第32回
ドキュメントスキャナ
富士通 fi-5110EOX2
(2005年5月16日購入・2005年6月23日著・8月15日追記)

 実は、我が家には雑誌やお気に入りの漫画を切り取ったものが沢山あるのだが、だんだんと置き場所困ってきた。また、漫画はスキャンしてコンパクトフラッシュに入れておけば、ザウルスで見ることが出来、漫画を大量に持ち歩くことも出来る。そこで、普通のフラットベッドスキャナでスキャンしていたのだが、いちいち裏返したり原稿を入れ替えるのは大変な手間である。これでは大量の原稿をスキャンするのは不可能だ。そこで、なにか良い製品が無いか探していたところ、富士通の「fi-5110EOX2」を発見したのだ。

fi-5110EOX2とは?

 fi-5110EOX2はドキュメントスキャナというタイプのスキャナである。オートドキュメントフィーダーになっており、最大50枚の原稿を連続して読み取ることが出来る。しかも、両面読み取りに対応しているので、裏返す手間もないのだ。一見プリンタのような形状をしており、プリンタと同じように原稿台に原稿を置くと、次々に吸い込まれて自動的にスキャンされる。スキャンした後は、JPEG形式の画像かPDF形式で保存される。ただし、ドライバはTWAINなどには対応していないため、通常の画像編集ソフトなどからスキャンすることは出来ない。
 スキャン解像度はカラーが150〜600dpi、白黒が300〜1200dpi相当となる。カラー150dpiで毎分15枚、300dpiで毎分5枚の高速読み取りに対応する。±5%の範囲での傾き補正や、向き調整が自動で行えるので、多少傾いてスキャンされても安心である。また白紙ページ自動削除機能も付いているので、両面スキャンをしていても、白紙ページは自動的に削除して保存できる。カラー・白黒自動判別も行えるので、白黒原稿はファイルサイズを減らして保存できる。接続はUSB2.0である。USB1.1でも動作するが、スキャン速度が遅くなってしまうと言われている。
 価格は44,800円とそれほど安くはないが、実はAdobeのAcrobat(Readerではない方)の6.0と7.0が付属している。これだけでも結構な価格であるため、意外と割安感は高い。
 
まず、見た目は如何に?

 購入して箱から出してみてまず驚くのは、本体の大きさだ。思った以上に小さいのである。

ScanSnap fi-5110EOX2の本体サイズ。VHSビデオテープとの比較だが、意外と小さいことがおわかりいただけるだろう。

上の写真はVHSビデオテープとScanSnap fi-5110EOX2の比較写真である。意外とビデオテープとの差は小さい事からも、本体サイズの小ささが分かるだろう。何しろ、横幅は284mmと、A4用紙+7.5cm程度の大きさしかないのである。
 さて、各部を見てゆいこう。

 前面からである。原稿台をかねている蓋を閉めている状態であるため、非常にコンパクトかつシンプルである。ボタン類もすべて隠れている。この様に使わない間は、非常にコンパクトに収納できるようになっているのはうれしい点だ。


 今度は、蓋を開けた状態だ。蓋は原稿台をかねており、さらにもう一段引き出し、サイドガイドを用紙幅に合わせることで、原稿を安定してセットできる。また、「POWER」ボタンと「Scan」ボタンボタンが用意されるが、蓋を開けると自動的に電源ON、蓋を閉めると自動的に電源OFFになるため、実際はPOWERボタンを使わず必要すら内容になっている。これが、簡単な機能でありながら非常に便利である。


 側面は何もない。ごくごくシンプルである。ちなみに蓋を閉めた状態でのフォルムは、曲線が多用されていて結構綺麗である。


 背面は、電源コネクタとUSBコネクタのみが用意されている。

実際に使ってみる〜ScanSnap Managerの設定〜

 では、さっそく使ってみよう。まずは、ドライバと「ScanSnap Manager」をインストールする。このScanSnap Managerで設定した設定で連続スキャンされ保存されるのである。ScanSnap Managerはタスクトレイに常駐するので、ダブルクリックで設定画面を表示する。ここでは、「アプリ選択」「保存先」「読み取りモード」「ファイル形式」「原稿サイズ」「ファイルサイズ」のタブに分かれている。
 「アプリ選択」では、読み取り後に起動するソフトの選択ができる。例えば、PDF形式で読み取った後Acrobatを起動することも可能だ。もちろん保存するだけでどのソフトも起動しないようにも出来る。「保存ファイル名」では保存時のファイル名が指定できる。スキャンした年月日時分や、任意の文字+連番の選択が可能であるため、管理しやすい名前で保存できる。「読み取りモード」では、解像度や原稿のカラー・白黒の選択、両面・片面スキャンの選択が行える。「ファイル形式」はつまり、保存形式をJPEGにするかPDFにするかだ。「原稿サイズ」は自動的に認識もさせられるが、指定したサイズということもできるので、決まったサイズの場合は指定しておくのも良い。「ファイルサイズ」はファイルの圧縮率を5段階で指定できる。これらの設定は、保存しておくことが出来るので、「雑誌」「漫画」の様に使い分けが可能だ。

ScanSnapの設定画面である。「読み取りモード」では、「解像度」と原稿の「白黒・カラー・自動判別」の選択、「両面・片面」の選択を行う。。

ScanSnapの設定画面である。「ファイルサイズ」では圧縮率を設定する。圧縮を強くするとファイルサイズが小さくなると言うことを視覚的に表示した分かりやすい設定画面だ。


実際に使ってみる〜実際のスキャン行程〜

 ここまで設定しておけば、あとは原稿をセットし、本体のスキャンボタンを押すだけだ。これで自動的に連続スキャンされ、指定されたフォルダに指定したファイル名で指定した形式と圧縮率で保存される。初回のみ設定が必要だが、あとは非常に簡単なのである。

スキャン中に表示される。何枚目までの処理が完了しているかが視覚的に分かるほか、キャンセルが行える。

 スキャンボタンを押すと、上の画面が表示される。何枚目までの処理が完了しているかが分かるため、非常に使いやすい。ちなみに、スキャン中に失敗したと思ったとき(複数枚が同時に給紙されてしまった時など)はキャンセルボタンを押すことで、スキャンを中止できる。
スキャンが完了すると、このような画面が表示される。この時点で何枚スキャンしたかが分かるため、枚数が合っているか確認できる。

 スキャンが完了すると、このような画面が表示される。何枚スキャンしたかが表示されるため、原稿と枚数が合っているか確認できる。また、ここで「継続読み取り」を選ぶと、引き続きスキャンを行うことが出来る。

実際に使ってみる〜スキャン速度と精度〜

 ちなみに解像度は「ノーマル(カラー150dpi)」「ファイン(同200dpi)」「スーパーフィン(同300dpi)」「エクセレント(同600dpi)」の4種類から選べるのだが、スキャン速度はノーマルやファインでは非常に速いのだが、その文紙送りは複数枚を同時に給紙してしまったり傾いてしまう事が多い。かといって600dpiのエクセレントだと、給紙ミスは少ないものの、さすがに遅さが気になる。それを考えると、スーパーファインが、かなり高速でありながら、エクセレント並に給紙ミスが少なくおすすめである。その給紙だが1枚目の原稿のスキャンが終わって排紙する前に次の原稿を吸い込んでおくため、無駄がないのだ。百聞は一見にしかず。下に「実際にスキャンしているfi-5110EOX2を撮影した動画」をおいて置いた。画像をクリックするとダウンロードできるため、一度見ていただきたい。「ファインモード」でスキャンしているのだが、上から二番目の画質設定にしては意外に速い事がおわかりいただけると思う。上記の「次々に給紙する」というのも動画ならわかりやすいだろう。

上の画像をクリックすると、「実際にスキャンしているfi-5110EOX2を撮影した動画」がダウンロードできる。これは「ファインモード」でスキャンしているときの模様だが、上から二番目の画質設定にしては意外に速い事がおわかりいただけると思う。

 ちなみに複数枚同時に給紙してしまう率は、紙質によって差があることが分かる。紙同士がくっつきやすい種類だと、どうしても率は上がってしまう。それでも、一度一枚ずつめくって、紙同士をはがしてからすると、かなり抑えられる。また、給紙ミスは1枚目に多いようなので、1枚目が複数枚給紙されていなければ、あとは自動でも大丈夫な場合が多い。もし途中で複数枚給紙が起こっても、2枚がずれてくっついて給紙された場合は、紙の長さが長くなりすぎるため「ダブルフィードの可能性がある」とメッセージが表示され止まるので、続きからやり直せる。あとはスキャン終了時に表示されるスキャン枚数と実際の枚数を比較すればより安心だ。  一方、原稿が傾いて給紙される場合だが、こちらはスーパーファイン以上であればそれほど多くはない。また、原稿が傾いて吸い込まれたときの補正機能も用意されるため、安心だ。しかし、この補正機能は100%とは言い切れないようだ。文字を認識して補正するらしいのだが、白地(またはそれに近い薄い色)に黒字では無い場合は補正できないことが多い。また、漫画のような原稿ではほとんど補正されないどころか、間違って正しい原稿を傾けてしまうことがたまにあった。そのため、雑誌スキャン時はONに、漫画スキャン時はOFFにしている。また、原稿の左右に軽く手を添えてやると、ほぼ給紙ミスはなくなることが分かった。
 ちなみに、スキャン時の音は現在の静音プリンタと比べると若干大きい。が辛うじて満足できるレベルだ。

スキャン画質は?

画質圧縮率ファイルサイズ
PDFサンプル1スーパーファイン(300dpi)3.71MB
PDFサンプル2ファイン(200dpi)1.66MB
PDFサンプル3スーパーファイン(300dpi)1.34MB
PDFサンプル4スーパーファイン(300dpi)620KB
PDFサンプル5スーパーファイン(300dpi)882KBOCR実行
JPEGサンプル1スーパーファイン(300dpi)1.77MB
JPEGサンプル2スーパーファイン(300dpi)830KB
JPEGサンプル3スーパーファイン(300dpi)295KB

 さて、画質を見ていこう。結果を言ってしまうと、それなりに綺麗だ。もちろんフラッドベッドスキャナのと比べると、若干劣るようにも見えるが、十分綺麗と呼べる画質だ。もっとも、ノーマル150dpiの「ノーマル」や200dpiの「ファイン」では、解像度が低い上、紙送りが高速すぎるためか、原稿が傾いたり途中でずれたりする事がありそれほど綺麗とはいえない。上のPDFサンプル1と2は圧縮率などを最低の1で、スーパーファイン(300dpi)とファイン(200dpi)でスキャンした結果だ。200dpiだと若干解像度不足に見えるが、300dpiの「スーパーファイン」ではかなり美しい。このあたりであれば、十分な満足できる画質だ。
 もう一つ画質に関係がある設定項目として圧縮率があるが、これは最低の「1」から、せいぜい「3」までが良いように感じた。上のPDFサンプル1と3と4はスーパーファイン(300dpi)という点は同じで、圧縮率を最低の1、中間の3、最高の5に変えた場合である。縮小表示だと分からないが、拡大してみると、圧縮率を上げていくに従って、画像部分のノイズが増えていくのが分かる。3までは何とか耐えられる範囲だが、5はかなりノイズが多い。もちろん内容の重要性や保存目的と、ファイルサイズによって使い分ければよいのだが、多少容量が大きくなってもとりあえず綺麗な方が良いというのであれば「1」か、せいぜい「3」をおすすめする。私は少なくとも、綺麗に保存することを目的にするので「1」主に使うことになりそうだ。

 さて、PDFサンプル5は、PDFサンプル1に対してOCRをかけ、文字部分をテキストに変換した物である。ファイルサイズは大きく減少するが、OCR品質はあまり高くないようで、実用性はイマイチだ。それ以外に、JPEG形式のファイルも圧縮率1、3、5の3段階のファイルを用意した。PDFのファイルの場合と似ているが、特に画像のノイズが極端に多くなっているように見える。

うれしい点と問題点

 ScanSnapシリーズは、かなり前から徐々に改良されてきてこの機種になっているため、操作性は非常によく考えられている。すでに書いたが、電源のオンオフが原稿台をかねており、蓋を開けるだけでオン、蓋を閉めるとオフになるという簡単さが非常にうれしい。設定が完了していれば、蓋を開け、原稿をセットし、Scanボタンを押すだけなので、非常にシンプルだ。
 また、スキャンミスをしたとき、パソコン画面上でスキャン中止が行えるのだが、その際に「これまでにスキャンした画像を削除するかどうか」を聞いてくれるのが、何気ないようで非常に便利なのだ。かなりの枚数をスキャンしたところでのミスならば、ミスしたものだけを削除して続きから削除させても良いのだが、10枚程度のスキャンならば一からやり直した方が速い場合もあるだろう。その際に、わざわざ保存先フォルダを開いて削除する手間を省いてくれるのだ。
 これまでは便利な点でしたが、逆に一つ気になる点もある。それは、スキャン結果に縦筋が入ることがある事だ。といっても、これは原因がはっきりしている。CCD部分のガラス面についた「ホコリ」や「雑誌のとじ目の糊」である。フラットベッドスキャナならば、ガラス面にホコリが付いても、CCD側が移動するのでホコリがそのままスキャン結果に見えるだけだが、fi-5110EOX2は原稿の方が動くので、ガラス面は同じところを使用する。結果、ホコリなどが付いたところは縦方向に白い線となってしまう。使わないときは蓋を閉め、使う前に一度柔らかい布などで拭いた方がよいかもしれない。

 ズバリ!この製品は買って良かったと思える。今まで、フラッドベッドスキャナ(GT-9700U)では10枚の300dpiの両面スキャンが、10分以上かかっていたのが、1分程度でスキャンできるようになったのだ。しかも、手動で裏返していたフラッドベッドスキャナでは10分の間席を離れることが出来ないが、fi-5110EOX2はScanボタンを押したら、放っておけるので、実質保存先の設定と原稿セットのみでよい。非常に楽になった。これで、我が家の雑誌の切り抜きはすべて電子化できそうだ。また、ソフトウェアがかなり洗練されており、考え抜かれている事もこの製品の良さをさらに高めている。
 一つ悲しいのは、購入した翌日に後継機種のfi-5110EOX3が発表されたことだ。しかし、画質や速度などの機能面では進化しておらず、ソフトウェアが「e-文書法対応」になっただけのようなので、ほっとした。
 原稿の電子化を考えているという人は、是非購入していただきたい。この手間の軽減度合いは4万5000円の価値が十分にあるといえる。

(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
   富士通  http://jp.fujitsu.com/
   ScanSnap  http://scansnap.fujitsu.com/jp/product/index.html


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