会津駒ケ岳(あいづこまがたけ)    54座目

(2,133m、 福島県)


残雪にきらめく会津駒ケ岳の山頂。


那須岳から続く

1997年5月2日 (金)

滝沢登山口から会津駒ケ岳往復


那須湯本340−檜枝岐−滝沢登山口550〜1030会津駒ケ岳〜滝沢登山口−那須IC

 会津駒ケ岳は、福島県の南会津にある檜枝岐(ひのえまた)村から登る。この檜枝岐という名前は、尾瀬へ行った時に福島県側へ下れば檜枝岐村へ出るということで名前だけは知っていた。一度は行ってみたいと思っていた山奥の秘境である。

 関東から行くには、東北道の西那須野塩原インターから国道400号、352号で尾瀬方面へ向かうか、または関越道の小出インターから奥只見湖を通って入る。しかし、小出方面からは雪のため交通止めの期間が長く、6月末ごろにならないと通れない。

 この道路(352号)を「百名山街道」と呼んだ人がいる。小出方面から数えると越後駒ケ岳があり、平ケ岳、燧ケ岳、至仏山、そして会津駒ケ岳と日本百名山が5座も並んでいる。昨日登った那須岳も見えるかも知れない。

 昨日、那須岳へ登って湯本の民宿へ泊まり、今朝3時40分に宿を出発して来た。檜枝岐村は、ひと昔前は郵便局へ行くのに1日、駅へ行くのに2日かかるといわれた秘境である。今でも茅葺屋根の民家が何軒かあった。こんな山奥にどうして人が住んでいるのだろうと思いたくなるような村だった。

 山は見渡す限り残雪はなく、「今日もピッケルは必要なさそうだ」と思っていた時、正面の低い山の奥に、残雪をたっぷり抱いた山が朝日に眩しく輝いているのが見えた。「アッ、会津駒だ!」と、あわてて車を止めて写真を撮った(写真右)。

 そして、会津駒は平地からは見えないと聞いていたので、本当に会津駒かどうかを確認するため、5、60メートル先で畑仕事をしていた年寄りの所へ走って行って、
「あの山は何んですかねぇ」
 と聞くと、
「ありゃあ駒だよ・・」
 という返事が返ってきた。やはり会津駒ケ岳だった。おそらく会津駒へ続く尾根の一部だろうが、雪山を見るとガ然ファイトが湧いてきた。

 はやる気持ちを押さえながら、車を走らせて行くと、道ばたに「駒ケ岳登山口」の標識が現れ、さらに「登山者専用駐車場」という標識が現れた。ここは登山者思いというか、実に思いやりのある村だと思った。
 2、30台もおけそうな広い駐車場に5、6台の車が止まっていた。

 5時50分駐車場を出発。
 林道を10分ほど歩いた所から左手の登山道へ入る。ここから一気の登りになった。一歩一歩高度をかせいで行く。ここは落葉樹なので視界は利いた。

 1時間も歩くと残雪になった。水場の標識は4、50センチも雪に埋もれていた。途中で「ピッケルがないので引き返えして来た」という20代の青年に会った。雪が凍結している訳ではないから、ピッケルやアイゼンがなくても登れそうな気がするのだが……。雪山に慣れていないか、それとも、よほど慎重な人なのだろう。

 山頂近くなると、樹林もなくなり完全な雪山になった。春の日差しが強く顔がヒリヒリする。
 もうすぐ小屋があるはずだと思いながら、雪の斜面を登っていく。ここは春スキーのメッカらしく、スキーをかついだり、スキーを履いて登って行く人が多い。ゆるんだ雪を一歩一歩登っている脇を、スキーを履いた連中に追い越される。


(途中で見えた燧ケ岳)

(遠くに見えるのは日光白根山だろうか?)

 小屋はボッテリした高台の先にあった。下からは全く見えないが、急な斜面を登りきると、反対斜面の5、60メートルほど先に建っていた。そして、その小屋の上空に越後駒や平ケ岳などが並び立って見えた。思わず「ヤッター」と声を張りあげ、荷物を放り出した。

 感激だ。越後駒ケ岳がこんな近くに見えるなんて信じられない。越後駒から中ノ岳の白い稜線が、青い空を区切って並び立ち、左側には平ケ岳まで見えた。越後駒へ行った時は雨に降られ、あまり景色も見えなかったが、今日はなんとすばらしい眺望だろうか。


(右側から越後駒ケ岳、中ノ岳)

 歓声をあげながら写真を撮っていると、近くにいた男性2人のパーティーが、下から登って来たオジさんに何やら話かけていた。今登って来たオジさんは、どうやら小屋の管理人らしい。
 その管理人がひと休みしてから、
「さて小屋へ行くか」
 と言って小屋へ向かって歩き出すと、2人もこのオジさんの後へついて行った。私もせっかくだから小屋を覗いてみようと思って、3人の後について行った。

 小屋は結構きれいだった。小屋の中を一目見てすぐに引き返し、右手の山頂を目指して登って行った。山頂までは20分ほどで着いた。10時30分着。

 山頂からの展望は抜群だった。目の前に越後駒ケ岳や平ケ岳の稜線が見え、南側には燧岳と至仏山が、まるで夫婦のように並び立って見えた。

 さらにその左手には、日光の白根山がひときわ高くドームのように見えた。日光白根山があんなにカッコいいとは思わなかった。男体山も見える。その他にも上州武尊や皇海山らしい山も見える。詳しく調べれば日本百名山のうち10座以上が見えるに違いない。ここはまさに日本百名山の展望台のような所だった。

 今度、平ケ岳へ登った時はこの会津駒が目の前に見えるはずである。その時を楽しみにしよう。


(会津駒ケ岳の山頂)

(左奥が燧ケ岳、右奥が至仏山)

(眺望を楽しみながら昼食。バックは平ケ岳)

 下りは雪道を滑るように下ったので、山頂から2時間で駐車場へ着いた。
 そして、楽しみにしていた檜枝岐村での温泉が、これまた最高だった。温泉は村営で、無臭、透明、お肌すべすべ。料金は500円也。 (平成9年)

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