姫神山(ひめかみさん)

(1,124m、岩手県)  156座


石川啄木の故郷、渋民駅の陸橋から見た姫神山

2007年11月25日(日)

東京656--(新幹線)--922盛岡946--(いわて銀河鉄道)--1011好摩--(タクシー)--1028一本杉登山口1030〜 1058五合目1103〜1132八合目〜1220姫神山1250〜1330こわ坂登山口〜1352一本杉登山口--(タクシー) --石川啄木記念館--(タクシー)--渋民1501--(いわて銀河鉄道)-- 1521盛岡1709--(新幹線やまびこ64号)--2024東京

 今年の秋は「紅葉狩り」に行けなかった。毎年10月の3連休は紅葉狩りに行くのを楽しみにしていたが、今年は自治会の行事があって行けず、泣き泣き諦めた。

 その行事が終わって、「さあ、山へ行くぞ!」と思った途端に、今度は風邪を引いてしまい、 それからず−と調子が悪く、山どころではなかった。

 11月下旬になってやっと体調が戻って来た。まだ完璧ではないがハイキング程度の山なら登れるだろうと思い、「どこか簡単に登れる山はないか」と思い巡らした時、姫神山が浮かんで来た。姫神山なら1〜2時間で登れる。しかも日本二百名山であり、一度は登りたいと思っていた山でもある。我ながらいい山を思いついたと思った。

 東京発、6時56分の「はやて1号」に乗った。今日は日帰りで姫神山を登って来るのである。盛岡はさすがに遠いが、時間的には楽勝である。

 東北新幹線の車窓からは初冠雪で真っ白になった日光や那須連山、さらには安達太良山が見えて来た。姫神山もあんなに雪が積もっているのだろうか。もし、 トレース(足跡)が無かったらどうしよう、と不安がよぎる。

(写真は車窓からの展望)

 仙台を過ぎて盛岡近くなると平野部も雪に覆われていた。畑も真っ白だった。あんなに積もっていては、 姫神山の登山口までタクシーが入れるか心配になって来た。しかし、その雪も市街地へ入ると解けていた。

 やっと岩手山が見えて来た。さすがに真っ白だった。新雪をたっぷり抱いた山は本当に美しい。さかんに シャッターを押した。

 盛岡駅で「IGRいわて銀河鉄道」に乗り換える。ホームはゼロ番線と聞いて、いかにもローカル線らしいと思った。

 ここからは展望がすばらしかった。左手に真っ白くなった岩手山がそそり立ち、右手にはピラミダルな美しい姫神山が見えた。姫神山は森林に覆われているせいか、白い部分はほとんどない。山頂直下に わずかに見えるだけだった。あれならトレースの心配はしなくて済みそうだ。


車窓からの岩手山

車窓から渋民駅の屋根越に見えた姫神山

 石川啄木の故郷、「渋民(しぶたみ)」へ近づくにつれ、姫神山が大きくなって来た。石川啄木が"我がふるさとの山"とうたった山は、「岩手山ではなくこの姫神山」という説もあるが、ここから見ていると、その両方だったような気がする。

 好摩(こうま)駅で降りた。駅前にタクシーが1台止まっていたので、一本杉登山口までお願いすると、快くOKしてくれた。これで登山口まで行ける。まずはホッとした。

 タクシーの運転手が、
「今日は山へ登るには最高の天気ですねぇ・・・。一昨日はミゾレが降りましてねぇ・・・。昨日も雨で、今日だけですよ晴れたのは!」
 と言った。
 実は、私は一昨日来る予定だったが、新幹線のキップがとれずに今日に変更したのである。それが正解だったようだ。私にもやっとツキが回って来た。

 途中で岩手山と姫神山が見える所でタクシーを止めてもらい、写真を撮った。


好摩から見た岩手山(拡大できます)

好摩からの姫神山(拡大できます)

 タクシーは山間部の凍った路面をぐんぐん登って行った。一本杉登山口にある2箇所の駐車場を通り過ぎて行く。 駐車場には10台ほどの車が止まっていた。それを見てトレースの心配はなくなった。
 運転手に、14時30分に迎えに来てくれるようお願いして、タクシーを降り、右手の「一本杉林道」を登って行った。わずかにある雪がバリバリに凍っていた。

 (写真は一本杉林道入口。ここからは一般車通行止め)

 林道を40〜50mほど歩いて行くと、左手へ入る標識があった。ここが正式な登山口のようだ。

 右は太い杉林、左は松と雑木が茂った道を登って行く。風が冷たい。あわてて手袋と帽子を取り出した。

 杉林が終わり、パッと視界が開けた所に、「ざんげ坂、頂上まで1,500M」との標識があった。10時42分着。

(写真はザンゲ坂の階段)

 午後のような斜めの日差しを受けながら、ざんげ坂の階段を登って行くと、尾根へ出た。そこに五合目の標識があり、「頂上まであと1360m」と書いてあった。1360mといっても高度ではなく、距離なので楽勝である。

 ここは広場になっているので休憩するには絶好の場所だが、ぬかるんでいて腰も降ろせない。立ったまま休憩していると、単独行が2人と2人連れの青年が登って行った。

 私はいつものようにのんびり登って行った。今日は特にリハビリ登山なので、ムリをしてはいけない。

 左手の尾根が「こわ坂コース」の尾根だろうか。右側の尾根の上空には、岩手山が新雪を輝かせながら聳え 立っているが、樹木が多く、なかなかシャッターチャンスがない。

 雪が多くなって来た。雪の階段を登って行く(写真左)。

 もうすぐ山頂か?という所で右へトラバースして行く。そんなに早く 着く訳がない。

 そして右側の尾根へ出た所に、「あと720m」の標識と古い石の標識が立っていた。ここが八合目か?と思って周りを 見渡すと、背後に八合目の標識が立っていた(写真右)。

 ここからは石や岩を登って行くようになった。その岩には10センチほどの雪が積もっていた。

 この冬初めて降った新雪である。周りに積もっている雪は、綿飴のようにフワフワしている。新雪を歩くなんて何年ぶりだろうか。

 右手にはやっと樹木の間から岩手山が見えるようになって来た。(写真右)

 正面に大きな石や岩が見えて来た。てっきり山頂かと思ったが、山頂ではなかった。(写真左)

 ここからは雪が一層多くなって来た、多いというよりも深くなって来たと言った方がいい。もう15センチ位はありそうだった。

 さらに石や岩が現れ、石と石の間を通ったり、岩の上を登ったりするようになってきた。時々、両手を使い ながら登って行く。
 岩に着いた雪は、足をかけると崩れてしまうので、何とも歩きにくい。それに安物の手袋はもう水を含んで来た。やはり安物はダメだ。こんどはケチらずにゴアの手袋を買おう。

 トレースが細くなって来た。石と岩が折り重なった所に、わずかに歩いた跡があるが、道を間違えたのではないかと不安になって来た。しかし、頭上に山頂らしい岩塊が見えるので、そのまま進んで行った。