小ネタ集
2022年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2023年1月18日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります

新機種「HL-J7010CDW」と旧機種「HL-J6000CDW」を徹底比較する

 HL-J7010CDWはHL-J6000CDWの後継機種だ。見た目には大きな変化がないように見えるが、内部は大きく進化している。また操作パネルにも細かな変更点があるなど、4年ぶりの新製品だけに見どころが多いといえる。どういった所が変わったのか、細かく見ていこう。

プリント(画質)
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
発売日 2022年11月上旬 2018年11月
発売時の価格(税込) 66,000円 59,400円
インク 色数 4色 4色
インク構成 ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
ブラック
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 ファーストタンク方式
(各色独立インクカートリッジ+サブタンク方式(200枚分)
ファーストタンク方式
(各色独立インクカートリッジ+サブタンク方式(200枚分)
顔料/染料系 顔料 顔料
(マゼンダに一部染料が含まれる)
インク型番 LC417XL LC3139
最小インクドロップサイズ カラー:2.5pl
ブラック:4pl
1.5pl
最大解像度 1200×4800dpi 1200×4800dpi
高画質化機能 自動ノズルチェック

 まずは、販売価格を見てみよう。HL-J7010CDWの販売開始時の価格は66,000円で、HL-J6000CDWの59,400円から6,600円の値上げだ。新型コロナウィルスによる世界的半導体不足や製造や輸送の問題もあって、製造コストが上がり、新製品は価格が上がる事が多いため、仕方の無いところだ。ただ、6,600円というと約11.1%の値上げであり、比較的値上げ率は大きめだ。今回同時に発売されたファーストタンク方式の機種は一律で6,600円価格が上がっているが、HL-J7010CDWはファーストタンク方式の中では価格が安いため、値上げ率は大きく感じられてしまう。
 それでは、印刷画質を見てみよう。「次世代インクジェットプリンティング技術『MAXIDRIVE(マキシドライブ)』を搭載」という謳い文句だが、新開発のプリントヘッドを採用している事を指しているようだ。その内容は「従来より吐出可能な液滴サイズを大きくする事で高画質を維持しながら印刷速度が向上」「長期使用による駆動劣化も抑えることで耐久性が向上」となる。その内容通り、最小インクドロップサイズがHL-J6000CDWの1.5plから、HL-J7010CDWではカラーが2.5pl、ブラックが4plへと大型化している。「高画質を維持しながら」となっているが、やはりある程度の画質低下はあると言える。ただ、写真を印刷するなら最小インクドロップサイズは重要だが、HL-J7010CDWの目的となる文書印刷では写真印刷ほど影響を受けない。確かに文書中の写真やイラスト、グラフなどで若干粒状感(ドットが見えてザラザラした感じ)が強くなる他、年賀状印刷などを行う場合も粒状感を感じやすくなるだろう。それでも、エプソンの場合はビジネス向けプリンターでは2.8〜3.8plが一般的で、キャノンではカラーが5pl、ブラックが11plという製品も存在することから、他社に比べて劣るというわけでは無い。大きな問題ではないだろう。それよりも、ビジネス向けの機種では全色で顔料インクを採用することで、普通紙印刷時に高画質に印刷できる事が重要であり、その点はしっかりと対応している。実は、旧機種のHL-J6000CDWでも全色顔料をうたっていたが、注釈として「マゼンダの一部に染料が含まれる」となっており、完全な全色顔料では無かった。HL-J7010CDWでは晴れて完全な全色顔料となった。
 なお、インクの変更に伴い、インクカートリッジもHL-J6000CDWのLC3139番から、HL-J7010CDWではLC417XL番となった。なお、大容量カートリッジを示す「XL」が付いているが、「XL」無しのカートリッジは存在しない。印刷解像度は据え置きだが、自動ノズルチェック機能が新たに搭載されている。ノズル目詰まりにより印刷物に筋状の抜けが発生したり一部の色が出なくなるために色調がおかしくなるなどの、プリントノズルの問題を検知し自動でメンテナンスを行う機能で、大量印刷したら途中から正常に印刷できていなかったという、インクと用紙、時間の無駄を軽減できる。ビジネス用途には特に便利な機能と言えるだろう。

プリント(印刷速度)
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
ノズル数 1680ノズル 1680ノズル
全色:各420ノズル 全色:各420ノズル
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) N/A N/A
A4普通紙カラー(ISO基準) 30.0ipm 20.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 30.0ipm 22.0ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー 4.6秒 6.0秒
A4普通紙モノクロ 4.4秒 5.5秒

 続いてHL-J7010CDWの印刷速度を見てみよう。ノズル数は据え置きながら「MAXIDRIVE」が印刷速度が向上をうたっているだけあり、カラー文書、モノクロ文書共に30ipmと非常に高速だ。HL-J6000CDWではカラーが20.0ipm、モノクロが22.0ipmであったため、大幅な速度向上を果たしている。1枚目のプリント速度であるファーストプリント速度も、HL-J6000CDWではカラー6.0秒、モノクロ5.5秒だったが、それぞれ4.6秒と4.4秒に高速化している。数枚の印刷を頻繁に行うような使い方でも高速化を実感できるだろう。

プリント(印刷コスト)
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 N/A N/A
A4カラー文書 4.1円 4.1円
A4モノクロ文書 0.8円 0.8円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック 6,000ページ 6,000ページ
カラー 5,000ページ 5,000ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック 4,400円 4,400円
カラー 各5,500円 各5,500円

 続いてHL-J7010CDWの印刷コストである。インクカートリッジは変更となったが、印刷可能枚数とインクカートリッジの価格はHL-J6000CDWと同じなので、印刷コストには変化はない。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 L判〜A3 L判〜A3
長尺用紙 長さ1,200mm(1.2m)まで 長さ431.8mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(100枚/50枚/20枚)
0.52mm厚対応

(100枚/50枚/20枚)
0.52mm厚対応
前面 【カセット上段】
(250枚/20枚/20枚)
【カセット下段】
普通紙のみ・A4以上
(250/−/−)
【カセット上段】
(250枚/20枚/20枚)
【カセット下段】
普通紙のみ・A4以上
(250/−/−)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
用紙残量検知機能搭載
○(カセット収納(前面)/用紙セット(背面)連動)
用紙残量検知機能搭載
用紙幅チェック機能

 続いて、HL-J7010CDWの給紙、排紙機能を比較してみよう。L判〜A3用紙に対応し、前面給紙カセット2段+背面給紙、前面給紙の下段はA4以上の普通紙のみと言う制限まで、HL-J6000CDWと変わらない。ただし、長尺用紙に関しては、HL-J6000CDWが431.8mmまでと、A3用紙の420mmをやや超えるサイズまで(実際は海外で使われるタブロイドサイズの279×432mm対応のためであり、長尺印刷機能ではない)だったが、HL-J7010CDWでは1,200mm(1.2m)まで対応した。ビジネス用途では長尺印刷を必要とされる場面もあり、より使いやすくなったと言える。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙 普通紙・はがき(インクジェットはがき・光沢はがき非対応) 普通紙・はがき(インクジェットはがき・光沢はがき非対応)
対応サイズ A3/B4/A4/B5/A5/レジャー/リーガル/レター/エグゼクティブ/はがき A3/B4/A4/B5/A5/レジャー/リーガル/レター/エグゼクティブ/はがき
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 21.0ipm 11.0ipm
A4モノクロ文書 21.0ipm 12.0ipm
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷
写真補正機能
特定インク切れ時印刷 ○(クロだけ印刷・最大30日) ○(クロだけ印刷・最大30日)
自動電源オン/オフ −/○ −/○
廃インクタンク交換 −/− −/−
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてHL-J7010CDWのその他のプリント機能を比較してみよう。自動両面印刷機能はHL-J6000CDWと同じく搭載しており、普通紙とハガキに対応しているが、ハガキはインクジェットタイプや光沢タイプには非対応という点まで、変化はない。ただし、片面印刷速度の向上に伴って、自動両面印刷の速度も向上している。HL-J6000CDWではカラー文書が11.0ipm、モノクロ文書が12.0ipmだったが、HL-J7010CDWでは共に21.0ipmへと大幅に高速化している。自動両面印刷を多用する人にはうれしい改善点だろう。

ダイレクト印刷
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード
USBメモリー ○(最大256GB) ○(最大256GB)
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG/PDF(2GB未満) JPEG/PDF(2GB未満)
最大画像解像度 N/A N/A
読込ファイル数上限 999ファイル 999ファイル
色補正機能 フチあり/フチなし
日付印刷
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
フチあり/フチなし
日付印刷
明るさ調整(5段階)
コントラスト調整(5段階)
手書き合成
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応
各種デザイン用紙印刷 インデックスプリント インデックスプリント

 HL-J7010CDWのダイレクト印刷機能を見てみよう。USBメモリーのみ対応でJPEGと2GB未満のPDFに対応する点や色補正機能など、各種機能はHL-J6000CDWと同等だ。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Brother Mobile Connect Brother iPrint&Scan
AirPrint
対応端末 iOS 14.0以降
Android 5.0以降
【発売時】
iOS 11.0以降
Android 4.03以降
【現行】
iOS 14.0以降
Android 4.03以降
スマートスピーカー対応
Wi-Fi接続支援機能 ○(NFC(Android)) ○(NFC(Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/Box/OneDrive/OneNote)
SNS
写真共有サイト
メールしてプリント ○Eメールプリント(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT/メール本文) ○メール添付印刷(JPEG/GIF/PNG/TIFF/BMP/PDF/Word/Excel/PowerPoint/TXT)
本体でプリント操作が必要
LINEからプリント
リモートプリント
スキャンしてリモートプリント

 HL-J7010CDWのスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリはHL-J6000CDWの「Brother iPrint&Scan」から、他の新機種同様「Brother Mobile Connect」へ変更されている。対応端末も、「Brother iPrint&Scan」は、HL-J6000CDW発売時はiOS 11.0以降/Android 4.03以降、現行でもiOS 14.0以降/Android 4.03となるが、「Brother iPrint&Scan」はiOS 14.0以降/Android 5.0以降となるため、より新しいバージョンからの対応となる点は注意が必要だ。
 その他、スマートフォンからのプリント機能や、クラウドとの連携機能は同等だ。ただし、印刷したい写真や文書を添付してプリンターにメールするとプリントされる機能は、HL-J6000CDWの「メール添付印刷」から、HL-J7010CDWでは他の新機種同様「Eメールプリント」へと変更された。「メール添付印刷」では、送信すると専用のクラウド上に保存されるため、24時間以内にプリンター本体からの操作でクラウドにアクセスし、送信元のメールアドレスを選択してプリントという手順が必要だった。「Eメールプリント」では、本体の操作が必要なく、メールを送信すると、自動的にプリントされるようになった。また、「メール添付印刷」ではWord、Excel、PowerPoint、PDF、TXT、BMP、GIF、JPG、PNG、TIFF形式に対応しているが、添付ファイルのみの印刷でメール本文は印刷されなかった。「Eメールプリント」では対応ファイル形式は同じながら、メール本文を印刷するか選べるようになった。これらの設定は、ブラウザ上から行え、ドキュメントと画像でそれぞれ画質と用紙サイズ、さらにドキュメントは両面印刷をするかどうかも設定できるようになった。ソフトウェア的な変更のみだが、同機能の使い勝手は大きく向上している。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番 HL-J7010CDW HL-J6000CDW
製品画像
液晶ディスプレイ 2.7型
(角度調整可)
2.7型
(角度調整可)
操作パネル タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
タッチパネル液晶+物理ボタン
(角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
IEEE802.11n/g/b
(Wi-Fiダイレクト対応)
有線LAN 100BASE-TX 100BASE-TX
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
MacOS 10.15.X〜
Windows 11/10/8.1/8/7 SP1
MacOS 10.11.6〜
耐久枚数 30万枚又は7年 15万枚又は5年
外形寸法(横×奥×高) 576×477×315mm 575×477×315mm
重量 19.6kg 19.4kg
本体カラー ホワイト系
(操作パネルグレー)
ホワイト系
(操作パネルグレー)

 最後にHL-J7010CDWの操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。HL-J7010CDWの操作パネルは本体前面に取り付けられ、持ち上げて角度調整が可能という点ではHL-J6000CDWと変化がない。液晶サイズも2.7型で据え置きだが、一見するとHL-J7010CDWの方が液晶が大きく見える。

操作パネル全体
HL-J7010CDW
HL-J6000CDW
※実際に製品を撮影した写真です。

 その理由は、HL-J6000CDWでは液晶外に独立して物理ボタンで搭載されていた「戻る」「ホーム」「キャンセル」の3ボタンが、タッチセンサー式ボタンとなり、液晶と同じ枠内に入ったためだ。目の錯覚で、それらのボタンまでを液晶の一部として見てしまうため、大きくなったように見えるが、実際には上の写真での背景が白い部分だけが液晶である。また、同時期に発売された複合機に合わせて、液晶が中央より左寄りになっている。
 操作パネル以外を見てみると、インターフェースは同等だ。対応OSに関しては、WindowsはWindows 7 SP1以降という点では変わらないが、Windows 8は非対応となった。MacOSも10.11.6以降から、10.15.x以降となり、より新しいOSのみ対応となっただけでなく、専用ドライバーが提供されなくなり、OS標準のAirPrintを利用したプリントとなった。これにより用紙厚さ設定などが利用できない他、一部の設定は本体で行う必要がでている。耐久枚数も強化され、HL-J6000CDWの15万枚からHL-J7010CDWでは30万枚と倍増した。これも「MAXIDRIVE」の特徴の1つだ。また、各社とも(少なくとも卓上タイプの)インクジェットプリンターではビジネス向けを中心に数万〜数十万枚に強化しているが、枚数はどれだけ増えても年数の方は5年のままであった。しかしHL-J7010CDWでは、5年を超え7年となっている。これに伴って、有料の定額保守サービス (ブラザーサービスパック)にも7年保証が追加され、部品保有期間も7年に延長されている。
 本体サイズなどは変更は無く、本体カラーも全体はホワイト系で操作パネル部だけがグレーという配色も変更されていない。



 HL-J7010CDWでは従来の6000番台から7000番台へと型番が上がったわけだが、それだけの機能向上が図られた意欲的な新製品といえる。印刷速度の大幅アップと、耐久枚数・年数のアップだけでも十分だが、自動ノズルチェック機能や、メールプリントの利便性向上など多岐にわたる。近年ではどこが変わったのか分からない新製品も多い中、様々な点が、しかも大幅に機能アップしている。またHL-J6000CDWの弱点であった、マゼンダの一部に染料インクが含まれている問題や長尺印刷に対応しない点も、しっかりと改善してきている。卓上インクジェットプリンターでは最高クラスのスペックを惜しみなく搭載した、魅力的な製品に仕上がっていると言えるだろう。

(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


HL-J7010CDW