第75回
ノートパソコン用冷却台
エレコム SX-CL07SV
(2009年7月9日購入・2009年6月23日著)



ノートパソコンが熱い!

 7月になって気温が上がってくると、困った問題が起こってきた。ノートパソコン「VGN-SZ94S」のキーボードやパームレスト部分がかなり熱くなってきたのだ。ビデオ編集や音楽圧縮などのCPU使用率の高い作業や、オンラインゲームなどのグラフィックチップの使用率の高い作業では特に熱くなってしまう。ふれているのが不快な温度で、長時間さわっていられないほどだ。排気口からはかなり熱い風が出ているが、それだけでは十分に放熱できていないように感じる。ちあみに、排気口は背面にあるため、熱い風が手や体に当たることはないのは幸いだ。それでも、キーボードやパームレストが触れられないほど熱いと作業に支障も出るし、なによりパソコン本体にとってもあまり良さそうではない。
 そこで、パソコンの下に敷くタイプの冷却台を購入してみることとした。ちなみに冷却台は大きく分けて2種類ある。1つが金属板タイプやゲルを封入したシートタイプである。これらは、特に熱い部分から吸熱し全体から放熱したり、表面から吸熱し裏面から放熱するなどしてパソコンを冷却する。もう一つは冷却ファンを搭載し、機械的に風を当てるなどして冷却するタイプである。当然冷却ファンを搭載した製品の方が冷却効果は高いが、ファンの動作音がするというデメリットもある。そして、今回は冷却能力を重視して冷却ファン付きのタイプを購入したいと思う。また冷却ファンには、パソコンに向かって空気を当てるタイプと、空気を吸うタイプがある。パソコンの底面に排気ファンがある場合は、そこから出る熱い空気を吸って外部に廃棄する方が良いため「空気を吸うタイプ」が、それ以外は空気を当てるタイプがよい。使用するノートパソコン「VGN-SZ94S」は底面に排気ファンはないため、空気を当てるタイプを選ぶとしよう。

ファン付き冷却台を選ぶ

 ファン付きの冷却台は様々な製品があり、価格も1000円台から1万円以上までと大きな差がある。違いは、素材と冷却能力、動作音などによる。素材というのは本体の素材でアルミニウムなどの金属素材とプラスチックの製品がある。前者の方が熱伝導性がよい分冷却能力は高いが価格も高い。冷却能力と動作音は搭載するファンによる。冷却ファンの数は1つから3つまで様々であり、ファンの数が同じでも回転数が異なると冷却能力と動作音に違いがある。回転数を上げると風量が上がり冷却能力も上がるが動作音も大きくなるのが一般的だが、上位製品には超静音ファンを搭載する事で風量を高めながら動作音を小さくしている製品もある。風量と動作音は各製品のホームページに掲載されているため、それらを参考にしつつ製品を決めていく。ちなみに電源はどの機種もUSB端子からとなっており、コンセントに接続する必要はない。
 さて様々な製品の中で気に入ったのがエレコムの「SX-CL07SV」である。1800rpm(毎分1800回転)で最大風量11.27CFMの冷却ファンを2基搭載しており、冷却能力はなかなかである。また騒音レベルは21.53dBと静音を謳った製品などと比べると劣るが、十分に静かな方である。天板の材質はアルミであり、全体が手前に傾斜しているためにキーボードも打ちにくくはなりにくい。上位製品と違いアルミなのは天板のみでそれ以外はABS樹脂製だが、天板がプラスチックの製品よりは良さそうだ。これで価格が4,980円と比較的安価なのが良い。また横幅が334mmと、ノートパソコン「VGN-SZ94S」の横幅315mmに近く、横に余計な飛び出しがないため、マウス操作もしやすそうであるのも気に入った点である。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で4,980円(10%ポイント還元)で購入。

「SX-CL07SV」の外見

 では購入した「SX-CL07SV」を見てみよう。「SX-CL07SV」は天板のみアルミでそれ以外は黒のABS樹脂である。ファンは天板の後方に取り付けられており、背面のスリットから吸気する形になっている。排気穴として丸穴が1つの横長の形に開けられているが、ファンは2つ内蔵されている。よく見ると、デスクトップパソコン用のケースファンが内蔵されているのが見える。たしかに専用のファンを使用するより、ケースファンを使用した方がコストダウンになるし、様々なタイプが作れるため合理的と言える。天板は前に傾斜しており、四隅とその間の計6箇所のにゴムの滑り止めが貼り付けられている。側面は、後ろ寄りの部分がへこんでいるため、パソコンを載せた状態で運ぶ際に持ち上げやすそうである。そして右側のへこんだ部分の中に、電源スイッチと電源ケーブル差し込み口が配置されている。

「SX-CL07SV」を上から見た所である。上の方に穴が開いているがこの中に2つのファンが内蔵されている。天板はアルミで6箇所にゴムの滑り止めが貼り付けられている。

「SX-CL07SV」の右側面である。前方に向かって傾斜していることが分かる。また後方の辺りはへこんでおり、パソコンを載せたまま運ぶ際に、持ち上げやすいようになっている。

「SX-CL07SV」の右側面のへこみの中には電源スイッチと電源ケーブル差し込み口が配置されている。

「SX-CL07SV」の電源ケーブルである。電源はパソコンのUSB端子から取るためコンセント等に挿す必要はない。

 それでは、早速パソコンを載せてみよう。前述のようにVGN-SZ94Sの横幅に近いため、載せた時にちょうどしっくり来る。一方、前後はVGN-SZ94Sに対して少し余裕がある。入力しやすいように前方に寄せて置いてみたが、ファンが後方に付いているため後方に寄せてパソコンを置いた方が冷却能力は上がりそうだ。滑り止めのゴムは4箇所しか使えないが、パソコンの裏側にもゴム足が付いているため、実際にはどの位置に置いてもしっかり設置できる。キーボード入力をしていてもずれてくると言うことはない。
 電源はUSBから取る。電源ケーブル差し込み口もVGN-SZ94SのUSB端子も右側面の後方なので、ケーブルの接続はしやすい。逆にUSB端子が左側面や背面左側にしかないパソコンだとケーブルの取り回しが少々難しそうだ。これで電源スイッチを入れるとファンが回り出す。電源スイッチもへこんだ部分にあるため、思わず電源スイッチに触れてしまう事が無い点で良さそうだ。

「SX-CL07SV」にノートパソコン「VGN-SZ94S」を置いた所である。横幅はぴったりである。キー入力のしやすさを考え前方に寄せておいたが、ファンの風を良く当たるように考えると後方に寄せる方が良さそうだ。

「SX-CL07SV」にVGN-SZ94Sを置いて側面から見てみる。前方の厚みはそれほどないため、キー入力しにくくなると言うことはない。

「SX-CL07SV」の効果と騒音レベル

 電源を入れるとファンが回り出した。1800rpmと比較的高回転のファンが2基取り付けられているが、騒音レベルはかなり低い。耳を近づけると小さく風切り音が聞こえるくらいで、普段パソコンを使用していても気になるレベルではない。夜の静かな部屋の中でもそれほどジャマにならず、電源を切った時に初めて少し静かになったかなと思う程度である。これなら常用しても問題なさそうだ。また、前への傾斜であるが、前方の厚みはかなり薄いため、キー入力がしにくくなると言うことはなかった。
 では肝心の効果はどうだろう。たしかにファンの風の当たる部分に関しては明らかに温度が下がった。VGN-SZ94Sでいうとキーボードの裏側の辺りに風が当たるため、キーボードの温度はかなり下がった。これまでの「長時間触れていられないほど熱い」から「あたたかく多少不快だが、触れていても問題ないレベル」まで下がった。これまでの、キーボードで文章入力が長時間行えなかった事から考えると大きな差である。ただし、風の直接当たらないパームレスト部分の温度はほとんど下がっていない様に思う。そのため、パームレストの温度は相変わらず長時間触れていられないほど熱い。キーボード部分の温度は下がってもパームレスト部分の温度が下がらないと、長時間キー入力をするのは辛い事にかわりがない。
 よくよく眺めてみると、VGN-SZ94Sのゴム足の厚みがそれほど無いため、天板とパソコンの間の隙間が非常に小さいことが分かった。そのため、パソコンの後方に当たった風が、天板とパソコンの間を通って前面まで来られず、そのまま後方から出て行ってしまっている様に感じた。
 そこで、少し浮かせるような物はないかと考えていた所、良い物を見つけた。サンワサプライのゴム足「TK-AS3」である。厚みが5mmのゴム製で、12個ついてヨドバシカメラマルチメディア梅田で262円(10%ポイント還元)で購入した。これを「SX-CL07SV」に貼り付ける。そしてVGN-SZ94Sをこの上に置いてみると、パソコンの手前から風が出て来る事が確認できた。これによってパームレスト部分の温度も下がればと思ったのだが、残念ながら効果は薄い。確かに少しは温度は下がったようだが「非常に不快」から「不快」になった程度のものだ。

「SX-CL07SV」とノートパソコンの隙間を広げるために購入したゴム足、サンワサプライ「TK-AS3」である。

前方に隙間を作りたいため、前方の3箇所にゴム足を取り付ける。

ゴム足を取り付けると、「SX-CL07SV」とVGN-SZ94Sの間に少し隙間が出来ている。これだけでも前方から風が出るようになったので、「SX-CL07SV」とVGN-SZ94Sの間を風が通るようになった。



 今回、初めてファン付き冷却台を購入したが、半分効果があり半分効果がないという結果となった。こういった製品の場合、ファンの風が直接当たる部分以外はそれほど温度が下がらないという事も判った。ファン付き冷却台の他の製品では20cm前後の大型ファンを使ってノートパソコンの底面全体に風を当てる物や、3つ以上のファンを搭載している物、ファンの位置を変えられる物などもある。ファン付き冷却台を購入する際は、どの部分が特に熱く、どの部分を冷やしたいのかをはっきりさせて製品を選んだ方が良さそうである。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
エレコム http://www2.elecom.co.jp/
エレコム冷却用品のページ http://www2.elecom.co.jp/accessory/cooling-sheet/index.asp
サンワサプライ http://www.sanwa.co.jp/



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