八甲田山(はっこうださん)    83座目

(1,584m、 青森県)


下毛無岱から見た八甲田連峰。右から八甲田大岳、井戸岳、赤倉岳。


2000年10月6日(金)

酸ケ湯〜仙人岱〜八甲田大岳〜上毛無岱〜下毛無岱〜酸ケ湯

東京−(夜行バス)−青森−酸ケ湯855〜1030仙人岱の水場1040〜1128大岳1207〜1220避難小屋(井戸岳の途中まで散策)1300〜1450酸ケ湯−青森(泊)

 昨夜、東京駅発の夜行バスに乗って青森駅へやって来た。今朝7時に着く予定だったが、30分ほど早く着いたので、ケ湯へ行く始発バスまで約1時間ほど待たされた。
 昨夜は遅くまで寝付かれず、少々寝不足で頭がすっきりしなかったが、青く澄んだ空を見て一気に眠気が吹っ飛んだ。

 十和田湖行きのバスは、紅葉シーズンであり、しかも明日から3連休なので混むかと思ったが、乗ったのはわずか10人ほどだった。

 山麓の紅葉はわずかに色づきはじめているが、まだ2、3分程度だった。あと一週間か10日遅く来れば良かったかな、と思った。
 ロープウェイ駅で大半の人が降り、酸ケ湯で降りたのは私一人だけだった。8時55分着。

 バス停の正面にあった石段を登ると広い駐車場になっており、左手に鳥居が見えた。そして、その鳥居の上空に、待望の八甲田大岳が見えた。

(写真は酸ケ湯の駐車場から見た八甲田大岳)

 駐車場には車が2、30台ほど止めてあった。登山者は車で来る人が多いのだろうか。

 鳥居をくぐると「大岳まで4キロ」という標識があった。しかし、仙人たいへ行く道なのか毛無岱けなしたいへ行く道なのか分からず迷ったが、とにかく行ってみることにした。

 9時5分発。最初はブナ林の中に丸太で作った土止め用の階段を登って行く。道はすぐになだらかになったが、木漏れ日が暑く、厚手のシャツを脱いだ。

 しばらくすると、しっとりと汗をかいた。しかし真夏のような吹き出す汗とは違い、さわやかで気持ちがいい。
 周りに人影は見えず、明るく静かな森の中を黙々と登って行った。45分ほど歩いてから始めて休憩。道ばたに腰を下ろして一服していると、遠くから小鳥の声が聞こえてきた。

 しばらく行くと紅葉が見事な一角へ出た。真っ黄色に色づいたカエデの中に紅い色も混じっていた。紅葉は半ば諦めていただけに、思わず歓声をあげる。ここは「地獄湯の沢」らしく、上部は樹木がなく黄色ぽい硫黄が山肌を覆っていた。

 硫黄の臭いを嗅ぎながらその沢を登って行くと、両岸が急に狭くなってきた。

 さらに進んで行くと、道は平坦になり木道になった。仙人岱と呼ばれる高層湿原である。仙人岱の水場へ10時30分着。

 私と入れ替わるようにそれまで休んでいた5、6人のパーティーが出かけて行った。水場は昔の井戸のように板で四角に囲ってあり、冷たい水がコンコンと湧いていた。そして正面に大岳が見えた。

 10時40分発。
 しばらくは大岳を左手に見ながら進んで行く。
 小岳との鞍部から左の大岳を目指して行くが、背後に見えるピラミッドのような高田大岳が気になる。大岳よりもむしろ高田大岳へ行きたい衝動に駆られる。


(大岳を左に見て登って行く)

(背後の高田大岳が気になる)

(鏡沼)

 山頂に近づくにつれて風が強く寒くなって来た。急いで厚手のシャツを着込む。

 山頂直下に小さな池があった。鏡沼らしい。周りにはナナカマドの真っ赤な実があった。

 11時28分山頂着。広い山頂には5、60人もいて驚いた。ここへ来るまで10人ほどしか会わなかったのに、そこはまるで遊園地のような賑わいだった。どうも反対側にあるロープウェイで登って来た人達らしい。

 この山頂はテレビで見たことがあった。「中高年の登山学」で、山内賢さんが「広い山頂ですね……」と言っていたのを思い出した。

 ここから見る高田大岳がすばらしかった。ビラミッドのような山容に心がゆさぶられる。今からでもいい。登ってみたい・・・。そんな思いに駆られる。

(山頂から見た高田大岳)

 山頂でラーメンを食べようと湯を沸かし始めたが、風が強く寒いのでなかなか沸かない。いつもの倍もかかってやっと沸騰した。

 食後にゆっくりとコーヒーを飲みたいと思ったが、寒くてとてもコーヒーどころではなかった。

 山頂からは岩木山が見えた。しかし、モヤで霞んでいた。ここからは鳥海山や岩手山なども見えるらしいが、良く分からなかった。
 とにかく寒いので早々に下山する。12時7分下山。

 12時20分、避難小屋着。小屋は小さいがログハウス風で立派だった。小屋の周りで50人位が休憩しながら食事などを摂っていた。
 私はザックを小屋の軒先に置いて、カメラだけをもって井戸岳を登り出した。途中から右手後方に高田大岳がピラミッドのように見えた。

 井戸岳はかなり大きく、山頂へ行くには火口壁を半周しなければならないが、その火口壁はロープウェイで来たハイカーが大勢いたので行くのを諦めた。
 再び避難小屋へ戻り13時ジャストに下山する。

(写真は井戸岳の途中から見た八甲田大岳。避難小屋が見える)

 登山道からは岩木山が見えた。しかし、相変わらずモヤでぼんやりとしか見えない。
 しばらく下って行くと、黄色の紅葉が見事になって来た。ここは仙人岱コースよりも紅葉する樹木が多く、信じられないほどの紅葉だった。

 そして、眼下に湿原が見えて来た。上毛無岱かみけなしたいである。草紅葉と黄色いカエデがちょうど見頃で、紅いナナカマドとウルシは8分位だろうか。

 湿原には木道が敷かれ、途中に休憩所があった。こんなすばらしい所をスタスタと歩いてしまってはもったいない。さっそく休憩しながら写真を撮った。
 休憩所には、『八甲田湿原は、尾瀬と並ぶ日本有数の高層湿原で300種近くの高山・水性植物が生えている』と書いてあった。
 振り返れば、大岳から井戸岳、赤倉岳の稜線が見えた。「最高だ!」と歓声を上げた。

 さらに木道を進んで行くと下りになり、眼下にすばらしい展望が広がっていた。下毛無岱しもけなしたいである。草紅葉の中に白く点々と光る池塘、その周りに色づく紅葉。まさに別天地だった。

 つい先ほどまでは、紅葉は一週間ほど早すぎたと思っていたが、ここはまさに紅葉の真っ盛りだった。良かった。来て良かった。はるばるやって来た甲斐があった、と思った。

 写真は何枚撮ってもきりがない。カメラを持ったまま木道を歩いて行くと休憩所があり、そこで休んでいた人が、「写真を撮ってあげましょう」と言ってシャッターを押してくれた。

 ここからも写真を撮りながら下った。草紅葉の中にピンク色に紅葉しているものもあった。
 途中からカメラをザックにしまい一気に下った。
 14時50分頃酸ケ湯温泉着。
 さっそく缶ビール買って飲んでから千人風呂で汗を流し、予定していたよりも一本早い16時のバスに乗って青森駅へ向かった。

(写真は酸ケ湯温泉と大岳)

岩木山へ続く