第54回
イー・モバイル通信カード
D01NXII
(2008年4月5日購入・2008年8月24日公開)

ここでの内容はイー・モバイル加入時の情報を元に書かれており、現在では料金プラン、サービス内容、特典などが異なる場合があります。ご了承下さい。



イー・モバイルのサービスとは?

 イー・モバイルという会社を知っているだろうか? NTTドコモ、au、ソフトバンクに続く第4の携帯電話会社として2007年3月31日にサービスを開始した会社である。このイー・モバイルのおもしろいところは、音声通話ではなくデータ通信カードからサービスを開始したことだ。そして、このデータ通信が非常に魅力的なのだ。サービス開始時の通信速度は下りで3.6Mbpsと他の第三世代携帯電話と同レベルであり非常に高速な上、月額料金は使い放題で4,980円(1年契約時)とモバイルデータ通信としてはかなり安い。このサービス開始当時、他社の場合を見てみると、データ通信カードの月額料金は10.000円前後であった。携帯電話端末のインターネット定額プランであればもっと安いが、これは携帯電話端末での通信に限られ、パソコンにつないだ場合は従量制となってしまう。その中で、パソコンでのデータ通信が行えて4,980円というのは非常に魅力的だ。
 というのも、現在使っているAIR-EDGEはネット25コースで3,969円(年間契約+A&B割加入)であり、1,000円ほど安いものの月25時間以上使うと従量制になる。その上通信速度は最大204kbpsである。1Xコースから4Xコースへ変更し最大32kbpsから最大128kbpsに、さらにW-OAMに対応した通信カードに変更し最大128kbpsから最大208kbpsにアップさせるなど、小さな速度改善を行ってきたが、「多少はマシになったものの全体的にはかなり遅く我慢して使う必要がある」という使い心地だった。しかしイー・モバイルの場合、最大3.6Mbps、実際に家電量販店の体験コーナーで使ってみると、「遅めのコースのADSL」といったイメージで、十分高速に感じた。このとき、イー・モバイルに興味を持ったのだ。

イー・モバイルに切り替えるための条件とは?

 このような魅力的なサービスであるイー・モバイルであるが、残念ながら今すぐにAIR-EDGEから切り替える事はできない。いくつか越えなければならない問題がある。
 第1はザウルスでも利用するとこと考えると、コンパクトフラッシュ(CF)型の端末が必要であることだ。残念ながらサービス開始時に用意された端末はPCカード型で、少ししてUSB接続型が追加されたものの、CF型は「発売予定」であった。
 第2は第1の続きであるが、CF型の端末にザウルス用のドライバが用意される必要がある事だ。ドライバがなければCF型の端末が発売されてもザウルスでは使用できない。
 第3はサービスエリアだ。新しい携帯電話であるイー・モバイルは、サービス開始当時にアンテナが極端に少なく、大阪の都心部から電車で15分の地点である我が家でもエリアに入っていない状態だ。これでは使えるエリアがあまりにも限定されるので、不便だ。もう少し提供エリアが広がる必要がありそうだ。
 これらを克服するまで待つことになる。

イー・モバイルに切り替える条件が整った

 上記の条件をクリアするまで待っていたところ、早々に第1の条件が整った。2007年4月13日にCF型端末であるD01NXが発売されたのである。しかしPDAへの対応は「予定」となっており、この時点では第2の条件はクリアできていない。しかも不安材料として「PDA」への対応となっており、「ザウルス」への対応と明言されていない事もあった(つまりWindows Mobile用だけの可能性もある)。しかし公式ページへの記載ではない物の、某サイトのインタビューに「2007年夏ごろにはザウルス用ドライバを提供する」という答えが載っていたのは安心である。ところが、その2007年夏が来てもザウルス用ドライバは公開されなかった。そして2008年2月7日、ようやくザウルス用のドライバが公開された。このころにはエリアもかなり広がり、他社携帯電話ほどではないものの実用的なレベルになった。これで、AIR-EDGEから乗り換える準備は整った。
 さらに、忙しかったためにイー・モバイルへの加入手続きを先延ばしにしていたところ、7.2Mbps通信のサービスが始まった。しかも端末が対応していれば月額料金は変わらないときている。せっかくここまで待ったのだから7.2Mbps対応のCF型端末を待つことにした。そして2008年3月29日、7.2Mbps対応のCF型端末「D01NXII」が発売された。これでイー・モバイルに加入する決心が付いた。

D01NXIIとは?

 さて、このD01NXIIにはなかなか興味深い点がある。先に発売された、7.2Mbps通信対応端末の型番は、USB接続型がD02HW、PCカード型がD02NEとなっており、3.6Mbps通信対応端末のD01HW、D01NEからそれぞれ型番の「01」が「02」になっていた。しかし、CF型のD01NXだけは、D02NXではなくD01NXIIと後ろに「2」が付いている。これは、次のようなスペックによるものだと予想できる。実は7.2Mbps通信はWindowsのみの対応となる。ザウルスを含むPDAやMac OSでは従来通り3.6Mbps対応なのである。つまり、完全に7.2Mbpsに対応していないので、D02NXではなく、D01NXの2であるという型番になったのではないだろうか。といっても、ザウルスでそこまで高速通信されても、ザウルスの方が付いていけないと思われるので、私の場合は問題ではないだろう。
 
料金プランは?

 さて、契約するとなると料金プランを考えなければならない。サービス開始当初は月額4,980円で定額である「データプラン」しかなかったが、現在では2段階定額の3プラン「ギガデータプラン」「ライトデータプラン」「スーパーライトデータプラン」が追加されている。それぞれの料金プランの特徴と料金変化をグラフに表したのが以下である。

料金プラン別料金と上限パケット数
(新にねん契約時・2008年4月現在)
料金プラン スーパーライトデータ ライトデータ ギガデータ データ
下限金額 1,000円 2,480円 3,980円 5,980円
下限金額で使える
最大パケット数
32,825パケット
(約2.92MB)
141,000パケット
(約17.21MB)
8,388,700パケット
(約1GB)
完全定額
従量制部分 0.042円/パケット 0.0105円/パケット 0,0105円/パケット
上限金額 4,980円 5,480円 9,980円
上限金額に達する
パケット数
118,575パケット
(約14.8MB)
426,700パケット
(約52.06MB)
8,960,100パケット
(約1.068GB)

料金プラン別料金グラフ
(新にねん契約時・2008年4月現在)

 料金プランは使い方によって様々なパターンが用意されていることが分かる。データープランは4,980円で使い放題である。ギガデータプランは1GB/月まで3,980円で、その後従量制となり、9,980円(1.068GB)が上限となる。ライトデータプランは17.21MB/月まで2,480円で、その後従量制となり5,480円(52.06MB)が上限となる。一番安いスーパーライトデータプランは、2.92MB/月まで1,000円で 、その後従量制となり4,980円(14.8MB)が上限となる。
 いずれも下限金額内で使うなら、他のプランよりお得なようになっている。では実際にどの範囲ならどのプランお得なのかをまとめてみた。

最も安くなる料金プラン
0〜7.2MBスーパーライトデータプラン
7.2MB〜34.65MBライトデータプラン
34.65MB〜1.011GBギガデータプラン
1.011GB〜スーパーライトデータプラン
データプラン

 まず、1ヶ月に1GBまでの使用、つまり簡単なネットやメールをする程度ならギガデータプランがお得だ。しかし、ひとたび1GBを越えると9,980円まで上がってしまうのは注意が必要だ。1ヶ月に30MB前後、たまにメール確認をする程度であればライトデータプランがお得だ。上限も5,480円とそれほど高くない。スーパーライトデータプランは7.2MBまでは1,000円だが、7.2MB程度はちょっと使えばすぐに越えてしまう。実質は「使わなかった月は1,000円、使った月は4,980円」という感覚だろう。スーパーライトデータプランだけ、従量課金部分の上がり方が他のプランの4倍になっている事からも、使ったか使わなかったかの2パターン的な料金プランだと言える。このプランは上限が4,980円というのがミソで、よく使った月でもデータプラント同じ金額までしか上がらない。そのことから、1.011GB以上に使う場合、スーパーライトデータプランとデータプランが最安値となる。
 ところで、スーパーライトデータプランの上限がデータプランと同じなら、データプランの意味がないのでは無いかと思うのではないだろうか。しかし、スーパーライトデータプランを除く3プランは、自宅用に10MbpsのADSLを月額料金無料で引くことが出来るのである。つまり、家では安定したADSL、屋外では無線でという場合は、実質データプランの方が安くなるのである。
 さて、この中で私が選んだのは「スーパーライトデータプラン」だ。これまでAIR-EDGEを使ってきて分かったことは「使う月はよく使い、使わない月は全く使わない」という事だ。つまり使う月と使わない月に差が大きいのだ。1GBまで3,480円のギガデータプランも魅力的だが、上限が1万円近いのはいただけない。その点で使わない月が1,000円だけでいけ、上限もそれほど高くならないスーパーライトデータプランは魅力的だ。また我が家は、既に光ファイバーインターネット回線を引いているため、ADSLが無料で使えなくても何の問題もない。また料金プランは後でも変更できるため、とりあえず安いこのプランでスタートすることにした。

加入申し込みをする

 では早速申し込みに行こう。実はもう一つ決めなければ行けないことがある。購入方法だ。
購入方法
購入方法端末料金
(D01NXII)
スーパーライトデータプラン
月額料金
最低利用期間
ベーシック33,980円2,000円〜5,980円なし
ベーシック+年とく割33,980円1,000円〜4,980円1年
いちねん9,980円2,000円〜5,980円1年
新にねん9,980円1,000円〜4,980円2年

 実は先程見てきた月額料金は、「ベーシック+年とく割加入」か「新にねん」による月額料金で、「ベーシック」又は「いちねん」の場合は1,000円増となる。また、端末料金も異なる。簡単に言えば、ベーシックは端末が33,980円で月額料金も1,000円増だが、最低利用期間はない。最低利用期間を1年にすれば、端末が安く(9,980円)なるか、月額料金が安くなる。そして、最低利用期間を2年にすれば、端末と月額料金の両方が安くなる。
 私の場合は一度加入すれば2年くらいは使うと思われるので、「新にねん」加入に決定である。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で加入手続きを行った。なお、イー・モバイル加入でパソコンが3万円引きになると言うキャンペーン中だったので、今はやりの49,800円パソコンを19,800円で購入するのもおもしろそうだと考えたのだが、3万円引きを適用する場合は「いちねん」での契約となってしまうとの事だったので、あきらめ、申し込みだけを行った。
 携帯電話と同じであるため、申し込みを行うと、50分程度で端末を受け取ることが出来た。即日利用開始できる事もADSL等に対するメリットと言える。


初期設定を行う

 早速初期設定をしてみよう。購入後まずすることは付属「EM chip」を端末に挿し込むことだ。「EM chip」とはユーザ情報が記録されたICカードである。これを通信端末に挿し込むことで、「そのEM chip内のユーザ情報」のユーザとしてカードを使用することが出来る。EM chipを台座から取り外し、D01NXIIの端子側のトレイを引き出して乗せるだけだ。これで端末側の準備は整った。
 それでは、まずはパソコンから初期設定を行う。付属のCD-ROMを入れ、手順に従って進めていくとドライバとユーティリティがインストールされる。そして、D01NXIIをパソコンに挿し込む。ちなみにパソコンで使う場合は付属のPCカードアダプタを取り付けてからパソコンに挿し込むことになる。すると、新しいハードウェアの接続ウィザードが起動するので、「ソフトウェアを自動的にインストールする」を選び、ドライバを組み込む。あとはユーティリティを起動する事になる。接続先などの設定はあらかじめ端末に登録されているという事なので、ユーティリティの「接続」ボタンをクリックするだけで接続できる。1〜3秒ほどで接続が完了する。特につまることもなく、簡単に接続することが出来た。

D01NXII本体(右)とPCカードアダプタ(左)である。パソコンで使用する時はPCカードアダプタを取り付けて使う。

 続いてザウルスSL-C3200で設定してみよう。ザウルス用のドライバはCD-ROMには含まれておらず、イー・モバイルの公式ホームページからダウンロードする必要がある。なお、公式ホームページの「お客様サポート」の「ダウンロード」ではなく、「製品」の「D01NXII」のページの各種ダウンロードという項目に「ユーティリティソフト/ドライバ」というリンクがあるので、そこから「D01NX II Zaurus ドライバ」をダウンロードする。一緒に「D01NX II Zaurus ドライバセットアップマニュアル」もダウンロードしておくと便利だ。
 さてダウンロードしたファイルはSDカードなどに入れてザウルスに挿し込む。そして、ファイルタブからそのファイルを実行するか、「ソフトウェアの追加/削除」からファイルを選び、ドライバをインストールする。ここで、D01NXIIをザウルスに挿し込む。続いて「設定」の「ネットワーク設定」で、「ダイヤルアップ接続」になっていることを確認し「追加」をタッチする。すると、「PPP ダイヤルアップ接続[D01NX]」という選択肢が追加されているはずなので、これを選択し「選択」をタッチする。さらに表示される編集画面でユーザ名欄とパスワード欄に「em」、電話番号欄に「*99***1#」(イー・モバイルが提供するインターネット接続サービスの接続先に接続する場合)を入力する。これでOKである。パソコンの場合と比べると手動入力する必要があるが、セットアップマニュアルに従って進めていけば特別難しくもなく設定が完了した。

使い勝手は?

 さて早速使い勝手を検証してみよう。通信速度だがこれまで使ってきたAIR-EDGEの4XのW-OEMと比べると雲泥の差である。確かに家の光ファイバーインターネットと比べれば遅く感じるが、十分実用的なレベルだ。一昔前のADSLといった感じだ。画像が多用されたページでもどんどん開くし、ファイルのダウンロードもそれほど待たずに行える。はっきり言って、ワイヤレスでここまでの速度が出せるのは驚きだ。これなら「ワイヤレスだから遅くても仕方がない」と我慢しなくても、ストレスなくインターネットが楽しめると感じた。では実際の通信速度を測ってみよう。


 これまで使ってきたAIR-EDGEの4X(W-OAM)と比較した。今回の比較に使用したパソコンはWindows Vistaのパソコンであり、D01NXIIはWindowsから利用する場合は7.2Mbpsで通信できる。しかし、7.2Mbpsサービスは都市部や人口密集地域となっており、計測した我が家では3.6Mbpsサービスの地域である可能性が高い。ちなみにAIR-EDGEの4X(W-OAM)は最大204kbpsである。
 まずはダウンロード(下り)の速度である。驚くことにAIR-EDGEでは0.1Mbps(100kbps)弱だった速度が、イーモバイルでは2Mbps以上になっている。BNRスピードテストでの速度は遅いが、それ以外は2.2〜2.6Mbpsとなっている。なんと、AIR-EDGEの22〜26倍の速度だ。ここまで高速だとは思っていなかったため非常の驚いた。また最大3.6Mbpsの無線通信で2.2〜2.6Mbpsとは比較的良好な数値であることも驚かされた。よくよく考えれば、2000年にサービスが開始されたADSLは最大1.5Mbpsであった。つまり、数年で無線でその速度を超えることが出来るようになったのだ。2Mbps以上出ていれば、かなり快適だし、ホームページを閲覧するだけなら(動画を見たりダウンロードしたりしなければ)、家の光ファイバーインターネットとほとんど違和感なく使えるようになった。


 続いてアップロード(上り)の速度である。イー・モバイルはHSDPA技術を使い高速通信しているが、この技術はダウンロードのみに適用されるので、アップロードは最大384kbpsである。そのため、AIR-EDGEの5〜8倍とダウンロードほどの差はないが、それでも驚くほど大幅なスピードアップだ。また最大384kbpsで320〜365kbpsとかなり良好な数値が出ている。
 このように、ダウンロード、アップロード共にこれまで使ってきたAIR-EDGEから大幅なスピードアップを図ることが出来、無線とは思えない快適さを手に入れることが出来た。

外部アンテナを使ってみる

 実はD01NXIIには外部アンテナが付属している。D01NXIIの側面に外部アンテナ用コネクタがある。ケーブルは50cmと短く、電波を強めるような物でもないので、単に「少しでも電波の良いところにアンテナを取り付けられる」という代物だ。アンテナはアンテナホルダーに取り付けて使うが、2種類の取り付け方ができるようになっている。スタンドと垂直に取り付けると、アンテナを机の上などに立てて使えるようになる。また、スタンドと平行に取り付けると、パソコンのディスプレイに挟んで使えるようになっている。なかなか工夫されている。家の中で電波状態の悪いところで実験してみると、D01NXII本体のアンテナではアンテナ表示が1本だったが、外部アンテナをディスプレイに取り付けると、表示が2本となった。多少の効果はあるようだ。

外部アンテナ(左)と外部アンテナホルダー(右)である。標準で付属しているのは珍しい。ケーブルは50cmとそれほど長くない。

机の上に置いて使う時はアンテナホルダーに立てて取り付ける。

ホルダーに平行に取り付けると、液晶ディスプレイ部に挟むことが出来る。2種類の取り付け方ができるなど、なかなか工夫されている。

 ただし、ディスプレイ部につける場合ならまだしも、机の上に置いて使う方法ではケーブルが50cmというのは短い。大してパソコンから離すことが出来ないのだ。電波状態の悪いところにパソコンを置き、アンテナは電波状態の良い窓際に設置するというような使い方のために、せめて3mほどの延長ケーブルが欲しかったところだ。

 イー・モバイルは無線とは思えないすばらしい速度であった。一般的なホームページならほとんどストレス亡く見られるようになったのは驚きである。これで、屋外や旅行先でもインターネットが普通に使えるレベルになったと言える。これで月額料金が1万円というのであればイマイチだが、イー・モバイルなら最高でも4,980円。しかも使わなかった月は1,000円しかかからない。速度と月額料金のどちらも高いレベルで満足がいった。屋外でインターネットをしたいという人だけでなく、ADSLで速度の出ない人、引っ越しの多い人、電話回線が無い人など、様々な人にお勧めできるサービスだ。「屋外でインターネットを使うかどうか分からないが一度試してみたい」という人は、使わなければ月1,000円になるのだから一度試していただきたい。

(H.Intel)


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    イー・モバイル  http://emobile.jp/index.html 


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