能郷白山−2/2

 前山は左肩を巻きながら長い稜線を進んで行く。全体には下っているが幾つかの小さなピークを越えて行く。前山から1、2分下ったところに「C1460m地点」があった。この辺から見る能郷白山がすばらしいのだが、生憎ガスが流れ出し何も見えない。帰りに期待しよう。

 道端にはユキザサが群落で咲いていた。花はマイズルソウに似ているが、葉はユリの葉に似ている。

 しばらくすると、ガズが突然切れて正面に立ちはだかるように能郷白山が現れた。右端の山頂部はまだガスっているが、中央にある祠や左側にあるピラミダルな磯倉が見えた。


ピラミダルな磯倉

能郷白山の南方面

 次の小さなピークへ立つと、スカッと青空が広がり能郷白山の全容が見えた。残雪は全くなく“白き山”ではなかったが、とにかく全山が見えて嬉しい。


(右が山頂、中央に小さく祠が見える)

 目を凝らすと、祠のところに二人の姿が見えた。私を追い越して行ったあのご夫婦に違いないと思った。彼らはもう山頂へ着いているというのに、私はまだこんな所でウロウロしているのが恥ずかしく情けなかった。しかし、今日はいつもと様子が違うので下山のことも考え、焦らずにゆっくり行くしかないと思った。

 下りきった鞍部が「D1450m地点」であるが、何とも分かりにくい標識だ。そもそも小さなピークが幾つもあるためどこが最低鞍部かよく分からない。こんな標識よりも前山のピークに標識を立てるとか、一合目、二合目と表示してくれた方がよっぽど分かりやすくありがたいと思った。

 頂稜部の祠付近に今度は5、6人のパーティーが見えた。いったいあのパーティーはどこから来たのだろうか。

 最後の登りになるとコバイケソウの群落があった。今までコバイケソウの写真など撮ったこともなかったが、今回初めてコバイケソウの写真を撮った。そしてじっくり観察すると一つ一つの花びらが可愛いではないか。


コバイケソウ

コバイケソウをズーム

祠も大分近づいて来た

 山頂近くの草原にはイワカガミが咲いていた。もう少し早い時期ならザゼンソウやカタクリが咲き、7月にはニッコウキスゲが咲くようだが、今は一番中途半端な時期なので花も少ないようだ。

 その草原で道が分岐する。右が山頂で左に祠がある。まずは右手の山頂へ向かって行った。

 山頂へ行く途中で10人以上とすれ違い、山頂にも10人位いて驚いた。この人達はいったいどこから来たのだろうか。

 山頂にいた人に聞くと、温見峠から来たという。R157は岐阜県側は通行止めだが福井県側からなら峠まで行けるといい、さらに岐阜県側からも抜け道があってR157を通らずに温見峠へ行けるという。それを聞いて能郷谷から苦労して登って来たのがバカみたいに思えて来た。

 山頂は展望がないので、すぐに祠の方へ行った。かなり大きな祠で、さすがは熊野白山権現だと思った。

 周りには30人以上が弁当を広げていた。私もここで昼食にすることにした。
 しかし、食欲はなく宿で作ってもらったオニギリ1個を食べるのがやっとだった。無理やり水で流し込んだ。そしてポカリや水、缶コーヒーでたっぷりと水分を摂った。

 ここからは加賀白山や荒島岳が見えるらしいが、モヤがかかって見えない。今日はとにかく山頂へ立ったというだけでヨシとしよう。


山頂の祠から見た前山

山頂の祠から見た磯倉方面

 昼食後は、病人なので早々に下山することにした。ここは下山といっても前山の登り返しがあるからだ。
 しかし前山は、山頂から見た時はウンザリしたが、さほどシンドイ登り返しではなかった。

 (前山から見た能郷谷)

 下りの途中で14、5人とすれ違った。この能郷谷から登る人がいて何故かホッとするものがあった。

 しかし、前山を少し下ったところで会った中年の3人組は、「今日は前山まで行って引き返します」と言い、さらに途中で道端に座り込んでいた中年の男性4人組は、「登頂は断念してここから引き返しますワ・・・」と言っていた。ここは他の山よりもリタイアする人が多いようだ。

 私も登りはメロメロだったが、苦しいのは私だけではなかったようだ。