A鳳凰山ほうおうさん 〜タカネビランジ紀行〜2/2

2011年8月10日(水)

鳳凰小屋545〜647地蔵岳725〜741赤抜沢ノ頭〜856分岐〜935観音岳945〜1020薬師岳1030〜1118御座石〜1130昼食1150〜1332林道〜1407青木鉱泉

 今朝は寝不足で頭がクラクラする。
 昨夜は私の隣にいた4,5人の若者が消灯を過ぎても騒いでおり、やっと静かになったら今度はイビキの大合唱である。それも半端ではない。まるでゾウとライオンのイビキだ。すぐ隣にいる私はとても寝るどころではなかった。

 私は、もう「一晩位寝なくても死にはしねぇだろう」と開き直り、外で星空を眺めていた。
 その後、少しまどろんだようだが、枕元の目覚まし時計で3時に起こされた。山頂で御来光を見るのもいいが、周りの人の迷惑にならないように静かに出て行くべきだろう。小屋で目覚まし時計を掛けるなんて非常識だ。大きな声を出し、小屋の中に熊はいないのに熊鈴をジャラジャラ鳴らす。こういう連中には山へ来ないでほしいものだ。

 気分を変えよう。今日も快晴である。今日は楽しみの稜線散歩、それもタカネビランジ紀行である。
 4時を過ぎると小屋泊まりの人やテント泊の人達が次から次へと出発して行く。この小屋は朝食が5時30分と遅いので朝食を弁当にしてもらう人が多いようだ。

 私は朝食を頂いて、5時45分に出発。
 小屋の水場の前から地蔵岳へ向かって行く。最初は森林地帯を登るが、30分も登るとオベリスクがドガーンと見えて来る。

 賽ノ河原へ行く道を左に見て、そのまま地蔵へ登って行く。振り向けば観音岳の左手に富士山が浮かんで見える。
 紺碧の空に突き出したオベリスクが異様だ。そのオベリスクに段々近づいて行く。


 登り詰めた鞍部に、小さいお地蔵さんが6、7体あった。先客が何人か休んでいた地蔵岳へ6時47分着。

 私はここへ荷物を置いて、オベリスクへ向かって行った。
 すると、待望のタカネビランジが咲いていた。ビランジだらけである。写真を撮っていると、なかなか前へ進まない。白いビランジもあった。


 オベリスクには、ロープがぶら下がっていたが、私には登れない。根元から後ろに回り込むと、八ケ岳の赤岳が遠く雲海に浮かんでいた。

 それに甲斐駒ケ岳と仙丈ケ岳が目の前に見える。
 後から登って来た若い人が、オベリスクのロープを登って行ったが、「クライミング・シューズと道具がないと登れない」と言って途中で降りて来た。

【地蔵岳からの展望】


(観音岳:左)

(仙丈ケ岳)

(甲斐駒ケ岳)

 再びザックを担いで尾根沿いに下ると、すぐに石仏が並んだ賽ノ河原へ出た。いかにこの山が信仰の山だったかが分かる。手を合わせて、今度は観音岳をめざして行った。

 赤抜沢の頭へ7時41分着。ここからの展望は抜群だった。仙丈や北岳、間ノ岳、農鳥、さらには双耳峰の笊ケ岳まで見えた。


(赤抜沢の頭の手前から地蔵岳を振り返る)

(右から北岳、間ノ岳、農鳥岳)

 ここから5分も歩くと、道端の苔むした岩にタカネビランジの群落があった。この辺のビランジは地蔵岳に咲いていた株より一回り大きいようだ。

 さらに、この稜線にはイワオウギも多い。

 鳳凰小屋への分岐の手前で、昨日、小屋で知り合った名古屋から来たという方に会い、しばしおしゃべりタイム。彼は観音から薬師へ行って地蔵へ行く途中だった。
 彼から、昨日、青木鉱泉から韮崎へ出る舗装された道があることを教えてもらった。

 分岐から砂礫や大きな岩場を越えて行く。岩陰にビランジが沢山咲いていた。もう写真も100枚位撮った。
 先客が5、6人いた観音岳へ到着。ここは鳳凰三山の最高峰であり、展望も抜群のはずだったが、北岳はスッキリ見えるものの間ノ岳から南は雲に隠れて見えなかった。

(写真左は観音岳から見た薬師岳)

 ここから薬師岳へは緩やかに下って行く。もちろんタカネビランジは咲いていたが、もう写真は撮らなかった。

 薬師岳の標識が立った所へ10時20分着。ここは左手に最高点があるが、先客は誰も行かないので私もパス。
 ここは日陰がないので、青木鉱泉側へ少し下った岩陰で休憩。

 ここからは初めて下る中道(なかみち)である。もう下るだけなので楽勝だ。
 5分も下ると大きな岩があった。これが御座石だろうか。ここから見る富士山がいいと聞いていたが、富士山は見えなかった。

 次第に森林地帯へ入って行く。鬱蒼としたシラビソの中を下って行く。しかもガスが流れ出したので薄暗く、何か不気味だ。
 しばらくするとシャクナゲが多くなって来た。終わりかけた花がわずかに咲いていた。このシャクナゲが満開の頃は、さぞかし見事だろうと思った。

 しばらく下ると、大きな岩が現われた。ちょうど後ろから来た若い女性に訊くと、これが御座石だという。確かに標識があった。

 ここからも原生林の下りが続く。昼食にしたいがどこもぬかるんでいて座る場所がない。やっと開けた所があり座れそうなので、ここで昼食にすることにした。
 すぐに昨日から何度か一緒になった青年2人も近くに座り込んで昼食を摂り出した。

 私の方が先に出発したが、すぐに追い越される。やはり若い人は早い。
 しばらくすると大きな岩がゴロゴロして来るようになった。岩に乗ったり巻いたりしながら急坂を下って行く。

 やがてササになり、間伐地へ出た。今までの原生林とは違い明るくて助かる。
 ここで登りの登山者2人に会った。こんな時間に登るとは驚いたが、その後も何人かの登山者に会った。

 いつの間にかガスの下へ出たようで青空が見えて来た。それに高度が下がったせいで一気に汗が噴き出して来た。もう下界は近い。

 無人小屋の前へ出た。小さな流れで頭と顔を洗う。そこからすぐに車が見え、ついに林道へ出た。13時32分。薬師岳から昼食を含めても3時間だった。
 林道にはナデシコが咲いていた。

 右手に小武川を見ながら林道を歩き、やがて小武川から離れると左手にドンドコ沢が見えて来た。青木鉱泉へ出る木の橋まで来ると、対岸で先程の青年2人が休んでいた。私は頭と顔だけを洗って青木鉱泉へ向かった。

 青木鉱泉へ14時7分着。これで今回の花紀行は無事完結となった。ビランジは想像以上に咲いており満足だった。
 帰りは青木鉱泉からわずかに下った所にある、舗装されたT時路を右に曲がって一路韮崎ICへ向かって行った。青木鉱泉からICまで約40分だった。
  
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