笈ケ岳 2/3

2007年5月4日(金)

自然保護センター421〜440野猿公園〜505一つ目の岩508〜540二つ目の岩550〜752冬瓜平との分岐802〜847冬瓜山900〜953シリタカ山1005〜1158笈ケ岳1235〜1410シリタカ山1420〜1458冬瓜山〜1815野猿公園1825〜1850自然保護センター 

 朝3時10分起床。昨夜は11時を過ぎても酔っ払いがうるさくて寝付けずにいたが、いつの間にか寝入ったようだ。

 寝不足で頭がクラクラしたが、4時10分に宿を出発。自然保護センターへ行くとすでに車が10台ぐらいあった。出かける準備をしている人も3人いた。真っ暗い中で挨拶を交わし、4時21分に出発した。

 ヘッドランプを点けて登り出したが、すぐに消しても歩けるようになった。昨日歩いている道なのでスタスタ歩いて行けた。

 野猿公園へ4時40分着。ジライ谷は、昨日より水かさが10センチから15センチぐらい減っていた。簡単に石から石へと飛び移り、左岸の尾根に取り付いた。ここも昨日下見しているのでそのまま登って行った。(尾根をジライ谷に沿って登る)

 かなりの急登だが、「この位の急登なら他にもあるじゃあないか」と思いながら登って行く。とにかく「登山道はない」という前提で考えれば、たとえ急登でも、木の根っこに掴まってでも、それなりにコースがあるだけで感謝せねばならない。

 途中で厚手のシャツが脱ぎたくなった。しかし斜面が余りにも急なのでザック置いたら転げ落ちてしまう。頭上に見えるピークまで我慢しよう。

 そのピークまで行くとそれは大きな岩だった(写真左)。そこでやっとザックを置くことが出来た。厚手のシャツを脱いだ。

 そこから歩き出してすぐに3人に追い越された。今日は距離が長いので決して彼らのペースに惑わされないように、ゆっくりとマイペースで登って行った。

 道はしっかり付いているが、相変わらず木の根や岩、石、トラロープなどに掴まりながら急斜面を登って行く。とにかくジクなどほとんどない。ただ、一直線に登っている感じである。

 道が細くなって来ると主尾根へ出た。背後には白山が少しずつ姿を見せた。

 5時40分、大きな岩を巻き込む。この岩を見て誰かのHPに載っていたのを思い出し、コースが間違えていないことを確信した。この岩を巻き込んだ時、初めて朝日を浴びた。

 6時20分、やっと広い尾根へ出た。傾斜も緩む。今までのすさまじかった急登から、やっと開放された。

 そこから15分ほどで見晴らしの良いピークへ出た。足元にはピンク色のイワウチワがいっぱい咲いていた。しかし、まだ笈ケ岳は見えない。ここで一服し、日焼け止めクリームをたっぷり塗った。

(中央のモッコリしたのが冬瓜(かもうり)山、右手に白く見えるのがシリタカ山)

 ここから正面に見える山を目指すのかと思ったが、コースは右側のヤセ尾根を進んで行く。

 この道はイワウチワ(写真)が群落で咲いていた。先月、石裂山で初めてイワウチワを見たというDさんに見せてやりたいと思った。

 途中で駐車場を5時20分に出て来たという若者2人に追い越される。さらに後ろから15人位来るという。

冬瓜平との分岐と思われる所まで来ると、待望の笈ケ岳が初めて姿を見せた。ヤッター!! バンザ〜イ!

(中央が笈、右が小笈)

 さて、ここから登りは冬瓜平経由、下山は稜線コースと思っていたが、その冬瓜平へ下るコースが見つからない。私と同じように冬瓜平へ行くという中年のご夫婦と一緒にコースを探したが見つからなかった。遥か下にテントが数張り見えるが、どこを下るのか分からず困っている時、ちょうど登って来た5、6人のパーティーがいたので尋ねると、もっと先だという。その一言を信じて進んだが、これは間違いだった。

 冬瓜平との分岐を目指して進んで行く。かなり荒れた急登だった。そして、突き上げた所が「冬瓜山」だった。3人で「稜線を来ちゃいましたね」と苦笑い。

 ここからの展望はバツグンだった。正面に笈ケ岳が立ちはだかって見えた。ここで一服しながら展望を楽しんだ。

 9時ジャストに冬瓜山頂発。

 すぐ隣にあるナイフリッジは、雪のカケラも無かった。雪さえなければ子供騙しである。もしここに2mもの雪が積もって雪庇になっていたらイヤラシイかも知れない。

 誰かのHPに「右も左も落ちたら命はない」というようなことが書いてあったが、樹木があるから一気に下まで滑落することはないだろう。ちょっとオーバーだと思った。

 ここからシリタカ山をめざして下って行く。一面残雪となった。残雪がキラキラ光って眩しい。

(写真の右手に樹木が見える山がシリタカ山)

 鞍部から今度は登りとなり、ペースがグーンと落ちた。すでにヘロヘロだった。日射病か熱中症にでも罹ってしまったのだろうか。それとも昨夜の寝不足が効いて来たのかも知れない。(本当は中年太りによる単なる体力不足。それをすぐ何かのせいにしたがる)

 シリタカ山は、山頂から20mほど下をトラバースしてしまったことに気づき、山頂まで引き返す。 ボッテリした雪原のような山頂で立ったまま一服。

 ここから見る笈がいい。山頂部に雪が着いているともっといいんだが・・・。

 山頂まではまだまだ遠い。ぐるっと半周しなければならない。背後に白山が見えたが、のんびりと眺めている余裕はなかった。

 シリタカ山から、今度は岩底(かまそこ)谷の頭をめざして下って行く。かなり急斜面であるが、雪がザグザクなのでアイゼンも着けずに下って行った。

 途中で朝5時に出発したという単独の青年が下って来た。とてつもない人がいるものだ。私は彼より40分も早く出て、まだこんな所でウロウロしているというのに・・・。

 私はやっと主稜線、つまり最後の登りにかかったところである。雪がないところはヤブ漕ぎを強いられた。

(小笈から見た笈山頂。東斜面には雪が残っている)
 そして、いくつかのピークを越え、やっと憧れの山頂へ着いた。11時58分着。とにかく12時前に着いてよかった。先客が4人いた。

 ここで昼食にしたが食欲は全くなかった。しかし食べなくてはいけない。宿で作ってくれたオニギリ1個をムリヤリ水で流し込んだ。

 さて、下りの時間を指折り数えてみた。登りは7時間40分かかっている。下りが6時間とすればここを12時半に出れば日没の18時半には着くだろう。

 アイゼンを着け、12時35分下山。

(写真は小笈付近から見たシリタカ山と冬瓜山。背後は白山)

 ここは下山も登り返しがあるのでシンドイ。雪渓を下り、ヤブを漕ぎ、シリタカ山の雪渓を登って行く。ここさえ登り切ってしまえば、という思いで登って行った。振り向けば今登って来たばかりの笈ケ岳が見事だった。そして我ながら「よくあそこまで登ったものだ」と思った。

 シリタカ山から少し下ったところで、登りの時に気づかなかった冬瓜平へ下る道があった。しかし、もう冬瓜平へ行く必要はない。そのまま稜線を進んで行った。

 冬瓜山を越え、ジライ谷に向かって下る。この道は登りも急登でキツかったが、下りもシンドイ。とにかく半端じゃあない。足がガクガクする急斜面をトラロープや岩、木の枝や根っこに掴まりながら下って行く。よくもこんな所を登ったものだと感心する。

 私が一番最後の下山者だろうと思っていたが、後ろから若者が一人降りて来た。一緒に野猿公園へ降り立った。18時15分、まだ明るい内に渡渉できて安堵した。沢の水で日焼けした顔を洗い、水をガブガブ飲んだ。

 自然保護センターまで来ると、青年は一里野温泉のゲート前に車を置いているのでこれから4キロ歩いて帰るというので、私が車で送ってやった。私も「人助け」ができ、念願だった笈ケ岳へも登れ、宿で飲んだビールが最高に美味かった。

 笈ケ岳は、やはりシンドイ山だった。計画段階から14時間を覚悟していたが、実際は14時間30分もかかってしまい、自己記録をまた更新してしまった。

 普通の人は12時間ぐらいで登っているので、本当に恥ずかしいやら情けないやら・・・。出来ることならコースタイムを改ざんしたい位であるが、これから登ろうとする人で体力に自信がない方でも、これを見れば「絶対に登れる」という自信を持って頂けると思う。

 私は前日に、「笈は平ケ岳より1.5倍ぐらいキツイ」、と聞かされたが、たしかに登っている途中でバテてしまい、極端にペースダウンをしてしまったが、結果的には平ケ岳ほど苦しくはなかった。平ケ岳の場合は下山した後、全く食欲もなくグッタリしてしまったが、今回はかなり元気だった。ビールをカブガブ飲み、メシもたらふく食えた。

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