SWEAR BY KISS

side−菊丸

大石はいつもキスからはじめる
まず唇に、そして額に、
瞑った瞼に。
そして許可を求める様に
醜い傷跡に。
いつも絆創膏の下に隠れているそれに
大石は恭しく口付ける。
それはセックスをする前の儀式のようなもので、
軽く触れられるキスはとても心地よかった。
「おーいし…」
何?と優しく微笑む瞳が向けられ、
不覚にも見惚れてしまった。
前に一度、どうして傷跡にキスするのか聞いてみたことがあって、
その時大石は「嫌いにならないで欲しいから」って答えた。
オレが秀を嫌いになるハズないよ、と言ったら
「英二が自分自身をだよ」と言われた。
そうかもしれない
あの時の幼い自分はあの苦しみから逃れるために自分が悪いと思い込もうとしていて、
自分のことが大嫌いで。
でも大石がいつも傍に居てくれたから、
スキと言ってくれたから、
英二は悪くないって言ってくれたから、
やっと自分は悪くないと信じられた。
あの夏の夜に自分がされた事は、
未だに自分を苦しめるけれど、
でも大丈夫だと思えるのは大石が厭きずにキスを繰り返すからで、
「好きだよ」
押し倒されて組み敷かれたこの体制で、
オレはオレの顔を覗きこむ大石に素直な気持ちを告げてやる。
オレはいつも大石を求めてて、
大石が大好きで
「愛してる。」



side−大石