そして、涸沢から見る穂高は、以前、前穂高北尾根を「岩の貴婦人」と日記に書いたことがあるが、岩峰の一つひとつに気品があり、見る人に感動と安らぎを与えるものがある。
それに比べ、飛騨側から見る穂高は何とけばけばしいことか。『鳥も止れない』と言われる滝谷の絶壁と、地獄の山を見ているような針の山は、見ているだけで全身の血液が凍りついてしまうのではないかと思うほどである。同じ山でありながら信州側とこれほどまでに異なることに驚く。
『欧州の子供たちは、山の絵を描くとき直線で描くが、日本の子供は曲線で描く』という話を聞いたことがある。日本の子供たちもここへ来たら、きっと直線で描くに違いない。
同じ穂高を登るにも、関東の人は信州側から登り、関西の人は飛騨側から登ることが多いような気がする。せめて眺めるだけでもいいから信州と飛騨側の両方から見ることをお勧めする。
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