もう会えないと。約束を果させることも出来ないのだと。
そう思っていた彼が、何故か、ココにいる。


愛×3・その3


もぞもぞと、私から離れるように彼が動いた。
私は動く彼の身体を引き寄せた。
「うわっ。」
小さく叫んで彼は私の腕の中に納まった。
さして広くもないベッドの上で何処に逃げるつもりだったのか。
「ジャン。」
バタバタと無駄な抵抗をしていた彼は、低く名を呼ぶことで抵抗を止めた。
月明かりだけのこの部屋でも分かるくらい、彼は顔を紅く染めていた。
愛しいと。
その首筋に顔を埋めた。
強く吸い、跡を残す。
ピクンと彼の身体が強張る。
「ジャン。」
もう一度名を呼ぶと彼はゆっくりと強張りを解いた。
片手で彼の髪を梳く。
そうすれば気持ちよさそうに身を任せてきた。
「そういえば。」
私は囁く。
「君に伝えたい事があったんだ。」
囁く声は甘く、睦言にしかならないのだけれども。
私は静かに笑った。
彼は首を巡らせ私の方を見た。
「いつかの晩の、あの時の、曲の題がわかったよ。」
彼は暫らく視線をさ迷わせ、そして瞳を見開いた。
それを見て私は笑う。
「私にくれる約束だったね。」
彼は顔を伏せた。
耳まで赤くするとポツリと呟いた。
「分かるとは思ってなかった…。」
彼の言葉も、甘い。
これが私たちが25年で得たものなのかと。
ならばそれはそれで悪くないのかもしれない。
告げられなかった思いを、憚ることなく口に出来るのなら。
「愛してるよ、ジャン。」
「オレもです。ずっと、ずっと。」
ぽろぽろと、涙が零れるのだけれど。
言葉を口にするだけでどうしよもなく泣けるのだけれども。
「愛してます、マジック様。」
彼の声も、歌と同じ様に涙に揺れていた。




これがいまの話し。




歌詞はドリカムの『LOVE LOVE LOVE』から。
設定は創作です。


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