池口岳(いけぐちだけ)

(2,392m、長野県・静岡県)  161座


黒薙(なぎ)からの池口岳。双耳峰の左が北峰(頂上)、右が南峰。


池口岳避難小屋(泊)〜池口岳登山口〜ザラ薙平・テント場(泊)〜池口岳北峰〜登山口(2泊3日)


2008年9月22日(月)

JR相模湖駅910−相模湖IC−松川IC−池口岳登山口−1400池口岳ひなん小屋(泊)

 「日本200名山を登る」というガイドブックによれば、「この山は南アルプス南部を外れて深南部に含まれる」と書いてあるが、インターネットの「信州ガイド」には、「南アルプス最南端部の秀峰。(略)双耳峰の秀麗さと奥深い静寂さをあわせ持つ山である。」と書いてある。

 いずれにしても光(てかり)岳の南西に聳える双耳峰で、私はかつて聖(ひじり)岳から光岳へ縦走した時、この双耳峰を見て、思わず「あれは何だ!」と地図を広げて調べたのを覚えている。決してメジャーな山とは言えないが、一度は登ってみたいと思っていた。

 しかし、この山を登るにはコースタイムが11時間10分もかかり、距離も15.4kmと長い。たとえ登山口近くで前泊しても私には日帰りは難しいので、Nさんと1日目は避難小屋泊まり、2日目はザラ薙平のテント場泊り、という余裕の日程で登ることにした。

 Nさんと9時にJR相模湖駅で待ち合わせ。今夜は焼き肉パーティーをしてくれるというNさんの荷物は大きい。
 相模湖ICから中央高速に乗り、松川ICで降りた。ナビに導かれるままにR59、R153、R251から矢筈トンネルを潜り、R152で大島へ。池口岳の標識に従って細い林道へ入って行く。林道は舗装してあるが、池口集落の最上部にある、元名ガイドの遠山宅横からはダートのガタガタ道になった。

 そのガタガタ道を約1.5kmほど走った時、右手にポツンと車が1台止まっていた。ここが登山口だろうか? と思いながら左カーブを切るとテーブルとイスがあり、右手に登山口の標識があった。車を止めて写真を撮った。明日は暗い内から登り出すかも知れないので写真を撮っておきたかったからだ。すぐ下には仮設トイレがあった。

(登山口にあるテーブルとイス。下山後にくつろぐにはちょうどよい)


 「池口ひなん小屋」の標識に従ってそのまま林道を100mも進むと、左手に避難小屋があった。小屋のすぐ隣へ車を止めた。小屋まで車で行けるのはありがたい。14時着。予定より1時間も早く着いた。

 避難小屋は畳が敷かれていた。今日は我々2人だけで貸切のようである。3時になるのを待って、早速、焼肉パーティーを始める。まずはビールで乾杯したが、それがホットビールだったのにはマイッタ!

 実は、ビールを冷凍して持って来たのだが、まだカチカチに凍っていたので、しばらくお湯に浸けていたのだが、それが長すぎてホットビールになってしまったのだ。「ホットビールもウマイもんだぜ〜!」
 ホットビールに日本酒を飲みながら、焼肉パーティーは盛り上がる。

 Nさんが準備してくれた焼肉をたらふく食って、7時ごろにはバタンキュー。
 ところが9時ごろになって単独行が入って来て起こされた。こんな時間に来るとは、よほど山慣れした人なんだろう。その人は岐阜から来たといい、明日は池口岳を日帰りするという。やはりタダ者ではなさそうだ。

 夜中に大雨が降ったが、次に起きた時は満天の星だった。


2008年9月23日(火・祝)

登山口611〜635徳造平〜930黒薙の頭940〜1040利検沢の頭(1902mピーク)1050〜1140テント場

 4時半起床、登山口まで車を移動し、6時11分出発。登山口に、「ここの標高1100m」と書かれた標識があった。池口岳が2,392mだからその差は1,292mということになる。「な〜んだ! 1,200mぐらいなら丹沢の大倉尾根と同じじゃん!」と思うと、少し気が楽になった。

 30分足らずで徳造平へ出た。伐採材がそのまま放ってある状態で、とても休憩するような気にはなれない。道は腐葉土の上を歩いているようで、歩きやすい。

 なだらかな道を登って行くと分岐があり、前を歩いていたNさんが立ち止まる。こんな所に分岐があるとは知らなかった。右手の道は巻道かも知れないが、とにかく基本は尾根筋を登るので真っ直ぐ登って行くことにした。(右手の道は7、8m先に山の神があった)。

 造林地が続き、やがて異様な光景を目にする。檜(杉かも)の一本一本にテープが巻かれている。
「これ、なあ〜に?」と問われているようだ。私は直感的にシカ対策、つまりシカに木の皮を食べられないようにするためだと思ったが、本当のところは分からない。

 その異様な林の中を歩いている時、樹木の間から朝日を浴びた。

 右手は雑木林、左手は手入れされた林が続く。

 「面切」というポイントは分からないまま過ぎてしまい、やがて急登を登ると左手にも尾根が現れた。二重山稜ならぬ二重尾根というのだろうか。その二重尾根の間は窪んで平らになり、まるで畑か田んぼのように見えた。これも珍しく異様だ。地元が作った「登山ガイド図」によると、ここは「牛首」という所で、「尾根に凹地」と書き込まれていた。

 しばらくすると、背丈が10cmか20cmしかない笹が地面を覆うようにった。陽光が差し込んで気持ちがいい。

 黒薙の頭をめざして登って行くと、突然、右手がスパッと切れ落ちたナギが現れた。そして待望の池口岳が見えた。左手に加加森山の一部が見え、正面に双耳峰の池口岳、右手にニワトリのトサカのような鶏冠山が連なって見えた。正面の双耳峰を眺めながら、「あれが池口岳かあ〜」と満足の声を洩らす。


黒薙

黒薙からの展望、左奥が加加森山、正面が池口岳

 「黒薙の頭」で、ゆっくり池口岳を眺めながら休憩しようと思ったが、 「黒薙の頭」はガレ場の上をへつるように登った上にあった。三角点があったが、木の枝が多く展望は良くなかった。

 三角点からシラビソの樹林帯を下って行く。すでに展望は利かない。鞍部を過ぎ、少しばかりの急登を登った1902mのピークに「利検沢の頭」の表示があった。10時40分着。この辺は左側がガレてヤセ尾根になっていた。

 5、6分ほど歩いた時、聖岳らしき山が見え、思わず目を見張る。聖岳という確信はないが、アルペン的な山を見ると嬉しい。

 小さなピークを越えながら登って行くと、再び池口岳が見えるザラ薙へ着いた。ここからの池口岳は、尾根が左側へ回り込んだせいで南峰が北峰に隠れてしまい、双耳峰としての魅力がない。やはり双耳峰は並び立たなくては・・・。


聖岳?

ザラ薙からの池口岳

テント場

 ザラ薙平のテント場へ11時40分着。
 テント場には小さな標識があるが、うっかりすると通り過ぎてしまうかも知れない。ポイントは2つ。@水場の標識が現れたらその左側がテント場。Aテント場へ行く踏み跡がある。

 今日の予定はここまで。ちょっともったいない気もするが、明日も好天の予報なので山頂は明日に託して、軽い昼食を摂った。

 2時15分ごろ、昨夜遅く避難小屋へ来た方が下って来た。昨夜は暗くて顔を見ていないが、声を聞いた時は20代ぐらいの若者かと思ったが、何と私と同じ歳だったのには驚いた。その方からコースについて色々教えてもらった。

 2時半ごろから宴会モードに入る。樹木の間からわずかに見える池口岳を見ながらカンパ〜イ! 山で飲む酒はうまい!
 料理はキャンプの達人Nさんにおまかせ。私はもっぱら食べることに専念する。

 3時ごろ1人の登山者がすぐ近くにテントを張り、4時ごろにも1人がテントを張った。結局、テントは4張になった。今日は下山者に会ったのは3人だった。
 今夜も満天の星だ。