小ネタ集
2022年春時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2022年5月16日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧モデル・参考モデルからの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧モデル1・参考モデル1からの変更点となります

新モデル「TR703a」と参考モデル「TR703」を徹底比較する

 TR703aはTR703の後継機種ではあるが、TR713のような通常の後継機種にあるような十の位が上がるという事が無く、後ろに「a」が付いただけとなる。また、TR703は2021年末頃に一度ラインナップから消え、半年ほどでTR703aとして復活した事になる。ただ、大々的なニュースリリースなども無く、ひっそりとラインナップに戻ってきたような形だ。実際、オンラインマニュアルなどもTR703aとTR703で共通の物となっており、両者に違いは無いように思える。細かく見ていく事で、何か小さな違いがあるのか、見てみよう。

プリント(画質・速度・コスト)
新機種
旧機種
型番 TR703a TR703
製品画像
発売日 2022年3月10日 2019年4月18日
発売時の価格(税込) 18,150円 18,150円
インク 色数 5色 5色
インク構成 顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番 380XL/381XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
380XL/381XL(大容量)
380/381(標準容量)
380s/381s(小容量)
ノズル数 4096ノズル 4096ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
C/M/顔料BK:各1024ノズル
Y/染料BK:各512ノズル
最小インクドロップサイズ N/A(2pl?) N/A(2pl?)
最大解像度 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 18秒 18秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 10.0ipm 10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 15.0ipm 15.0ipm
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 大容量:19.1円→19.7円
標準:19.0円→19.6円
小容量:26.1円→27.0円
大容量:19.1円→N/A
標準:19.0円→N/A
小容量:26.1円→N/A
A4カラー文書 大容量:10.5円→11.0円
標準:10.5円→11.0円
小容量:15.6円→16.3円
大容量:10.5円→11.0円
標準:10.5円→11.0円
小容量:15.6円→N/A
A4モノクロ文書 大容量:3.3円→3.5円
標準:3.7円→3.9円
小容量:5.4円→5.6円
大容量:3.3円→3.5円
標準:3.7円→3.9円
小容量:5.4円→N/A
インク1本の印刷枚数
顔料ブラック 大容量:600ページ
標準:400ページ
小容量:200ページ
大容量:600ページ
標準:400ページ
小容量:200ページ
染料ブラック 大容量:6,360ページ
標準:3,180ページ
小容量:940ページ
大容量:6,360ページ
標準:3,180ページ
小容量:940ページ
カラー 大容量:801ページ
標準:500ページ
小容量:250ページ
大容量:801ページ
標準:500ページ
小容量:250ページ
インク1本の価格
(税込)
顔料カラー 大容量:1,793円→1,870円
標準:1,331円→1,390円
小容量:1,012円→1,060円
大容量:1,793円→1,870円
標準:1,331円→1,390円
小容量:1,012円→1,060円
染料ブラック 大容量:1,914円→2,000円
標準:1,133円→1,180円
小容量:803円→840円
大容量:1,914円→2,000円
標準:1,133円→1,180円
小容量:803円→840円
カラー 大容量:1,914円→2,000円
標準:1,133円→1,180円
小容量:803円→840円
大容量:1,914円→2,000円
標準:1,133円→1,180円
小容量:803円→840円

 TR703aは約3年ぶりの新機種となる。まずは、販売価格を見てみよう。販売開始時点での価格は18,150円で同等だ。家庭用の機種と異なり、発売から価格が下がっていく系統の製品では無いため、旧機種の価格を引き付いた事になる。その他、インク構成や採用インク、ノズル数や印刷速度などは全く同じだ、カタログなどを見ると、印刷コストが上がっているように見えるが、これは2022年4月1日より、インクカートリッジの価格が値上げされたためだ。TR703aの発売は、4月1日より前であるため、一旦従来の印刷コストで公開された後、修正という形になっている。一方TR703も値上げ後の印刷コストが公表されているので、両機種とも矢印の前が従来の印刷コスト、後が価格改定後の印刷コストとして併記している。大容量インクを使用した場合、L判写真で19.1円から19.7円に、カラー文書で10.5円から11.0円に、モノクロ文書で3.3円から3.5円に上がっている。ただ、これはTR703aと同等なので、印刷コストは変わらない事になる。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番 TR703a TR703
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 名刺〜A4 名刺〜A4
長尺用紙 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)
前面 【カセット】
普通紙のみ
(250枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(250枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納(前面)・給紙口カバー(背面)連動) ○(カセット収納(前面)・給紙口カバー(背面)連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、TR703aの給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズから、普通紙のみの前面給紙カセット+背面給紙の組み合わせ、それぞれの給紙枚数などTR703と全く同じだ。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番 TR703a TR703
製品画像
自動両面印刷 ○(インクジェット光沢郵便ハガキ非対応) ○(インクジェット光沢郵便ハガキ非対応)
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 3.2ipm 3.2ipm
A4モノクロ文書 3.3ipm 3.3ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ ○/○ ○/○
PictBridge対応 ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてTR703aのその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能は搭載し、ハガキの自動両面印刷にも対応するが、インクジェット光沢郵便ハガキ(いわゆる光沢紙タイプの年賀状など)には非対応である点や、ディスクレーベル印刷、自動電源オン・オフ機能対応など、完全にTR703と同等だ。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番 TR703a TR703
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 13.0以降
Android 5.0以降
iOS 11.0以降
Android 4.4以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova)
Wi-Fi接続支援機能 ○(Bluetooth(Android)) ○(Bluetooth(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/− ○/−
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon)
メールしてプリント
LINEからプリント
リモートプリント

 TR703aのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリは変更されておらず、クラウド関連の機能も同等だ。アプリの対応端末が、iOSがTR703の11.0以降からTR703aでは13.0以降に、Androidも4.4以降から5.0以降に変更されているが、これは製品発表時のアプリの対応バージョンであり、現在はTR703でもiOS 13.0以降、Android 5.0以降となる。また、最近の新機種は対応している、LINEからのプリント機能(PIXUSトークプリント)や、リモートプリント(PIXUSリモートプリント)にも引き続き非対応となる。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番 TR703a TR703
製品画像
液晶ディスプレイ 2行モノクロ 2行モノクロ
操作パネル 物理ボタン式 物理ボタン式
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト印刷対応)
IEEE802.11n/g/b
(ダイレクト印刷対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
MacOS 10.10.15〜(AirPrint利用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
MacOS 10.10.15〜(AirPrint利用)
耐久枚数 6万枚 6万枚
外形寸法(横×奥×高) 372×365×158mm 372×365×158mm
重量 5.4kg 5.4kg
本体カラー ブラック ブラック

 最後にTR703aの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。2行文字表示のモノクロ液晶でバックライトが無い点や、ボタン配置も同等で、操作性は変わらない。インタフェースや対応OS、本体サイズや重量も変化がない。本体カラーも同等で、型番表記を見なければ両者の区別が付かないほどだ。また、OSに関しては、新機種になると対応バージョンが上がることが多く、実際同時期に発売された機種では、MacOSの対応が10.13.6以降になっているが、TR703aでは10.10.15以降のままとなっている。TR703aとTR703の機能面での違いがなく、TR703用のドライバーがTR703a用にそのまま流用できたたためと思われる。とはいえ、ここまで一切違いが無いため、普段は比較しない項目も比較してみよう。

型番 TR703a TR703
駆動音 50.5dB 50.5dB
消費電力 プリント時 23W(USB接続) 23W(USB接続)
待機時 0.9W(USB接続) 0.9W(USB接続)

 スペック上は同等でも、パーツを変更した場合などに、駆動音や消費電力が変化する事もある。しかし、駆動音や消費電力も全く同等という結果となった。もちろん、型番が変更になっているために何らかの変更点はあるだろうが、少なくともユーザーのレベルで影響がある物はなさそうだ。



 TR703aは、TR703とユーザーレベルでは全く同等の製品である事が分かった。型番が変わった可能性を予想するなら、例えば新型コロナウィルスによって、一部のパーツ(半導体?)が手に入らなくなり、代替品へと変更となった事が考えられる。性能面では全く同等ではある物の、修理の場合には使用パーツが異なるのだから区別する必要があるという事かもしれない。とはいえ、価格も据え置きであるため、TR703を購入したいと考えていたユーザーは、何も気にせずTR703aを購入する事が出来る。強いて言うならビジネス向けと言うことで、リモートプリント機能の対応や、無線LANの強化など、最新モデルでは導入された機能を搭載して欲しかったところだが、それは、「a」による区別では無い、本当の後継機種の登場まで待つとしよう。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


TR703a