伊吹山(いぶきやま)    80座目

(1,377m、 岐阜県・滋賀県)

東海道本線の車窓から撮った伊吹山。


伊吹山登山口〜三之宮神社〜伊吹山〜駐車場

2000年7月20日(木・祝日)

新横浜616−(新幹線)−米原−近江長岡−855登山口〜三之宮神社〜1350伊吹山〜駐車場−関ヶ原−米原−(新幹線)−新横浜

 この山は、岐阜県と滋賀県の県境にあると言うよりも、関ヶ原にあるといった方が分かりやすいかも知れない。
 この山は植物が多く、織田信長の時代から薬草が採られていたというから驚く。現在は高山植物が多いことで人気がある。この辺は毎年冬になると新幹線が立ち往生するほど積雪が多いことと、風当たりの影響で高山植物が多く、その数は1,200種類にもおよぶという。

 花の見頃は7月から8月上旬というので、さっそく日帰りで行って来ることにした。
 朝5時前に家を出て、新横浜6時16分発の新幹線「のぞみ」に乗った。名古屋で「ひかり」に乗り換えて米原で降り、東海道本線で戻るように近江長岡へ出た。そこからバスで10分ほどで登山口へ着いた。(8時55分着)。

 バスを降りると正面に目指す伊吹山が見えた。もやで上部は輪郭だけしか見えなかったが、一気にそそり立った山容に、登行意欲が湧いてきた。

 5、6分ほどで三之宮神社へ着いた。今日は朝からギラギラした太陽が照りつけているので、神社の木陰が有り難かった。

 しかし、すぐに森林から抜け出して、直接日射しを浴びながらの急登となった。さらにスキー場のゲレンデを直登するようになった。とにかく暑くてたまらない。うだるような暑さ、もう汗だくだった。

 ゲレンデの中程まで登った時、右手にレストランが見えた。店は閉まっていたが日陰がほしかったので軒先まで行って見ると自販機が動いていた。さっそくジュースを買って一気に飲み干した。

 三合目まで来るとロープウェイで来た人達と合流した。彼らは「サアこれから登るゾ」と張りきっているが、こっちはもうすでにぐったりである。

 ここは、なだらかな草原になっていてニッコウキスゲの群落があった。道端にはハクサンフウロやカワラナデシコなども咲いていた。やっと花の名山といわれる伊吹山へやって来たという実感が湧いてきた。

 この山は「森林が少ないので夏に登るのは暑くて大変である」とは聞いていたが、まさかこんなに暑いとは思わなかった。梅雨明け直後の炎天下、まさに地獄のような暑さである。

 ここは水場がない。とにかく暑いので冷たい水がほしいと思っていた時、五合目小屋の庭先でかき氷をうまそうに食べている人達がいた。私もさっそく飛びついた。

 ここからは急登の連続になった。ジグザクに登っている人達が頭上に見えた。六合目を過ぎると山頂が見えた。麓からは輪郭だけしか見えなかった頂稜がくっきりと見えた。いつもなら頂上が見えれば感激するものだが、今日はあまりの暑さに、展望よりもいっそのこと雨でも降ってくれた方が有り難いと思った。


(カワラナデシコ)

(暑くてタオルを被る人も・・・)

(6合目で休憩する人達)

 ここからは花が多くなった。道端に咲いていたキンポウゲやイワカガミ、イワオトギリなどを写真に撮りながら、休み休み登って行った。

 八合目あたりで続々と下って来るオバさんに会った。私はメロメロだったがオバさん達はやけに元気がいい。このオバさん達は貸し切りバスで八合目の駐車場まで来て、お花を見ながらロープウェイで下るというツアーのようだっだ。

 急斜面を登り詰めて稜線へ出ると、そこが九合目だった。そこは信じられないほどハイカーや家族連れで賑わっていた。そこから草原のようななだらかな斜面を進んで行くと、山小屋が見えて来た。近づいて見るとそれは山小屋ではなく、観光地にあるようなお土産屋さんで、ハイカーで溢れていた。

 この山は山頂直下までドライブウェイが走っているので、ハイカーや観光客が多いとは聞いていたが、まさかこんなに多いとは思わなかった。その観光客を払いのけるようにして山頂(写真右)へ行った。

 山頂には日本武尊の像が建っていたが、写真を撮るのも順番待ちだった。山頂着13時50分。

 山頂の一角に腰を下ろし、売店で買ってきた缶ビールを飲んだ。近くには家族連れが多く、公園や遊園地のような感じだった。2、3歳の子供まで駆け廻っており、山麓から汗だくになって登って来た自分がバカバカしかった。

 弁当を食べている時、足がつってしまった。痛みは直ぐに治まったが、下りが心配になった。下りの途中で動けなくなっては大変である。そこで、反対側にある駐車場まで下って、バスで関ヶ原へ出ようと思った。

 日本百名山を登った人の記録を見ても、約7割がマイカーで八合目の駐車場まで来て、1時間足らずで山頂を往復して「登頂した」と豪語している。私は下から登って来たのだから、バスで下っても罰は当たらないだろう。

 駐車場を目指して測候所の脇へ出ると、イブキトラノオ(写真左)が群落をなしていた。トラのしっぽに似ていることからこの名が付いたらしいが、あまり可愛い花ではない。しかしイブキと名が付いている以上、ここが原産地なのだろうと思った。
 測候所からはお花畑の連続になった。お花を保護するため保護柵があったが、道端からでも十分写真が撮れた。花は登って来る時に見たナデシコなどとは違い、紫色のクガイソウや赤紫色のハクサンチドリのようなものが多かった。

(写真左は花を見る登山者達)

 アザミが咲いていたので、もしやイブキアザミではないかと思って写真を撮ったが、どうもイブキアザミではなく、ミヤマコアザミかノアザミのようだった。


(ミヤマコアザミ?)

(キンバイソウ)

(クガイソウ)

(キバナノレンリソウ)

(クサフジ?)

(メタカラコウ)

 さらに下って行くと、背丈ほどもあるシシウドなどが多くなった。シモツケソウはまだ蕾だった。

 花の写真を撮りながら下って行くと、突然、高速道路のサービスエリアのような広い駐車場があった。バスが10台位に乗用車が100台以上も止めてあり、駐車場へ入れない車が繋がっていた。ここが本当に山の上だろうかと驚いた。

 伊吹山は、私が登って来た斜面よりも、山頂から駐車場にかけての方が花が多かった。駐車場へ下って来て正解だった。伊吹山はやはり花の山だった。はるばるやって来た甲斐があった。(平成12年)