小ネタ集
2022年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2023年7月18日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります

新機種「G1330」と旧機種「G1310」を徹底比較する

 G1330はG1310の後継機種だ。キャノンのギガタンク搭載モデルは、当初複合機のG3310とプリンターのG1310の2機種構成であった。その後、第2世代のG6030とG5030が登場するが、その際にG3310とG1310は価格を下げ、下位機種として引き続きラインナップに残った。その後、複合機の下位機種はG3360という新機種が登場したが、プリンターの下位機種はG1310のままであった。今回、複合機の下位機種が、再度新機種のG3370になるのに合わせて、G1310にもようやく新機種のG1330が登場した。実に約5年ぶりとなり、複合機での2世代分を一気に進むこととなったため、改良点は多岐に及ぶ。どのような点が変わったのか、細かく見ていこう。

プリント(画質)
新機種
旧機種
型番 G1330 G1310
製品画像
発売日 2022年12月8日 2018年2月22日
発売時の価格(税込) 26,950円 27,368円→21,868円
インク 色数 4色 4色
インク構成 ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック(顔料)
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 ギガタンク方式
(挿して注入・満タン自動ストップ・色ごとに形状変更・オフキャリッジ式)
ギガタンク方式
(オフキャリッジ式)
顔料/染料系 染料(カラー)/顔料(黒) 染料(カラー)/顔料(黒)
インク型番 31番 390番
最小インクドロップサイズ N/A N/A
最大解像度 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能

 まずは、販売価格を見てみよう。G1330の販売開始時の価格は26,950円である。G1310の販売開始時の価格は27,368円なので、これと比べるとやや下がっているが、実際は新機種のG5030が登場し、下位モデルという位置づけになった際は、価格が21,868円になっているので、これと比べると5,000円ほどの価格アップとなる。新型コロナウィルスによる世界的半導体不足や製造や輸送の問題もあって、製造コストが上がり価格が上がる事が多いため仕方が無いとも言えるだろう。ちなみに、上位モデルG5030は32,868円なので、5,918で差は意外と大きくない。
 それでは、G1330の印刷画質を見てみよう。インク構成や印刷解像度に変化は無く、画質面で大きな変化はない。ただし、同じギガタンク方式でも、第1世代から第2世代へと進化し、使い勝手が大きく改善している。第1世代の製品は、各色の注入口はキャップで塞がれており、これを外すと、ボトル先端よりも大きな注入口が開けられている。ここにボトル先端を挿し込み、ボトル側面を握って注入していく方式だった。その際。前面のインク残量窓を見て、満タンまで目視で確認する必要があった。あふれさせてしまう危険性もあるし、インク自体もボトルからこぼれやすく、扱いには注意が必要だった。それに対して、第2世代となったG1330では、各色の注入口のキャップを開けるのは同じだが、スイング式になっていて開けやすくなっている。そして注入口は穴では無く、注入用の管が出ており、ここにボトルを挿し込むと、注入が始まる形となる。そして満タンになると自動ストップするので、ボトルを挿し込んだらストップするまで待つだけだ。挿し込まなければボトルの先端からインクが出にくい形状となっているため、ボトルからインクをこぼす心配も無い。また満タンで自動ストップするので、あふれさせてしまう心配も無い。さらに、G1310では、穴が空いているだけであったため、間違った色のタンクに注入する危険性もあったが、G1330ではボトルの先端と注入口の周囲の形状が色ごとに変えてあるため、間違った色のタンクに挿し込んでしまう心配が無くなっている。また、この注入口の形状の工夫は、上位モデルG5030の方が発売日では古い製品になるため対応していない。つまり、補充方式に関しては、G1310に対して圧倒的に便利になっただけで無く、上位モデルのG5030よりも便利になる逆転現象が起こっている。

プリント(印刷速度)
新機種
旧機種
型番 G1330 G1310
製品画像
ノズル数 1792ノズル 1472ノズル
カラー:各384ノズル
黒:640ノズル
カラー:各384ノズル
黒:320ノズル
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 37秒 51秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 6.0ipm 5.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 11.0ipm 8.8ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー 14.0秒 19.0秒
A4普通紙モノクロ 9.0秒 13.0秒

 続いてG1330の印刷速度を見てみよう。カラーのノズル数は各色384ノズルで変化は無いが、ブラックのノズル数がG1310の320ノズルから、G1330では640ノズルに倍増している。そのため、モノクロ文書の印刷速度が8.8ipm(image per minute:1分あたりの印刷枚数)から11.0ipmに25%高速化したほか、カラー文書も5.0ipmから6.0ipmに20%高速化している。ビジネス向けの機種などと比べるとまだまだ低速だが、これまでよりも使いやすくなったことは確かだ。また、1枚目の印刷速度であるファーストプリント速度も、カラーが19.0秒から14.0秒に、モノクロが13.0秒から9.0秒にそれぞれ高速化している。1、2枚のプリントを頻繁に行うような使い方でも、使い勝手が向上している。

プリント(印刷コスト)
新機種
旧機種
型番 G1330 G1310
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 6.2円 N/A
A4カラー文書 1.0円 0.9円
A4モノクロ文書 0.4円 0.4円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック 6,000ページ 6,000ページ
カラー 7,700ページ 7,000ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 1,980円 1,892円
カラー 各1,540円 各1,232円
同梱インク インクボトル各色1本 インクボトル(カラー)各色1本
インクボトル(ブラック)2本

 G1330の印刷コストを見てみよう。使用するインクボトルが変更されたため、A4カラー文書がG1310の0.9円から、G1330では1.0円に0.1円高くなった。ただし、この差では1万枚印刷しても1,000円の差なので、大きな問題では無いだろう。A4モノクロ文書は0.4円で据え置きだ。ただ、インクカートリッジの価格を見てみると、実際には小数点第2位以下に違いがある可能性が高い。ブラックインクはボトル1本で共に6,000ページ印刷が可能だが、G1310では1,892円、G1330では1,980円となる。とはいえこちらもわずかな差だろう。カラーインクも、G1310では各7,000ページ印刷可能だったが、G1330では10%増えて7,700ページ印刷可能になっている。一方価格は各1,232円から各1,540円となり、25%高くなっているため、印刷可能枚数の増加量に対して価格の上昇率が高く、そのためカラー文書の印刷コストに影響したと言える。
 また、同梱のインクボトルは、お試し用では無く、インクタンクをフルにできる、別売りのインクボトルと同等のものとなっている。インク補充後に、インクの充填などで大量に消費するが、それでもかなりの量が残るとされており、同梱インクだけでかなりお得だ。しかし、G1310では、最初に補充する各色1本ずつに加えて、ブラックインクボトルがもう1本同梱していた。これがG1330では各色1本ずつのみとなった。つまり、1,980円相当のインクが同梱しなくなったため、この分も値上げと考えられる。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番 G1330 G1310
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 名刺〜A4 名刺〜A4
長尺用紙 長さ1,200mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)
前面
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(A4/LTR/4”×6”のみ)
用紙幅チェック機能

 続いて、G1330の給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズや、背面給紙である点、給紙枚数などに変化はない。ただし、長尺印刷では、G1310は長さ676mmまでだったが、G1330では1,200mm(1.2m)まで対応するようになった。長いPOPや垂れ幕、横断幕などを作成する際に重宝するだろう。
 また、G1330は用紙のサイズを登録し、この登録内容と、印刷時の用紙設定が異なっている場合、メッセージが表示され印刷が止まる機能が搭載された。設定ミスによる用紙とインクの無駄遣いをなくす工夫だが、上位モデルのような液晶ディスプレイがない(後述)ため、ボタンにより、LEDの点灯を切り替える方式となる。選択肢は、「A4」「LTR」「4”×6”」「*」となっており、用紙サイズのみで用紙種類の登録機能は無い。また、ハガキサイズなど選択肢にない場合は全て「*」を選ぶ事になる。また、A4サイズ(210×297mm)以外の選択肢として、LTRはレターサイズで、「4”×6”」は4×6インチサイズで、日本ではあまり馴染みが無い。レターサイズは216×279mmで、アメリカやカナダなどでA4サイズの代わりに使用されている。4×6インチは102×152mmで、同じくアメリカやカナダでの標準的な写真サイズだ。日本で写真と言えば89×127mmのL判で、102×152mmはKGサイズとして存在してはいるものの、L判と比べれば認知度は低い。つまり、日本ではA4用紙以外は「*」を選ぶ事になってしまうため、利便性は思いのほか低い。海外モデルと共通化のためだろうが、せめて国内向けにはA4の他は、ハガキやL判などにして欲しかったところだ。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番 G1330 G1310
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙
対応サイズ
自動両面
印刷速度
A4カラー文書
A4モノクロ文書
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能 ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ ○(印刷実行)/○(指定時間操作無し) ○(印刷実行)/○(指定時間操作無し)
廃インクタンク交換 ○(メンテナンスカートリッジ交換可)
フチなし吸収材エラー時の対応機能 ○(普通紙へのフチあり印刷のみ継続可能)

 続いてG1330のその他のプリント機能を比較してみよう。自動電源オンやオフ機能はG1310に引き続いて搭載される。G1330が新たに対応した便利な機能が、廃インクタンク(メンテナンスカートリッジ)の交換機能だ。廃インクタンクはクリーニングの際に排出されるインクを貯めておくタンクで、G1310など多くの機種では満タンになるとメッセージが表示され修理に出して交換するまで一切のプリントが止まってしまう。一方、G1330はインクカートリッジなどと一緒に交換用メンテナンスカートリッジが売られており(1,320円)、交換すれば印刷が再開できる。安くすむだけでなく、プリンターが手元に無い期間が無くなるため便利だ。印刷枚数が多い機種だけに対応したのは安心と言える。一方、フチなし吸収材が満タンになった際もG1330は便利になっている。フチなし吸収材は、プリントヘッドが左右に移動して印刷する位置にある吸収材だ。フチなし印刷時は、用紙サイズピッタリに印刷すると用紙の微妙なズレによってフチができてしまうため、少し大きめにプリントして、はみ出した部分はフチなし吸収材に吸収させる方法となっている。このフチなし吸収材が満タンになると、G1310など多くの機種はプリントが完全に止まってしまう。G1330ではフチなし吸収材にこれ以上インクが貯まらない「フチあり印刷」で普通紙に限ってだが、印刷を継続できる機能を搭載している。急ぎの印刷は行っておき、時間のある時に修理に出して交換することが可能だ。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番 G1330 G1310
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用
AirPrint
対応端末
スマートスピーカー対応
Wi-Fi接続支援機能
写真プリント
ドキュメントプリント
Webページプリント
スキャン
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 −/− −/−
オンラインストレージ
SNS
写真共有サイト
スキャン アプリ経由/本体 −/− −/−
スキャンしてオンラインストレージにアップロード
メールしてプリント
LINEからプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 G1330のスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。G1310もG1330もスマホやタブレットなどからのプリントやクラウドには完全に非対応という点で同等だ。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番 G1330 G1310
製品画像
液晶ディスプレイ
操作パネル
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN
有線LAN
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.14.6〜
(AirPrint利用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
耐久枚数 5万枚 N/A
外形寸法(横×奥×高) 416×330×146mm 445×330×135mm
重量 4.6kg 4.8kg
本体カラー ブラック ブラック

 最後にG1330の操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。操作パネルと言っても、プリンターであるため、複合機のようにコピー操作などが無く、液晶ディスプレイは搭載されていない。G1310の場合は上面の右奥に、電源ボタンとリセットボタン、エラーランプが搭載されていた。G1330は本体前面に操作パネルが搭載される。複合機と同じ形状としているため、液晶や多数のボタンを配置できそうな大きな面になっているが、実際には4つのボタンと、いくつかのLEDランプがあるだけだ。電源ボタンとストップボタン、エラーランプはG1310と同等だが、新たに「用紙選択ボタン」と、「A4」「LTR」「4”×6”」「*」の横にLEDランプがあり、選択された用紙が点灯するようになっている。
 G1330のインターフェースは、USB2.0のみで、無線LAN(Wi-Fi)などには対応しない点はG1310から変化がない。複数のパソコンや、スマホ、タブレットからの印刷に対応できない点で、不便なままと言う事になる。対応OSは、Windowsは11/10/8.1/7 SP1となり、G1310から変化はない。Windows 8に非対応であるため注意が必要だ。一方G1310ではMacOSには非対応だったが、G1330では対応となった。ただし専用ドライバーはキャノンからは提供されず、MacOS標準のプリント機能であるAirPrintを利用する事になる。一部の印刷設定、本体の動作設定ができない点でWindowsで利用する場合に比べて不便になっている。
 本体の耐久枚数は、G1330では5万枚である。家庭用のプリンターは一般的に1万〜1万5000枚程度と言われており、G1310は非公開であったため耐久性に不安があったが、高耐久である事が分かったのは、印刷枚数が多いと思われるプリンターだけにうれしいところだ。本体サイズは、G1310の445×330×135mmから、G1330では416×330×146mmとなり、横幅が29mm小さくなった一方、高さが11mm増えている。とはいえ、背面給紙である以上、高さはある程度確保する必要があるため、それよりも横幅が小さくなったことで設置スペースが小さくなったのは、便利と言える。



 ギガタンク方式のプリンターの下位機種は、初代の機種が継続販売されており、機能面は然る事ながら、インクの補充方式も第1世代方式が残るのはG1310のみであり、さすがに見劣りしていた。ようやく新機種が登場し、不満点は一気に解消した。インクの補充方式だけでなく、印刷速度もやや改善し、メンテナンスカートリッジの交換にも対応した。MacOSでも使用できるようになり、本体の耐久枚数も公表されたため、大量印刷でも安心だ。その一方で、USB接続のみと言う点は引き継がれ、そのためにスマホやタブレットからのプリントが行えないという、時代遅れ感のある形となった。ただ、上位機種G5030との機能差は小さく、USB接続のみとすることで、あえて差別化を図ったとも言える。パソコン1台からのプリントで、パソコンの横に置くのであれば、USB接続で問題ないため、そういった使い方をする一方で、印刷コストを抑えたいユーザーには最適な機種と言えるだろう。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


G1330