USB扇風機 シグマA・P・Oシステム販売 UMF02WH (2010年7月26日購入・2011年2月1日公開)
ノートパソコン「VGN-SZ94S」が夏場にかなり熱くなる事から、これまで様々な冷却ファンを試してきた。これには一定の効果があったのだが、どうしてもハードディスク部分が熱くなりやすい。また、それ以外にもノートパソコンに取り付けているポータブル外付けハードディスクもかなりの温度だし、デスクトップパソコンに取り付けている外付けハードディスクの内、冷却ファンのないものはかなりの温度になる。USB接続の外付けハードディスクでは、S.M.A.R.Tの情報を受け取れないため、正確な温度は分からないが、ハードディスクは熱が天敵なので、ここまで熱くなると寿命が短くなってしまいそうだ。 何か良い物はないかと探していたところ、見つけたのが、シグマA・P・Oシステム販売の「UMF02WH」である。この製品は、いわゆる「USB扇風機」である。USBのバスパワー電源を利用して動作する扇風機である。これまでもUSB扇風機と言えば数多くの製品を見てきたが、羽が露出しており触れても危なくないようウレタン製の羽を使用していたり、一般的な扇風機を小型にしたようなデザインだったりと、デザイン性やおもしろさ重視に感じる製品ばかりであった。当然風量は非常に弱く、中には羽のすぐ前に手をかざしても、そよ風程度にしか感じなかったりと、あくまで「USBおもしろグッズ」の域を超えていなかった。耐久性も高くなさそうであった。しかし、今回見つけた「UMF02WH」は、本格的なUSB扇風機である。 形状としては、扇風機と言うよりは、デスクトップパソコン用の12cmケースファンの周りに、羽に触れないようにカバーを付けただけの製品である。ファンはパソコン内部に使う冷却ファンと同じものなので、風量も大きく、耐久性も期待できそうである。回転数や風量に関してはホームページや製品パッケージにも記載があり、回転数は2000rpmと12cmケースファンの中でもかなり高い方で、当然風量も60CFMとかなりの物である。この値は内蔵するファンの性能であるという事だが、ケース自体は、前面と背面に羽に触れないよう格子状になってはいるが、風を通りをそれほど阻害する様な物ではなさそうなので、60CFMに近い風量が期待できそうだ。早速購入して使ってみることとした。ヨドバシカメラマルチメディア梅田で1,980円(10%ポイント還元)と価格も手ごろである。本体カラーは2色あり、ホワイトの「UMF02WH」とブラックの「UMF02BK」である。カラーはファンのケースの色で、内部のファンはブラックで共通である。ブラックモデルの方が色は揃っているが、いかにもパソコン用12cmファンが入っているという感じが見えて逆に格好いいホワイトモデルを選んだ。
「UMF02WH」のパッケージには、「120mm大型ファン」「ハイパワー2000rpm」「最強クラス!!」の文字が躍る。「マグネット内蔵」「360°開店スタンド」「強・弱スイッチ」「1m USBケーブル」といった機能表記も見られ分かりやすい。側面には様々な使い方がイラスト付きで提案されており、「卓上扇風機」「足下送風」「家庭用ゲーム機冷却」「外付けHDD冷却」「ノートPCクーラー」「排気コントロール」「サーキュレーター」「水槽内の水温調節」と様々で、いろいろと使ってみたくなるパッケージである。
それでは、「UMF02WH」の外見を見てみよう。正面から見ると正方形に近く、内部にパソコン用の12cmファンが内蔵されていることがわかる。ファンだけ見ていると完全にただの12cmファンなのがおもしろい。その前には格子があるため、誤ってファンに指を突っ込むと言うことはない。パソコン用のケースファンだけあって耐久性は高そうで、しっかりしていそうだが、その代わりに回転数が高く羽も堅いため、こういった安全策が必要になる。大きさ自体は25mm厚の12cmファン+ケースといったサイズなので、幅147mm、高さ155mm、厚み40mmであり、かなりコンパクトだ。正面の上部には小さいながら緑のLEDランプが取り付けられており、通電しているかどうかが分かる。上部には電源スイッチがあり、弱風と強風の2段階に切り替えられる様になっている。また本体を挟む形でチルトスタンドがあり、ファンを360度回転させることができる。30度ごとに止まるため、ファンを動かしてもチルト角は固定され、風で回ってしまうことはない。スタンドの足の部分には磁石が内蔵されており、スチール製の机の側面にくっつけたり、デスクトップパソコンのフレームにくっつけたりといったことができる。また、磁石がくっつかなくても、スタンドはしっかりしているので、平面に置く分にはどの角度でも安定感があるのは好印象だ。本体裏側の上部にはミニUSB端子が内蔵されており、付属の1mのUSBケーブルをここにつなぐと、電源供給ができる。一般的なミニUSB端子なので、付属のケーブルよりも長いものを用意すれば、パソコン等のUSBポートから離れた場所でも動作可能だ。
それでは、実際に「UMF02WH」を動作させてみよう。USBケーブルをパソコンに挿しこむ。もちろん、USBケーブルからは給電されるだけなので、ドライバソフトなどは不要でパソコン側からも接続されたことは認識されない。もちろん、セルフパワー(コンセントから給電できる)USBハブや、AC電源をUSBポートに変換するアダプタを使用しても使える。 スイッチを強風に入れてみる。ブーンという音をあげてファンが高速回転する。12cmファンそのものなので、回転は安定しており、しっかりしている。2000rpmと高速回転であるため風量はなかなかで、USB接続のファンとは思えないほどである。一般の扇風機と比べると風量は少ないが、机の上や足下で動かせば十分に涼しい風を感じることができるはずだ。動作音は回転数が速いため、それなりに音がするが、ブーンという風切り音でなので、甲高い音や、響くような低い音ではない分ストレスは低そうだ。 さて、続いてスイッチを弱風にしてみる。強風に比べると風は弱くなったが、それでもおもちゃの様な柔らかい羽の扇風機と比べれば十分にしっかりした風である。そよ風といった感じではなく、もうちょっとはっきりと風を感じられる。一方動作音に関してはかなり小さくなった。日常生活の雑音のある中ではほとんど気にならないレベルである。風量と動作音を考えると、ハードディスクなどの冷却には弱風モードくらいがよいかもしれない。このように2段階で風量を変えられるため、用途に合わせて風量重視かと動作音重視かを選べる点が非常に便利である。 また、本体を回転させられる点であるが、これも意外としっかりしていて使いやすい。30度ごとに、引っかかり感があり、その角度で固定する分には、強風モードで動かしても風によって回転指定してしまうことはなかった。また、どの角度にしても安定感があり、用途に合わせて向きを変えるという事が実用的なレベルで行えることが分かった。
それでは、色々な場面で使用してみることにしよう。 まずは熱が気になったノートパソコンに接続したポータブル外付けハードディスクの冷却である。このハードディスクは寝かせておいているため、その横に「UMF02WH」を置いて風を当てても良いのだが、もっと直接的に風を当てたい。「UMF02WH」のファンを90度回転させて、下向きに風を当てる様にして、「UMF02WH」のスタンドの上にハードディスクを載せれば真上から風が当てられる。ポータブルタイプなのでスタンドの部分より幅が小さいため、ファンの真下に置くことが可能だ。一見良さそうに感じるが、問題があることが分かった。「UMF02WH」のスタンドの部分には、磁石が入っているのである。ハードディスクは磁気ディスクであるため磁力は厳禁だ。「UMF02WH」のスタンドの磁石はそれほど強力ではないため、最近のハードディスクでは影響はないとは思うが、ハードディスクの寿命を延ばすために冷却していたらデータが飛んでいたのではマズイ。確実に大丈夫とも言えないため、この方法は諦める。
そこで考えたのが、「UMF02WH」を90度回転させて上向きの風にした状態で、上下逆さにしてハードディスクの上に直接置く方法だ。つまり、ファンをハードディスクの上に置き、磁石の付いた脚の部分は立たせることでできるだけハードディスクからできるだけ離すのである。これでが、ファンがハードディスクの上に密着して載ってしまい風の通りが悪いので、サンワサプライの「TK-AS3」というゴム足を4つ付けることで、5mmほど空間ができた。この状態でファンを「強風」で当てると、問題なく風が当たっている様だった。そして、ハードディスクへのアクセスが連続する様な作業を1時間ほど行い、ケースをさわってみると熱くないどころか、ひんやりと冷たかった。しかも夏場である。S.M.A.R.Tの情報が取得できないため、中のハードディスクの温度がどうなっているかは分からないが、今までなら熱くてさわっていられないほどケースが熱くなっていたのとは雲泥の差であるため、中のハードディスクの温度も下がっていると考えて良さそうだ。「UMF02WH」には思った以上の効果がある。
同じ方法でノートパソコンの冷却も可能だ。ノートパソコン「VGN-SZ94S」はハードディスクがパームレストの左側に入っており、夏場にハードディスクへのアクセスが頻発すると、この部分が異常に熱くなる。さすがに「UMF02WH」を置くと作業はできなくなるが、例えば編集した動画の出力や、データのバックアップ、ウィルスチェックなど、パソコンは触らないが、ハードディスクのアクセスが発生する場合などに、同じくゴム足を付けた「UMF02WH」を下向きにしてパームレスト部分に置いておくと、冷却することができた。こちらは内蔵ハードディスクであるため、S,M.A.R.Tの情報が取得できる。そこで、この状態で、「UMF02WH」がある場合と無い場合でのハードディスクの温度を比較した。テストはハードディスクへのアクセスが連続で発生するウィルススキャンを実行し、60分間の温度変化をグラフにした。室温33度の夏場に計測している。
これをみると、「UMF02WH」を使うことでハードディスクの温度がかなり低く抑えられる事が分かる。まず、ハードディスクが動作していない状態での温度も42度から38度に低下している。そして、ウィルスチェックを実行しても温度上昇が緩やかで、さらに最高温度が50度から43度に7度も低下している。直接当てているわけではなくてもここまでの冷却効果があるとは正直驚きである。もちろん、ハードディスクがパームレスト直下にあるか、間に他のパーツがあるかによっても効果に差はあるだろうが、「UMF02WH」で風を当てるだけでもハードディスクの温度はかなり下げられることが確認できた。ハードディスクの温度に関しては様々な意見があるが、45度以下が安全で、50度を超えると危険だと言われている。そのため危険値ギリギリから安全な温度まで下げられたことが大きな意味があるだろう。 それ以外に、デスクトップパソコンに接続した外付けハードディスクの冷却も試してみた。こちらのハードディスクは立っているため、「UMF02WH」を横に立てておくだけである。ポータブルハードディスクの場合と同じくケースがひんやりするほどまで冷却されるため、効果がありそうだ。また、ノートパソコンのポータブルハードディスクと違って動作していることが多く、常に冷却する方がハードディスクの寿命のためにも良さそうなので、もう1台「UMF02WH」を購入して、横に常に置いておく事とした。その際、「強風」設定ではさすがに風切り音が気になるため、「弱風」にしてみると、夏場以外はひんやりしているため十分に冷却できている様で、真夏ではさすがに温くはなる物の、熱いという程ではないため、問題なさそうだ。「弱風」なら、動作音はほとんど気にならないため、常に動作させておくことができる。ちなみに、現在で丸1年間ほぼ停止させることなく使用しているが、故障したり、ファンの音がうるさくなったりすることもなく安定して使用できている。やはりパソコン用のケースファンだけあって、耐久性は非常に高そうだ。
おもしろい使い方としては、ヤカンやポットの冷却である。我が家ではお茶はヤカンで沸かして冷やしておくし、コーヒーや紅茶も常にポットに立てて冷やして置いておく。しかし、特に夏場になると常温ではなかなか温度が下がらない。かといって熱いまま冷蔵庫に入れるのも問題だ。そこで、ヤカンやポットの横に「UMF02WH」を置いて、強風で回しておく。すると、何もしないと6時間経ってもまだ熱いと感じる温度までしか下がらないヤカンのお茶が、3時間ほど「UMF02WH」の風を当てるだけで「ぬるい」温度まで下げることができたのである。風を外から当てる程度の力はたかがしれていると思っていただけに、この効果は驚きである。コンセントからUSBポートに変換するアダプタを使えば、パソコンの近くでなくても使えるため便利だ。
さらに特殊な方法を紹介しよう。「UMF02WH」はコンパクトで軽いため、持ち歩いても苦にならない。さらにeneloop充電池2本を使ってUSBポートから出力できる「eneloop stick booster」を使う。これは本来携帯電話やスマートフォン、デジタルオーディオプレイヤーなどにUSB充電ケーブルを使って充電するための物だが、「eneloop stick booster」USBポートからはパソコンのUSBポートと同じく5V・500mAの給電が可能なので、ここに「UMF02WH」を接続する。すると問題なくファンが回転する。そのため、「UMF02WH」と「eneloop stick booster」を組み合わせると、外でも風に当たることができる。電車の中などで使うには、やや勇気が必要だが、おもしろい使い方と言えるだろう。 このように、「UMF02WH」はUSB扇風機はおもちゃの様だという概念を覆す、思った以上に色々な場面で使える製品だと感じた。「UMF02WH」は風量も強く、動作音も問題ないレベルで、しかも耐久性も高い。設置した時の安定性も高く、ファンの角度の自由度も高い。小型なので周辺機器の冷却以外にも、工夫次第で様々な場面で役立つだろう。一家に1台あると便利な製品だ。 (H.Intel) ■今回の関係メーカー・ショップ
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