第179回
2TB 2.5インチハードディスク
Seagate/Samsung
ST2000LM003
(2014年9月19日購入・2017年2月25日著)



外付けHDDの容量アップを図る

 ノートパソコンには常時接続しているポータブルハードディスクがある。現在は1.5TBなのだが、これが不足してきた。このポータブルハードディスクは、2.5インチハードディスクとポータブルハードディスクケースを別々に購入し、組み合わせて外付けハードディスクとして使っている。そのためハードディスクだけ買い換えれば、容量アップさせられる。その点で、若干安く購入できるし、好きなハードディスクを選ぶことができる。ところが、1.5TBより上となると、2TBなのだが、これがなかなか難しい。大容量の物は15mm厚の物が多いのである。しかし一般的な2.5インチハードディスクと言えば9.5mm厚で、15mm厚は特殊に厚い製品となる。実際、販売されている2.5インチハードディスクケースは9.5mm厚までの物が多く、最近ではSSD専用に7mm厚までの物も存在するほどだ。手持ちのケースも、若干厚い12.5mm厚まで対応しているものの、15mm厚には非対応、今後の事を考えて2.5インチハードディスクケースも買い換えることも考えたが、そもそも15mm厚対応の2.5インチハードディスクケースが存在していない。つまり9.5mm厚で2TBの物を選ばなくてはならない。ちょうど、2TBの製品「ST2000LM003」が発売され、これが唯一の製品と言えるので、これを購入した。価格は日本橋のPC 1'sで13,500円。3.5インチハードディスクと比べれば割高だが、1.5TBの製品が8千円後半〜1万円なので意外と割高では無い。

ST200LM003を見る

 「ST2000LM003」を見る前に、製品のメーカーだが面白い事になっている。購入したPC 1'sではSamsungの製品として販売されており、他の店舗でもSamsung製品としているところが多かった。しかし実際には2011年4月にSamsungはSeagateにハードディスク事業を売却しており、実質Samsungのハードディスクは終焉を迎えているはずだ。その後も、Samsungのハードディスクも市場にしばらくは残っていた物のの、大容量の物は発表されず、販売される製品の容量が上がっていくに従って、姿を消していっていた。そんな中、2014年になって発売された新製品がSamsungブランドで販売されたのには驚いた。貼られているラベルを見てみると、大きく「SAMSUNG」のロゴが付けられ、その横にはSamsungのブランドである「SPINPOINT」のロゴも書かれている。これだけ見るとSamsungの製品と考えられそうだ。しかし、ロゴの上に書かれたホームページアドレスはSeagateとなっている。また、それらから離れたラベルの真ん中あたりにSeagateの2.5インチHDDのブランドである「Momentus」の文字も見える。また、Samsungロゴの下に書かれている型番「ST2000LM003」の形式はSeagateの製品そのものだ。例えばSeagateのデスクトップ向け3TBは「ST3000DM001」で、STの後ろに容量をGBで表記し、その後がデスクトップのDが付く。「ST2000LM003」は容量が2TB(2000GB)なので数字が2000、ラップトップ向けなので英語が「L」になっている。ところがその下にPNとして書かれている型番はSamsungの形式だ。つまり、ロゴも型番もSeagateとSamsungが混在しているのだ。一般的に考えればSamsungのハードディスク事業はSeagateが買い取っているのだから、Seagateに一本化するのが普通だろう。旧製品が従来型番のままで残っているならまだしも、新製品でわざわざ両ブランドを併記するのは不思議な話だ。可能性として考えられるのは、旧Samsung時代に製品開発、又は旧Samsungのメンバーによる製品開発で、Samsungの従来製品のパーツの流れをくむ大容量製品であるという事だ。そのため、中身はSeagateの開発したHDDというよりSamsungの開発したHDDなのだという事を主張しているのではないだろうか。真偽は不明だが、謎の多い製品と言える。

「ST2000LM003」である。一般的な2.5インチハードディスクだ。

「ST2000LM003」のラベルには大きくSamsungのメーカー名と、Samsungのブランドである「SPINPOINT」ロゴが書かれ、Samsung色が強くなっている。ホームページアドレスはSeagateのものだ。

「ST2000LM003」の書かれた型番だが、上段はSeagateの形式、下段のPNとして書かれているのはSamsungの形式に沿っている。

「ST2000LM003」のラベルには、Seagateの2.5インチHDDのブランド「Momentus」も書かれている。

 さて、話が逸れてしまったが、実際の製品を見てみよう。見た目はごく一般的な2.5インチハードディスクだ。実際にこれまで使っていた1.5TBのハードディスクHGSTの「0S03634」と比べてみても、メーカーが異なるので表面の形の違いはあれど、サイズは全く同じだ。当然ながら、SerialATAコネクタの形や位置も同じ、重ねて横から見てみても厚みが同じ9.5mm厚というだけで無くネジ穴の位置も同じだ。これならば交換しても問題なく使用できるだろう。

「ST2000LM003」(左)と、これまで使っていた「0S03634」(右)である。当たり前だがサイズは全く同じだ。

「ST2000LM003」(右)と、「0S03634」(左)である。同じ9.5mm厚の製品なので、厚みも同じだ。

「ST2000LM003」(上)と、「0S03634」(下)である。ネジ穴の位置も同じなので、ネジで固定する場合も安心だ。

「ST2000LM003」(上)と、「0S03634」(下)である。当然ながら、SerialATAコネクタの位置も同じである。


「ST2000LM003」の速度をテストする

 それでは、「ST2000LM003」の転送速度ををベンチマークテストを利用して比較してみよう。今回購入した「ST2000LM003」の他に、比較対象として、これまで使っていた1.5TBのハードディスクHGSTの「0S03634」でもテストを行った。使用したベンチマークテストは、CrystalDiskMark3.0で、テストデータ1000MB、テスト回数5回としてテストを実行した物をさらに3回行った平均値としている。いずれのテストも、マウスコンピュータの「MDV-AGZ8000B」(CPU:Core i7-3770K(3.50GHz・TuboBoost時3.90GHz・4コア8スレッド)/チップセット:Intel Z77 Express/メモリ:8GB/OS:Windows 7 Premium)のマザーボード上のSerialATA 6Gbpsのポートに接続して行っている。なお、両製品のスペックは以下の通りとなる。

メーカー
Seagate/Samsung
HGST
型番/TD>
ST2000LM003
0S03634
容量
2TB
1.5TB
プラッタ容量
667GB
500GB
キャッシュ
32MB
32MB
回転数
5400rpm
5400rpm
インタフェース
SerialATA 6Gbps
SerialATA 6Gbps




 まずはシーケンシャルアクセス性能を見てみよう。「ST2000LM003」が読み書き共に「0S03634」を上回っている。シーケンシャルリードで約16.8%、シーケンシャルライトで約17.2%の向上となる。回転数などは同じなので、やはりプラッタ容量が増加した事による速度向上といえる。実際、9.5mm厚の2.5インチハードディスクにはプラッタ枚数は3枚が限界のようなので、500GBプラッタでは1.5TBまでで、2TBを実現しようとすると667GBプラッタとなり、転送速度は向上することになる。3.5インチHDDで7200rpmの製品だと200MB/sオーバーの製品も存在するが、一昔前の5400rpmの3.5インチハードディスク並の転送速度で、実質的に使用する上では問題はなさそうだ。特に、今回の場合システムドライブはSSDとなっており、ファイルの保管場所として使用するので、起動時間等に影響は無く、快適に使えそうだ。
 ランダム512Kの性能を見ると、ハードディスクなのでランダムアクセスになると速度が大きく低下するが、「ST2000LM003」は「0S03634」に対して優位性を維持している。さすがにランダム4Kともなると、「ST2000LM003」と「0S03634」の差は誤差程度になっているが、このくらい小さなサイズのランダムアクセスになると、シークタイムを上げるなどの改良が無ければ速度向上は難しいので、仕方が無いところだろう。



 今回は容量アップのため、2TBの2.5インチハードディスクを購入した。2TBで9.5mm厚となると製品の選択肢が無いが、特にトラブルも無く、問題なく交換し使用する事ができた。またプラッタ容量が上がった事による転送速度アップというおまけも付いていた。特別容量単価が高くなるわけでも無いので、交換を検討している人は、今後のことを考えても最大の2TBにする事をおすすめしたい。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
Seagateのページ http://www.seagate.com/jp/ja/