小ネタ集
2021年末時点のプリンターを徹底検証
新モデルと旧モデルを徹底比較
(2021年10月19日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧モデル・参考モデルからの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧モデル1・参考モデル1からの変更点となります

新モデル「PIXUS XK100」と参考モデル「PIXUS XK90」を徹底比較する

 PIXUS XK100はPIXUS XKシリーズの新モデルである。一見するとPIXUS XK90の後継モデルのようだが、実際には派生モデルであり、PIXUS XK90も併売される。また、数字は上となっているが、機能的には下位モデルとなっている点が複雑だ。PIXUS XKシリーズは初期のPIXUS XK70とPIXUS XK50以来、60、80、90を使ってしまっており、100にするしか無かったと思われる。PIXUS XK100はPIXUS XK90から機能を絞りつつ、低印刷コストを追求した製品になっている。どのような違いがあるのだろうか。また、機能を見ていると、とある機種を意識して作られたことが見て取れる。このあたりも検証してみよう。

プリント(画質・速度・コスト)
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
発売日 2021年10月14日 2020年8月27日
発売時の価格(税込) 40,150円 45,650円
インク 色数 5色 6色
インク構成 顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
フォトブルー
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番 N20/N21 N10XL/N11XL(大容量)
N10/N11(標準容量)
ノズル数 4096ノズル 6656ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
C/M:各1536ノズル
PB/Y/染料BK/顔料BK:各1024ノズル
最小インクドロップサイズ N/A N/A
最大解像度 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 16秒 10秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 10.0ipm 10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 15.0ipm 15.0ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 9.8円 大容量:13.7円
標準:16.3円
A4カラー文書 3.9円 大容量:6.3円
標準:7.8円
A4モノクロ文書 1.5円 大容量:2.2円
標準:2.8円
インク1本の印刷枚数
顔料ブラック 600ページ 大容量:600ページ
標準:400ページ
染料ブラック 6,546ページ 大容量:4,590ページ
標準:2,280ページ
カラー 802ページ 大容量:802ページ
標準:501ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料ブラック 825円 大容量:1,166円
標準:1,012円
染料カラー 627円 大容量:1,045円
標準:781円
カラー 627円 大容量:各1,045円
標準:各781円

 まずは、販売価格を見てみよう。PIXUS KX100の販売開始時の価格は40,150円で、PIXUS XK90の45,650円より5,500円安い価格設定だ。低印刷コストをうたう製品は本体価格が高い傾向があるが、本体価格はやや安く設定されている。
 それでは、印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。PIXUS XK90では6色インク構成だったが、PIXUS XK100では5色インク構成となった。顔料ブラックと、染料のブラック、シアン、マゼンダ、イエローの基本4色は共通だが、PIXUS XK90にあったフォトブルーインクが省略された形となる。下位モデルのPIXUS TS7530などと同じインク構成となる。フォトブルーが無いため、青系の表現力や粒状感ではやや劣るとは言え、基本4色の染料インクが揃っていれば、十分に綺麗な写真印刷が可能だ。低印刷コストがウリといえばタンク方式の機種もあるが、エプソンのエコタンクは6色や5色インクの機種がある一方、キャノンのギガタンク方式は4色モデルしか存在していない。4色の場合、顔料ブラックと染料カラーとなり、染料ブラックが省かれるため、写真や年賀状の通信面の印刷にブラックインクが使えずカラーを重ねて表現する。そのため完全な黒色にならなかったり、夜景や影の中の表現など暗部表現力が劣る傾向があり、写真印刷に向いているとは言いがたい。その点で染料ブラックを搭載するPIXUS XK100は、PIXUS XK90ほどこだわってはいないが、写真印刷が楽しめるインク構成になっていると言える。
 PIXUS XK100の印刷速度は、L判写真が16秒となっている。同じ5色構成の旧モデルPIXUS TS7430やPIXUS TS6330の18秒から若干の高速化が図られた一方、PIXUS XK90の10秒には劣る結果となる。文書の印刷速度は、カラー、モノクロ共に同等だ。
 インク構成は1色少なくなったが、PIXUS XK90のインクカートリッジからフォトブルーを除いた5色を使うわけでは無く、PIXUS XK100用に新たなインクカートリッジが用意された。PIXUS XK90ではN10番(顔料)とN11番(染料)だったが、PIXUS XK100ではN20番(顔料)とN21番(染料)となっている。またPIXUS XK90ではXLの付く大容量サイズと、何も付かない標準サイズがあるが、PIXUS XK100では1種類のみとなる。そして、このインクカートリッジがPIXUS XK90以上に低価格になっている。PIXUS XK90もインクカートリッジ方式の機種としては安い価格設定だったが、大容量の場合、顔料ブラックは1,166円、染料ブラックとカラーは各1,045円だった。標準サイズでも1,012円と781円である。それに対して、PIXUS XK100では、顔料ブラックが825円、染料ブラックとカラーが各627円となった。5色購入しても3,333円となり、インク購入時の負担も小さい。一方、印刷枚数はPIXUS XK90の大容量インクカートリッジと同ページ数になっており(ほとんど使わない染料ブラックを除く)、価格がなったからといって、印刷可能枚数が減ったわけでは無い。
 このインクカートリッジの価格差が印刷コストに影響しており、L判写真はPIXUS XK90の13.7円に対して、PIXUS XK100は9.8円に、カラー文書は6.3円から3.9円に、モノクロ文書は2.2円から1.5円に大きく下がっている。L判写真に関しては、写真用紙代約4.7円が含まれているため、これを除いたインク代では9.0円と5.1円になる。PIXUS XK100ではL判写真は43.3%、カラー文書は38.1%、モノクロ文書は31.8%の低価格化となる。印刷コストが安いPIXUS XK90と比べてこれだけ安くなっているのは驚きと言える。

プリント(給紙・排紙関連)
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 名刺〜A4 名刺〜A4
長尺用紙 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)
前面 【カセット】
普通紙のみ
レターサイズ非対応
(100枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動)
用紙幅チェック機能 ○(用紙セット時・用紙サイズ表示) ○(用紙セット時・用紙サイズ表示)

 続いて、PIXUS XK100の給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズから、普通紙のみの前面給紙カセット+背面給紙の組み合わせ、センサーによる用紙サイズ検知など全く同じだ。ただし、前面給紙カセットは、A4、B5、A5サイズは両機種とも対応しているが、PIXUS XK90で対応していたレターサイズにはPIXUS XK100は非対応となる。レターサイズは215.9×279.4mmで、A4サイズの210×297mmより横幅がわずかに大きく、これが非対応となっている。とはいえ、日本では馴染みの無いサイズであるため、それほど問題にはならないだろう。

プリント(付加機能)
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
自動両面印刷
(インクジェット光沢郵便ハガキ非対応)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 N/A N/A
A4モノクロ文書 N/A N/A
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 ○(ネイル印刷対応) ○(ネイル印刷対応)
写真補正機能 ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ ○/○ ○/○
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてPIXUS XK100のその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷はPIXUS KX100もPIXUS XK90も対応しているが、PIXUS XK100はインクジェット光沢郵便ハガキのみ非対応という点で差がある。下位モデルやビジネスモデルを中心に、自動両面印刷は普通紙のみでハガキには非対応という機種は存在しているか、PIXUS XK100は、郵便ハガキと、インクジェット郵便ハガキ、キャノン純正ハガキの自動両面印刷は可能で、光沢タイプだけ非対応というなんとも不思議な制限である。
 そのほかCD/DVD/Blu-rayレーベル印刷や自動電源オン・オフ機能などは同じだ。

スキャン
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
原稿サイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 2400dpi(2400×4800dpi) 2400dpi(2400×4800dpi)
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存

 PIXUS XK100のスキャナー機能を見てみよう。原稿サイズや解像度など、PIXUS XK90と全く同じとなっている。

ダイレクト印刷
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード SD SD
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG/TIFF JPEG/TIFF
色補正機能 トリミング
フチなし/フチあり
赤目補正
トリミング
フチなし/フチあり
赤目補正
手書き合成 ○(ディスクレーベル対応) ○(ディスクレーベル対応)
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応 ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷 カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー

 PIXUS XK100のダイレクト印刷機能を見てみよう。SDカードスロットを搭載し、トリミングやフチなし・フチあり切り替え、赤目補正が可能な他、手書き合成や、カレンダー印刷、定型フォーム印刷、組み込みパターン印刷が可能となっており、これはPIXUS XK90と同機能となる。

スマホ/クラウド対応
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 12.0以降
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova)
Wi-Fi接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS/Android)) ○(QRコード読み取り(iOS)/Bluetooth(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive)
(OneDriveはアプリからのみ)
メールしてプリント
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(ファイルアップロード・Windows 10・IEのみ) ○(ファイルアップロード・Windows 10・IEのみ)
スキャンしてリモートプリント

 PIXUS XK100のスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリは変更されておらず、クラウド関連の機能も同等だ。アプリの対応端末が、iOSがPIXUS XK90の12.0以降からPIXUS XK100では13.0以降に、Androidも4.4以降から5.0以降に変更されているが、これは製品発表時のアプリの対応バージョンであり、現在はPIXUS XK90でもiOS 13.0以降、Android 5.0以降となる。
 唯一異なるのが、Wi-Fiダイレクト(ダイレクト接続)時の設定支援機能だ。手動で設定も可能だが、最近はセキュリティーキーなどを入力せずに簡単に接続出来る機能が搭載されるのが流行りだ。PIXUS XK90は、iOS端末の場合は本体の液晶に表示されるQRコードを、標準カメラアプリで読み込めば設定が完了する。この方法はPIXUS XK100でも同様で、エプソンの各機種も同じ方式をとっている。一方、Android端末の場合は、PIXUS XK90ではBluetooth機能を使いあらかじめペアリングを行っておくことで、Wi-Fiダイレクト時に簡単に接続出来るようになっていたが、iOSと比べると、Bluetoothで一度接続する必要がある分二度手間であった。アプリ上でも設定項目が奥深くになっている事からも、メーカーでも大々的におすすめする機能では無かったようだ。そこで、PIXUS XK100では、iOSと同じQRコードを読み込む方式へと変更した。エプソンでは「アプリ内で機種名を選び、本体液晶で許可を選択する」という方式を採用しており、Androidでは異なる方法を取ったことになる。ただ、エプソンの方式ではアプリの対応するAndroid 5.0以降で使用できるが、PIXUS XK100のQRコードを読み込む方法はAndroid 10.0以降と、かなり新しい端末だけに限られる点では不便だ。とはいえ、徐々に端末の買い換えが進めば解決する問題とも言える。

コピー機能
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー ○(色あせ補正対応) ○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/○
その他のコピー機能 プレビュー
濃度調整
プレビュー
濃度調整
バラエティコピー 枠消しコピー
IDコピー
コピー予約
大判原稿コピー
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 PIXUS XK100のコピー機能を見てみよう。各種拡大縮小やレーベルコピー、写真焼き増し風コピー、2面/4面割付など、ほとんど同じとなっている。1点追加された機能として「大判原稿コピー」がある。A4より大きなサイズの原稿を左右2回に分けて読み取る事で、結合して1枚の用紙に印刷してくれる機能だ。2面割付でも似た事は可能だが、2面割付の場合は中央部にも余白が出来るが、「大判原稿コピー」では、できる限り余白を無くし、1度でスキャンしたようなできあがりに近づけてくれる。なお、印刷がA4までなので縮小されて印刷されるが、元の原稿がA3の場合はA4サイズに縮小、B4サイズの場合はB5サイズに縮小される。B4原稿をA4サイズに縮小することは出来ないのは残念だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新モデル
参考モデル
型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
製品画像
液晶ディスプレイ 2.7型
(90度角度調整可)
仕事/学習モード搭載
4.3型
(90度角度調整可)
操作パネル タッチパネル液晶+物理ボタン
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint使用)
Windows 10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.12.6〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高) 372×345×142mm 373×319×141mm
(前面給紙カセット伸張時373×364×141mm)
重量 6.6kg 6.6kg
本体カラー シルバーメタリック ダークメタリックシルバー

 最後にPIXUS XK100の操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。PIXUS XK100の液晶のサイズは2.7型となっており、PIXUS XK90の4.3インチからかなり小型化された。タッチパネル液晶となっている点は同じだが、操作性はやや落ちる事になる。ただし、液晶の小ささを補うため、一部よく使いボタンが物理ボタンで液晶外に用意されている点は重要だ。ちなみに、この操作パネルは今年消えたPIXUS TS6330の操作パネルとほぼ同等だ(こちらは液晶が3.0型だが)。液晶の左に「ホーム」と「戻る」ボタン、液晶右に「モノクロスタート」と「カラースタート」、「ストップ」ボタンが配置される。

型番 PIXUS XK100 PIXUS XK90
コピー画面
ダイレクト印刷画面

 ここで、PIXUS XK100とPIXUS XK90のコピー時の表示とダイレクト印刷時の表示を、実物とサイズ比率がほぼ同じになるように並べてみた(マニュアルに掲載された画面表示と本体液晶部写真を合成)。すると、PIXUS XK90では、一部の画面を除いて、液晶左に「ホーム」と「戻る」ボタン、液晶右に各種「スタート」ボタンや「ストップ」ボタンが表示され、実際にコピー設定や写真の表示などに使われているのは中央部だけだ。一方、PIXUS XK100では、液晶内の左右のボタン表示が無い上に、上下の余白も削っているため、左右のボタンを除いた部分の表示サイズは、PIXUS XK100とPIXUS XK90では15%ほどしか小さくなっていない。液晶内での操作性は、液晶サイズの差から受ける印象ほど、差は無いと言える。ただ、液晶外に物理ボタンを用意すれば全く同じかと言えば、いくつかの点でデメリットがある。まず、PIXUS XK90では液晶内の操作だけで全ての操作が終わるが、PIXUS XK100では、最後は液晶外のボタンに目を向けなければならず、やや分かりにくくなる。また暗い場所では、バックライトのある液晶内に、スタートボタン等も用意される方が分かりやすい。また、ダイレクト印刷画面を見ると分かるように、PIXUS XK90では、使わない「モノクロスタート」と「ストップ」ボタンが表示されておらず、使用できるボタンだけを表示するという点で分かりやすいといえる。また電源オフ時に、電源ボタン以外無いPIXUS XK90と比べると、見た目のスッキリさでは劣る事になる。
 ただし新モデルだけに改良された部分もある。まずコピー時だが、通常はホーム画面からコピーを選んでスタートする事になるが、PIXUS XK100では、ホーム画面で直接「カラースタート」又は「モノクロスタート」を押すだけでも、コピーが行われるようになった。これはスタートボタンが物理ボタンになった事を逆手に取ったもので、コピーがより手軽に行える。もう一つ、液晶の表示内容を「仕事/学習」モードに切り替える事が出来る。切り替えると、ホーム画面には「コピー」「書類を送る」「クラウドプリント」「定型フォーム」の4つがタイル上に並ぶだけとなる。ちなみに「書類を送る」は、書類をスキャンして、メール添付したり、パソコンやクラウドに保存が出来る。仕事や学習でよく使うと思われる機能だけに絞って、分かりやすく、また素早くアクセスできるようになる。今までに無い試みと言える。ただ、使う機能は人によって異なると思われるので、表示される機能をカスタマイズできると、より便利だったかもしれない。
 対応OSには若干の違いがあり、MacOSが10.12.6以降から10.13.6以降に変更となった。Windowsに変更は無く、マイクロソフトのサポートの終了したWindows 7も引き続き対応する。
 本体サイズはPIXUS XK100では372×345×142mmで、PIXUS XK90の373×319×141mmと比べて、幅と奥行きは変わらないものの、奥行きが大きくなったように見える。しかし、これは前面給紙カセット部のデザイン変更によるものだ。キャノンでは2016年末にPIXUS MGシリーズからPIXUS TSシリーズに移行した際に本体を大幅に小型化したが、奥行きを小型化しすぎたためか、前面給紙カセットにA4/B5用紙をセットすると、完全に本体に収納できなくなった。PIXUS XK90でも45mm飛び出してしまうため、この場合の奥行きは364mmとなる。前面給紙カセットは普通紙専用である事を考えると、A4かB5用紙をセットするユーザーが大半と考えられ、カセットが飛び出した状態が実質的な標準形態となる。そのため、奥行きが364mmの状態で使うことになる上に、デザイン面でスマートさに欠けるという問題があった。PIXUS XK100では、カセット部だけで無く、その左右の部分も同じ奥行きとなるデザインに変更された。とはいえカセット小型化する事はできないので、逆に左右も同じ位置まで飛び出すように変更したのである。そのため、本体の下部が液晶や操作パネルより前に飛び出すデザインになっている。しかし、これでカセット「だけ」が飛び出しているのではなく、本体の横幅いっぱいまでツライチとなった他、飛び出し部分も曲面でデザインすることで、従来より飛び出している事が気にならなくなりスッキリしたデザインとなった。奥行き自体もPIXUS XK90でカセットを伸ばした場合の364mmと比べると、PIXUS XK100では345mmとなっており、実質やや小型化したと言えるだろう。
 本体カラーは、PIXUS XK90のダークメタリックシルバーから、PIXUS XK100ではシルバーメタリックとなり、明るい色合いで、より金属的な色合いとなった。実はPIUXS XK90の前モデルであるPIXUS XK60がシルバーメタリックであったため、2世代前に戻ったとも言える。
 さて、このインク構成や印刷コスト、その他の機能を見ていると、ある機種に似ていることが分かる。それが、エプソンのエコタンク搭載モデルEW-M752Tである。こちらは印刷枚数1,000枚程度の小型のエコタンクを搭載することで、本体価格と機能と印刷コストのバランスを取った製品だ。そこで簡単に比較してみよう。

型番 PIXUS XK100 EW-M752T
製品画像
実売価格(メーカーWeb/税込) 40,150円 43,978円
インク 色数 5色
(顔料ブラック+染料4色)
5色
(顔料ブラック+染料4色)
インク方式 インクカートリッジ エコタンク
印刷速度 L判縁なし写真 16秒 25秒
A4普通紙カラー 10.0ipm 9.0ipm
A4普通紙モノクロ 15.0ipm 12.0ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 9.8円 9.5円
A4カラー文書 3.9円 3.0円
A4モノクロ文書 1.5円 1.3円
インク1セットの価格(税込)
3,333円 3,300円
給紙機構
前面給紙カセット
(普通紙のみ)
+背面給紙トレイ
前面給紙カセット
+背面手差し給紙
自動両面印刷

(インクジェット光沢郵便ハガキ非対応)

(ファイン紙対応)
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
○(ネイル印刷対応)
スキャナ
2400dpi 1200dpi
ダイレクトプリント SD USBメモリー
メモリカードリーダー
コピー 拡大縮小対応 拡大縮小対応
液晶ディスプレイ 2.7型 4.3型
操作パネル タッチパネル液晶+物理ボタン タッチパネル液晶
インターフェイス USB+無線LAN USB+無線LAN
外形寸法(横×奥×高) 372×345×142mm 390×339×166mm

 これを見ると、インク1セットの価格はほぼ同等で、印刷コストにもさほど差が無い。インク構成は同じで、本体価格も近く、各種機能もそれぞれ若干の違いはあるが、前面給紙対応という点や自動両面印刷とメモリーカードからのダイレクト印刷にも対応している点では同じだ。PIXUS XK100はレーベル印刷に対応している一方、液晶サイズは小さいという差はあるが、タッチパネル操作で、無線LANに対応する点も同じだ。PIXUS XK100はインクカートリッジ方式、EW-M752Tはエコタンク方式という大きな違いはあるが、その割には似た部分が多い事が分かる。キャノンもギガタンク搭載モデルに力を入れている事から、EW-M752Tと似たギガタンク搭載モデルを出せば良かったという考え方もあるだろう。しかし、キャノンはギガタンク搭載モデルでは4色モデルしか存在しておらず、ビジネス向けの機種を除くと、モノクロの文字液晶に機種しか無いため、ダイレクト印刷機能を搭載できないという事情がある。また、ギガタンク搭載モデルはEW-M752Tより大型のタンクを搭載し、さらに印刷コストは安いが、インク1セットでの印刷可能枚数が6,000枚以上と非常に多くなる。そのため、ギガタンク搭載モデルは「文書」の「大量印刷」向けの機種しか無い事になる。「手軽」な「写真印刷」向けとなると、全く新しい機種を用意する必要がある。そこで、とりあえずカートリッジ方式で対抗機種を出した様に見える。インクカートリッジの価格も、EW-M752Tに近い印刷コストになるように設定されたようにも思える。PIXUS XK100とEW-M752Tの詳しい比較は、「同系統・同価格帯の製品の比較」の「A4複合機(4万円以上)」を見て頂きたい。



 PIXUS XKシリーズは、これまでフォトブルーインクを含む6色インクと(カートリッジ方式としては)低印刷コストという点を売りにしている点で共通であった。これはエプソンのカラリオ V-editionと呼ばれるEP-30VAなどに対抗した製品であった。しかしエプソンでは昨年、EP-30VAとそのA3対応のEP-10VAを販売終了とし、エコタンク搭載モデルに統一してしまった。そうなるとPIXUS XKシリーズは、タンク方式と比べると印刷コストは高く、かといって同じ6色の下位モデルより本体価格は高く、画質差はそう大きくないという、やや中途半端な位置づけとなってしまった。そこでPIXUS XK100では新たなライバルとして、エコタンク搭載モデルのEW-M752Tを選んだように思える。結果、写真画質はやや劣るものの、低印刷コストをより追求した製品が誕生した。
 実際、写真の印刷は染料4色で行うとは言え、十分綺麗で、スナップ写真の印刷程度なら問題ないレベルだ。印刷速度も高速で、自動両面印刷やディスクレーベル印刷機能も搭載している。SDカードからのダイレクト印刷も行え、コピーやスマホ・クラウド関係の機能も遜色ない。液晶は小型化したが、前述のように、物理ボタンと併用することで操作性は思ったよりも損なわれていない。これを見ると、低印刷コスト以外は突出した部分は無いが、様々な機能がそつなく搭載されているといえる。クセが無く、万人に勧めやすい製品だ。写真も文書印刷もコピーも行いたいというユーザーで、印刷コストも重視するが、タンク方式を選ぶほど印刷枚数が多くないというユーザーにはぴったりな製品と言えるだろう。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


PIXUS XK100