南駒ケ岳 (みなみこまがたけ)

(2,841m、長野)  144座

越百岳の下りから見た南駒ケ岳(正面の双耳峰)。右が仙涯嶺


伊奈川ダム・登山口〜越百山〜南駒ヶ岳〜(北沢尾根)〜登山口(1泊2日)

2006年8月26日(土)

 自宅430−相模湖IC−中津川IC−伊奈川ダム−908駐車場920−1015福栃橋(登山口)− 1102下の水場−1116下のコル(昼食)1137−12366合目1250−13307合目1340−14058合目− 1500越百小屋(泊)

 駒ケ岳という山は全国に数えきれないほどあるが、この南駒ケ岳は木曽山脈、つまり中央アルプスの南部にある。
 木曽といえば御嶽山や木曽駒ケ岳が最初に頭に浮かんで来るが、南駒ケ岳と聞いて「さて、どこにあったかな?」という人も多いかも知れない。
 私は木曽駒ケ岳から空木うつぎ岳を縦走して池山尾根を下った時、この南駒ケ岳を見たが、空木岳の一角のようにしか見えなかった。
 しかし、今回、反対側の越百こすも岳から見た南駒は、まるでゴジラの背のような仙涯嶺せんがいれいを前衛に従えて、すーとそそり立った双耳峰は実に見事であった。

 日本百名山の著者である深田久弥氏は、日本百名山の選定に当たって、空木岳とこの南駒ケ岳のどちらを選ぶかで迷ったというが、それも頷けると思った。南駒は空木岳に勝るとも劣らない名山であることを実感した。

 この山へ登るには、木曽駒から縦走する方法もあるが、今や伊奈川ダムから周遊する人が多いようだ。私も伊奈川ダムから1泊2日で越百岳、仙涯嶺、南駒ケ岳と周って北沢尾根を下ることにした。

 朝3時に雨の音で目が覚めた。外を見るとかなり降っている。「この雨じゃあ行っても仕方がない」と再び布団の中へ潜り込んでしまった。
 しばらくウトウトしていたが、「もしかしたら長野県は晴れているかも知れない」と思い直して、あわてて飛び起きた。

 当初の予定より遅れて4時30分に家を出た。
 甲府近くで本降りになってしまい、引き返そうかと思ったが、諏訪を過ぎると止んだ。そして、わずかではあるが晴れ間さえ見えるようになって来た。

 中津川ICで降り、R19号を塩尻方面へ引き返す。道の駅「大桑」へ8時30分着。ICからすでに40分もかかっている。塩尻ICから来た方が早かったかも知れないと思った。

 伊奈川ダムへ行く林道は、道幅が狭くて心配になった。この道が本当に伊奈川ダムへ行く道だろうか。ダムを造ったからにはダンプが頻繁に通ったであろうに、こんな細い道を本当にダンプが通ったのだろうか。下って来た空のタクシーとすれ違うのに苦労した。

 
 伊奈川ダムは本当に小さなダムだった。今月初めに行った黒部ダムとは比較にならない。それに発電所があるだけで何もなく、釣り人が一人いるだけだった。
 このダムを遡るとすぐに駐車場があった。
 駐車場へ9時8分着。

 駐車場は2箇所あり、上は満車だったので(入れようと思えば入ったが)20mほど手前の駐車場へ止めた。こちらは4、50台も置けそうな所へ4台だけ、テントが一張りあった。

 9時20分、駐車場を出発。

 ゲートを通り抜けると橋があり、渡ったところがT字路で左が空木岳、右が越百岳・南駒ケ岳方面で、「コスモ5h」と書いてあった。

 林道を歩き出してすぐに蚊の大群に襲われた。急いでザックから防虫スプレーを取り出して全身にかけた。

 渓流釣りの2人が下って来た。どうみても大漁という顔には見えない。釣れないので場所を移動しているのだろうと思った。

 続いて登山者が5、6人下って来た。越百小屋へ泊まった人達に違いない。

 登山口である福栃橋へ10時15分着。約1時間の林道歩きがやっと終わった。ここで荷物を置いて一服。(ここが4合目)

 ここから林道と分かれて登山道へ入って行く。最初は沢沿いに登り、すぐに尾根に取り付く。シラビソや杉など針葉樹が生い茂った急斜面を、ジグを切って登って行く。

 突然、チョロチョロと流れる水の音が聞こえて来た。良く見ると左手3、4mの所にパイプから水が流れていた。標識はなかったがそこが「下の水場」だった。コップが置いてあったので一口飲んで行く。

 登山口からちょうど1時間ほど歩くと、左右に伸びた尾根の鞍部へ出た。そこが「下のコル」だった。周りは森林で鬱蒼としているが、ここで昼食にすることにした。

 ここからは、なだらかな稜線を進んで行く。ほどなく5合目の標識があった。ここが「オコジョの平」かも知れないと思ったが、標識には何も書いていなかった。そのまま素通りする。

 途中で休憩しようと思い、適当な場所を探していると、前に人影が見えた。そこが6合目で単独の女性が休んでいた。彼女は私と入れ替わるように出かけて行った。
 荷物を置いて腰をおろすと、汗ばんだ身体に心地よい風が吹き渡って来る。爽やかな風にも心なしか秋を感じるような気がした。

 ここで一服していると若者2人が下って来た。南駒まで行く予定だったが展望が利かないので越百まで行って引き返して来たという。頭上からは木漏れ日が差し込んでいるが、隣の尾根はモヤって見えない。

 展望台へ13時5分着。残念ながら何も見えない。晴れていれば越百岳や南駒ケ岳が見えるはずなのだが・・・。まあ、仕方がない。今日は雨に降られないことだけを良しとしよう。すべては明日に賭けるしかない。

 7合目へ13時30分着。先程の単独のご婦人が休んでいた。ご婦人は、「2人で来るはずだったが、友達が急に具合が悪くなったので・・」と言い、駐車場までタクシーで来たと言う。途中ですれ違ったあのタクシーで来たようだ。

 上の水場の標識の所にザックが1つデポしてあった。左手から沢の音が聞こえて来る。トラバースぎみに60、70mほど下った所でご婦人が水を汲んでいるのが見えた。私はそのまま素通り。

 14、5人のパーティーが下って来た。この時間からすると木曽殿山荘から来たのだろうか?

 8合目へ14時5分着。
 そもそもこの合目だが、10合目が越百岳なのか南駒なのか分からない。まさか小屋が10合目ということはないだろうから、もうぼちぼち小屋へ着いてもいいころだが・・・。

 それにしてもコスモ岳とはいい名前だと思った。優雅さと気品を感じさせる名前だ。

 いつの間にかガスに覆われた。視界は100mぐらいだろうか。

 やっと越百小屋が見えて来た。まるで時間を計ったように15時ジャストに到着。(写真は翌朝撮ったもの)

 早速、宿泊の依頼をすると、「予約がないから夕食のメニューが変わってしまうがいいか?」と聞かれる。
 私は「食事ができれば何でもいい」と答える。

 ご主人から「なぜ予約をしなかったのか」と聞かれる。私は2週間ほどの間に10回以上電話をしたが誰も出なかった。そのため今年は営業していないのかも知れないと思い、最悪の場合は隣の避難小屋へ泊まるつもりで、予備食と非常食を持って来た。しかし、そのことは主人には言わなかった。

 小屋の庭先で先客がくつろいでいた。私もそこでビールを飲んだ。余り冷えていないビールだが、たとえ冷えてなくても山で飲むビールは旨い。

 時々、ガスが切れて山が見えた(写真右)。コスモ岳かと思って写真を撮ったが、コスモ岳ではなかった。

 越百小屋は昔風の小屋で人気があるそうだ。この小屋へ泊まることだけを目的に来る人もいるという。
 ハイシーズンの週末はだいぶ混雑するらしいが、今日の宿泊者は10人にも満たない。
 トイレは外なので雨の日はつらい。傘とヘッドランプは必需品である。

 小屋の隣が避難小屋になっていた。宿泊者も5、6人いるようだ。(寝具なし2000円)
 水は玄関前のドラム缶に満杯に入っていた。そこから勝手に汲んだ。(本当は有料かも知れない?)

 夕方になって雨になった。食堂兼談話室で山談義となった。

 


2006年8月27日(日)

 越百小屋530〜622越百岳〜810仙涯嶺の標識〜南駒三角点〜1012南駒ケ岳1040〜 11252700mの標識〜11502591ピーク1155〜1215三角点〜1420登山口(4合目) 〜1455福栃橋〜1530駐車場

 4時起床。夜中に起きた時は雨が降っていたがやっと止んだ。しかし視界は全く利かない。
 単独の女性がヘッドランプを点けて4時半に出かけて行った。

 朝食を済ませ、雨具を着込む。横浜から来たという男性2人と女性1人のパーティーの下山を見送って、5時30分に出発した。
 まずは森林地帯を登って行く。雨は降っていないが滴が落ち、雨が降っているのと変わらない。

 30分も歩くとボンヤリとコスモ岳が見えて来た。
 岩場を過ぎ、ハイマツの急登を一気に登っていくと越百岳へ着いた。6時22分着。

 山頂には、私より早く小屋を出た新潟から来たというご夫婦と避難小屋へ泊まったという40代の男性2人組がいた。私が山頂へ立って荷物を置いた瞬間、ガスが切れ、正面右手にゴジラの背のような奇岩が並んだ仙涯嶺とその左奥に双耳峰の南駒ケ岳が見えた。一斉に歓声が上がった。

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双耳峰の南駒ケ岳

南駒の前衛のような仙涯嶺

 私は水を飲むのも忘れ、急いでシャッターを押した。それにしても見事な山容だ。まるで北アルプスの鹿島槍のような双耳峰が気に入った。それに仙涯嶺の奇岩というか奇峰が凄い。まるで岩の砦のようで、本峰へ人を寄せ付けない前衛の山という点では、穂高のジャンダルムのような感じさえする。

 左手には御嶽山が雲海上に浮かんでいた。この時、私は初めてブロッケン現象を体験した。
 しかし、この眺望も長続きはしなかった。雲海が時間と共に這い上がって来たからだ。