岩櫃山−2/2

【4.岩櫃山の山頂に立つ】

 潜龍院跡から下って民家の間を抜けると、狭いT字路へ出た。案内や標識がなく、本来は左へ下るようだが、私は間違えて右の坂を登って行った。

 民家の間や裏を通って行くと、右手後方に待望の岩櫃山がそびえ立って見えた。
「これよ!これこれ!これが見たかったのよ・・・!」そう、これが見たくて、わざわざ密岩通りを選んだのである。平沢登山口からの往復ではこの景観は見られない。

 すぐに、正規の古谷登山口(駐車場)からの道へ出た。前に女性2人の登山者がいたので間違いないようだ。
 ここからも岩櫃山の写真を撮りながら行く。真ん中のピークに光るモノが見えた。あれが山頂に違いない。

 民家の脇を抜けて行くと、「密岩登山口」へ着いた。このコースは観光パンフによると、『断崖絶壁を鎖をつたって登ったり、細い岩の架橋(天狗の懸橋)を渡ったりする、登山気分の味わえるコース。中・上級者向け』といから楽しみだ。

 最初は杉林の中を登って行く。前の女性2人に付かず離れず付いて行く。

 いつの間にかブナ林になり、急な階段になった。階段が落ち葉で見えない。一歩一歩気合を入れ、落ち葉を蹴散らしながら登って行った。2人の女性を追い越した。
 あと半月早ければ、ブナの黄葉が見事だったに違いない、と思うと残念だった。

 コルの直下はクサリの連続になった。だが、クサリを使わずとも登れる。

(写真の中央に小さいハシゴがある)

 汗だくでコルへ着いた。ここで水分を補給していると、女性2人(オバさん)も登って来た。

 コルから右手(東)の岩場を登って行く。

 クサリに掴まって登って行くと、「←天狗のかけ橋・迂回路→」の標識があった。右手の迂回路にはクサリがあったが、嫌らしそうだ! 私はもちろん天狗のかけ橋を行く。

 岩をトラバースした先に、「天狗の架け橋」があった。


(天狗のかけ橋)

(迂回路も嫌らしそう?)

 私は、思わず、「これが天狗の架け橋?、こんなに小さいの?」、と驚く。私はもっとスケールの大きいモノを想像していたので、ちょっと意外だった。ヤセた岩尾根だが、長さはせいぜい4mぐらいだろうか。

 戸隠山の「蟻ノ戸渡り」や、ジャンダルムの「ウマノセ」に比べると子供だましである。この程度なら片足ケンケンでも越えらそうだ。

 しかし、後から登って来たご夫婦は四つん這いになって渡っていた(写真右)。

 架け橋を越えると目の前にクサリがぶら下がっていた。そのクサリを登ると正面に、ドガーンと山頂が見えた。山頂に立っている人や、クサリに掴まって登っている人まで見えた。


(岩櫃山の山頂)

 このピークから2、3分下った所に「八合目」の標識があった。

 ここからが、いよいよ本峰の登りになった。
 だが、正面に大きな岩が城塞のように立ち塞がっている。そこをクサリで中段まで登ると、何と岩にポッコリと穴が開いていた。人工的に開けたのかも知れない。
 その穴を潜った所が九合目だった。

 そして、そこからクサリとハシゴで攀じ登り、さらに左へ回り込む。

 旧道らしい岩場のトラバースの下に、真新しい道が出来ていた。今年2人が滑落し、内1人が死亡しているという。それが山頂直下だというから、ここかも知れない。
 私は旧道の岩場のトラバースにチャレンジした。

 クサリ場のトラバースを越え、さらに回り込んで行くと、標識が立った所にザックが2つデボしてあった。ここが山頂へ登る基部のようだ。

 2本あるクサリを登って行く。そのままテッペンまで登れるが、途中から左のハシゴでも登れるようになっていた。

 山頂には若いご夫婦がいた。旦那さんに写真を撮ってもらった。

 山頂はまさに360度の展望だった。遠くに見える白くなった谷川連峰が目を引いた。浅間山も薄っすらと白い。榛名や妙義は雪はないようだ。

 山頂は狭いが、ご夫婦が降りて貸切になったので、ここで昼食にした。といってもコンビニのオニギリだが・・。

 隣のピーク(東、沢通り側)では、テッペンに座り込んでいる人達が見えた。私も早くあのピークへ行きたい。

 クサリで基部まで降りて、次のピーク(平沢登山口方面)へ進んで行く。
 ここもハシゴとクサリで登って行く。

 登り切った所は、思ったよりも広く、岩に座って弁当を広げているご夫婦や、その奥の小高い所で昼食を摂っているオジさん達がいた。私はそのオジさん達に挨拶して、ピークへ立った。

 振り向けば、今下って来たばかりの山頂のクサリを登っている人が見えた。私もあのテッペンへ立ったのだ!と思うと嬉しかった。


 もうこれで悔いはない。すぐに下山にかかる。

 ここからは一般コースである。山慣れしない家族連れまで登っていた。

 鞍部から落ち葉で埋まった道を下って行くと、正面に切り立った大きな岩が現れた。それが「天狗の蹴上げ岩」だった。


 岩と岩の間をすり抜けるように下って行く。
 
 ゴルジュを抜け出た所が「櫃の口」で、「沢通り」と「赤岩・尾根通り」の分岐があった。

 沢通りを下って行く。

 右手に今朝歩いた尾根通りが見え、そこを歩いている登山者の声が聞こえて来た。

 駐車場へ12時20分着。朝は私の車を含めて4台しかなかったが、30台以上あった。観光バスも2台止まっていた。

【5.エピローグ】
 岩櫃山は良い山だった。しかも短時間で登れ最高だ!岩櫃城跡と合わせて周れば歴史のお勉強にもなる。とにかく旬の山に登れて嬉しい!