小ネタ集
2022年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2023年1月18日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります

新機種「DCP-J1800N」と参考機種「DCP-J926N」を徹底比較する

 DCP-J1800Nは新たに登場した新シリーズだ。「CUTFIT」という名称を付け、「自動カッティングプリンター」と位置づけている製品だ。とはいえ、ブラザーが販売しているカッティングマシーンのように、自由な形にカットできるわけでは無く、A4用紙を半分に切るだけとなる。用紙やインクを節約を目的としている。型番の数字が4桁の場合はファーストタンク方式だが、DCP-J1800Nは従来型カートリッジ方式で、DCP-J926Nをベースにカッターを搭載した製品だ。ただ、見た目からもカッター機能以外はDCP-J926Nと同等と思われがちだが、意外と様々な点が異なっている。細かく見ていこう。

プリント(画質)
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
発売日 2022年11月上旬 2021年10月中旬
発売時の価格(税込) 30,800円 24,200円
インク 色数 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存100年/耐光性50年)
染料(カラー)/顔料(黒)
(アルバム保存100年/耐光性50年)
インク型番 LC411 LC411
最小インクドロップサイズ 2pl 2pl
最大解像度 1200×6000dpi 1200×6000dpi
高画質化機能

 まずは、販売価格を見てみよう。DCP-J1800Nの販売開始時の価格は30,800円となる。ベースとなったDCP-J926Nが24,200円であるため、6,600円高いと言う事になる。オートカット機能にその価値があるのかが見物だ。
 それでは、まずはプリント画質を見てみよう。DCP-J1800Nの画質はベースとなるDCP-J926Nと使用するインクカートリッジも、最小インクドロップサイズも印刷解像度も全く同等だ。

プリント(印刷速度)
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
ノズル数 840ノズル 840ノズル
各色210ノズル 各色210ノズル
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 14秒 14秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 16.5ipm 16.5ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 17.0ipm 17.0ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー 6.5秒 6.5秒
A4普通紙モノクロ 6.0秒 6.0秒

 続いて、DCP-J1800Nの印刷速度を見てみよう。こちらもベースとなるDCP-J926Nと全く同じ速度となる。

プリント(印刷コスト)
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 23.1円 22.2円→23.1円
A4カラー文書 9.9円 9.4円→9.9円
A4モノクロ文書 3.0円 2.9円→3.0円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック 375ページ 375ページ
カラー 500ページ 500ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 1,133円 1,078円→1,133円
カラー 各1,133円 各1,078円→1,133円

 続いて印刷コストである。DCP-J1800NはベースとなるDCP-J926Nと同じインクカートリッジを使用していることから、印刷コストも全く同じだ、ちなみにDCP-J926Nでは、印刷コストとインクカートリッジの価格が矢印の前後で2つ書かれているが、これは今回インクカートリッジの価格が改定され、使用するLC411番も1色1,078円から1,133円へ値上げされ、それに伴い印刷コストも上がったためだ。DCP-J1800Nは値上げ後の発売であるため、値上げ後の価格しか書かれていない。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A4
自動カット(A4→A5)搭載
L判〜A4
長尺用紙 長さ297mmまで 長さ297mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
○手差し
(1枚/1枚/1枚)
(0.52mm厚紙対応)
前面 【カセット下段】A4〜A6/ハガキ
(100枚/40枚/20枚)
【カセット上段】
L判/ハガキ/ポストカードのみ
(−/20枚/20枚)
手動切り替え
【カセット下段】A4〜A6/ハガキ
(100枚/40枚/20枚)
【カセット上段】
L判/ハガキ/ポストカードのみ
(−/20枚/20枚)
手動切り替え
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット取り出し連動) ○(カセット取り出し連動)
用紙幅チェック機能

 続いて、DCP-J1800Nの給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズや、手動切り替えの前面給紙2段カセット+背面手差しという組み合わせは全く同じだ。ただし、DCP-J1800NにはA4を半分に切る自動カット機能が搭載されている。A4用紙をセットしておけば、普段はA4サイズにプリントしつつ、A5サイズへのプリントが必要だったり、用紙やインクを節約したい時には、用紙を入れ替えること無くA5サイズにプリントできる。仕組みは簡単で、A4用紙の半分に印刷した時点でプリントが止まり、カッターでカット、印刷した半分はそのまま排紙され、残りの半分に印刷が行われる。カットは1〜2秒で行われるため、印刷が止まっているのは一瞬と言える。自動両面印刷と組み合わせる事も可能だ。

プリント(付加機能)
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙 普通紙 普通紙
はがき
対応サイズ A4/B5/A5/レター A4/B5/A5/レター/はがき
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 5.5ipm 5.5ipm
A4モノクロ文書 5.5ipm 5.5ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
特定インク切れ時印刷 ○(クロだけ印刷・最大30日) ○(クロだけ印刷・最大30日)
自動電源オン/オフ −/○
(USB接続・単体使用時のみ)
−/○
(USB接続・単体使用時のみ)
廃インクタンク交換 −/− −/−
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてDCP-J1800Nのその他のプリント機能を比較してみよう。DCP-J1800Nも自動両面印刷機能は搭載している物の、DCP-J926Nは普通紙とハガキに対応するのに対して、DCP-J1800Nは普通紙のみの対応だ。ハガキの通信面と宛名面の自動両面印刷は出来ないことになる。また、カッターを内蔵するスペースの関係か、CD/DVD/Blu-rayのレーベル印刷機能は非対応となっている。

スキャン
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
原稿サイズ A4
(215.9×297mm)
A4
(215.9×297mm)
読み取り解像度 1200dpi(1200×2400dpi)
ADF使用時は1200×600dpi
1200dpi(1200×2400dpi)
ADF使用時は1200×600dpi
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
ADF 原稿セット可能枚数 20枚 20枚
原稿サイズ 148×148〜215.9×355.6mm 148×148〜215.9×355.6mm
両面読み取り
読み取り速度 カラー N/A N/A
モノクロ N/A N/A
スキャンデーターのメモリカード保存 ○(JPEG/PDF/TIFF) ○(JPEG/PDF/TIFF)

 DCP-J1800Nのスキャナー機能を見てみよう。原稿サイズや解像度、ADF搭載など、DCP-J926Nと全く同じとなっている。

ダイレクト印刷
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード SD(最大256GB)
USBメモリー ○(最大256GB) ○(最大256GB)
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG JPEG
最大画像解像度 N/A N/A
読込ファイル数上限 999ファイル 999ファイル
色補正機能 フチあり/フチなし
日付印刷
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
フチあり/フチなし
日付印刷
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷 インデックスプリント インデックスプリント

 DCP-J1800Nのダイレクト印刷機能を見てみよう。印刷時の明るさ調整やコントラスト調整、インデックスプリントといった印刷機能はDCP-J926Nと違いは無い。ただし、DCP-J926NはSDカードとUSBメモリーに対応しているのに対して、DCP-J1800NはUSBメモリーのみの対応で、SDカードスロットは非搭載となる。USBポートはメモリーカードリーダーにも非対応であるため、SDカードから印刷したい場合は、一度何らかの方法でUSBメモリーに移す必要がある。

スマホ/クラウド対応
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Brother Mobile Connect Brother Mobile Connect
AirPrint
対応端末 iOS 14.0以降
Android 5.0以降
【発売時】
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
【現行】
iOS 14.0以降
Android 5.0以降
スマートスピーカー対応
Wi-Fi接続支援機能 ○(NFC(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
SNS
写真共有サイト
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
メールしてプリント ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文) ○(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文)
LINEからプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 DCP-J1800Nのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリや、スマートフォンからの写真・文書印刷やスキャン、クラウド対応、Eメールプリント機能などはDCP-J926Nと同等だ。アプリの対応端末が一部変更されているが、これはDCP-J926Nの製品発表時のアプリの対応バージョンであり、現在はDCP-J926NでもiOS 14.0以降、Android 5.0以降となる。ただし、DCP-J1800Nでは、DCP-J926NにあるNFCが非対応となった。Wi-Fiダイレクト接続の際に、セキュリティーキーなどの入力無しに接続出来る機能だったが非搭載となった。ただし、NFC対応のAndroidでしか使用できなかったことに加え、最近ではアプリやスマートフォンのOSの機能も向上し比較的簡単に接続出来るようになっているため、大きな差では無いだろう。

コピー機能
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
フチなしコピー
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/○
その他のコピー機能 濃度調整
地色除去コピー
傾き補正
濃度調整
地色除去コピー
傾き補正
バラエティコピー 2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)
カットコピー
2in1IDカードコピー
ブックコピー
透かしコピー
ソートコピー
ポスターコピー(3×3/2×2/1×2)

 DCP-J1800Nのコピー機能を見てみよう。各種拡大縮小や2面・4面割付、各種色調整や、バラエティーコピー機能はDCP-J926Nとほぼ同等だ。ただし、オートカット機能を搭載したため、「カットコピー」が追加されている。コピー機能の中のメニューにあるのでは無く、ホーム画面に「コピー」とは別に「カットコピー」という項目が独立して存在している。A4原稿2枚をA5サイズに縮小コピーし、カットする他、両面コピーや2in1 IDコピー時も使用できる。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
参考機種
型番 DCP-J1800N DCP-J926N
製品画像
液晶ディスプレイ 2.7型
(角度調整可)
2.7型
(角度調整可)
操作パネル タッチパネル液晶+物理ボタン
(度角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(度角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.15.x〜(AirPrint使用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.14.6〜(AirPrint使用)
耐久枚数 N/A N/A
外形寸法(横×奥×高) 400×343×172mm 400×341×172mm
レーベル印刷時は後方に10cm以上のスペースが必要
重量 8.3kg 8.4kg
本体カラー ホワイト ホワイト
ブラック

 最後にDCP-J1800Nの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。DCP-J1800Nの操作パネルはDCP-J1926Nと同等で、液晶内のタッチパネルでの操作方法も変化していない。インターフェースも同等だ。対応OSに関しては、Windowsは変わっておらず、Windows 11/10/8.1/7 SP1以降の対応となる。MacOSは、DCP-J926Nの10.14.6以降から、DCP-J1800Nでは10.15.x以降に若干変更されている。本体デザインはCUTFITロゴ以外に見分けが付かないほど同じだが、カラーはホワイトのみとなる。



 DCP-J1800Nはオートカット機能を搭載するというこれまでに無い製品だ。A4とA5用紙を使い分けているユーザーにとっては便利な機能と言える。入れ替えの手間が省けるだけで無く、A5用紙を用意する必要が無いためだ。ただし、そのために6,600円も高くなるならば、入れ替えの手間を掛けても良いと考える人が多いように感じる。また、カッターのスペース的にレーベル印刷が非対応になったのは理解できるが、自動両面印刷機能がハガキ非対応となったのは不思議だ。家庭用としてはこれは残念と言える。また、SDカード非対応も、コストダウンを図り少しでもDCP-J926Nとの価格差を縮めるためと言えるが、下位機種の様にSDカードスロットを残し、USBポートを非搭載とする方が家庭向けと言える。逆に言うと、ブラザーではビジネス向けの機種ではSDカード非対応、USBメモリー対応とする事が多いため、ビジネス向けに位置づけていると考えられる。確かに、個人利用でA5用紙を使うことは少ないと思われ、いくらインクと用紙の節約をうたっても、本体価格が高いのだから、本末転倒と言える。その点で、各種商店や、薬局、病院などでは、例えば予約票や診療明細、処方箋など、お客さんに渡す用紙は大きすぎても邪魔である事からA5サイズでというパターンもよく見かける。また、チラシなど枚数が多い場合も用紙とインク節約の効果が出るだろう。そういった場合に、コピーや文書印刷用のA4用紙と、お客さん用のA5用紙を入れ替えること無く1台で使用できる。オートカット機能を搭載したプリンターは、将来「こんなプリンターもあった」というキワモノ扱いされるのか、今後地位を気づいていくのかが見物だ。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


DCP-J1800N