乾徳山−2/2

 彼ら3人が出かけるのを見送って、10時ジャストに出発した。

 5、6分ほど歩くと、少し開けたところに「扇平」という標識が立っていた。さっき登って来る途中にも「扇平」という標識があった。どうなってんだろう、ここは!

 ここから、すぐにコメツガやダケカンバの林となり、石コロの急登となった。いよいよ本峰の登りである。

 残雪も多くなって来た。石や岩、木などを巻きながら登って行く。残雪がまぶしい。風は全くない。厚手のシャツを脱ぎたいが、どうせ上は寒いだろうと思って額に汗しながら登って行った。

 石や岩に雪があると本当に登りにくい。両手を使って岩や木に掴まりながら登って行った。今日は10本歯のアイゼンを持って来ているが、アイゼンを着けるほどでもない。

 いよいよクサリ場になった。最初のクサリは足場がしっかりしていたので簡単だった。


(最初のクサリ場)

 次のクサリ場には2本のクサリがぶらさがっていた。私は足場がしっかりしている右のクサリを登った。それにしても、こんなに簡単だったかなあ・・・。10年前に登った時は、もっといやらしいクサリ場だったような気がするのだが・・・。

 凄い岩場へ出た。正面に絶壁が立ちはだかっていた。

「あんな岩場を登るのか」と鳥肌が立ったが、正面の絶壁は登らず右側の岩の隙間を潜って巻いて行く。

 岩場を越えて、いよいよ山頂かと思っていたピークに立つと、何と目の前にドーンと岩山が立っていた。それこそ紛れもない乾徳山だった。


(乾徳山本峰)

 それにしても山頂だと思っていたピークが山頂ではなく、ガックリと力が抜けた。しかし、気合を入れて登って行ったがペースはグーンと落ちた。

 途中で若い夫婦が後ろから追いついて来た。私は「お先にどうぞ!」と道を空け、腰を降ろして一休み。

 実はそこから10mか20mほど先が山頂直下のクサリ場だった。若い旦那さんがクサリ場を登って行った。ここは若い人でも簡単には登れないようだ。足場がないので腕力で登るところもあるからだ。私が10年前に「いやらしいクサリ場」と記憶していたのは、まぎれもなくこのクサリ場だったようだ。


(山頂直下のクサリ場)

 ご夫婦が登って行ったので、「サテ、私も登ろうか」と登って行った。私は若い二人が登るのを、ちゃっかり見ていたので余り苦労せずに登ることが出来た。

 そして、このクサリを登り切ったところが乾徳山の山頂だった。11時30分着。山頂には4人の先客がいた。

 岩場の山頂は、まるで槍ケ岳の穂先にでも立っているような気分だった。展望は抜群でまさに360度の展望である。特に南アルプスが目を惹いた。


(山頂から南アルプス遠望)

(山頂からの富士山がでかい!)

 ここは登山道と反対側に下山道があるのだが、今はトレースがないため往路を引き返すしかないという。ここではコンビニのオニギリを1ケだけ食べて、一服して下山することにした。

 山頂発11時52分発。
 さて下ろうかと思ったら、クサリの下に登山者が2人いた。「登り優先」を守って2人が登って来るまで待った。

 クサリ場を3ケ所下っても、岩にへばり付いた雪で気が抜けない。

 岩場を下り残雪もなくなった稜線上の「扇平」で昼食にした。スープを作って昼食。草原の青空の下での昼は最高だった。

  
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