言われていたが、それも過去のことのようだ。またモノクロ文書の場合、大容量カートリッジを使った方が印刷コストが微妙にではあるが高くなっているのは、注意が必要だ。
 一方、大容量、標準容量それぞれの印刷可能枚数は変化していないので、印刷コストのアップはインクカートリッジそのものの値上げが原因だ。大容量カートリッジの場合、PIXUS TS8430は顔料ブラックが1,793円、染料5色が、各1,914円だったが、PIXUS TS8530ではそれぞれ2,200円と2,090円に値上げされた。標準の場合PIXUS TS8430はそれぞれ、1,331円と1,133円だったが、PIXUS TS8530では1,430円と1,320円に値上げされた。標準容量の6色パックも、PIXUS TS8430の6,787円からPIXUS TS8530では7,810円となってしまった。インクカートリッジ購入時の出費が大きくなってしまったといえる。


プリント(給紙・排紙関連)
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 名刺〜A4 名刺〜A4
長尺用紙 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)
前面 【カセット】
普通紙のみ
レターサイズ非対応
(100枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動)
用紙幅チェック機能 ○(用紙セット時・用紙サイズ表示) ○(用紙セット時・用紙サイズ表示)

 続いて、PIXUS TS8530の給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズから、普通紙のみの前面給紙カセット+背面給紙の組み合わせ、センサーによる用紙サイズ検知など全く同じだ。ただし、前面給紙カセットは、A4、B5、A5サイズは両機種とも対応しているが、PIXUS TS8430で対応していたレターサイズにはPIXUS TS8530は非対応となる。レターサイズは215.9×279.4mmで、A4サイズの210×297mmより横幅がわずかに大きく、これが非対応となっている。とはいえ、日本では馴染みの無いサイズであるため、それほど問題にはならないだろう。

プリント(付加機能)
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像
自動両面印刷
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 N/A N/A
A4モノクロ文書 N/A N/A
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 ○(ネイル印刷対応) ○(ネイル印刷対応)
写真補正機能 ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ ○/○ ○/○
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてPIXUS TS8530のその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能やCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷や自動電源オン・オフ機能など、全て同じだ。

スキャン
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像
原稿サイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 2400dpi(2400×4800dpi) 2400dpi(2400×4800dpi)
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存

 PIXUS TS8530のスキャナー機能を見てみよう。原稿サイズや解像度など、PIXUS TS8430と全く同じとなっている。

ダイレクト印刷
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード SD SD
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG/TIFF JPEG/TIFF
色補正機能 トリミング
フチなし/フチあり
赤目補正
トリミング
フチなし/フチあり
赤目補正
手書き合成 ○(ディスクレーベル対応) ○(ディスクレーベル対応)
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応 ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷 カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー

 PIXUS TS8530のダイレクト印刷機能を見てみよう。SDカードスロットを搭載し、トリミングやフチなし・フチあり切り替え、赤目補正が可能な他、手書き合成や、カレンダー印刷、定型フォーム印刷、組み込みパターン印刷が可能となっており、これはPIXUS TS8430と同機能となる。

スマホ/クラウド対応
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 12.0以降
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova)
Wi-Fi接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS/Android)) ○(QRコード読み取り(iOS)/Bluetooth(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
メールしてプリント
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(ファイルアップロード・Windows 10・IEのみ) ○(ファイルアップロード・Windows 10・IEのみ)
スキャンしてリモートプリント

 PIXUS TS8530のスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリは変更されておらず、クラウド関連の機能も同等だ。アプリの対応端末が、iOSがPIUXS TS8430の12.0以降からPIXUS TS8530では13.0以降に、Androidも4.4以降から5.0以降に変更されているが、これは製品発表時のアプリの対応バージョンであり、現在はPIXUS TS8430でもiOS 13.0以降、Android 5.0以降となる。
 唯一異なるのが、Wi-Fiダイレクト(ダイレクト接続)時の設定支援機能だ。手動で設定も可能だが、最近はセキュリティーキーなどを入力せずに簡単に接続出来る機能が搭載されるのが流行りだ。PIXUS TS8430は、iOS端末の場合は本体の液晶に表示されるQRコードを、標準カメラアプリで読み込めば設定が完了する。この方法はPIXUS TS8530でも同様で、エプソンの各機種も同じ方式をとっている。一方、Android端末の場合は、PIXUS TS8430ではBluetooth機能を使いあらかじめペアリングを行っておくことで、Wi-Fiダイレクト時に簡単に接続出来るようになっていたが、iOSと比べると、Bluetoothで一度接続する必要がある分二度手間であった。アプリ上でも設定項目が奥深くになっている事からも、メーカーでも大々的におすすめする機能では無かったようだ。そこで、PIXUS TS8530では、iOSと同じQRコードを読み込む方式へと変更した。エプソンでは「アプリ内で機種名を選び、本体液晶で許可を選択する」という方式を採用しており、Androidでは異なる方法を取ったことになる。ただ、エプソンの方式ではアプリの対応するAndroid 5.0以降で使用できるが、PIXUS TS8530のQRコードを読み込む方法はAndroid 10.0以降と、かなり新しい端末だけに限られる点では不便だ。とはいえ、徐々に端末の買い換えが進めば解決する問題とも言える。

コピー機能
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー ○(色あせ補正対応) ○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/○
その他のコピー機能 プレビュー
濃度調整
プレビュー
濃度調整
バラエティコピー 枠消しコピー
IDコピー
コピー予約
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 PIXUS TS8530のコピー機能を見てみよう。各種拡大縮小やレーベルコピー、写真焼き増し風コピー、2面/4面割付、プレビュー、濃度調整、IDコピーなど、機能はPIXUS TS8430から変更は無い。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新モデル
旧機種
型番 PIXUS TS8530 PIXUS TS8430
製品画像
液晶ディスプレイ 4.3型
(90度角度調整可)
かんたんモード搭載
4.3型
(90度角度調整可)
操作パネル タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint使用)
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.12.6〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高) 372×345×142mm 373×319×141mm
(前面給紙カセット伸張時373×364×141mm)
重量 6.6kg 6.6kg
本体カラー ブラック/ホワイト/レッド ブラック/ホワイト/レッド

 最後にPIXUS TS8530の操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。PIXUS TS8530の液晶は4.3型のタッチパネルとなっており、本体前面に搭載されて、持ち上げて角度調整が可能という点までPIXUS TS8430と全く同じだ。ただし、液晶内の表示を「かんたんモード」に切り替える事が出来るようになった点は新しい。「かんたんモード」にすると、ホーム画面が「コピー」「はがきコピー」「SDカード印刷」の大きなボタンと、「お手入れ」「インク」ボタンだけとなる。また、それぞれのボタンを押した場合も、通常のコピーやSDカードからの印刷メニューに入るのでは無く、基本的な機能に限定することでステップ数を減らしたメニューとなっている。例えば「コピー」は、普通紙への片面印刷となり、用紙サイズは自動検知となる。設定できるのはコピー枚数、濃度、倍率のみだ。「はがきコピー」は手書きの年賀状を、はがきにコピーが出来る機能で、設定できるのは枚数と濃度調整のみだ。「SDカード印刷」は、写真を写真用紙またははがきへ印刷が出来る機能だ。写真を1枚ずつスワイプして選んだ後、用紙設定では、サイズは「L判」「2L判」「はがき」のみ、用紙種類は例えば「L判」を選んだ場合「プラチナグレード」「光沢ゴールド」「光沢スタンダード」「マットフォト」の4種類のみに厳選されている。用紙サイズや用紙種類を絞ることで、選びやすくした他、似た名称の間違った用紙を選択するミスを減らせるようになっている。機能的にはかなり大胆に限定しており、もう少しこの機能も使えた方がと思う部分もあるだろう。しかし、それをすると本来の「かんたん」モードからは遠ざかってしまうため、簡単さを重視し、もう少し機能が欲しいという人には標準モードを使ってもらうというスタンスだろう。高齢者や機械が苦手なユーザーに向けた新たな試みと言える。また「かんたんモード」だけでなく、従来の「標準モード」も搭載しており、ボタン一つで切り替えられるので、家族内で使い分ける事もできそうだ。
 対応OSには若干の違いがあり、MacOSが10.12.6以降から10.13.6以降に変更となった。Windowsに変更は無く、マイクロソフトのサポートの終了したWindows 7も引き続き対応する。
 本体サイズはPIXUS TS8530では372×345×142mmで、PIXUS TS8430の373×319×141mmと比べて、幅と奥行きは変わらないものの、奥行きが大きくなったように見える。しかし、これは前面給紙カセット部のデザイン変更によるものだ。キャノンでは2016年末にPIXUS MGシリーズからPIXUS TSシリーズに移行した際に本体を大幅に小型化したが、奥行きを小型化しすぎたためか、前面給紙カセットにA4/B5用紙をセットすると、完全に本体に収納できなくなった。PIXUS TS8430でも45mm飛び出してしまうため、この場合の奥行きは364mmとなる。前面給紙カセットは普通紙専用である事を考えると、A4かB5用紙をセットするユーザーが大半と考えられ、カセットが飛び出した状態が実質的な標準形態となる。そのため、奥行きが364mmの状態で使うことになる上にデザイン面でスマートさに欠けるという問題があった。PIXUS TS8530では、カセット部だけで無く、その左右の部分も同じ奥行きとなるデザインに変更された。とはいえカセット小型化する事はできないので、逆に左右も同じ位置まで飛び出すように変更したのである。そのため、本体の下部が液晶や操作パネルより前に飛び出すデザインになっている。しかし、これでカセット「だけ」が飛び出しているのではなく、本体の横幅いっぱいまでツライチとなった他、飛び出し部分も曲面でデザインすることで、従来より飛び出している事が気にならなくなりスッキリしたデザインとなった。奥行き自体もPIXUS TS8430でカセットを伸ばした場合の364mmと比べると、PIXUS TS8530では345mmとなっており、実質やや小型化したと言えるだろう。本体カラーは、PIXUS TS8430と同じく、ブラック、ホワイト、レッドの3色から選べる。



 PIXUS TS8530は印刷速度やスマートフォンとのダイレクト接続の支援機能、本体デザインなど、細かい点ではあるが様々な改良が行われている。液晶内の表示を「かんたんモード」に切り替えられるのも、これまでに無い試みで、高機能より操作が簡単な機種を望むユーザーには、オススメと言えるだろう。ただ、本体価格と印刷コストが上がってしまったのはマイナス点である。本体価格は、昨今の状況を考えれば仕方が無いとも思えるが、インクカートリッジを変更してまで印刷コストを上げたのは残念だ。また、その原因が印刷枚数が減ったためでは無く、インクカートリッジの価格が上がったためなので、インクカートリッジを購入するときの出費が多くなってしまうのも残念と言える。印刷コストが高くなったことが目立ってしまい、せっかくの細かな改良点がかすんでしまう。とはいえ、カートリッジ方式の平均からすれば、印刷コストは安い方であり、高機能でありながら「かんたんモード」を搭載する事で、様々な機能を使いたいユーザーと、操作が簡単な方が良いユーザーの両方に対応できている。そのため、PIXUS TS8530は、個人で使うというより、家族全員で使う場合にベストな機種と言えるだろう。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


PIXUS TS8530BK
(ブラック)
PIXUS TS8530WH
(ホワイト)
PIXUS TS8530RD
(レッド)