第142回
Seagate Barracuda「ST3000DM001」
(2012年2月27日購入・2012年3月20日著)
我が家のパソコンではデータが膨大となっており、2〜3TBのハードディスク数台にデータを入れている。そのうち、消えては困るデータが多くある。そのため、それらのバックアップが必要になるわけだが、2〜3TBともなると、たとえBlu-rayディスクを使ってもバックアップをするのは大変だ。そのため、同じ容量のハードディスクを購入し、バックアップの時だけハードディスク用クレードルであるセンチュリーの「裸族のお立ち台USB3.0eSATAプラス(CROSEU3)」 (ロードテスト第129回参照)を使って接続し、それ以外は保管ケースに入れて保管するというパターンを取っている。そして今回、ハードディスクが1台故障した。バックアップをしていたハードディスクと交換することでデータは問題なかったが、このままではバックアップが無い状態で大変危険である。新しいハードディスクを購入する必要がある。
必要な容量から、購入するのは3TB以上でなくてはならない。しかし少し前に発生したタイの大洪水によってハードディスクは供給不足と価格の大場な上昇が起こり、まだ2月27日現在でも完全には落ち着いてはいなかった。タイの大洪水の前まで、3TBで最も安かったのはWestern DigitalのCaviar Green「WD30EZRX」である。一時9千円台を割る所まできていたが、大洪水の後は2万円を超える価格になっていた。しかし、それから数ヶ月がたち少し落ち着いてきたため、1週間ほど前に日本橋でんでんタウンのパーツショップを見て回ったときは1万3千円台前半まで低下していた。しかし、今回購入するとなった時にもう一度見て回ると、1万4千円台後半まで価格が上昇しており、それでも半分近い店舗で売り切れている状態になっていた。価格が下がったために人気が出て在庫が減ったために、価格が上昇したらしい。
もう少し価格が落ち着くまでバックアップの無い状態で我慢するか悩んでいると、Caviar Green「WD30EZRX」より安い価格で売られている3TBのハードディスクがあることに気がついた。それがSeagateのBarracuda「ST3000DM001」である。このBarracuda「ST3000DM001」は、回転数が7200rpmの高速ドライブで、本来は5400rpmのCaviar Green「WD30EZRX」よりも高価なはずだ。しかし2月27日現在で1万4千円台中盤から1万5千円台前半で販売されている店舗が多数見られた。予想するに、Seagateは比較的大洪水の被害が少なかったと聞いており、そのため供給量が豊富なのでは無いかということがまず考えられる。そして、実はこのBarracuda「ST3000DM001」は、プラッタ容量が1TBと従来より記録密度が向上した製品だ。そのためプラッタ容量が750GBのCaviar Green「WD30EZRX」ではディスクが4枚で3TBを実現していたところ、Barracuda「ST3000DM001」では3枚で実現できる。そのため製造コスト面で有利なのではないかということも考えられる。WD30EZRXの価格が1万2千円程度になるまで待つことも考えたが、せっかく最新ドライブが安いので、速度テストもかねて購入して見ることとした。ソフマップドットコムで14,480円であった。
購入したBarracuda「ST3000DM001」の外見をまず見てみよう。見た目はCaviar Green「WD30EZRX」と変わりはない。1TBプラッタを採用したハードディスクで1TBの「ST1000DM003」などは、ディスク枚数が少ないためにハードディスク自体の厚みが20.17mmと薄くなっているものもあるが、Barracuda「ST3000DM001」はディスクを3枚内蔵するためか、厚みは一般的な26.1mmになっている。裏側を見ると、WD30EZRXが比較的平坦なのに対して、Barracuda「ST3000DM001」は凹凸が多くなっている。回転数が7200rpmと高いためCaviar Green「WD30EZRX」より発熱が多いと予想されるため、放熱しやすいよう表面積を増やしているとも考えられるが、単にメーカによる形状の違いという事も考えられる。インターフェイスも一般的なSerialATAで違いはない。
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Barracuda「ST3000DM001」の外見である。一般的なハードディスクと何も変わらない。 |
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Barracuda「ST3000DM001」(左)とCaviar Green「WD30EZRX」(右)の比較である。シールが上下逆に貼ってあるので、逆さまに見えるが、両方とも下がSerialATAコネクタ側である。 |
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Barracuda「ST3000DM001」(左)とCaviar Green「WD30EZRX」(右)の裏側である。Barracuda「ST3000DM001」は凹凸が多くなっているのは回転数が高く発熱が多いためと考えられる。 |
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Barracuda「ST3000DM001」(左)とCaviar Green「WD30EZRX」(右)の側面である。ジャンパピンの部分に形状の違いはあるが、SerialATAコネクタは全く同じだ。 |
それではBarracuda「ST3000DM001」の速度をベンチマークテストを利用して計測してみよう。Barracuda「ST3000DM001」をセンチュリーの「裸族のお立ち台USB3.0eSATAプラス(CROSEU3)」を利用して外付けハードディスク化し、インタフェースによる速度の制限を受けにくいよう、eSATAでパソコンと接続した。接続したパソコンはSONYのVPCF13AGJでCPUがCore i7-740QM(1.73GHz)、メモリが4GB、OSがWindows 7 Professional 64bit版である。テストは、CrystalDiskMark 3.0を使用し、テストデータ1000MB、テスト回数5回としてテストを行ったものをさらに3回行い平均値を出している。比較対象として同じ3TBのハードディスクであるWestern DigitalのCaviar Green「WD30EZRX」でも同じテストを行っている。なお、Barracuda「ST3000DM001」とCaviar Green「WD30EZRX」のスペックの違いは以下の通りである。
メーカー |
Seagate |
Western Digital |
型番 |
Barracuda ST3000DM001 |
Caviar Green WD30EZRX |
容量 |
3TB |
3TB |
プラッタ容量 |
1TB |
750GB |
キャッシュ容量 |
64MB |
64MB |
回転数 |
7200rpm |
5400rpm |
高さ |
26.1mm |
26.1mm |
奥行き |
146.99mm |
147mm |
幅 |
101.6mm |
101.6mm |
重量 |
0.626kg |
0.73kg |
これを見ると、キャッシュ容量などは同等で、回転数とプラッタ容量に違いがあることが分かる。また、サイズは全く同じだが、重量に関してはBarracuda「ST3000DM001」の方が軽い。プラッタ枚数がCaviar Green「WD30EZRX」では4枚のところ、Barracuda「ST3000DM001」では3枚になっていることが影響していると思われる。
それでは、ベンチマークテストの結果を見てみよう。リード・ライト性能は、シーケンシャル・ランダム共にCaviar Green「WD30EZRX」を圧倒している。特にシーケンシャルライトが190.8MB/s、シーケンシャルライトが189.0MB/sというのは、間違いなく現時点でトップクラスの性能だ。シーケンシャルリード・ライト性能だけなら一昔前のSSD並みになっているから驚きである。また、シーケンシャルリードはCaviar Green「WD30EZRX」の147.2%、シーケンシャルライトは147.8%である。回転数は33%高いだけなので、プラッタ容量の向上が性能に影響していることがハッキリと分かる結果だ。ランダム性能はシーケンシャル性能ほどではないものの確実に高速化しており、全体的に使い勝手が向上していることが予想できる。
今回は比較的安価に、1TBプラッタで7200rpmという最新スペックのハードディスクを購入することが出来た。ベンチマークテストでも、その性能が十分に発揮されていることが確認でき、現段階でトップレベルの性能を持つことが証明された。190MB/sというのは、現在のSSDと比べてば劣る物十分高速で、それでいて120GB程度のSSDとほぼ同価格で25倍の容量の製品が手に入る。システムドライブ用に高速なドライブが欲しいが、SSDでは容量的に不安という人には最適な製品だろう。また、5400rpmの製品との価格差もほとんど無いため、データ保存用ドライブとしても快適に使えるはずだ。
(H.Intel)
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