ノートパソコン SONY VAIO S VGN-S72PB (2005年2月20日購入・2007年4月20日公開)
私は、はっきり言って衝動買いはしない方である。特に3000円以上の電化製品は、店頭や雑誌、HPで見て良いと思っても即買いはせず、家に帰って同種の製品の比較表を作り、他に更によい製品がないと分かってから購入しないと、安心して購入できないのだ。しかし今回のパソコンは、他の機種と比較することなく予約までして発売日に購入してしまったのである。どの点に惹かれたのか、そして性能をベンチマークテストを使ってじっくり見ていきたい。
私はネットゲームや普通のゲームをパソコンでするのだが、持っているノートパソコン「NEC LavieM LM500/4E」のグラフィックチップ「Mobility RADEON」と「8MB」のグラフィックメモリでは辛くなってきた。そこで、新しいノートパソコンが欲しいなと漠然と思っていた。しかし私はノートパソコンは持ち運ぶ可能性があるため、2kg以下の機種に限定している。そうなるとなかなか良いグラフィックチップを搭載した製品が無いのである。ところが、そんな時に発売されたのが、このVAIO VGN-S72PBだったのである。 2005年1月19日、インテルは開発コード名「Sonoma」で知られていた次世代のCentrino対応のCPUとチップセットを発表した。Centrinoとはインテル製の特定のCPUとチップセット、無線LANモジュールを全て搭載したパソコンに付けることが出来るものである。そして、この「Centrino」に対応するCPUとチップセットが大きく進化したのがこの日だった。CPUは従来通りPentium MながらFSBが533MHzとなった(従来は400MHz)。そして、チップセットはIntel 915ファミリーになりデスクトップパソコンと同レベルになったのである。チップセットが変わったため、メモリもDDR2-400MHzのデュアルチャンネルに対応し(標準搭載ではシングルチャンネル)、グラフィックチップとの接続はAGPからPCI Expressに進化、ハードディスクのインターフェイスもUltraATAからSerial ATAへと進化し、次世代へと一新されたのである。 しかし、せっかくの新しいCPUとチップセットも、搭載するのはA4サイズ以上の大型ノートのみで、モバイルノートに搭載されるのは先の話だろうと私は思っていた。ところがである。SONYから発表されたVGN-S72PBはいち早く次世代CPUとチップセットを搭載したモバイルノートだったのである。
VGN-S72PBは全ての点で抜かりのない、最高のモバイルパソコンである。CPUはFSB533MHzに対応した、Pentium M 740(1.73GHz)を搭載し、処理性能は2005年1月現在では最高レベルだ。チップセットはインテル915PM Expressである。メモリはDDR2 SDRAMを512MB搭載し、通常の使用なら初期の容量で問題ない。残念ながら256MB×2ではなく512MB×1なので、デュアルチャンネル動作にはなっていないが、もう一枚512MBを増設すればデュアルチャンネル動作にはなるようになっている。ハードディスクは80GBだが、もちろんSerial ATA/150接続、しかも5400回転の/分の高速ドライブ搭載はノートパソコンとしては珍しい。肝心のグラフィックチップも最新のnVIDIA GeForce Go 6200 with TurboCacheを搭載である。GeForce6シリーズとしては6200は一番下だが、GeForce6シリーズ全体が従来と比べ大幅に性能アップを果たしているので、6200といえども性能は馬鹿にはできない。グラフィックメモリは128MBとなっているが、TurboCacheとなっているので、実際は一部のみ専用のグラフィックメモリで、あとはメインメモリから必要に応じて割り当てて使う形を取る。そして、この「専用グラフィックメモリの搭載量」によってパフォーマンスはずいぶん違うらしい。TurboCacheは専用グラフィックメモリ量を減らしてコストダウンを計るのは目的のため、専用グラフィックメモリをあまり多くすると意味がないためか16MB程度の機種が多いのだが、これではあまり性能は期待できないと言われている。ところがVGN-S72PBは32MB搭載しているようであり、16MBの場合と比べると性能は大きく違うらしい。また残り96MB分のメインメモリもDDR2 SDRAMだし、グラフィックチップもPCI Express接続されているので、従来のメインメモリシェアのタイプよりは性能は良いと言われている。これならグラフィック性能は満足できるレベルだ。 液晶は13.3インチのワイド液晶である。1280×800ドットの高解像度で、SONYがクリアブラック液晶と名付けている液晶は明るく、映り込みも抑えるようコーティングが施してある優れた液晶である。DVDスーパーマルチドライブはDVD-R/RWが2倍速、DVD+R/RWが2.4倍速、DVD-RAMが2倍速と遅めであるが、これは薄型にする事を優先したためのようである。この点はとりあえず書き込みが出来るのでよしとしよう。マイクロソフトOffice搭載で、OSには高スペックに相応しいWindows XP Professionalを搭載している。これで価格は249,800円。はっきり言って安くはないが、数々の最新パーツを組み込んだこの機種が気に入ってしまい、発売日前に予約をして、当日ゲットとなったわけである。ヨドバシカメラでちょうど「20万円以上購入で7%ポイントアップ」キャンペーンをしていたので、通常10%+キャンペーン7%で17%ポイント還元となり、少し安く感じることが出来た。
では、実際に使ってみよう。まずディスプレイだが、これは文句なしだ。非常に明るくて綺麗だし、視野角も悪くない。光沢液晶なので映り込みが気になるかと思ったが、低反射コーティングがしっかり掛けられているようで、全く問題ない。ただし、同じクリアブラック液晶でも、大型ノートに採用される15.4インチのタイプと比べると、若干明るさが低いように感じる。クリアブラック液晶とクリアブラックLE液晶の中間くらいだろうか。ワイド液晶は初めてなので最初は慣れなかったが、一度慣れると横方向だけでも解像度が高い方が使いやすいことが分かった。ホームページは縦に長いので意味がないと思っていたのだがこれは間違いで、ホームページを見ながら、一太郎で表にまとめたりと言ったことをする際に非常に便利だ。また、半分にDVDの映像を映して、もう片方でホームページを作るというような使い方もできる。
次に入力系統を見てみよう。キーボードは特殊な配列もなく、Enterキーも一番右端、カーソルキーは一段下に下がった位置にあり非常に打ちやすい。また、キーボードのたわみが全くと言っていいほど無いので、非常に安定しているのも好印象だ。タッチパットはスクロールボタンなどは無いシンプルなものだが、左右クリックボタンが金属で作られておりデザイン的にも美しい上に、はっきりと出っ張っているので操作時に指の感触だけで場所が分かり非常に良いと言える。
次に全体的な部分だが、ディスプレイはラッチレスなので、余計な出っ張りが無く美しい。だからといって持ち運びの時に開いてしまいそうな心配は無く、かといって開けるのがそれほど硬いわけでもなく、ちょうど良い堅さにしてある。。液晶ディスプレイの下部は本体に併せて軽くカーブしており、デザイン的にはシンプルながら綺麗な形をしている。重量は1.95kgと軽めである。これまで使っていたノートパソコンLavie M LM500/4Eが2.2kgだったので250g軽くなったことになる。これが結構な差で、思いの外軽く感じるのだ。この重量なら、持ち運びにも対応できそうである。しかし、ACアダプタがかなり大きく、420gと結構重いのは残念である。このACアダプタは実は大型ノートパソコンと同じ大きさなのである。モバイルパソコンなのだから、ACアダプタも小型のものを用意してほしかったところだ。 次に端子類を見てみよう。背面はバッテリが占めているので、左右と前面に端子がある。前面はDVDスーパーマルチドライブとメモリースティックスロットが配置されている。左側面にはLANとアナログモデム、イヤホン、マイク、外部ディスプレイとPCカードスロットが配置されている。一方の右側面は電源コネクタと2基のUSB端子、IEEE1394端子が配置されている。問題なのはこの右側面で、USBとIEEE1394がカバーの中にあるのである。IEEE1394はさておきUSBはマウスを常時繋ぐので、これでは常にカバーを開けた状態になってしまう。しかも、右側面の一番前面に配置されているので、ケーブルを繋ぐとマウス操作の際に非常にじゃまなのだ。USB端子の位置はもう少し考えて欲しいものだ。もう一つ、右側面の奥には排気口があるのだが、これだけの高性能になるとかなり暖かい風がここから吹き出るのである。マウスを持つと風が手に当たり夏場は不快である。こういった排気口は後ろ向きに付けるべきではないだろうか。もう一点気になるのが、スピーカーの音質だ。ノートパソコンのスピーカーにそれほど高音質は求めていないが、せっかくゲームが出来るのだから、いい音で効果音を聞きたいのである。
このように幾つかの問題点はあるものの、全体として完成度も性能も高く満足している。次に実際の性能をベンチマークテストを使って調べてみたいと思う。
VGN-S72PBの性能を見てみよう。この機種以外に、この機種を買うまで使っていたノートパソコンのLavie M LM500/4Eと、デスクトップパソコンのPCV-RX66を比較対象に使用する。簡単なスペックは下記の表の通りである。
まずはHDBENCHの結果を見てみよう。CPUのテストに関してはIntegerがPentium 4-2.26GHzやモバイルPentiumIII-M-1.13GHzの倍近い性能を示している。一方Floatに関してはPentium 4-2.26GHzと同等ぐらいである。1.73GHzでこの性能なので、Pentium Mのクロックあたりの性能が高い事がわかる結果となった。メモリはPC800のDirectRDRAMであるPCV-RX66には及ばない結果となった。しかし、PCV-RX66はデュアルチャンネルで、VGN-S72PBは現状はシングルチャンネルである。VGN-S72PBもメモリを増設してデュアルチャンネルにすれば同じくらいの性能になりそうだ。グラフィックに関しては、GeForce MX440のPCV-RX66よりも高めの傾向となったが、2D性能であるため大きな差はない。ハードディスクもPCV-RX66と比べると若干遅い結果だが、同じノートのLM500/4Eと比べると1.5〜2倍のスピードであり十分高速なドライブといえる。
続いて「Superπ」の結果である。419万桁を計算するのに要した秒数となるので、バーが短い方が高速である。結果を見ると、Pentium Mの速さがわかる結果である。Pentium 4-2.26GHzより3割以上高速という結果である。1.73GHzとクロックが低いにもかかわらず速いのは驚きである。
続いて、FINAL FANTASY XIのベンチマークテストである「Vana'diel Bench 3」である。3Dグラフィック性能が大きく影響すると思われる。VGN-S72PBはPCV-RX66と比べてHighで6割以上、Lowで5割の性能向上を果たしている。また、VGN-S72PBのGeForce Go6200 with TurboCacheは、グラフィックメモリが実際には32MBしか搭載しておらず、残り96MBはメインメモリを利用することになるため、高解像度では性能が低下するかと思ったが、それほど問題ないと思われる結果となった。
3DMark2001SEの結果である。DirectX 7世代のグラフィック性能を測るテストとなる。1024×768ドットではVGN-S72PBはPCV-RX66より50%弱、640×480ドットでは75%程度の向上となりかなりのものである。
「ぐるみん」というゲームの実際の実行速度を測るベンチマークテストである。VGN-S72PBがPCV-RX66の倍以上、LM500/4Eの5倍以上と圧倒的な性能となっている。
鉄道模型シミュレーター3のベンチマークテストである。どうやらフレームレート(1秒あたりのコマ数)を表しているようである。VGN-S72PBが非常に高い性能を示している。
鉄道模型シミュレーター4のベンチマークテストで、DirectX9世代のテストとなっている。この結果はVGN-S72PBとPCV-RX66がほとんど同じ性能となっているのがおもしろい。VGN-S72PBのGeForce Go 6200 with TurboCacheはDirectX 9世代のグラフィックチップであるし、CPU性能もPCV-RX66よりも速いはずなのにこの結果はなぜなのだろうか。
これらのテストでも、やはりVGN-S72PBの成績がもっとも良いといえる。 この製品は、半分衝動買い状態だったが、使い勝手、性能共に上々だった。特に性能は現時点でのノートパソコンの中では最高レベルとなっている。実際に、動画編集などの動作もきびきびしているし、オンラインゲームも高解像度でもスムーズに動作する。それでいて外に持ち出して使うこともできる大きさと重量なので、家庭内と外出先の両方で使えるオールマイティーなパソコンだといえる。確かに価格は高いが、非常に満足できる機種であった。 (H.Intel) ■今回の関係メーカー・ショップ SONY http://www.sony.co.jp/ VAIO http://www.vaio.sony.co.jp/ |
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