伯母子岳 (おばこだけ)

(1,344m、奈良県)  180座

桧峠から見た伯母子岳。奥高野の名峰と言われている。


大股登山口〜伯母子岳〜伯母子峠〜大股登山口−護摩壇スカイタワー〜護摩壇山往復

2010年4月29日(木・祝)

自宅500−相模湖IC−(中央・名神・近畿・阪和)−美原南IC−R309、R170、R371-R53-R733)−野泊川村−1510大股・登山口(車中泊)

 今回は、世界遺産である『「紀伊山地の霊場と参詣道』の一部である伯母子岳と釈迦ケ岳である。

 私は、恥ずかしながらこの世界遺産についてほとんど知らなかった。出かける前に山の情報を得ようとインターネットで調べていると、伯母子岳が熊野参詣道の小辺路の一部であり、釈迦ケ岳が奥駈道の一部であることが分かった。
 また、出かける2週間ほど前に、NHKの「世界遺産」という番組も放送され大変参考になった。

 ちなみに、地元のHPには次のように書いてあった。
『日本に一つだけの道の世界遺産であり、紀伊半島の「吉野・大峯」「熊野三山」「高野山」の三つの霊場と、これらを結ぶ大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)、熊野参詣道小辺路(くまのさんけいみちこへち)、中辺路(なかへち)、大辺路(おおへち)、伊勢路、高野山町石道(こうやさんちょういしみち)が含まれています』。

 これだけでは、ちょっと分かりにくいので、絵を描いてみた(左の図)。

 熊野参詣道小辺路について、十津川村のHPに『高野山から熊野本宮大社にいたる全長72kmの街道です。本宮から高野山へは「高野道」、高野山から本宮へは「熊野道」と呼ばれ、1,000m級の3つの峠を越える険しい道ではあったものの、高野山と本宮を最短距離で往来できる道として、多くの参詣者たちが通りました』、と書いてあった。

 その1,000m級の峠というのが、伯母子岳にある桧峠と伯母子峠に違いないと思い、私は絶対にこのコースから登ろうと思った。伯母子岳へ登るコースとしては、高野龍神スカイラインから奥千丈林道を辿る方が楽チンのようだが、この機会に世界遺産の一部でもいいから歩いてみようと思った。

 そんな訳で、伯母子岳の登山口である奈良県の野迫川村を目指し、朝5時に家を出た。

 今回は往復とも高速道路の選定を間違え、かなり遠回りをしてしまったが渋滞もなくスンナリ行くことが出来た。しかし、高速を降りてから、野迫川村へ行く道を当初はR168で行こうと思っていたが、ナビが選んだ道は橋本からR371−R53−R733だった。「まあ、いいかあ!」と、そのままナビの誘導に従って行ったが、R371は道が狭く対向車が来ないかとハラハラした。国道とは名ばかりで、まさに林道である。

 野迫川村は山中の小さな集落である。
 登山口の大股は平維盛が隠れ住んだといわれる平集落を通って、さらに奥地へ入って行く。

 森林地帯の単線を進んで行くと、突然、民家が現われ、その先にトイレと駐車場があった。そこが登山口で、川の対岸には山肌にへばりつくように民家が10軒ほど建っていた。ここが吉野山から小辺路を旅して来た人達の一日目の宿場になったのだろう。わずか10軒程しかない集落だが、やけに旅館の看板だけが大きく目立つ。また数キロ先には温泉ホテルや民宿などもある。

 駐車場は4台分しかない。すでに満車で路肩へ止めた。この車の主は登山者ではなく釣り人だった。16時半を過ぎると4台とも空になった。私は待ってました!とばかりに車を止め、焼肉で一杯やり始める。


(平維盛が隠れ住んだといわれる平)

(登山口)

(この坂道を登って行く)

 しばらくすると、高野山から歩いて来たという40代のご夫婦が来た。今日はこの近くにテントを張り、明日は十津川へ行く予定だが、奥さんはもう疲れてしまったので明日はバスで帰り、主人だけが行くという。でも奥さん、高野山から歩いて来ただけでもエライ!

 私は、今宵はお月さんでも見ながら寝よう。


2010年4月30日(金)

大股登山口600〜650萱小屋跡〜733桧峠〜804分岐〜824伯母子岳834〜853伯母子峠855〜910分岐〜953桧峠〜1024萱小屋跡1040〜1145登山口・・・1145護摩壇スカイタワー1155〜1209護摩壇山〜1225龍神岳1230〜1251レストハウス

 朝6時発。
 すっかり夜が明け、白い雲がわずかにあるものの青空が広がっている。この辺には熊がいるというので鈴をぶら下げ、ホイッスルを首からぶら下げて歩き始める。清流にはもう釣り人が竿を垂らしていた。

 民家の間のコンクリートで固まった急坂を登って行く。すぐに息が切れてハアハアして来る。この辺に住んでいる人は毎日こんな坂を登り降りして大変だろうと思った。
 後継者がいないのか荒れた畑もあった。

 すぐに杉林の急登になった。心臓がバグバクして来る。二日酔いのふら付く足にはこたえる。道は3人が肩を並べて歩けるほど広く、歩きやすい。

 20分も歩くと杉から赤松に変わり、落葉樹の新緑も見られるようになって来た。

 昔は旅籠があったという「萱小屋跡」へ6時50分着。
 そこには真新しい小屋が建っていた。小さくてかわいい小屋だ。中を覗いてみると、囲炉裏と長椅子があり、隣に2、3人が横になれるほどの部屋があった。
 ここで写真を撮っていると、オジさんが一人登って行った。これで熊の心配はしないで済みそうだ。

 息をハアハアさせながら登って行くと、中年の夫婦にアッという間に追い越される。余りにも足が速いので驚いた。

 やがて、すっかり落葉樹になり、道もなだらかになって来た。新緑はまだやっと芽が出たばかりで、眩しいほどの新緑とはいかない。所々にミツバツツジが咲いていた。

 7時32分、尾根を登り切って初めて朝日を浴びた。そこからなだらかに1分ほど進んだ所に桧峠の標識があった。左手に見える三角形の山が伯母子岳だろうか。伯母子岳は奥高野の名峰として知られ、200名山ガイドブックには、 『秀麗にして優美な山容を誇り、山の風格、自然の豊かさで奥高野の名山として定評がある』 と書いてある。あれこそ伯母子岳に違いない。


(ミツバツツジ)

(桧峠)

(伯母子岳)

 そこから4、5分も進んで行くと、夏虫山との分岐があった。夏虫山とは、夏になるとやたらと虫が多い山なのだろうか。

 ここからは石と砂利の整備された道をなだらかに下って行く。

 さっきまで左正面に見えた伯母子岳の端正な三角形が、次第に左手に見えるようになって来た。昔、ここを歩いた人達は白装束に草鞋を履き、長い杖をもったで歩いたのだろうか。そんな光景が目に浮かんで来るようだ。NHKの番組で、『この熊野参詣道は、神道と仏教、修験道が共存した世界でも珍しい』と言い、さらに『途中で死んでもいいように白装束だった』といっていた。死を覚悟してまでここを歩いた人達に頭が下がる思いがした。

 突然、車の音がして驚いた。左手50mほど下に作業用の軽トラが走っていた。こんな所まで林道があるとは驚いた。

 いよいよ登りになった。4分ほど急登を登って行くと、突然、道が分岐していたので立ち止まる。右が護摩壇へ出る道で左が山小屋(伯母子峠)へ出る道。真ん中に伯母子岳へ直登する細い獣道のようなものがあった。
 私は迷わず直登コースを登って行った。ここは今までのような整備された道とは違い、普通の登山道である。何かホッとするものがあった。しかし、道はジグが無く一直線に登って行く。林相もブナやミズナラのような落葉樹になったが、まだ芽ぶきも始まっていない。

 急登を20分ほど登ると、山頂の標識が見えて来た。そして、三角点のある山頂へ立った(8時24分)。しかし誰もいない。途中で私を追い越して行った3人は小屋の方へ下ったのだろうか。
 山頂からの展望はバツグンだった。しかし、どれが何という山か全く分からなかった。


(山頂の標識が見えて来た)

(伯母子岳の山頂)

 山頂で一服していると、20代前半の若者2人が走るように駈け上って来た。大股から1時間20分で来たという。私は2時間20分もかかっているというのに・・・。彼らは昨日、高野山から大股まで来て、今日は十津川まで行くという。熊野本宮まで2泊3日だという。「凄いなあ・・・」と言うと、「メタボ対策ですよ」と笑いながら言った。

 彼らから高野山を教えてもらった。遠くに霞んで見えた。特に目立ったピークではないが、あそこから一日で歩いて来るのは大変だろうと思った。

 反対側には護摩壇スカイタワーらしいものが見えた。時間があれば護摩壇山にも登ってみたいと思った。

 彼らが小屋へ向かって下って行ったので、私も下ることにした。
 小屋へ向かう道も一気の下りである。ここにはジグザグなどという言葉はないようだ。とにかく真っ直ぐ下る。

 約20分で小屋が建つ峠へ着いた。峠には小さな避難小屋とトイレがあった。しかし、もう若者はいない。本当に足の速い2人である。ここから南へ下ると十津川村へ出る。ここを下って行ったのだろう。

 私はここから大股へ引き返す。伯母子岳をトラバースするなだらかな道を進んで行った。ここは登山道というよりもまさに遊歩道である。

 三叉路から3、4分も下ると、昨日、登山口近くへテントを張ったご夫婦の旦那さんと会った。奥方は「もう一日で充分です」と言っていたが、その奥さんはバスで帰ったという。旦那さん一人で熊野本宮まで行くという。

 この旦那さんと別れた後、本宮まで歩いて行くという人に次々と会った。この参詣道小辺路を歩いている人は想像していたよりも多い。しかし、大股から伯母子峠間は、歴史を感じるようなものは全くなかった。道も近年、小型ブルで整備したのだろう。ちょっぴり寂しい気がしないでもない。

 桧峠へ9時53分着。ここから4、50m下った所が、伯母子岳の見収めになる。「秀麗にして優美な山容」を写真に収め、伯母子岳におさらばする。

 ここからの下りでも10人位の人に会った。みんな小辺路を歩いているようで、伯母子岳を往復している私は何か申し訳ないような、恥ずかしいような気がしてならなかった。

 あるオジさんから、「今日はもうお終いですか。もったいないですねぇ・・・」と言われ、つい「これから護摩壇でも登ろうかと思うんですよ!」と言ってしまった。元々、時間があれば登りたいと思っていたが、護摩壇を登ると言い切ったからには登るしかあるまい。

 萱小屋跡で小休止。ここでおやつタイムにした。
 もう一度小屋を覗いて見た。しかし、どこにも避難小屋とは書いていない。避難小屋なのか個人の小屋なのか分からない。造りから見て、どうも避難小屋ではなさそうな気がした。

 駐車場へ11時15分着。早速、護摩壇タワーへ向かって行った。