市房山 (いちふさやま)

(1,721m 宮崎県・熊本県)  165座

湯山温泉から見た市房山

林道終点〜市房神社〜市房山〜心見の橋・往復


2009年4月25日(土)
羽田735−910宮崎−人吉IC−湯山温泉(泊)

 当初の計画では大崩山、尾鈴山、市房山の順で登る予定だったが、前日に九州地方に大雨の予報が出されていたので、急遽、逆コースにした。それは大崩山の坊主尾根の下りで徒渉できなくなる心配があったからだ。

 そんな訳で、宮崎空港からレンタカーで人吉ICへ向かった。今日は土曜日なので”高速料金がどこまで行っても1000円”ということもあって渋滞するかと思ったが、高速はガラガラだった。首都圏ではとても考えられない。

 高速を走っているとパラパラと雨が落ちてきた。「え、またか!」と溜息が出た。九州の山は今までGWに行っていつも雨にやらているので、今年は1週間早めて来たのに・・・!

 しかし、心配した雨も霧島SA付近で止んだ。

 人吉ICを降りてからガスコンロのガスを買うため一苦労。R219線沿いのホームセンターへ立ち寄ったが、6軒目にしてやっと買えた。もしここで買えなかったら人吉市内まで戻る所だった。

 ボンベを買ってホッとしたものの、今度は本格的に雨が降って来た。雨の中でテントを張るのはつらい。尾鈴キャンプ場まで行ってみたがテントなど張っている人は一人もいなかった。雨も止みそうもないのでそのまま引き返し、湯山温泉の民宿へ投宿。

 民宿のテラスから市房山が見えるというので期待したが、山頂は見えなかった。
 夕方になって雨が止み、やっと山頂を見ることが出来た。

 夕食の時、鹿児島から来たという女性3人と男性1人のパーティーと一緒になった。リーダーらしい男性は毎年山開きに来ているという。その男性から色々とアドバイスを受けた。

 @まずコースについては、最近はキャンプ場から歩く人が少ないので神社までの道が少し荒れている。
 A林道終点から歩いても3時間はかかる。
 B雨の後は木の根っこが滑るので下山時に注意が必要。
 Cアケボノツツジは今年は開花が1〜2週間早いが、山頂近くなら見られるだろう。
 Dヒカゲツツジが咲いている。花が黄緑色で葉の色に溶け込んでしまうので注意しないと分からない。等々。

 これらのアドバイスを受け、明日は林道終点から登ることにした。そして、ぜひヒカゲツツジが見たいと思った。


2009年4月26日(日)

湯山温泉517−533林道終点・駐車場550〜615市房神社〜645(5合目・佛岩)700〜785(7合目)〜825(8合目)835〜910市房山・心見の橋往復935〜1102(5合目)1110〜1121市房神社〜1130林道分岐〜1134駐車場

 宿を5時17分に出発。林道終点の駐車場へ5時33分着。車は1台も止まっていなかった。

 車から降りると寒さで震える。とにかく寒い。車の中でガンガンヒーターを焚いて来たので外へ出るとガタガタ震えてしまう。厚手のシャツの上からヤッケを着込んで登り始める。
 周りはすっかり明るくなった。それにここは熊がいないので安心だ。

 2、3分もすると参道へ出た。そして石段になり、杉の巨木が現れた。屋久島の宮之浦岳を思い出した。
 石段は大きな岩や石をうまく組み合わせ、いかにも信仰と歴史を感じる。この山は中世のころから戦前まで約600年間にわたった山岳信仰のご神体山だったという。今にも白装束が現れてきそうな感じだ。

 写真を撮りメモをとりながらゆっくり歩いて来たが、25分ほどで市房神社へ着いた。ここが4合目。

 この神社は霧島の神霊を祀り、縁結びの神、武運長々の神として崇められているという。避難小屋としても利用できるというので、参拝方々覗いてみると、神殿の部屋と囲炉裏がある部屋に分かれていた。ただ両方とも床がコンクリートなので避難小屋として利用するのはシンドイかも知れない。

 神社から真っ直ぐ橋を渡って行くとトイレがあり、行き止まりになっていた。すぐ引き返し神社の右手から奥へ廻り込みながら登って行く。

 ここからは山道になり、ジグを切って登って行くが、時々、丸太の階段が現れる。

 しばらくすると、モアイ像のような岩と杉の巨木が現れた。それを右手へ廻り込んで登って行くとルートマップがあり、モアイ像のような岩が「佛岩」で、ここが5合目と書いてあった。ここで休憩。(写真左が佛岩、右は杉の巨木)

 昨日、宿で一緒になった方から聞いた「ヒカゲツツジ」とは、一体どんな花なのだろうか。花が葉の色に溶け込んでしまうというから注意しながら行こう。

 ここで5分の休憩のつもりが15分も休んでしまった。歩くのは遅いが休むのは長くて困る。
 そこから2、3分も登るとミツバツツジが咲き、ベンチがあった。どうせならここで休めばよかったと思った。

 登山道にはツバキの花が落ちていた。咲いているものもあるが木が高すぎて写真は撮れない。これは藪ツバキだろうか。

 やっとアケボノツツジが現れた。群落とまではいかないがポツン、ポツンと現れた。ピンク色の花が何とも可愛い。しかし、足元に落ちている花びらも多い。昨日の雨で落ちてしまったのだろう。

 大きな岩の所に6合目の標識があった。それを写真に収めようとした時、何と標識の後ろに薄い黄緑色の花が咲いていた。思わず駆け寄った。待望のヒカゲツツジだった。ついにヒカゲツツジを見ることが出来た。葉はツツジというよりシャクナゲの葉を小さくしたような感じである。花は盛りを過ぎていたが、とにかく初めて見ることが出来て嬉しい。

 アケボノツツジやミツバツツジも多くなって来た。

【拡大できます】

(初めて見たヒカゲツツジ)

(アケボノツツジ)

(ミツバツツジ)

 途中でメモを取っていると、後ろから登って来た単独のオジさんに、「ここは何合目ですか?」と聞かれる。
「もうすぐ7合目だと思いますよ」と答える。オジさんは「6合目は気付かなかった」と言うが、あんな大きな標識を見落とすとは・・・。そこから2、3分で7合目だった。

 しばらくして、お〜!と歓声を上げた。濃いピンクのアケボノツツジが見事だった。
 それにしても風が強い。山頂近くなったせいか風が唸り、烈風が頬を打つ。頭上には青空と白い雲が半々あるが、手が届きそうな白い雲が急いで流れて行く。

 しばらくすると、登山道に霜柱が現れて驚いた。もう4月下旬だというのに霜柱があろうとは・・・。
 稜線の手前まで来ると、稜線と平行して進むようになった。稜線へ出た所が8合目かと思ったが、その手前に8合目があった。標識がある岩の陰で休憩。とにかく風が冷たい。私が休んでいる間に単独の男性が登って行った。

 やっと稜線へ出ると、強風にあおられた。そして見上げれば何と樹氷だ。神秘的ではあるが、全く予想していなかったので驚いた。まさかこの時期に樹氷とは・・・、アケボノツツジも凍っている。

 しばらくすると、途中で私に「ここは何合目?」と質問したオジさんが下って来た。「こんな天気じゃあ、山頂で休んでいられない」と云って下って行った。

 私も気合を入れて歩き出す。1分も登ると「山頂まであと5分」の表示。え、まだ9合目を過ぎていないのに・・・?
 山頂へ9時10分着。寒々とした樹氷に覆われた山頂に、8合目で追い越して行った男性が一人立っていた。お互いに挨拶を交わすも腰を下ろそうとはしない。

 晴れていれば高千穂峰が見えるというが、今は眺望はない。私はそのままチョックストーンと呼ばれる「心見の橋」へ向かった。標識には3分と書いてあった。霜柱で足を滑らせないように注意しながら下って行くと、あっと言う間に着いた。

 これは崖と崖の間に岩が挟まった状態で、心の清い人だけが渡れるそうだ。私は決して「心が清い」などとは思っていないので、挟まった岩の上に立っただけで引き返して来た。


(寒々とした山頂)

(心見の橋(チョックストーン))


 山頂へ9時30分に戻ったが、眺望もなく寒い山頂に長居は無用。9時35分下山する。

「山頂まであと5分」の表示がある所まで来ると、4、5人のパーティーが何やらわめいている。どうしたのか訊ねると、その中の女性の一人が、「アケボノツツジの蕾が樹氷ですてきよ!」と教えてくれた。
 近づいて見ると、赤い蕾が真白い樹氷に覆われ、まるでルビーをちりばめたようで神々しく、神秘的だと思った。

 パーティーのリーダーらしき人が、「こんなの10年に1回しか見られない」と言っていたが、私はその10年に1度というチャンスに出会うことができてラッキーだった。

【拡大できます】


 登りの時に気付かなかった「9合目」の標識は、下りでも気付かなかった。結局は無かったのではないか。
 この辺からは登って来る人が多くなった。すれ違うたびに上部の状況を聞かれ、その度に山頂はメチャクチャ寒いことや樹氷が神秘的なことなどを話してやった。
 福岡から来たという50人の団体さんも登って来た。

 6合目を過ぎると、登るときは1本しか気づかなかったヒカゲツツジが何本も咲いていた。やはり登る時は下ばかり見ていたのだろう。
 5合目、11時2分着。ここで小休止。

 市房神社の屋根が見えるようになった時、左足のふくろはぎの裏側に痛みが走る。今まで一度も痛めたことがないところである。左足をかばいながら、騙しだまし下った。
 駐車場へ11時34分着。駐車場には10台以上が止めてあり、バスまで止まっていた。路肩駐車も何台もあった。

【おまけ】

(ヒカゲツツジ)

(アケボノツツジ)

(駐車場・下山後に撮ったもの)

 明日は尾鈴山へ登るため、人吉ICから宮崎県の西都ICへ向かった。