小ネタ集
2022年春時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2022年5月16日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧モデル・参考モデルからの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧モデル1・参考モデル1からの変更点となります

新モデル「PIXUS TS3530」と参考モデル「PIXUS TS3330」を徹底比較する

 PIXUS TS3530はPIXUS TS3330の後継モデルである。とはいえ最下位モデルだけに、コストの関係や上位モデルとの差別化のために、機能が少ないため、新機種の変化も少なくなる。果たしてどのような点が変わったのか、細かく見ていこう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像

発売日 2022年3月中旬 2020年4月9日
発売時の価格(税込) 8,800円 6,600円
インク 色数 4色 4色
インク構成 顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 黒独立、カラー3色一体 黒独立、カラー3色一体
顔料/染料系 染料(カラー)/顔料(黒) 染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番 365XL/366XL(大容量)
365/366(標準容量)
345XL/346XL(大容量)
345/346(標準容量)
ノズル数 1280ノズル 1280ノズル
各色320ノズル 各色320ノズル
最小インクドロップサイズ N/A N/A
最大解像度 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 52秒 52秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 4.0ipm 4.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 7.7ipm 7.7ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 大容量:27.0円
標準:33.4円
大容量:23.9円→24.8円
標準:31.0円→32.3円
A4カラー文書 大容量:17.6円
標準24.5円
大容量:15.5円→16.2円
標準22.2円→23.4円
A4モノクロ文書 N/A N/A
インク1本の印刷枚数
顔料ブラック 大容量:400ページ
標準:180ページ
大容量:400ページ
標準:180ページ
カラー 大容量:300ページ
標準:180ページ
大容量:300ページ
標準:180ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料カラー 大容量:3,080円
標準容量:2,090円
大容量:2,772円→2,910円
標準容量:1,881円→1,980
カラー 大容量:2,970円
標準容量:2,310円
大容量:2,552円→2,670円
標準容量:2,112円→2,220円

 まずは、販売価格を見てみよう。PIXUS TS3530の販売開始時の価格は8,800円で、PIXUS TS3330の6,600円より2,200円高い価格設定だ。新型コロナウイルスによる半導体不足などの影響により、プリンターの価格は軒並み上がっているが、元々の価格が安い機種だけに2,200円の値上げは大きい。実に33%の値上げとなる。
 それでは、PIXUS TS3530の印刷画質や速度、印刷コストなど基本的なプリント機能を見てみよう。PIXUS TS3530は4色インク構成で、ブラックが顔料インク、カラーが染料インクである点はPIXUS TS3330と同等で、画質に変化はない。ノズル数も同等で、印刷速度も変化はない。ブラックインクカートリッジは独立しているが、カラー3色のインクカートリッジは一体型となっており、一色でも無くなると交換が必要である点も同等だが、インクカートリッジは変更となっている。PIXUS TS3330では345番(顔料ブラック)と346番(カラー)のインクを使用していたが、PIXUS TS3530では、それぞれ365番と366番に変更となった。従来同様、後ろにXLが付く大容量と、何も付かない標準容量がラインナップされている。それぞれ印刷可能枚数は変化がない。ただ、インクカートリッジの価格は値上げとなっている。345/346番も2022年4月より価格が改定されて値上げされたが、それよりも高い価格設定だ。大容量のブラックの場合345番は2,772円から2,910円に値上げされたが、365番は3,080円、標準容量のブラックは345番は1,881円から1,980円に値上げされたが、365番は2,090円となる。同じく、大容量のカラーの場合346番は2,552円から2,670円に値上げされたが、366番は2,970円、標準容量のブラックは346番は2,112円から2,220円に値上げされたが、366番は2,310円となる。これが印刷コストに影響しており、L版写真の場合、PIXUS TS3330は大容量で23.9円から24.8円になったが、PIXUS TS3530は27.0円とさらに高くなる。カラー文書もPIXUS TS3330は15.5円から16.2になったが、PIXUS TS3530は17.6円となる。もともと印刷コストの高い機種ではあったが、さらに印刷コストが高くなった事になる。ちなみに、PIXUS TS3330より印刷コストが高かった上位モデルPIXUS TS5430は、L版写真が29.0円、カラー文書が19.5円なので、PIXUS TS3530もこれよりは安い設定となっている。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4
(A4のフチなし印刷非対応)
L判〜A4
(A4のフチなし印刷非対応)
長尺用紙 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(60枚/20枚/20枚)

(60枚/20枚/20枚)
前面
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(用紙セット連動・サイズのみ) ○(用紙セット連動・サイズのみ)
用紙幅チェック機能

 続いて、PIXUS TS3530の給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズから、給紙枚数など全て同じだ。フチなし印刷に対応するのはハガキ、L判、2L判、KG、スクエア(127×127mm)のみで、A4やB5サイズなどのフチなし印刷には対応しないのも同様だ。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像
自動両面印刷
自動両面
印刷速度
A4カラー文書
A4モノクロ文書
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ ○/○ ○/○
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてPIXUS TS3530のその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷やディスクレーベル印刷には非対応である点や、自動電源オン・オフ機能を搭載する点などPIXUS TS3330と同等だ。

スキャン
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像
原稿サイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 600dpi(600×1200dpi) 600dpi(600×1200dpi)
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存

 PIXUS TS3530のスキャナー機能を見てみよう。原稿サイズや解像度など、PIXUS TS3330と全く同じとなっている。

ダイレクト印刷
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式
色補正機能
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応 ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷

 PIXUS TS3530のダイレクト印刷機能を見てみよう。とはいえPIXUS TS3530はメモリーカードからのダイレクト印刷には非対応である点でPIXUS TS3330と同等だ。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 12.0以降
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント) ○(Alexa/Googleアシスタント)
Wi-Fi接続支援機能
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/− ○/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
メールしてプリント
LINEからプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 PIXUS TS3530のスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリは変更されておらず、クラウド関連の機能も同等だ。アプリの対応端末が、iOSがPIXUS TS3330の12.0以降からPIXUS TS3530では13.0以降に、Androidも4.4以降から5.0以降に変更されているが、これは製品発表時のアプリの対応バージョンであり、現在はPIXUS TS3330でもiOS 13.0以降、Android 5.0以降となる。

コピー機能
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像
等倍コピー ○(A4/B5/A5普通紙のみ・フチありのみ) ○(A4/B5/A5普通紙のみ・フチありのみ)
拡大縮小 倍率指定
オートフィット ○(L判/2L判/スクエア写真用紙・ハガキのみ・フチなしのみ) ○(L判/2L判/スクエア写真用紙・ハガキのみ・フチなしのみ)
定型変倍
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) −/− −/−
その他のコピー機能
バラエティコピー

 PIXUS TS3530のコピー機能を見てみよう。PIXUS TS3330から変化は無く、A4/B5/A5普通紙はフチありの等倍コピーのみ、L判、2L判、スクエア、ハガキはフチなしで自動拡大縮小のみという制限もそのままだ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
製品画像
液晶ディスプレイ 1.5型モノクロセグメント 1.5型モノクロセグメント
操作パネル 物理ボタン式 物理ボタン式
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト印刷対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト印刷対応)
有線LAN
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.12.6〜
(AirPrint使用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.11.6〜(AirPrint利用)
外形寸法(横×奥×高) 435×316×145mm 435×316×145mm
重量 4.0kg 3.9kg
本体カラー ブラック/ホワイト ブラック/ホワイト

 最後にPIXUS TS3530の操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。2桁の数字の他は、アイコンと用紙名の表示・非表示の切り替えしか無い、1.5型の液晶はそのままで、操作性に変更は無い。インターフェースも同等だ。対応OSには若干の違いがあり、MacOSが10.11.6以降から10.12.6以降に変更となった。一方で昨年末以降に発売される機種は10.13.6以降となっているため、PIXUS TS3330を引き継ぐわけでもなく、最新機種に合わせるわけでも無く、中途半端な対応OSの変更だ。Windowsに変更は無く、マイクロソフトのサポートの終了したWindows 7も引き続き対応する。
 本体サイズに変更は無く、筐体デザインも同等だ。本体カラーもブラックとホワイトの2色展開なのはPIXUS TS3330と同等だが、ホワイトの色が変更となった。PIXUS TS3330では全体にホワイト一色だったが、PIXUS TS3530では上面がグレーとなった。またブラックも含めて、スキャナーカバーと給紙トレイの部分に施されていたドットデザインが、大きめのドットとなり、操作パネル部まで同じ表面仕上げとなっている。
 さて、違いがインクカートリッジの変更とデザイン変更くらいしかないので、より詳しく、駆動音と消費電力も比較してみよう。

型番 PIXUS TS3530 PIXUS TS3330
駆動音 48.0dB 53.5dB
消費電力 プリント時 8W(コピー・Wi-Fi接続) 11W(コピー・Wi-Fi接続)
待機時 0.8W(Wi-Fi接続) 1.7W(Wi-Fi接続)

 これを見るとはじめて明確な違いが出ている。駆動音に関しては測定方法は同等であることが確認されているので、実際に動作音が小さくなり、消費電力も下がっている事になる。紙送り又はヘッド駆動のモーターが変更になった事が考えられるが、待機時の消費電力も変わっていることから、半導体の変更等もあるかもしれない。ユーザーにはあまり関係のない変更点だが、駆動音、消費電力共に改善しているのは悪いことではない。



 PIXUS TS3530は基本的にはPIXUS TS3330から変わっていない。駆動音と消費電力が変更になっているが、新型コロナウイルスの影響により何らかの半導体を変更せざるを得ず、その関係で本体価格は上がってしまったが、駆動音と消費電力は下がったという事かもしれない。とはいえ、大きな変更点が、インクカートリッジの変更で、しかも印刷コストが上がってしまったのは残念と言える。本体価格も上がり、印刷コストも上がったのでは、残念ながら魅力が減ってしまったと言える。またライバルのエプソンEW-052Aの8,778円に対して価格的なメリットが無くなってしまった(逆に言うと、ライバル製品に合わせた価格設定になったとも言える)。また上位モデルPIXUS TS5430と機能差が大きいわりに価格差が5,000円となりやや微妙な製品となってしまった。低価格なプリンターを希望するユーザーには引き続き良い選択肢とはなるが、残念な変更点が目立つ事になってしまった。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


PIXUS TS3530BK
(ブラック)
PIXUS TS3530WH
(ホワイト)