(1,613m、岩手、秋田)
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岩手山710〜1025焼走り登山口−大更駅−茶臼口〜茶臼岳〜1320茶臼避難小屋(泊) |
大更(おおぶけ)駅前からは、たった今下って来たばかりの岩手山が見えた。しかし、空は白い雲が覆っていた。やはり天気は下り坂のようだ。
八幡平行きのバスは空いていた。ザックを窓側の席へ置き、それに寄りかかっていつの間にか寝てしまった。目が覚めた時は八幡平観光ホテル近くで、紅葉が真っ盛りだった。
車窓から紅葉を眺めながら、山頂付近はもっと凄いだろうと期待が膨らんだ。そして、車窓から写真を撮ろうと思ってザックからカメラを出したが遅かった。一帯はクマザサに変わってしまい紅葉している樹木などなくなった。(源太岩から上は紅葉はほとんどない)
茶臼口で降りると、正面に盛っこりとした山が見え、木の階段が山頂まで繋がっていた。
(茶臼口バス停) |
(八幡平アスピーテラインを振り返る) |
その階段を登って行くと、下って来るハイカーが多いのに驚いた。バス停の近くにあった駐車場に5、6台の車があったが、その人達とは思えない。どうも八幡平頂上の見返峠まで車や観光バスで行って、頂上からここまで下って来た人達のようだ。
大きな荷物を背負っている私に、「そんな大きな荷物を背負って、何が入っているんですか?」と聞いてくるオバさんもいた。
階段を登り切ると、正面にスーと立ちあがった茶臼岳が見えた。
一汗かいた頃、小さな避難小屋へ着いた。13時20分。(写真右)
小屋は小さくボロなのでがっかりした。さっき岩手山の下りで、この小屋へ泊まったことがあるという人から、「なかなかいい小屋ですよ。トイレもあるし‥」と聞いてきたので期待してしまったのだ。
気持ちを入れ替えて、「こんちは」と声を出して入って行ったが、誰もいなかった。「う‥‥ん」と一人ため息をつく。山小屋は混雑するのも困るが、ひとりぼっちで泊まるのも寂しい。
しかし、時間がまだ早いので、これから「私のような変わり者」が来ることを期待した。
一番奥の窓側に荷物を置いて、買ってきた缶ビールとカメラだけを持って茶臼岳の山頂へ向かった。
山頂には50代のご夫婦が岩陰でお弁当を広げていた。山頂からは正面に岩手山、右手に八幡平からモッコ岳まで見えたが、薄くモヤがかかっていた。
私は岩手山が見える岩に座り込んでビールを飲んだ。そして、もっと岩手山がクッキリ見えれば最高なんだがなあ、と思わずにはいられなかった。
(写真はボンヤリとしか見えない岩手山)
小屋へ戻ってコーヒーを飲みながら本を読み、時々、外へ出て岩手山を眺めたが、相変わらずボンヤリとしか見えなかった。
15時半を過ぎても誰も来なかった。今日は日曜日であり、しかも、ここはハイキングコースである。近くには有名な温泉やホテルがあるのでこんな避難小屋へ泊まる人はいないのだろう。
今夜は一人で寝ることを覚悟した。今まで避難小屋へは何度も泊まっているが、たった一人というのは初めてである。昨夜は岩手山八合目の小屋で、不届き者が夜遅くまで騒いでいたので少々寝不足である。今日は一人でゆっくり休めると思えば、これもいいだろう。
小屋は真ん中が土間で、板の間がコの字形になっている。20人位は寝られそうだ。土間にはストーブがあった。
17時を過ぎると小屋の中の温度が12度まで下がってきた。玄関の脇にあった薪を持ってきて燃やしながら酒を飲んだ。しかし、小屋中が煙だらけになってしまい、急いで消した。
夜になると風が強くなった。樹木がヒュウヒュウと唸り、窓ガラスがガタガタ鳴った。目が覚めるたびに音は強まり、まるで台風のような強風に、小屋が飛ばされてしまうのではないかと心配した。
茶臼避難小屋640〜源太森〜840八幡平〜見返峠−盛岡−東京 |
朝5時30分起床。
外は雨と風が唸っていた。こんな天気で本当に歩けるだろうかと心配になる。しかし、ここでじっとしている訳にはいかない。
雨具を着て、傘をさして6時40分出発。
外は思ったほどひどくはなかった。時々、突風にあおられるが、両脇の森林が防風林になっているので助かる。
黒谷地湿原まで来ると、風を遮るものがなく、もろに強風にあおられた。傘はキノコになり、真っ直ぐ歩くのもしんどい中で、必死で草紅葉の写真を撮った。
源太森の山頂は1分もいられなかった。せっかく立った展望台であるが、今日は風の通り道となり、身の危険さえ感じるほどだった。
八幡沼は海のような高波を見てそれと気づく。陵雲荘まで来ると発電機の音が聞こえてきた。ここは改築中とは聞いていたが新築工事らしい。この小屋がもっと早く完成していればここへ泊まることも出来たのだが‥‥。
キノコのようになった壊れた傘を持って、ガマ沼を左手に見ながら石畳のような道を進み、ついに八幡平の山頂へ着いた。8時40分着。
しかし、ここは山頂という感じはしなかった。平坦な所に高い展望台が建っている。荷物を置いて登ってみたが、むろん見えるものはなし。ただ風雨にあおられるだけだった。すぐに降りてキノコになった傘を何とか広げ、ザックに雨が入らないようにして写真を撮りすぐに退却。
見返峠の広い駐車場まで来て今日初めて人に会った。バス停があるレストハウスに入ってやっと一息ついた。晴れていればモッコ岳まで行って藤七温泉にでも入ろうと思っていたが、それもこんな天気ではままならぬ。
この八幡平は、もう20年も前の5月に家内と二人で来たことがあった。奥入瀬渓谷から十和田を廻ってここへ来た時は吹雪だった。そして今回は台風のような風雨。どうもここはついていないようだ。
食堂で熱いコーヒーを飲みながら、たとえ観光地でも、風雨の中でも八幡平の山頂に立ったことで、日本百名山もついに97座になったことを喜んだ。
そして、10時40分発のバスで盛岡へ向かった。
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