A鳳凰山ほうおうさん 〜タカネビランジ紀行〜1/2


(タカネビランジ)

青木鉱泉〜ドンドコ沢〜地蔵岳〜観音岳〜薬師岳〜青木鉱泉

2011年8月9日(火)

自宅430−相模湖IC−620須玉IC−655青木鉱泉725〜945南精進滝〜1035鳳凰の滝・分岐〜1055昼食1120〜1206白糸の滝〜1305五色滝1310〜1410鳳凰小屋(泊)

 バイトの予定が空いてしまったので、急遽、山へ行くことにした。
 そして、「サテ、何処へ行こうか」、と思いめぐらせた時、タカネビランジの花が思い浮かんで来た。

「そうだ!鳳凰山へ行こう」、タカネビランジは千枚岳で一度見たことがあるが、鳳凰山が一番多いと聞いていたので迷わず鳳凰山に決めた。

 今年は女子サッカーのナデシコ・ジャパンがワールドカップを制し、今やナデシコブームである。そのブームにあやかって高山に咲くナデシコ科の一種、タカネビランジを見に行くというのもオツなものだろう。

 コ−スは青木鉱泉からドンドコ沢を登り、鳳凰小屋で1泊。翌日、地蔵岳、観音岳、薬師岳の三山を登って中道を下る周遊コースにした。

 朝4時30分に自宅を出発。

 須玉ICで降りると、正面に鳳凰三山と甲斐駒が見えて来た。急いで車を止めて写真を撮った。鳳凰三山のオベリスク(尖った岩塔)がポツンと見えた。明日はあそこまで行けるかと思うと嬉しかった。

 青木鉱泉へ6時55分に到着。ここまで舗装された部分もあったが、ダートのガタガタ道が多い(私は旧道を来てしまったようだ。帰りはほとんど舗装された道で韮崎ICへ出た)。


(鳳凰山)

(甲斐駒ケ岳)

(青木鉱泉)

 駐車場へ車を止め、受付で2日分の駐車料金1,500円を支払う。
 日焼け止めクリームを塗り、防虫スプレーをかけて出発。熊鈴を付けるのを忘れたので受付で訊いてみると、「熊?見たことも聞いたこともねえなぁ・・!」とのこと。鈴を付けずに歩き出す。7時25分鉱泉発。


 登山道入口にタテヤマウツボグサが咲いていた。

 鉱泉から林道へ出て、3、4分も歩くとドンドコ沢と中道(なかみち)の分岐があった。右手のドンドコ沢へ入って行く。

 林道を7、8分も行くと、工事のため左手の沢の対岸へ迂回させられる。今日も青空が広がり暑くなりそうだ。

 今度は滝のように流れる砂防堤のところで再び対岸へ渡り返す。やっと本来の登山道へ出た。そして5、6mも歩いた時、紫色の花が咲いていた。これは何だ!もしやタカネビランジか?と色めき立ったが、どうもタカネビランジではなく、シナノナデシコのようだった。


(シナノナデシコ)

 左手のドンドコ沢の沢音を聞きながら森林地帯を歩いて行く。日差しが遮られるので助かる。

 しばらくすると細い流れへ出た。水が旨そうなのでここで休憩。これはドンドコ沢の支流のようだ。

 歩き出すとすぐに、左手から水量豊富な沢の音が聞こえて来た。そして「川沿ルート」の標識。工事の関係で旧道の「川沿ルート」を歩かされたようだ。

 一気の急登になった。後ろから青年に一気に追い越される。今日は小屋まで高度1500m登らねばならない。この急登で一気に200m位稼いだような気がする。

 左手のドンドコ沢に砂防堤が見えて来た。道はトラバースぎみになり緩やかになった。そこに紫色の小さい花が咲いていた。一輪が7、8mmしかなく、初めて見る花だった。(後で調べたら、これはナス科のオオマルバノホロシだったようだ。花は確かにナスに似ていたが、赤くなる実は有毒だそうだ)

 しばらくすると、センジュカンビやヤマジノホトトギスが咲いていた。


(オオマルバノホロシ?)

(センジュカンビ)

(ヤマジノホトトギス)

 小さな滝の手前からグーンと下らされ、そして沢を渡って対岸へ。岩場を登るとまたトラバース道になった。湿気が多いせいか道端にはカニコウモリが沢山咲いていた。

 次の滝へ出た。これが南精進の滝だろうか。何の標識もないので分からない。対岸へ渡って30mも行くと立派な標識があり、「南精進滝ここから150m」と書いてあった。せっかくなので寄って行こう。

 途中に滝壺へ降りる道があったが、「展望台経由・地蔵岳」の方へ進んで行く。ロープがぶら下がった岩場を登った所に展望台のような所があり、中年のご夫婦がいた。ここから見る滝が凄い。落差80mという滝は迫力満点だった。9時45分。



(南精進滝)

 すばらしい南精進滝を見て満足。ここからすぐに登山道が合流した。4,5人の下山者とすれ違う。
 ここはドンドコ沢コースというので、つい沢登りコースと思いがちだが、あくまでも沢沿いに付けられた登山道なので、下りに使っても全く問題はない。

 しばらく登ると細い沢を2本渡る。登山靴を濡らすようなことはない。
 鳳凰ノ滝分岐へ10時35分着。ここはかなり下らされるようなので滝見物はパス。

 岩場の急登を岩や根っこに掴りながら登って行くと、今度は右へグーンと下らされる。すぐに細い流れがあったので、ここで昼食にした。朝が早かったのでもうシャリバテだ!

 ここからも急登は続く。歩き出してすぐに高校生らしい5人に追い越されたが、彼らも途中で弁当を広げていた。
 ここはホトトギスの花が多い。登山道にまで咲いており、踏み倒されているのもあった。

 30分も登ると左手前方から滝の音が聞こえて来た。白糸の滝へ12時6分着。
 この滝は落差こそ少ないが、まさに白糸のようで一見の価値があった。

 やがて頭上に覆いかぶさるような巨岩が現われた。この岩の手前から左へ曲がって行く。シモツケソウがいっぱいだ。
 道が緩やかになった所にギンリュウソウがあった。白色というより黄色か金色に近かった。

 五色滝の標識へ到着。ここも滝の音だけ聞いてパス。空が急に暗くなって来た。夕立がなければいいのだが・・。
 そこから7、8分も登った時、また五色滝の標識。え、さっきの標識は何んだったのだ!

 樹木の間から滝が見えたので、写真が撮れる所まで下って行った。上部はガスっているが3段の滝は見事だった。昔の修験者たちは、この滝音がドンドコ、ドンドコと聞こえ、そこからドンドコ沢の名が付いたとの説がある、とガイドブックに書いてあった。さすがに名瀑だと思った。

 ここからも急登が続く。

 木の階段を登ると今度は沢へ降ろさ、沢沿いに歩いて行く。その沢沿いに本物のタカネビランジが咲いていた。「あった!あった!やっとビランジが咲いていた」と一人で喜んでいた。

 途中で地蔵岳の岩峰が薄っすらと見えた。一服しながらガスが切れるのを待ったが、一向にガスが切れない。

 旧北御室小屋跡地が分からぬまま、鳳凰小屋まであと20分位だろうと思っていた時、突然、小さな建物があった。北御室小屋が再建したのだろうかと思い写真を撮ったが、そこから20mほどで鳳凰小屋の玄関前へ飛び出した。さっきの小屋はトイレだった。小屋着14時10分。

 小屋の前に咲いていたタカネビランジの写真を撮っていると、オーナーから「稜線へ出ればいっぱい咲いているよ」と言われる。明日が楽しみだ。

 さらに紫色のシャジンが咲いていたので、この鳳凰山にしか咲かないホウオウシャジンかと思って写真を撮り、オーナーに訊くと、
「それはミヤマシャジンだよ! ホウオウシャジンはまだまだだよ!」、
と言われる。
 そして、「それがホウオウシャジンだよ!」、と教えてくれたのは、岩の隙間に生えた草のようなモノで、とてもホウオウシャジンだとは思えなかった。

 小屋の周りにはヤナギランがいっぱいあった。やっと1、2輪が咲き出したばかりだが、これが一斉に咲いたらさぞかし見事だろうと思った。


(鳳凰小屋)

(ミヤマシャジン)

(ホウオウシャジン)

(ヤナギラン)

 宿泊手続きを済ませ、外でビールを飲んでいる時、凄い夕立があった。

明日はいよいよタカネビランジ紀行