第94回
A3対応ドキュメントスキャナ
コクヨ Caminacs W NS-CA2
(2009年11月16日〜26日レンタル・2009年11月26日公開)



A3ドキュメントスキャナをレンタルしよう

 ロードテスト第32回で購入したドキュメントスキャナ、富士通(PFU)の「ScanSnap fi-5110EOX2」は非情に重宝しており、我が家の雑誌や漫画などを次々にデジタル化し、処分できている。使い勝手も良好で速度も速いため、ずいぶん片付いてきた。同じ作業をフラットベッドスキャナで1枚ずつ行うと何十倍も時間がかかると思われるためぞっとする。しかし、この「fi-5110EOX2」も総スキャン枚数が18万枚を超えてきた。5万枚、10万枚、15万枚の時点の計3回では「パッドユニット」を、10万枚の時点では「ピックローラユニット」交換した。メーカーが「パッドユニット」は5万枚を目安に交換、「ピックローラユニット」は10万枚を目安に交換と言っているのもあるが、ちょうどその頃には給紙が上手くできなくなったりするため交換が必要になるのである。「パッドユニット」は店頭価格で1,990円だから良いとして、「ピックローラユニット」は6,140円もする。そして、まもなくやってくるスキャン枚数20万枚では両方交換が必要になるわけだ。そこで、機種的にも古くなり、動作音も若干うるさくなり、CCDのガラス面にも傷がつき始めた事もあり、20万枚使用した時点で新機種へ買い換える事とした。
 普通に考えれば、今の「ScanSnap fi-5110EOX2」の操作性が良好なので、使い勝手などが変わらない「ScanSnap fi-5110EOX2」の後継機種の「ScanSnap S1500(fi-S1500)」を選ぶ事になるだろう。しかし、ここで1つ気になる製品がある。それがコクヨの「Caminacs W NS-CA2」である。これは「ScanSnap fi-5110EOX2」と同じADF形式のドキュメントスキャナであるが、「ScanSnap fi-5110EOX2」や「ScanSnap S1500」ではスキャン出来るのがA4用紙までなのに対して、「Caminacs W NS-CA2」ではA3サイズまでスキャン出来るのである。確かに雑誌や漫画はA4サイズ以下である。しかし、過去に購入した雑誌の中でA4サイズより横幅が若干大きいものがあり、これがスキャン出来なかったのである。少し大きめで豪華にしたつもりなのだろうが、スキャンするとなると不便なのだ。また、雑誌には2つ折りなどのポスターが綴じ込まれている事があるのだが、これもスキャン出来なかった。「Caminacs W NS-CA2」ならこれらもスキャン出来るのである。
 しかし「ScanSnap fi-5110EOX2」の使い勝手が良く、付属のソフトウェアが細かい点まで使いやすい工夫がなされており、スキャン自体もどのような紙質でも安定して行え、ダブルフィード(2枚一緒に吸い込んでしまう)も少なかった。そのため、他社の製品に変更して、これよりも使い勝手が悪くなったらと言う心配もあるのも事実である。
 そんな時「Caminacs W NS-CA2」のホームページを見ていると、なんと10日間の無料貸し出しキャンペーンをしていると言うではないか。実際には往復の配送期間を含めて10日なので、使用できるのは実質8日間程度となるが、必要となる費用は返却時の送料だけで、あとは使用後のアンケートに答えるだけである。これはチャンスと言う事で、早速申し込みを行った。
 申し込みは、身分証明書の提出が必要と言う事もあってFAXのみとなっている。キャンペーンのページから「お申し込み用紙PDF」をダウンロードし印刷、必要事項を記入して、更に複合機で運転免許証をコピーし貼り付ける。我が家にはFAXはないので、なんとか複合機のスキャナと、Windows XPパソコン「VGC-RM50」と内蔵のアナログモデムを使用してFAXを送付した。無事に送れているのか心配だったが、翌日にはコクヨの担当者の方から送り先住所の確認等の電話があった。また、レンタルは11月16日から26日までで、16日に出荷されるので、コチラに到着するのは17日になり、26日にコクヨに到着しなければならないので25日に宅配便で出す必要があるという事であった。
 26日に到着するのを待っていたのだが、なかなか届かない。まあ宅配便は必ず翌日に付くとは限らないと思っていたら、20時30分頃になって届けられた。名字が間違って記載されていた上に、電話番号も間違えていたために確認の電話が出来ず遅くなったらしい。とりあえず無事に到着したのでホッとした。

Caminacs W NS-CA2の使用準備をする

 それでは早速「Caminacs W NS-CA2」を使用してみよう。なお、今回はレンタル期間が実質8日間しかなく時間が少ないため、全ての機能を試せていない。特にOCR等は試しておらず、純粋にスキャンのみのレビューとなっている点はご了承いただきたい。また、「Caminacs W NS-CA2」の使用レポートであるが、どうしても現在使っている「ScanSnap fi-5110EOX2」との比較になってしまう場面が多くなって点もご了承いただきたい。
 さて、届いた箱を開けてみると、中に入っていた「Caminacs W NS-CA2」は思ったより小さくて軽い事にまず驚く。A3サイズ対応なので横幅は「ScanSnap fi-5110EOX2」よりも大きいのは仕方がないが、奥行きや高さはほぼ同じというから驚きである。実際に、サイズを比較してみると、原稿台と排紙トレイを閉まった状態で「ScanSnap fi-5110EOX2」がW284×D146×H150mmであるのに対して「Caminacs W NS-CA2」はW353×D150×H170mmである。重量も2.7kgに対して3.8kgとそれほどの差ではない。このサイズなら、置き場所にも困らないと思われるし、A4のフラットベッドスキャナと比べても設置面積は小さい。デザイン的には全体が光沢のある白で、前面に小さく「Caminacs W」ロゴがあるだけと非常にシンプルである。格好いいデザインというわけではないが、特殊なデザインではないため存在を主張しすぎる事が無い。家庭内では目立たないくらいが良いとも言える。

「Caminacs W NS-CA2」の原稿台や排紙トレイをすべて収納した状態である。A3用紙のスキャンに対応しているとは思えないほどコンパクトである。全体が光沢感のある白で、凝ったデザインではないないがシンプルである。

「Caminacs W NS-CA2」(右)とA4用紙まで対応の「ScanSnap fi-5110EOX2」(左)である。横幅は用紙の幅が絶対に必要であるため、「Caminacs W NS-CA2」の方が大きいが、奥行きや高さはほぼ同じサイズに抑えられている。A4用紙対応のフラットベッドスキャナと比べても設置面積は小さくてすむため、置き場所に困らないのがよい。

 一方、「Caminacs W NS-CA2」の原稿台と排紙トレイを全て広げると結構大きくなる。まず、「Caminacs W NS-CA2」は本体カバーと原稿台が兼用となっているが、そのカバー兼原稿台は本体の上面と前面をカバーする形となっており、これを広げるだけでもかなり大きい。さらに原稿台はそこから1段引き出せる上に、その先の折りたたんだ部分も広げられる。これならA3用紙も安定して置けそうである。排紙トレイは2段引き出しの1段折り畳みでこちらも大きい。この排紙トレイは少しずつ角度が付いているため、排紙された紙が次の紙に押されて順番がバラバラになるのを抑えられる。一方で、この排紙トレイは少し押しただけでもかなりたわむため、剛性が気になる所だ。ただ本体のコンパクトさを考えると仕方がなさそうである。それよりも2段目と折りたたまれた部分が透明なのが気になる。暗い部屋の床に置いていて、用紙が排紙されていない状態では、透明の部分が見えにくく、間違って踏んでしまいそうのなった事があった。デザイン的には透明の方が良いが、実用性を考えると白の方が良いかもしれない。

「Caminacs W NS-CA2」の原稿台兼カバーを開けたところである。原稿台兼カバーを開けると自動的に電源がオンになる。小さな用紙ならこの状態でもスキャンできるが、さらにここから原稿台と排紙トレイを引き出すことができる。

「Caminacs W NS-CA2」の原稿台と排紙トレイを最大まで広げたところである。A3用紙に対応するだけあってここまで広げるとそれなりの大きさになる。左右にあるグレーのパーツが原稿の左右押さえである。縦に長さが結構あるため、A3用紙も安定して置けそうである。

原稿台と排紙トレイを最大まで広げた状態の「Caminacs W NS-CA2」(右)と「ScanSnap fi-5110EOX2」(左)である。さすがに「Caminacs W NS-CA2」の方が大きくなるが、収納時はコンパクトにできるので問題ないだろう。

 それではパソコンに接続する準備をしてみよう。パソコンに付属のCD-ROMを入れてドライバと「Caminacs W Assistant」というスキャンソフトウェアをインストールする。インストール自体は特に難しくなく、数分で終了した。ちなみに、今回のキャンペーンはMac OSにも対応したタイミングで実施されているため、ドライバやソフトウェアの入った、手書きレーベルのCD-Rも付属していた。
 パソコン側の準備が出来たので「Caminacs W NS-CA2」を接続する。パソコンとの接続はUSBで、別途コンセントにも挿し込む必要があるのはこういった製品では一般的だ。「ScanSnap fi-5110EOX2」と同様、「Caminacs W NS-CA2」は本体のカバー兼原稿台を開けると自動的に電源が入るため、別途電源ボタンを押す必要がなく便利である。電源が入るとドライバが組み込まれ、使用する準備が整った。タスクトレイの「Caminacs W Assistant」のアイコンからも×印が消える。

「Caminacs W NS-CA2」の付属品である。ドライバ&スキャンソフトウェアのCD-ROM、電源ケーブル、USBケーブルのみである(ただしレンタル品であるため製品と異なる可能性もある)。電源ケーブルは途中にACアダプタの付くタイプである。

Caminacs W NS-CA2のスキャン設定をする

 それでは、スキャンの手順を単純に説明しよう。付属のスキャンソフトウェアである「Caminacs W Assistant」はタスクトレイに常駐しているため、ダブルクリックして開く。また本体のスキャンボタンを押しても開くようになっている。「Caminacs W Assistant」はスキャンの設定を10種類登録しておける。初期状態で10種類登録されているため、自分でオリジナルの設定を入れる場合は元から登録されているもののどれかと交換になる。各種設定が出来たら、スキャンする原稿を原稿台に乗せ、原稿の種類に併せて10種類の中から選ぶ。後は「Caminacs W Assistant」のスキャンボタンか「Caminacs W NS-CA2」本体のスキャンボタンを押すとスキャンが始まる。
 設定画面は、マニュアルを見なくても設定が出来たことから、比較的分かりやすいと言える。これまでスキャナを使ったことがある人なら問題なく設定できるだろう。また、設定項目もかなり細かくあるため、色々と設定できる。解像度は100/150/200/300/600dpiから選ぶ事になり、この点では「ScanSnap fi-5110EOX2」とほぼ同じである。ただ「ScanSnap fi-5110EOX2」ではファイン、スーパーファイン、エクセレントというような表現になっており(それぞれ200dpi、300dpi、600dpiを表す)分かりにくかったが、「Caminacs W Assistant」では「dpi」での表記となり分かりやすいのは好感が持てる。しかし基本の5種類の解像度以外は設定できないのは少し残念である。300dpiでは低いが600dpiでは高すぎるといった場合もあるだろう。用紙サイズは最小55×91mmから最大297×431.8mmまで0.1mm単位で設定できる。また両面、片面スキャンの選択も行える。ファイル名の設定も細かくできる点も便利だ。連番に加えて、日付と時間でファイル名を付けることが出来る。またそれらの前に語句を付ける事も出来、また連番も桁数や開始番号も指定できる。ここまで設定できれば、好みのファイル名でスキャン出来るだろう。
 保存形式はJPEGやPDFに加えてBMPやPNG、TIFF(圧縮/非圧縮)が選べる。またJPEGやPDFでは圧縮率も5段階から選ぶ事が出来る。「ScanSnap fi-5110EOX2」ではJEPGとPDFしか選べず、JPEGでは圧縮率を一番低くしてもJPEGの圧縮ノイズがある程度気になってしまったが、「Caminacs W Assistant」では非圧縮のBMPやTIFF(非圧縮)、可逆圧縮のPNGやTIFF(圧縮)が選べるため、ファイルサイズが多少大きくなっても画質を求めることが出来る。この点は「ScanSnap fi-5110EOX2」で最も不満であった点であるだけに、うれしい所だ。その他、スキャナ時に画像の回転、自動傾き補正、モアレ除去、白紙削除なども行え、設定項目は多い。
 基本的には設定項目も豊富で、設定もしやすいがいくつか不満点もある。設定項目は階層が深く、さらに開いたウィンドウで右三角ボタンを押すとさらにウィンドウが広がって設定項目が出現するようになっている。結果、ボタンをクリックして新たなウィンドウを開き、さらに右三角ボタンでウィンドウを広げ、その中でタブを切り替えるという様な手順が必要になる場合があり、操作が煩雑になる。また、設定画面を順に見ながら設定していくと、右三角ボタンを押すのを忘れて、その中の設定をし忘れることが良く起こってしまうのだ。たしかにウィンドウをコンパクトに出来るというメリットはあるが、設定画面であるため常時表示するものではないため、あまり意味がない。それよりも一度に表示した方が一覧性が良く設定もしやすいのではないだろうか。また設定は10種類まで登録でき、クリックするだけでその設定でスキャン出来るのは便利だが、始めから10種類登録されており、オリジナルのを作成しようとすると、どれかを消さなければならないのは不便である。用紙設定の方では始めから登録されている用紙に加えて追加が出来るので、設定の方も同じように5種類ぐらい追加できる余裕があれば便利だったかもしれない。ただとりあえず10種類登録できるため、実用上は問題ないと思われる。

「Caminacs W NS-CA2」付属のスキャンソフトウェア「Caminacs W Assistant」のメイン画面である。10種類の設定を登録しておくことができ、その中から目的のものを選んで、左下の「スキャン」ボタン、または「Caminacs W NS-CA2」本体のスキャンボタンを押すとスキャンが開始される。マニュアルを見なくても項目を一つずつ見ていけば設定ができるため、比較的使いやすいと言える。

「スキャン設定」横の「詳細設定」ボタンを押すとこのウィンドウが開く。片面/両面の設定や原稿サイズ、スキャン解像度、スキャンモードの他、左三角ボタンを押してウィンドウを大きくすると、画像の回転や自動方向き補正、モアレ除去、白紙削除などの設定が可能である。

さらに、用紙サイズ欄の「編集」をクリックすると、用紙サイズをカスタマイズ可能になる。基本的なサイズの他に、最小55×91mmから最大297×431.8mmまで0.1mm単位で設定できる。

ファイル保存の設定では、保存するファイル名を細かく表示できる。連番に加えて、日付と時間でファイル名を付けることが出来、またそれらの前に語句を付ける事も出来、また連番も桁数や開始番号も指定できる。

Caminacs W NS-CA2でスキャンする

 では設定も完了したので、スキャンを行ってみる。「Caminacs W Assistant」が起動した状態では、本体のスキャンボタンを押すだけと簡単である。まず気付いたのは、動作音が静かであることだ。「ScanSnap fi-5110EOX2」は既に18万枚近くスキャンをしていて若干弱っているという事を差し引いても、「Caminacs W NS-CA2」の方がかなり静かである。「ScanSnap fi-5110EOX2」ではテレビを見ている時や、夜の静かな時などには、若干使用するのが気が引けるが(といってもそれほど大きな音ではないが)、「Caminacs W NS-CA2」は非常に静かであるため、この点は安心だ。しかし、最高解像度の600dpiでスキャンした場合「ピー」という電子音のような音が聞こえる。特に大きな音ではないが、他の解像度に比べると静かな部家の中では聞こえてしまう。
 スキャン速度自体は結構高速である。300dpiと比べて600dpiにするとかなり遅いが、ギリギリ実用的なスピードだと感じた。またダブルフィード(用紙を2枚重ねてスキャンしてしまう事)などはほとんど無く、安定している。また左右の紙押さえが「ScanSnap fi-5110EOX2」に比べてかなり大きくしっかりしている。A3用紙にも対応するために大きくなっているのだと思われるが、結果的にA4用紙などの小さな用紙もしっかり固定できるため、用紙が傾くことが少なめである点も良い。
 ただし苦手な用紙があることも分かった。A3サイズの用紙に対応しつつ出来るだけ本体を小型にするためか、「ScanSnap fi-5110EOX2」に比べて、原稿を垂直に近い状態でセットすることになる。一方排紙は前面からになるため、どうしても内部で原稿が曲がることになる。コピー用紙のような表面がザラザラした用紙や、一般的な雑誌のような薄い用紙であれば問題ないのだが、写真の多い鉄道雑誌やイラストの多いゲーム雑誌などによく見られる、「厚めで表面がツルツルしている用紙」ではローラーが滑って用紙が上手く進んでいかないようである。結果的に用紙長さが設定値を超えて止まってしまうか、用紙長さを自動にしても間延びした変な画像になってしまう。同じ原稿を「ScanSnap fi-5110EOX2」でスキャンすると問題なくスキャン出来たため、この辺りがA3用紙対応とコンパクトさを求めたことによるしわ寄せと言えるのかもしれない。

「Caminacs W NS-CA2」(上)と「ScanSnap fi-5110EOX2」(下)を横から見た所である。これを見ると、「ScanSnap fi-5110EOX2」では原稿がかなり寝た状態でセットされ、なだらかなカーブを描いて排紙されている。一方「Caminacs W NS-CA2」ではかなり垂直近い角度で原稿がセットされ、急なカーブで排紙トレイに繋がっている。このあたりが、厚めで表面がツルツルしている用紙が滑る原因ではないだろうか。

 それ以外にも、「ScanSnap fi-5110EOX2」と比べて不便と感じる所もある。スキャン時の動作を見ていると、スキャン時には保存フォルダに一切ファイルが出来上がらず、スキャン完了後にファイル移動が行われているようである。各ドライブの容量を見ていると、どうやらCドライブに作業フォルダがあり、スキャン中はそのフォルダに貯めていき、スキャン終了後に設定した保存フォルダに移動させているらしい。しかしこの方法は不便である。まずスキャン完了後にファイルを移動させる時間がかかってしまう。特にA3サイズの原稿を600dpiで10枚以上スキャンしたりすると、この移動作業に結構な時間がかかる。特にノートパソコンのようにハードディスク自体が低速で、しかも作業フォルダと保存フォルダが同じハードディスクになってしまう場合は、1分以上かかってしまう。もちろん移動作業中に次のスキャンを実行することが出来ない。PDFなどのスキャンした原稿を全て合わせて1つのファイルにする場合は仕方がないとしても、JPEGなど1ページが1ファイルの場合は、保存フォルダに直接保存しても良さそうであるのだが。また作業フォルダがCドライブに固定されているが、Cドライブの空きに余裕がない場合があり、高解像度で何枚もスキャンすると空き容量が減り、Windowsの動作が不安定になることもある。 せめて、作業ドライブを変更できるようにして欲しいところである。
 もう一つ、スキャン解像度を600dpiにすると、本体のスキャンボタンを押した時に毎回「パソコンのスペックによって、処理が遅くなる場合がある」という警告メッセージが出てしまう。そのため600dpiでのスキャンは、必ずパソコンの操作が必要になるというのは非情に不便だ。スキャンスピードからも600dpiである事は判断できるため、「次回からはメッセージを表示しない」というチェックボックスを設けるか、設定時に600dpiを選んだ時点でのメッセージを出す方が寄り良いのではないだろうか。
 また、ダブルフィードなどに気づいた場合などにスキャンを中止した時に、「Caminacs W NS-CA2」はそれまでスキャンしたものはそのまま保存してしまうのも少し不便である。「ScanSnap fi-5110EOX2」ではスキャンを中断した場合は、それまでスキャンした物を残すか消すか選べるようになっているのである。スキャンソフトウェアの「Caminacs W Assistant」も基本的な部分は押さえてあり決して使いにくいソフトではなく、十分合格点なのだが、こう言った細かい点にまでこだわって、より使いやすいソフトを目指して欲しかった。
 前述のように問題点もあるが、やはりA4より大きなサイズをできるという点は便利である。A4より若干横幅の大きい雑誌のスキャンや、雑誌に2つ折りして綴じてあるポスターなどもスキャン出来る。ただし雑誌に綴じてあるポスターでも3つ折り以上のものように、横幅はA3用紙以下だが、縦がA3用紙の長さを超える原稿はスキャン出来ない点は残念だ。1枚ずつでもよいので、長尺にも対応して欲してくれればより良かったのだが。

Caminacs W NS-CA2のスピードを比較する

 それではここで、「Caminacs W NS-CA2」のスキャンスピードを比較してみよう。比較機種は「ScanSnap fi-5110EOX2」だが、「Caminacs W NS-CA2」で原稿を縦置きした場合と横置きした場合でも比較している。まずは、メーカー公称値を比較してみよう。

機種
Caminacs W
NS-CA2
ScanSnap
fi-5110EOX2
ScanSnap
S1500
原稿サイズ
A4縦
A4横
A3縦
A4縦
A4縦
スキャン速度
100dpi
N/A
37枚/分
20枚/分
150dpi
N/A
32枚/分
17枚/分
15枚/分
20枚/分
200dpi
N/A
12枚/分
6枚/分
10枚/分
20枚/分
300dpi
N/A
15枚/分
8枚/分
5枚/分
20枚/分
600dpi
N/A
4枚/分
2枚/分
0.5枚/分
5枚/分

 これを見ると、「Caminacs W NS-CA2」は「ScanSnap fi-5110EOX2」に比べてかなり高速化していることが分かる。また、特に低解像度ほど高速で、150dpiではScanSnapシリーズの最新機種である「ScanSnap S1500」よりも60%も高速である。また600dpiでのスキャンも、「ScanSnap fi-5110EOX2」に比べて8倍速になり、「ScanSnap S1500」に近いスピードとなっている。ただしこれはA4用紙を横に入れた場合の速度であり純粋なスピード比較にはなっていないとも言えるが、A4用紙を横に入れて高速化できるのも「Caminacs W NS-CA2」の特徴の一つであり、実際にスキャン時間の短縮が出来るのだから問題ないだろう。また、A3用紙の場合はA4横の倍の長さだけあってスキャンスピードは半分となっている。それでも、300dpiなら8枚/分、600dpiでも2枚/分と実用的なスピードであるといえるだろう。
 それでは、実際にスキャンを実行してそのスピードを計測してみたいと思う。テストはA4サイズのカタログであるSONYの「VAIO標準仕様モデルカタログ」2009年秋冬号の「22枚(44面)を300dpiでスキャンした場合」と、「6枚(12面)を600dpiでスキャンした場合」の時間を計測している。保存形式はJPEGで最も圧縮率の低い設定で、傾き補正などはかけていない。接続したパソコンはVAIO VGC-RM50のCPU換装・メモリ増設を行った機種(CPU:Core 2 Quad Q6600 2.40GHz、メモリ:3GB、OS:Windows XP Home Edition SP3)である。なお、スキャンしている所を撮影した動画も掲載しているので、見ていただくとより分かりやすいと思う。

300dpiスキャン(A4原稿22枚44面)
機種
Caminacs W NS-CA2
ScanSnap fi-5110EOX2
原稿サイズ
A4横
A4縦
A4縦
スキャン時間
1分24秒
1分52秒
2分11秒
枚/分換算
15.7枚/分
11.8枚/分
10.1枚/分

 まず300dpiでのスキャン結果を見てみると、「Caminacs W NS-CA2」はA4横で公称値の15枚/分をやや上回る15.7枚/分を出しており、スペック通りの結果が出ている。4秒で1枚以上の計算となり、見ていてもかなり高速だ。「ScanSnap fi-5110EOX2」との差が公称値ほど出ていないが、これは「ScanSnap fi-5110EOX2」が10.1枚/分と公称値の倍速になったためである。ちなみに、「Caminacs W NS-CA2」で原稿を横置きから縦置きにすると、35%スピードが落ちる事になる。

600dpiスキャン(A4原稿6枚12面)
機種
Caminacs W NS-CA2
ScanSnap fi-5110EOX2
原稿サイズ
A4横
A4縦
A4縦
スキャン時間
1分32秒
2分06秒
2分09秒
枚/分換算
3.9枚/分
2.9枚/分
2.8枚/分

 続いて600dpiでのスキャン結果である。「Caminacs W NS-CA2」はA4横で公称値の3.9枚/分と公称値の4枚/分とほぼ同等のスピードが出ている。このスキャンスピードならば、画質のために我慢できるレベルである。また、600dpiでも「ScanSnap fi-5110EOX2」との差が公称値ほど出ていないが、「ScanSnap fi-5110EOX2」が2.8枚/分と公称値の0.5枚/分よりかなり好成績が出ているためである。また、「Caminacs W NS-CA2」で原稿を縦置きにすると、「ScanSnap fi-5110EOX2」とほぼ同等の時間となるのがおもしろいところだ。つまり「Caminacs W NS-CA2」と「ScanSnap fi-5110EOX2」は600dpiでは原稿送りのスピードは変わらないという事だ。「Caminacs W NS-CA2」は横置き出来る分だけ高速になっていると言える。

Caminacs W NS-CA2のスキャン画像を見てみる

 それでは先程のスキャンスピードテストでスキャンした原稿を元に、画質を見てみよう。比較対象として、インクジェット複合機PM-T960に搭載されたCCD方式のフラットベッドスキャナでスキャンした物も掲載している。以下は600dpiでスキャンした原稿の全体を縮小したものと、一部分を切り出したもの(50%に縮小)である。

SONY「VAIO標準仕様モデルカタログ」2009年秋冬号
6ページ目
Caminacs W NS-CA2
ScanSnap fi-5110EOX2
PM-T960

SONY「VAIO標準仕様モデルカタログ」2009年秋冬号
7ページ目
Caminacs W NS-CA2
ScanSnap fi-5110EOX2
PM-T960

 原稿全体を見てみると、「Caminacs W NS-CA2」の方がコントラストが高い事が判る。これは元原稿に近い色合いである。「ScanSnap fi-5110EOX2」では色が浅い上に、黒つぶれや白飛びが発生しやすかったが、「Caminacs W NS-CA2」ではそう言ったこともなく画質は良好だ。またPM-T960に搭載されたCCDスキャナでスキャンした物に近い事からも画質が良いことが分かる。
 続いて一部分を拡大した物を見てみよう。「Caminacs W NS-CA2」も「ScanSnap fi-5110EOX2」も拡大して見ると高詳細にスキャン出来ていることが分かる。「Caminacs W NS-CA2」の方が粒状感はあり、「ScanSnap fi-5110EOX2」の方がザラザラした感じはないが、一方で「ScanSnap fi-5110EOX2」は色が浅くぼけた感じに見える。「Caminacs W NS-CA2」の方がコントラストが高いため、小さな画像も見やすく、文字もメリハリがあって読みやすい。以上より、「Caminacs W NS-CA2」のスキャン結果はかなり高画質だと言えるだろう。
 おもしろいのは、原稿の周囲の部分の色である。スキャンした際に原稿が微妙にずれたり傾いた場合に原稿が切れるのを嫌って、原稿サイズより少しだけ大きめにスキャンする事にしている。その際に、その用紙の周囲の部分の色が「ScanSnap fi-5110EOX2」では白色だったが、「Caminacs W NS-CA2」では黒色になっているのである。これは、「ScanSnap fi-5110EOX2」のセンサータイプがCCDだったのに対して、「Caminacs W NS-CA2」ではCISになっている事と関係があると思われる。原稿外の色が白でも黒でも原稿自体に影響はないので問題ないが、白の方が目立たない分若干良いと言える。コクヨでもそのことを考えてか、スキャンソフトウェアの「Caminacs W Assistant」のオプションの一つに「原稿の外を白く塗りつぶす」という項目がある。これで解決かと思っていたら、これは原稿を認識しているわけではなく、周囲の黒い部分を白く塗っているだけのようである。そのため、夜の写真や背景が黒のイラストなどが縁なしで掲載されている原稿をスキャンすると、写真やイラストの黒い部分まで白く塗られてしまう。特に黒地に白文字で文字が書かれている原稿をスキャンすると、文字の所まで白く塗られてしまい、文字が読めなくなると言う問題が発生した。しかも長方形に原稿を切り出してその周囲を白く塗るのではなく、多角形で白塗りするので、スキャン結果が小さな多角形になってしまうのである。黒が基調のポスターをスキャンすると、小さな11角形になってしまったこともあった。原稿の端が黒(又は黒に近い濃い色)の場合は、削られてしまう確率が高い。「Caminacs W NS-CA2」の公式ページにも、このオプションは白色の用紙の原稿の場合に限られると書かれている事から、雑誌などのスキャンには使えないと考えた方が良いだろう。ただ、原稿の周囲が黒くても特に気にはならないので、大きな問題と言える程のことではないだろう。

「原稿の外を白く塗りつぶす」にチェックをしなかった場合(左)とチェックした場合(右)である。左では原稿の周囲に黒い枠が出来ている。一方このように黒っぽい原稿でこの設定を行うと、右のように原稿の内側まで白く塗られてしまう。この機能は白又は薄い色が背景色の原稿でのみ有効と言える。



 今回はA3用紙対応のドキュメントスキャナ「Caminacs W NS-CA2」をお借りして、現在使用している「ScanSnap fi-5110EOX2」と比較を行った。スキャンソフトウェアの使い勝手や、原稿の紙質によるスキャンエラーなど一部気になる点もあるが、なによりA4を超えるサイズがスキャン出来ることは非常に便利である。それでいながら本体サイズは非常にコンパクトである点も評価できる。また、動作音やスキャン画質はかなり高いレベルで、スキャン速度も300dpi以下ならかなり高速、最高解像度の600dpiでも十分使えるレベルに達している。全体的には高いレベルで合格と言える製品である。
 購入する上で障害となるとすると価格である。店頭実売価格がバンドルソフトの無いベーシックモデル でも84,800円となっているのである。同じコクヨでA4サイズまで対応の「Caminacs NS-CA1W」は35,800円で、富士通のScanSnapシリーズの最新機種「ScanSnap S1500」でも49,800円である事を考えると価格差は大きい。しかし、A3対応のスキャナというと、フラットベッドスキャナのエプソン「ES-H7200」が124,800円であることを考えると、連続で読み取りが出来てこの価格というのは決して高くは無いとも言える。ライバルと呼べるとするとブラザーのインクジェット複合機「MFC-6490CN」があるが、こちらはプリント機能も付いている上に、スキャナもADF付きのフラットベッドスキャナであり、本体サイズが幅540×奥488×高323mmと非常に大きいため家庭には置きにくいサイズだ。これを考えると、個人で手に入るレベルでA3のドキュメントスキャナと言うと、「Caminacs W NS-CA2」が唯一の製品とも言えるのである。それでいて、ただ「A3用紙対応」というだけでなく、使い勝手、スキャンスピード、画質共に高いレベルとなっている。
 価格差が許せるなら「Caminacs W NS-CA2」であれば、今はA4以下の原稿しか無くても将来的にA4を超えるサイズの原稿が出てきても安心である。そう言った点で、A4サイズより大きい原稿のデジタル化を考えている人はもちろん、ドキュメントスキャナに興味はある、又は買い換えを検討している人全般にもオススメできる製品であると言えるだろう。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
コクヨS&T http://www.kokuyo-st.co.jp/
「Caminacs W NS-CA2」のページ http://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/kws/caminacs_w/index.html



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