第14回
Zaurus(ザウルス) SL-C760
〜その3〜
(2003年8月29日購入・2004年8月23日公開)

 Zaurus SL-C760(以下SL-C760)のロードテストその3である。今回は付属のソフトの使い勝手を検証していく。

Music Player

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 MP3の再生ソフトである。簡潔に言えば操作性は悪くない。再生する際は、ファイル名や曲名、アーティスト名が表示された一覧から選ぶ。一覧から選ぶと再生が始まるが、再生中は曲名とアーティスト名、経過時間が表示された画面に移行する。ディスプレイを消すボタンも用意されるため、再生中にディスプレイに余計な消費電力を使わないようにできる。この辺りまではよく作られていると思う。プレイリストを作る事も出来る。しかし、サウンドの調整が行えないのは、ポータブルMDプレイヤーやMP3プレイヤーの代わりに使うには物足りない。せめて重低音のON/OFF切り替えくらい付けておいて欲しかったところだ。
 もう一つ気になる事がある。上記左の画面を見て頂きたいのだが、初期設定ではタイトルとアーティスト名の2つが表示されるのだが、このままではタイトル順に並んでしまうのである。筆者はMDに録音している順にファイル名に連番を振っているのだが、タイトル順に並んでしまうと順番が変わってしまうのである。その為、実際にはファイル名も表示する設定にし、そのファイル名順に並べて使っている。こういったカスタマイズが出来るのは良いのだが、初期設定ではあまり使いやすくない。
 また、ソフトそのものではなく、本体の問題がある。イヤホンを付ければポータブルオーディオプレイヤーとして使用できるが、実際に使ってみるとリモコンが無い事が非常に不便に感じる。本体側面のシャトルキーで曲送り・戻しが行えるが、本体を操作しなければならない事に代わりはない。リモコンを付属してくれとは言わない。オプションでも良いので、曲名とアーティスト名、経過時間表示の液晶が内蔵されたリモコンが接続できると、ポータブルMDやMP3プレイヤーとして使えるのにと思うと残念である。

NetFront

当ホームページのトップページの一番上から。
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当ホームページのトップページのメニューの辺り。
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 Webブラウザである。実際に使ってみると、かなりパソコンに近く表示できる事に驚く。また、640×480ドットの液晶画面で表示しているわりには一覧性も悪くない。画像などが多用されたページでは表示が遅くなるが、これは仕方がないだろう。文字が小さいのは640×480ドットの液晶でできるだけ多く表示しようとするとしかたが無いだろう。問題は、ブックマークを開くのがパソコンに比べて面倒である事と、リンク部分をクリックしにくい事だ。特にリンクのクリックはかなり問題ありだ。文字が小さいため、リンク部分が非常に小さい事に加え、それをペンでタッチするのが難しいのだ。リンクが連続している場合、間違えて横のリンクを押してしまう事が多々あった。
 しかし、全体としては十分合格点だ。このソフトなら、ホームページを閲覧しようという気にさせてくれるのだ。

HancomWord

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 このソフトはWordのファイルを開く事ができるというソフトである。外出中にWordファイルが添付されたメールを受信しても見ることが出来るし、ある程度の編集も行える。ただし、あくまで簡易的な物なので、Wordの全ての機能を備えているわけではない。実際にどの程度表現できているか見てみよう。
 上の2画面の内、左はザウルスのHancomWordで表示したもの、右はパソコンのWordで表示したものである。上3段は上から順にフォントサイズ8、10.5、22としているが、HancomWordの場合10.5と8が同じサイズになっている。画面が小さいため、あまりに小さいフォントは判別できないという判断かもしれないが、実際のレイアウトと異なる表示になる危険性がある。
 色は比較的正しく表示されているようだ。4行目の下線も正しく表示しているように見えるが、パソコンでは二重線を指定した下線がHancomWordではただの下線になっている。5行目は斜体の太字だが、HancomWordでは普通に表示されている。ただし、カーソルを合わせると、斜体ボタンと太字ボタンが押された状態になることから、斜体太字と認識はしているが、表示していないだけのようだ。
 その下の画像もしっかり表示しているのは嬉しいところだ。ただし余りにも画像が大きかったり、多く使用されているとファイルを開ききれないようである。
 このように機能はかなり限定されているが、小さい画面と640×480というパソコンと比べると低い解像度で、比較的忠実に表現されているのは驚きである。また、操作性も悪くないことから、思った以上に「使える」ソフトと言える。

HancomSheet

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 こちらはExcelのファイルを開けるソフトである。上の2画面は左はザウルスのHancomSheetで表示したもの、右はパソコンのExcelで表示したものである。まず目に付くのがHancomSheetではグラフが表示されていないことである。これはなかなか問題である。一方で、セルの背景色や枠は太さまで正確に表現されている。グラフを諦めるなら、Excelのファイルもある程度扱える程度と考える方が良さそうだ。

文庫ビューアー

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 文庫ビューアという小説等の文庫を見るソフトである。このソフトを使うときは縦型のビュースタイルの方が使いやすい。ソフト自体は非常に使いやすく、本の選択はシャトルキーとOK、Cancelボタンを使って選択できる。その後、シャトルキーを使ってページ送り、戻しが出来るため、片手で操作が可能だ。また、「しおり」機能もあるため、任意の場所にしおりを挟むことが出来る。そもそも、そのまま電源を切っても、次回電源を付けたときはその位置になっているため、単に本を読むのを中断するだけならしおりを挟む必要はなく、そのまま電源を切ればよい。
 画面は非常に見やすい。液晶が光るため、薄暗いところでもハッキリ読める。640×480ドットの解像度のため、文字も読みやすい。液晶で本を読むとなると、違和感があるのではないかと思ったが、悪くはないのだ。ちなみに、画面右端にある縦棒は、全体に対する現在のページの位置を示している。実際の本では本の厚みで現在の位置が分かるように、文庫ビューアでも分かるよう工夫されている。このように、文庫ビューアでは、操作性が良く、さまざまな工夫がなされているため、本で読む場合と変わらず読書を楽しめる。いや、むしろ本で読むよりも便利と言えるのである。また、何冊入れてもザウルスの重さ以上にならないため、旅行などで本を何冊も持って行く事を考えると軽く、サイズも小さく済むだろう。
 ちなみに背景が灰色になっているが、これは初期設定の白から変更しているためである。というのも、液晶が明るく、そのままでは明るすぎて目が疲れるのだ。そこで、背景を薄い灰色に設定すると結構良い感じだ。パソコンで見ると灰色が濃いように思えるが、SL-C760の液晶は全体に白っぽいため、これくらいが丁度良い。
 本はザウルス文庫というホームページから購入できる。クレジットカード支払いの他、WebMoneyなども使用できるので安心だ。また、購入後はすぐにダウンロードして、ザウルスに転送するか、コンパクトフラッシュやSDメモリカードに入れザウルスに入れるだけなので、夜中でも出かけた先でも関係なく購入できる。上の画面はサンプルとして付属している西村京太郎著の「十津川警部シリーズ 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件」だが、このお陰で十津川警部シリーズにはまってしまったのである。

Movie Player

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 ムービープレイヤーである。再生できる形式は限られているが、動画は「MPEG-4準拠」、音声は「G.726またはMP3準拠のASF形式」であるため、それほど特殊な形式というわけではない。説明書やホームページによると、その形式の動画が録画できるのは、パーソナルサーバー「ガリレオ」や液晶テレビ「AQUOS」などの機器のみになっているが、実際はマイクロソフトにより無料公開されている「Windows Media エンコーダ 9」で作成することが出来るのだ。と言うことは、パソコンのTVチューナ等で取り込んだ動画も変換すればザウルスで再生できるようになるのである。作成方法は次回お伝えしたいと思う。
 公式には解像度は320×240までで、ビットレートは500kbps以下、フレームレートは10fpsと決して高画質でスムーズとは言えない。しかし、ビットレート400kbps程度なら十分鑑賞に堪える画質であるし、320×240ドットなら結構細かなところまで見ることが出来る。ノイズも静止してみると多く見えるが、動画にして見るとそれほど気にならない。公式ではフレームレートは10fpsとなっているが、実際は10fpsと15fpsの動画を再生してみると15fpsの方がスムーズに見えることから、15fpsとはいかなくても12fpsや13fpsは出ているのかもしれない。実際に見てみると、それほどスムーズさに欠けるという事はない。携帯ムービープレイヤーとしては十分な画質を持っていると言える。なお、上の図は「通常画面」と呼ばれる操作パネルの見える状態だが、ボタン一つでフルスクリーンにできる。フルスクリーン表示なら液晶ディスプレイは640×480ドットと、動画の320×240ドットの整数倍のため、拡大したときも綺麗に見えるし、3.7インチいっぱいに表示されるため、サイズ的にも問題ない。
 3つ気になる事がある。1つは任意の部分から再生しようとしたときの問題だ。通常画面ではバーを動かすことで任意の場所から再生できるが、エラーの出て再生できない部分があるのである。動画が長いと後半部分から再生できないという訳ではない。例えば10秒の時点からは再生できるが、20秒の時点から再生しようとするとエラーが出て、30秒の時点からだとまた問題ない……という感じだ。また、その時点から再生できなくても、それより前から再生していってその部分にさしかかっても特に問題なく再生されるのだ。原因が分からない。
 2つめはフルスクリーン表示から戻るときの遅さだ。フルスクリーンに入るときは1秒程度ですぐに切り替わるのだが、フルスクリーンから通常画面に戻るときは5秒から、遅いときでは15秒程度かかるときもある。
 3つめはソフトの問題と言うより、液晶ディスプレイの問題だが、液晶ディスプレイの色が全体に薄いため、動画が白飛びして見えるのである。
 それ以外は全く問題ない。ボタンの配置も分かりやすく、画質も満足である。ザウルスは携帯ムービープレイヤーとして十分に使えることが分かった。

 以上が、付属のソフトでよく使う物の感想である。気になる部分がいくつかあるものの、全体に優秀なソフトが揃っていると言える。パソコンほどとは言えない物の、予想以上にいろいろな事ができるものである。これならば、出かけるときなどに持ち出してもいろいろ便利だろう。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
   シャープ  http://www.sharp.co.jp/
   ザウルス  http://ezaurus.com/


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