第109回
USBメモリ型外付けSSD
バッファロー SHD-LV32GS-BK
(2010年7月13日購入・2010年12月21日著)



大容量のUSBメモリを購入しよう

 USBメモリはちょっとしたデータの受け渡しや移動に非常に便利である。私も、学生時代に購入した512MBのUSBメモリと、その後に非常に安価に購入した8GBのUSBメモリを所持している。8GBあれば、作成したデータを持ち歩いたり、パソコン間でデータの受け渡しをする程度であれば十分な容量である。8GBのUSBメモリを購入して以来、数年間そういった状態が続いていた。しかし、最近になって容量の不足を頻繁に感じる様になってきたのだ。
 それは持っているビデオカメラがフルハイビジョン対応になった頃からである。スタンダード画質のビデオカメラのビットレートは9Mbpsだったが、ハイビジョンでは17Mbpsになり単純計算でも容量は2倍弱になる。その上、最近ではデジタルカメラでの動画撮影もフルハイビジョンになっているため、より手軽にフルハイビジョン動画を撮る様になった。17Mbpsということは、1秒間で2.125MB、1分間で、127.5MB、10分間で1.275GBになってしまう。旅行などに行って、頻繁に動画や写真を撮っていると数GBから十数GBになってしまうのだ。そしてそれらの動画や写真を他の人に見せようと、USBメモリに入れて持ち出す際に、8GBでは不足してしまうのである。それ以外にも最近は何かと容量が大きくなっているため、データの移動でも8GBを超えることが出てきてしまった。そこで、より大容量のUSBメモリを購入する事としたのである。
 しかし、ここで価格的な問題が発生した。今持っているのが8GBなのだから、倍の16GBではまたすぐに容量不足になるとも限らない。できれば32GB以上のものが欲しい。ところが、最近ではフラッシュメモリ製品が安くなったとはいえ、32GB以上の製品となると価格はそれなりに高くなってしまう事が分かった。安価な製品でも8千円以上、少しスピードにこだわった製品だと簡単に1万円を超えてしまう。2TBのハードディスクが1万円を切る時代に、32GBのフラッシュメモリに1万円以上もかけるのは何とも勿体ない。
 そんなときに見つけたのが、バッファローの「SHD-LV32GS」である。Amazon.comで特価の6,980円となっており、32GBの容量を持つ割には安価である。メーカーも有名な周辺機器メーカーという安心感もある。実はこの製品は見た目は少し大きめのUSBメモリなのだが、分類上は外付けSSDという事になる。SSDというと、パソコンのハードディスクの代わりとして容量は小さく高価だが、高速で振動にも強いと言うことで、話題になっている製品である。一般的に見るのは、ハードディスクの代わりに使用するという事で2.5インチハードディスクと同じ形状、インタフェースをしているSSDである。しかし、中には外付けハードディスクが存在する様に外付けSSDという物も存在している。外付けSSDというと、内蔵用のSSDを外付けケースに入れた製品が多数を占めている。しかし、ハードディスクと異なり、内部は磁気ディスクではなく、フラッシュメモリなので、別にハードディスクと同じ形でなくても良いことになる。「SHD-LV32GS」ではUSBメモリ型になっているのである。
 ところで、USBコネクタが内蔵されてスティック状で、内部にフラッシュメモリとなると、USBメモリとどこが違うのかという疑問がわくのは当然である。内部的な構造はさておき、ユーザが分かる違いは、パソコンで認識される時にが一番わかりやすい。USBメモリはパソコン上ではSDカードなどと同じフラッシュメモリとして認識される。一方SSDはハードディスクの代わりの製品と言うことで、ハードディスクとして認識される。そこで違ってくるのがフォーマット方式である。フラッシュメモリでは通常FAT32でしかフォーマットできず、当然USBメモリもFAT32でフォーマットすることになる。ところがFAT32は1つのファイルが4GB以下でなくてはならないという制限がある。フラッシュメモリでも最近ではWindows Vista SP1以降やWindows 7では「exFAT」というフォーマットを使用することでこの制限を回避できるが、外でUSBメモリを挿そうとしたらWindows XPやSP1適応前のWinodws Vistaだったという場合に使用できなくなってしまう。実際に我が家でもデスクトップパソコンVGC-RM50と、ネットブックパソコンAspire One AOD250がWindows XPだ。そのほかにも、特殊な方法を使えばFAT32の代わりにハードディスクのフォーマット方式として主流の「NTSF」フォーマットがUSBメモリでもできるし、Windows XPにも対応できるのだが、NTFSフォーマットにすると「ハードウェアの安全な取り外し」を行わずにUSBメモリを抜いた場合にデータに問題が発生する可能性が高くなると言うことで、マイクロソフトは推奨していない。一方、SSDならば、ハードディスクとして認識される以上「NTFS」フォーマットにも標準で対応し、NTFSフォーマットに対応したOSなら認識できる。実は、元々USBメモリを探していた時は気づかなかったのだが、意外とこれは重要である。フルハイビジョンで撮影した動画を入れる場合、先ほどの計算で10分で1.275GBである。30分以上連続して撮影すると4GBを超える危険性もある。また最新のビデオカメラはビットレートが24Mbpsになっており、これに買い換えた場合22分ほどで4GBを超える。あまり頻繁にはないだろうが、危険性はゼロではない。その点、NTFSフォーマットができるのであれば、この点を気にする必要がない。また、ハードディスクとして認識するということはパーティション分けが可能なのもおもしろいところだ。確かに昔の数MBのUSBメモリの時代では必要なかったが、32GBもの容量があれば、2つに分けて使う場合もあるだろう。SSDという事はこういったメリットがある。一方、ハードディスクとして認識するため、フラッシュメモリを使用するReadyBoostの領域としては使用できないが、今回はそういった用途に使用する事はないため、この点は問題ない。ホームページを見ると、読み書き速度もそれほど遅そうではないため、この製品を購入した。Amazon.comで6,980円だった。

「SHD-LV32GS」の外観とスペックを確認する

 実際に到着した「SHD-LV32GS」を見てみる。見た目は完全にUSBメモリである。一般的なUSBメモリと比べると、少し大きめである事に加えて、真っ黒のデザインは、「男のUSBメモリ」といった感じである。長いだけでなく横幅もあるため、USBポートが接近して並んでいる場合は、隣接するポートと干渉する可能性はある。付属品に延長ケーブルはないため、必要ならば手に入れる必要がある。残念なのはUSBコネクタのカバーがキャップ式である事と、取り外したキャップを、反対側に挿すことができない点である。USBコネクタがスライド式なのが一番使いやすいが、せめてキャップを反対側に取り付けられれば無くすことはない。しかし「SHD-LV32GS」では、使用中はキャップを机の上などに置いておくことになるため、無くしてしまう危険性が高くなる。

USBメモリ型SSD「SHD-LV32GS」である。見た目は完全にUSBメモリだが、真っ黒のデザインは男っぽい印象を受ける

「SHD-LV32GS」とUSBメモリ「BB53-8031」との比較である。USBメモリよりは一回り大きいが、それほど大きさが気になるレベルではない。

「SHD-LV32GS」とUSBメモリ「BB53-8031」との厚さ比較である。「SHD-LV32GS」も十分薄型だが、USBメモリよりは若干厚みがある。

「SHD-LV32GS」のキャップを取ったところである。キャップを取ると中からUSBコネクタが現れるのはUSBメモリと同じである。キャップを反対側に挿すことができないため、使用中になくしてしまいそうなのが残念だ。

一方便利なのが「ライトプロテクトスイッチ」である。この製品がSSDであることを考えると、書き込みを禁止するための物理的なスイッチが付いているのは非常に珍しいと言える。しかし、USBメモリ的な使い方をすることを考えると、誤ってファイルを消したり上書きするのを防げるほか、コンピュータウィルス感染も防げるなど便利である。

「SHD-LV32GS」は「ライトプロテクトスイッチ」を備えている。書き込みを禁止しておけば誤ってファイルを消したり上書きすることもなく、コンピュータウィルスも入らない。ポータブルハードディスクやSSDでこの機能を備えているのは珍しいといえる。

 さて、この製品のスペックを確認してみよう。SSDに使用するフラッシュメモリにチップはMLCとSLC の2種類がある。SLCはSingle Level Cellの略で、1つのセルに1か0の情報、つまり1bitのデータを保持する。一方、MLCはMulti Level Cellの略で、1つのセルを1か0の2段階でなく、より細かい段階に記録することで、2bit以上のデータを保持する事が可能になる。1つのセルに1か0という単純なSLCの方がMLCに比べて読み書き速度は数倍速く、またデータ書き換え回数もSLCは10万回程度なのに対し、MLCは1万回程度とされる。しかしMLCでは同じ容量でも少ないセルですむ分安価であるという特徴がある。またセルが少ないと言うことはそれだけ必要なスペースも小さいと言うことである。今回は安価な製品である上に、サイズも小さいことから、当然MLCタイプのSSDが搭載されている。
 ちなみに、「SHD-LV32GS」では、付属のソフト「TurboPC」をパソコンにインストールすることにより、パソコン搭載のメモリーをキャッシュとして利用することで読み書きが高速化するという。公式ページでは読み込み速度が約1.5倍になると書かれている。ただし、ソフトのインストールが必要になるため、家庭のパソコンでは利用できるが、会社や学校、ネットカフェなど勝手にソフトウェアのインストールを行えないパソコンや、他の人にデータを渡すだけといったような一度だけの場合はインストールの手間がかかることから、「TurboPC」による高速化の恩恵は受けられない点は注意する必要がある。

「SHD-LV32GS」の読み書き速度をテストする。

 それでは、ベンチマークテストを利用して「SHD-LV32GS」の読み書き速度をテストしてみたいと思う。テストは、「Crystal Disk Mark 3.0」を使用して、シーケンシャルリード・ライト、ランダム512Kリード・ライト、ランダム4Kリード・ライト性能を計測している。テスト条件は、テストデータ1000MBでテスト回数5回としたテストをさらに3回行い平均値を出している。接続したパソコンは、SONYのノートパソコン「VPCF13AGJ」でCPUがCore i7-740QM(1.73GHz)、メモリが4GB、OSがWindows 7 Professional 64bit版である。比較対象として、1年半ほど前に1,450円で購入した8GBのUSBメモリであるpqi「BB53-8031」と、250GBポータブルハードディスクのバッファロー「HD-PF250U2」も同環境で計測している。


 シーケンシャルリード性能を見てみよう。USBメモリが33.15MB/sでポータブルハードディスクが34.64MB/sなのに対して、「SHD-LV32GS」は30.20MB/sと10%前後性能が劣ることになる。とはいっても、大きな差ではなく、使用する上で問題はなさそうだ。また、USB接続のSSDという特殊な製品ではあるが、USBメモリと比べてもポータブルハードディスクと比べても大きな差がないのはおもしろいところである。ただし、ロードテスト106回でUSB3.0インタフェースの転送速度を計測する一環で、USB2.0の転送速度も計測しているが、その際にUSB3.0接続では127MB/sのシーケンシャルリード性能を示した3.5インチハードディスクや70MB/sを示した2.5インチハードディスクでも、USB2.0接続では軒並み33〜34MB/sに落ち込んでしまうと言う結果が出ている。このことから、「SHD-LV32GS」やUSBメモリ、ポータブルハードディスクの3製品がほぼ横並びなのは、USB2.0接続である限界であるとも推測できる。これがUSB3.0対応であれば大きな差が出ていたかもしれない。ちなみに、この結果は「SHD-LV32GS」の高速化ソフトTurboPCを使用していない場合の速度である。TurboPCを使用すると、41.38MB/sと一気に37%も高速化する。バッファローのホームページで紹介されている45MB/sには少し劣るが、かなりの高速化である。ソフトをインストールする必要があるとはいえ、かなり快適になりそうである。
 続いて、ランダム512Kリード性能を見てみよう。ランダムアクセスが苦手なハードディスクでは20.59MB/sまで速度を落としているが、「SHD-LV32GS」とUSBメモリではシーケンシャルリードとほぼ同じ速度を維持している。ランダムリードでもファイルサイズの大きな「512K」の方だが、サイズの小さなファイルのコピーや読み込みの読み込みでは、ハードディスクを使用するより快適で、USBメモリと同等の使い勝手をしているといえる。
 続いて、ランダム4Kリード性能を見てみよう。これはアプリケーションの起動や、特にファイルサイズの小さなデータを読み込みを行う時のスピードである。ランダムアクセスの苦手なハードディスクではさらに速度を落とし、0.395MB/sにまで低下している一方、「SHD-LV32GS」ではシーケンシャルリードやランダム512Kリードよりは低下するものの、6MB/s台を記録しており、ハードディスクと比べるとかなり高速である。小さなファイルの読み込みは非常に便利だと言えるだろう。一方でこれまで性能差の無かったUSBメモリと比べると、差が付いてしまっているのが気になる。このあたりがSSDの(というよりMLCチップの)デメリットかもしれない。また、ランダム4Kリードになると、高速化ソフト「TurboPC」の効果が一切なくなるのもおもしろいところだ。
 続いてライト性能である。SSDはハードディスクに比べて書き込みは苦手な傾向があるが、「SHD-LV32GS」でも同じである。ポータブルハードディスクが32.16MB/sなのに対して、「SHD-LV32GS」では12.57MB/sと、39%の速度しか出ていない。付属の高速化ソフト「TurboPC」を使用すれば16.55MB/sまで改善するが、それでもポータブルハードディスクには遠く及ばない。とはいえ、USBメモリと比べると、倍以上の速度となっており、USBメモリとして考えれば決して使い勝手が悪いわけではない。SDカードで言えば最上位のClass10(書き込み10MB/s以上)になるわけで、「TurboPC」無しでも高速である。しかしランダム512K書き込みでは、速度が一気に低下し0.84MB/sとなってしまう。「TurboPC」を使用しても若干高速化する程度で、USBメモリよりも遅くなっているのが気になる点だ。ランダム4K書き込みになるとさらに速度は低下し、一桁のKB/sレベルにまで落ちてしまう。しかし、ランダム4K書き込みの場合は、ランダム512Kより「TurboPC」の効果が大きく、1.215MB/sと135倍に高速化している。USBメモリはおろか、ポータブルハードディスクよりも高速になる。以上より、大きなデータの書き込みは十分実用的なレベルだが、小さなデータの書き込みでは「TurboPC」を使用しないとかなり待たされることとなる。実際に100KB前後の大量の画像ファイルのコピーや、メールデータ(数KB)のバックアップなどを行う際に、「TurboPC」を使用しない場合はハードディスクに比べてかなり遅い印象を受けた。



 今回はUSBメモリの代わりに、USBメモリ型のSSDという一風変わった製品を購入した。USBメモリより安価だったためだが、多くの場合でUSBメモリよりも高速であり、安価ながら決して使い勝手が悪いわけではない事がわかった。小さなファイルの書き込みではハードディスク等に比べるとかなり低速だが、付属の高速化ソフト「TurboPC」を使えばある程度解消される。たとえば、旅行の写真データを入れておき、他人のパソコン上で閲覧するといった場合など、「TurboPC」をインストールした自分のパソコンで「SHD-LV32GS」にデータを書き込み、他人のパソコンで読み込むという使い方ならば問題ない。またファイルサイズの大きなデータであればハードディスクと変わらない使い勝手である。その上、USBメモリと比べると、NTFSフォーマットが簡単に利用できるため、ファイルサイズが特に大きな動画ファイルなどの持ち運びも行えるなど、SSDならではの便利さもある。
 安価ながら速度面で不満はなく、使い勝手はよい「SHD-LV32GS」は、USBメモリの購入を考えている人にとって、有力な選択肢の一つにしても良い製品だろう。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
LEADTEK http://www.leadtek.co.jp/


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