小ネタ集
2022年末時点のプリンターを徹底検証
新機種と旧機種を徹底比較
(2023年1月18日公開)

表中の背景が黄色になっている項目は、旧機種・参考機種からの変更点です。なお3機種で比較している場合は、旧機種1・参考機種1からの変更点となります

新機種「PIXUS TS8630」と旧機種「PIXUS TS8530」を徹底比較する

 PIXUS TS8630はPIXUS TS8530の後継機種だ。PIXUS TS8530の時点で本体デザインが変更されたため、PIXUS TS8630では見た目には変化がないように見える。しかし細かい点で機能強化が図られている。どの点が変わったのか、細かく見ていこう。

プリント(画質)
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像



発売日 2022年11月10日 2021年11月上旬
発売時の価格(税込) 40,150円 37,950円
インク 色数 6色 6色
インク構成 顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
顔料ブラック
染料ブラック
グレー
シアン
マゼンタ
イエロー
カートリッジ構成 各色独立 各色独立
顔料/染料系 染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
染料(黒+カラー)/顔料(黒)
(ChromaLife100)
インク型番 330XL/331XL(大容量)
330/331(標準容量)
330XL/331XL(大容量)
330/331(標準容量)
最小インクドロップサイズ N/A N/A
最大解像度 4800×1200dpi 4800×1200dpi
高画質化機能

 まずは、販売価格を見てみよう。PIXUS TS8630の販売開始時の価格は40,150円で、PIXUS TS8530の37,950円から2,200円の値上げだ。新型コロナウィルスによる世界的半導体不足や製造や輸送の問題、円高などもあって、製造コストが上がり、新機種では軒並み価格が上がってしまっている。上昇幅は2,200円と小さめだが、4万円台に乗ってしまい高くなった印象が強くなってしまった。
 それでは、印刷画質を見てみよう。PIXUS TS8630のインク構成やインクカートリッジはPIXUS TS8530同じであるため、画質面では変化はない。

プリント(印刷速度)
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
ノズル数 6656ノズル 6656ノズル
シアン/マゼンダ:各1536ノズル
グレー/イエロー/染料ブラック/顔料ブラック:各1024ノズル
シアン/マゼンダ:各1536ノズル
グレー/イエロー/染料ブラック/顔料ブラック:各1024ノズル
印刷速度 L判縁なし写真(メーカー公称) 10秒 16秒
A4普通紙カラー(ISO基準) 10.0ipm 10.0ipm
A4普通紙モノクロ(ISO基準) 15.0ipm 15.0ipm
ファーストプリント速度 A4普通紙カラー N/A N/A
A4普通紙モノクロ N/A N/A

 続いてプリント速度を見てみよう。文書の印刷速度は変化がない一方、写真の印刷速度は16秒から10秒へと高速化している。PIXUS XKシリーズの上位モデルPIXUS XK500などでは同じく10秒となっていたため、ついにその高速化がPIXUS TSシリーズまで降りてきた形だ。ただ、ノズル数や最小インクドロップサイズの変更が無く、多少の改良や給紙・排紙の速度の向上では5〜10%程度の高速化が限界であるほとんどだ。PIXUS TS8630では60%もの大幅な高速化がノズル数に変更がなく実現されている事に加えて、文書の印刷速度が一切変わっていない事からも、単純な高速化かどうかは疑問が残る。また、前機種PIXUS TS8530の際にもノズル数そのままで18秒から16秒へ高速化しており、2年連続の高速化となる。印刷速度の計測に使用される画像データーはこれまでと同じで、測定方法も国際基準に則った物だが、計測時は「各用紙選択時のデフォルト設定」で行われる。印刷品質は「きれい」「標準」「下書き」があり、「きれい」はプリンターが持つ最高画質になるが、デフォルト設定は「標準」であり、「標準」時の画質については規定がない。本体の改良に合わせて、「標準」時の画質を分からない程度に落とすことで、高速化の幅を上げている可能性もある。一切、公表されていないため、ノズル数は同じながら、吐出回数を高速化することで、10秒を実現している可能性もある。高速化率が大きすぎるために、なんとも謎が多いと言える。

プリント(印刷コスト)
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
印刷コスト
(税込)
L判縁なし写真 大容量:22.1円
標準容量:24.8円
大容量:22.1円
標準容量:24.8円
A4カラー文書 大容量:12.2円
標準容量:12.4円
大容量:12.2円
標準容量:12.4円
A4モノクロ文書 大容量:4.3円
標準容量:4.2円
大容量:4.3円
標準容量:4.2円
インク1本の印刷枚数
(カラー文書)
ブラック(顔料) 大容量:600ページ
標準容量:400ページ
大容量:600ページ
標準容量:400ページ
ブラック(染料) 大容量:4,530ページ
標準容量:2,270ページ
大容量:4,530ページ
標準容量:2,270ページ
カラー 大容量:802ページ
標準容量:502ページ
大容量:802ページ
標準容量:502ページ
インク1本の価格
(税込)
ブラック(顔料) 大容量:2,200円
標準容量:1,430円
大容量:2,200円
標準容量:1,430円
ブラック(染料) 大容量:2,090円
標準容量:1,320円
大容量:2,090円
標準容量:1,320円
カラー 大容量:2,090円
標準容量:1,320円
大容量:2,090円
標準容量:1,320円
同梱インク セットアップ用インクカートリッジ各色1本 セットアップ用インクカートリッジ各色1本

 次に印刷コストだが、インクカートリッジに変更がないため印刷コストも同等だ。

プリント(給紙・排紙関連)
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
対応用紙サイズ 定型用紙 名刺〜A4 名刺〜A4
長尺用紙 長さ676mmまで 長さ676mmまで
給紙方向
(A4普通紙セット可能枚数)
背面

(100枚/40枚/20枚)

(100枚/40枚/20枚)
前面 【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
【カセット】
普通紙のみ
(100枚/−/−)
その他
排紙トレイ自動伸縮
用紙種類・サイズ登録 ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動) ○(給紙口カバー閉じ(背面)連動)
用紙幅チェック機能 ○(用紙セット時・用紙サイズ表示) ○(用紙セット時・用紙サイズ表示)

 続いて、PIXUS TS8630の給紙、排紙機能を比較してみよう。対応用紙サイズや、普通紙のみの前面給紙カセット+背面トレイという組み合わせや、排紙トレイの自動伸縮機能、用紙幅チェック機能など、全く同じだ。

プリント(付加機能)
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
自動両面印刷 対応/非対応
対応用紙 普通紙
ハガキ
普通紙
ハガキ
対応サイズ A4
B5
A5
ハガキ
レター
A4
B5
A5
ハガキ
レター
自動両面
印刷速度
A4カラー文書 N/A N/A
A4モノクロ文書 N/A N/A
CD/DVD/Blu-rayレーベル印刷 ○(ネイル印刷対応) ○(ネイル印刷対応)
写真補正機能 ○(自動写真補正) ○(自動写真補正)
特定インク切れ時印刷
自動電源オン/オフ ○(印刷実行)/○(指定時間) ○(印刷実行)/○(指定時間)
廃インクタンク交換
フチなし吸収材エラー時の対応機能

 続いてPIXUS TS8630のプリント付加機能を比較してみよう。自動両面印刷機能の対応だけでなく、対応用紙種類やサイズ、レーベル印刷機能や自動電源オン・オフ機能など、PIXUS TS8530から変化はない。

スキャン
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
原稿サイズ A4
(216×297mm)
A4
(216×297mm)
読み取り解像度 2400dpi(2400×4800dpi) 2400dpi(2400×4800dpi)
センサータイプ CIS CIS
原稿取り忘れアラーム
スキャンデーターのメモリカード保存
(スキャンしてスマホ保存対応)

 PIXUS TS8630のスキャナー機能を見てみよう。原稿サイズや解像度、原稿取り忘れアラームなど、PIXUS TS8530と全く同じとなっている。スキャンしてメモリーカードに保存する機能は引き続き搭載していないが、新たに本体でスキャンを実行し、スマホに保存する機能が搭載された。実際にはスキャン後、ダウンロード用のQRコードが表示されるので、スマホからアクセスするという形だ。ダウンロードには期限があり、また複数枚になるとスマホからスキャンを実行した方が直接保存され手間が掛からないと思われるが、スマホをプリンターに接続しなくても利用できるため、普段はプリンターと同じネットワークに接続していない人が、1、2枚だけスキャンする場合など、便利だろう。

ダイレクト印刷
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
ダイレクトプリント メモリーカード SD SD
USBメモリー
赤外線通信
対応ファイル形式 JPEG/TIFF JPEG/TIFF
最大画像解像度 N/A N/A
読込ファイル数上限 50,000枚 50,000枚
色補正機能 トリミング印刷
ふちなし/フチあり
日付印刷
赤目補正
トリミング印刷
ふちなし/フチあり
日付印刷
赤目補正
手書き合成 ○(ディスクレーベル対応) ○(ディスクレーベル対応)
メモリーカードからUSBメモリー/外付けHDDへバックアップ −/− −/−
PictBridge対応 ○(Wi-Fi) ○(Wi-Fi)
各種デザイン用紙印刷 カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー
カレンダー印刷
定型フォーム印刷(レポート用紙、原稿用紙/スケジュール用紙、方眼紙、チェックリスト、五線譜、漢字練習帳)
ディスクレーベル印刷
組み込みパターンペーパー

 PIXUS TS8630のダイレクト印刷機能を見てみよう。SDカードに対応し、トリミングや各種色補正、各種デザイン用紙印刷機能を搭載している点で変化はない。

スマホ/クラウド対応
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
スマートフォン連携 アプリ メーカー専用 Canon PRINT Inkjet/SELPHY Canon PRINT Inkjet/SELPHY
AirPrint
対応端末 iOS 14.0以降
Android 6.0以降
【発売時】
iOS 13.0以降
Android 5.0以降
【現行】
iOS 14.0以降
Android 6.0以降
スマートスピーカー対応 ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova) ○(Alexa/Googleアシスタント/LINE Clova)
Wi-Fi接続支援機能 ○(QRコード読み取り(iOS/Android)) ○(QRコード読み取り(iOS/Android))
写真プリント
ドキュメントプリント ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(PDF/Word/Excel/PowerPoint)
Webページプリント
スキャン ○(PDF/JPEG) ○(PDF/JPEG)
クラウド連携 プリント アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
オンラインストレージ ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom) ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
SNS ○(Facebook・コメント付き可) ○(Facebook・コメント付き可)
写真共有サイト ○(googleフォト/image.canon) ○(googleフォト/image.canon)
スキャン アプリ経由/本体 ○/○ ○/○
スキャンしてオンラインストレージにアップロード ○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
○(Dropbox/Evernote/googleドライブ/OneDrive/google classroom)
(OneDrive/google classroomはアプリからのみ)
メールしてプリント
LINEからプリント ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint) ○(JPEG/PNG/PDF/Word/Excel/PowerPoint)
リモートプリント ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ) ○(ファイルアップロード・Windows 11/10のみ)
スキャンしてリモートプリント

 PIXUS TS8630のスマホ、クラウド関連機能を見ていこう。対応アプリに変更は無く、QRコードによる簡単接続や、クラウド関連機能、リモートプリント機能などは同等だ。アプリの対応バージョンがiOSは13.0以降から14.0以降に、Androidが5.0以降から6.0以降に変更されているが、これは製品発表時のアプリの対応バージョンであり、この間にアプリ側に変更があっただけだ。そのためPIXUS TS8530でも、現在はiOS 14.0以降、Android 6.0以降となる。

コピー機能
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
等倍コピー
拡大縮小 倍率指定 ○(25〜400%) ○(25〜400%)
オートフィット
定型変倍
フチなしコピー
CD/DVD/Blu-rayレーベルコピー
写真焼き増し風コピー ○(色あせ補正対応) ○(色あせ補正対応)
割り付け(2面/4面) ○/○ ○/○
その他のコピー機能 プレビュー
濃度調整
プレビュー
濃度調整
バラエティコピー 枠消しコピー
IDコピー
コピー予約
枠消しコピー
IDコピー
コピー予約

 PIXUS TS8630のコピー機能を見てみよう。各種拡大縮小やレーベルコピー、写真焼き増し風コピー、2面・4面割付、プレビュー、IDコピーや大判原稿コピーなど各種コピー機能はPIXUS TS8530から変更は無い。

操作パネル/インターフェース/本体サイズ
新機種
旧機種
型番 PIXUS TS8630 PIXUS TS8530
製品画像
液晶ディスプレイ 4.3型
(90度角度調整可)
かんたんモード搭載
4.3型
(90度角度調整可)
かんたんモード搭載
操作パネル タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
タッチパネル液晶
(90度角度調整可)
インターフェイス USB他 USB2.0×1 USB2.0×1
無線LAN IEEE802.11ac/n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
IEEE802.11n/a/g/b
5GHz帯対応
(ダイレクト接続対応)
有線LAN
対応OS Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.14.6〜
(AirPrint使用)
Windows 11/10/8.1/7 SP1
Mac OS 10.13.6〜
(AirPrint使用)
外形寸法(横×奥×高) 372×345×142mm 372×345×142mm
重量 6.6kg 6.6kg
本体カラー ホワイト
ブラック
レッド
ホワイト
ブラック
レッド

 最後にPIXUS TS8630の操作パネルやインタフェースなどを見てみよう。PIXUS TS8630の液晶はPIXUS TS8530と同等の4.3型でタッチパネルとなっている。かんたんモードを搭載しているのも同等だ。インターフェースはUSB接続と無線LANという点は同等だが、無線LANは強化されている。PIXUS TS8530では一般的なIEEE802.11n/g/bに加えて、IEEE802.11aに対応していた。IEEE802.11n/a使用時は、5GHz帯の電波を使用できるようになり、Bluetoothや電話の子機、電子レンジなどの影響を受けず、安定したが、通信速度はIEEE802.11nのままとなっていた。今回、新たにIEEE802.11ac対応となり、通信速度が向上している。ストリーム数やチャンネル幅などが不明なのでなんとも言えないが、1ストリームの場合、IEEE802.11nは帯域幅20MHzで72.2Mbps、40MHzで150Mpbsだが、IEEE802.11acは最低の帯域幅80MHzでも433Mbpsとなり、3〜6倍の速度になる。プリントデーター量が多い場合や、高解像度でのスキャンなど、通信速度が必要な場合に、待ち時間が軽減される可能性がある。
 対応OSはWindowsは変更はないが、MacOSに関しては10.13.6以降から10.14.6以降に変更されている。本体デザインやサイズに違いは無く、本体カラーもブラック、ホワイト、レッドの3種類のカラーバリエーションが用意されるのも同等だ。



 PIXUS TS8630はPIXUS TS8530からの変更点は多くなく、スキャンしてスマホに保存する機能以外は、写真印刷速度の高速化と無線LANの強化だけだ。とはいえ、PIXUS TS8630のライバル製品となるエプソンのEP-885Aが、写真印刷速度が13秒であるため、わずか3秒ながら数値上「遅い」というイメージが付いてしまう。無線LANに関しても、EP-885Aは5GHz帯にも非対応であるため、直接的なライバル製品との比較ではキャノンの方が性能は上なのだが、エプソンの5GHz帯対応の機種は、IEEE802.11acに対応しており、その点で劣って見えるとも言えた。その2点を改良してきたことで、隙が無くなったと言えるだろう。確かに価格は上がってしまったが、優秀な機種がより優秀になり、オススメ度が上がったといえるだろう。


(H.Intel)


【今回の関連メーカーホームページ】
キャノンhttp://canon.jp/


PIXUS TS8630BK
(ブラック)
PIXUS TS8630WH
(ホワイト)
PIXUS TS8630RD
(レッド)