第37回
Hi-MDウォークマン
SONY MZ-RH1
(2006年7月12日購入・2006年9月20日公開)



MZ-RH1の特徴は?

 MDは登場してから、少しずつ進化してきた。1992年に登場した当初は74分ディスクに74分、80分ディスクに80分入るだけのものであった。これが、2000年には80分ディスクに160分や320分録音できるMDLP2やMDLP4モードに対応した。そして、2001年にはパソコンに接続できるNet MDに対応機が登場した。続いて従来のMDやHi-MDディスクにデーターも記録でき、Hi-MDディスクになら、従来よりも長時間の45時間の録音が出来るHi-MDに対応した。そして今回MZ-RH1では、パソコンへ音楽を転送できるようになったのである。
 Net MDの時にMDレコーダーはパソコンに接続できるようになった。パソコンに接続し、タイトル入力や音楽削除などの編集が行えるほか、パソコン内の音楽データをMDに転送できるようになった。これにより、ネット上で購入した音楽をMDに転送して聞くという新しい使い方が生まれた。また、Hi-MDに対応した際に、パソコン内の音楽以外のデータを転送できるほか、アナログ入力やマイクからHi-MDモードで入力された音声ファイルをパソコンに転送できるようになった。しかし、過去の曲をパソコンに保存することは出来なかったのだ。
 今回、MZ-RH1でついに音楽がパソコンに転送できるようになった。iPodを初めとするデジタルオーディオプレイヤーが急速に普及してきている中、CDやネット配信で音楽を持っている場合は良いものの、MDに持っている音楽や、過去にマイクで録った音をデジタルオーディオプレイヤーに転送するのは大変だった。私もロードテスト第20回で行ったように、アナログケーブルで録音し、波形を見て編集し保存する必要があったのだ。これがボタン一つで転送でき、しかも曲ごとにちゃんと分かれて転送されるのである。
 ちなみに、MZ-RH1はポータブルタイプのMDレコーダーなのだ。今まで持っていたNet MD対応のポータブルMDレコーダーは故障してしまっていて、ちょうどMDの漢字の曲名入力に困っていた。Net MD対応コンポも持っているが、パソコンとコンポが離れすぎていて、USBケーブルが届かないのだ。MZ-RH1なら、パソコンのそばに置けるため、その用途にも使える。実勢価格は4万円とけっして安くはないが、便利な製品なので購入することに決めた。
 ヨドバシカメラマルチメディア梅田に買いに行くと、なんと売り切れだという。絶対的に急ぐわけでもないので予約したが、入荷はいつになるか分からないらしい。その店員さんの話によると、需要が予想以上に多く、SONYは全ポータブルMD生産ラインをMZ-RH1生産に回しているが、それでも間に合わない状態という。これはどこまで本当の話か分からないが、とにかくそれくらいすごい売れ行きらしい。4万円という、ポータブルMDレコーダとしては高価な製品にもかかわらず、ここまで売れるとは、皆が待った製品と言うことだろう。
 実際には1週間程度で入荷したという連絡が入ったので、翌日取りに行った。39,800円で13%ポイント還元であった。

MZ-RH1を実際に触ってみる

MZ-RH1パッケージ。他のMDウォークマンの箱と同じデザインのものだ。

 MZ-RH1のパッケージは、一般的なポータブルMDレコーダーと同じだ。本体とガム型バッテリ、スティック型のリモコン、イヤホン、充電ケーブルなどである。順に見ていこう。
 本体はこれまでのMDウォークマンと比べて特に大きいわけでもない。特徴としては側面に付いた有機ELディスプレイだ。黒地の中に浮かび上がる文字は明るく見やすい。また完全な側面でなく、軽く角度が付いて上を向いているのも見やすい要因だ。残念なのは曲名表示が出来ないことである。
MZ-RH1本体。シルバーとブラックの落ち着いた色合いで、側面には有機ELのディスプレイが内蔵されている。

MZ-RH1の有機ELディスプレイ。このようにトラック番号と経過時間の他、録音レベルや再生レベルが表示でき、かなりグラフィカルな感じである。有機ELの表示は明るく見やすい。

 バッテリはこれまで私の持っていた両端が端子になっているタイプではなく、それより若干横幅があり薄くなっている、片方の端に+極と−極がある充電池だった。スティック型のリモコンは従来のMDウォークマンと同じものだ。スティック状になっており、1行表示ができるリモコンだ。もちろん漢字表示にも対応している。面白いのは充電ケーブルだ。本体にACアダプタ接続用の端子はなく、USBケーブルで充電するようになっている。ただ、USB充電だけではパソコンを持っていない人が困ると言うことで、USBケーブルの先をコンセントにさせるように変換するアダプタも付属している。USB充電を基本とするあたりが、パソコンと接続しての使用が第1目的と考えているという事だろう。

MZ-RH1付属のリモコン。従来のMDウォークマンに付属していたものと同じスティック型だ。漢字表示に対応しており、6文字まで表示できる。


音楽をパソコンに転送する

 パソコンに転送する場合は「Sonic Stage」を使用する。このソフトは、これまでNet MD対応機でタイトル入力やパソコン内の音楽を転送する場合に使っていたソフトなので、慣れている人も多いはずだ。MZ-RH1にはVer.3.4が付属していたので、これより古いバージョンを持っている場合はバージョンアップすればいいが、これより新しいバージョンや「Sonic Stage CP」をインストールしている場合はこれでも動作するらしい。実際に我が家は既にSonic Stage CPをインストールしていたが、そのままで問題なく使えた。
 パソコンとMZ-RH1をUSBケーブルで接続し、Sonic Stageを起動する。最初はSonic StageでMZ-RH1が接続されていると認識されるのに10秒ほどかかるが、これが終わると「音楽を転送する」の部分をカーソルを持っていくと表示されるリストから「Hi-MD」をクリックする。これでウィンドウ左に登録したパソコン内の音楽ファイルが、右側にMZ-RH1に挿したMDの音楽の一覧が表示される。ここで、右側から転送したい曲を選択する。この際Ctrlを押しながらクリックして複数選択も出来るし、Shiftを押しながらクリックして範囲選択も可能だ。その後左向き矢印をクリックすると音楽の転送が始まる。このように非常に簡単だ。Sonic Staegeを起動して、転送する音楽を選択し、矢印ボタンを押すだけなのだ。

SonicStageの画面(画面は付属のSonicStage 3.4でなくSonic Stage CP)。左側がパソコン内の音楽、右側がMD内の音楽である。音楽を選択した上で、真ん中の左向き矢印をクリックすると音楽が転送される。
クリックで拡大します。

 この時、転送される形式はATRAK3形式となる。ビットレートは「転送モードの設定」の「詳細設定」から「ATRAC 256kbps」と「PCM 1411kbps」が選べるが、単にパソコン内での再生と、デジタルオーディオプレイヤーへの転送なら「ATRAC 256kbps」で十分だろう。ちなみにATRAC形式で256kbpsというのは、かなり高いビットレートだが、デジタルオーディオプレイヤーに転送する際には改めてビットレートが選べるので、音質を考えると256kbpsくらいが良いのだろう。ちなみに、MDにアルバム名とタイトルを入力してある曲を転送する場合は、ファイル名は「トラック番号」+「タイトル」になる。また、転送先の音楽の「タイトル」の項目にはMDのタイトルが自動入力され、転送先の音楽の「アルバム名」の項目にはMDのアルバム名が自動入力される。細かい配慮は嬉しいが、残念ながらこのままでは100%とは言えない。というのも、MDの場合、日本語タイトルは英文字も全角に自動的に変換されてしまう。しかし、デジタルオーディオプレイヤーの場合は半角が扱えるので、半角に打ち直した方が見やすい。また、私の場合、色々なアーティストのシングル曲を1枚のMDに入れ、アルバム名には年と月を、タイトルには「曲名/ アーティスト名」という形で入力している。この場合、パソコンに転送しても、タイトル欄に「曲名/アーティスト名」と入力される。ところがパソコン内やデジタルオーディオプレイヤーで扱うファイルの場合、曲名とアーティスト名に別々の入力欄が用意されている。つまり、タイトル欄に入力されたアーティスト名を、アーティスト名入力欄に移さなければならない。
 転送は、パソコンからMDに送るよりも遅い。Pentium M-1.73GHzにメモリ512MBのPCに転送する場合、14曲で合計69分25秒のディスクだと、10分6秒かかった。遅いと言っても実時間の約7分の1であり、アナログで取り込む場合と比べると随分早く感じる。

取り込んだ音楽をどうするか

 取り込んだ音楽は、先ほど書いたようにATRAK3形式である。この先は、持っているデジタルオーディオプレイヤーによって異なる。もしSONY製のデジタルオーディオプレイヤーであればATRAK3に対応しているし、SonicStageで転送することになるので、そのままデジタルオーディオプレイヤーを接続して転送すれば良い。タイトルもアルバム名もすべて転送される。我が家の場合はこのパターンなので非常に便利である。
 では、もしiPodなどSonicStageで転送しないデジタルオーディオプレイヤーの場合はどうすれば良いのだろう。SonicStageに「WAVで保存する」というのがあるので、これでWAVE形式で保存すればいい。もし、持っているデジタルオーディオプレイヤーの転送ソフトが、WAVE形式を対応形式に変換してプレイヤーに転送できるなら、このまま転送ソフトに読み込ませれば良い。もし転送前にMP3形式等に変換しなければならないなら、WAVEファイルをMP3エンコーダーでエンコードすればいい。ただ、このWAVE形式へ変換する方法を取ると、タイトルやアルバム名などがすべて消えてしまうので、また入力し直さなくてはならない。著作権の関係等で難しいのかもしれないが、SonicStageからMP3に変換できれば、より便利なのにと思うと残念である。

 このように若干手作業が残るものの、非常に便利である。これまでのアナログ端子で入力し、波形を見て曲間を指定し、1曲ごとに保存するやり方と比べると、手間は格段に少なくなっている。また、作業時間も少ないが、取り込みにかかる時間もアナログ入力だと70分の音楽は70分かかるところMZ-RH1だと10分になる。両方の短縮により、今までは1日2枚程度しか出来なかったのが、6枚程度できるようになった。その上、音質も格段に良い。3万9800円というのは確かに高価だが、MDからデジタルオーディオプレイヤーへの移行を考えている人は是非検討して頂きたい。

(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
   SONY  http://www.sony.co.jp/ 


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