(1,695m、奈良県・三重県)
2001年10月20日(土)
10/19新宿−(夜行バス)−10/20 710大和八木駅−上市駅830−1030大台ケ原〜大蛇ぐら1235〜牛石ケ原〜正木ケ原〜日出ケ岳1350〜大杉谷〜粟谷小屋(泊) |
10月の上旬に東北の岩手山と八幡平へ行く予定だったが、体調が悪く前日になって新幹線をキャンセルした。
やっと体調も良くなったので、さてどこへ行こうかと思った時、大台ケ原の紅葉が見頃だと知って、急遽、夜行バスと山小屋を予約した。
そして、昨夜、新宿23時15分発の夜行バスに乗り込んだ。
朝6時ごろ目が覚めた。今日は快晴で絶好の行楽日和だった。
大和八木駅へ7時10分着。30分ほど待って上市駅行きのバスに乗った。奈良交通のホームページには上市駅まで52分とあったので、大台ケ原行きの始発バス(8時30分発)まで5分しかなかったので気をもんだ。
上市駅近くなって心配になり、運転手さんに確認すると、「このバスは大台ケ原行きが出た後に到着する」と言われてあせったが、幸い始発バスが遅れていたので、無理を言って立ち席で乗せてもらった。
国道40号線は想像以上に狭い道で、すれ違いに苦労する。対向車の運転手が「バックしはろか」という言葉を聞いて、関西へ来たという実感が湧いた。
山の中腹あたりは、紅葉というよりも、ただ緑が薄くなって黄色みかかった感じだったが、登るにしたがって紅葉もあざやかになってきた。期待感で胸がわくわくした。
大台ケ原の駐車近くなると、マイカーの路肩駐車が多くバスが動けないほどだった。後ろの座席から「ここで降ろしてくれ」と言う客もいた。
10時30分、大台ケ原駐車場着。ここは人が多く遊園地のようだった。早く人混みから逃れようと、すぐにシオカラ谷へ向かった。
途中にあった真っ赤に色づいた実が見事だった。すぐに沢の音が聞こえ、遠くに連山が見えた。あの連山は大峰山だろうか。
20分ほど下るとシオカラ谷の吊り橋があった。カメラを首にぶらさげて写真を撮りながら登って行く。真っ赤なモミジがすばらしかった。行楽客が感嘆の声をあげていた。
(遠くに大峰山が見えて来た) |
(紅葉−1) |
(紅葉−2) |
ちょうど1時間ほど歩いた時、高台へ出たので一服した。11時35分。地図と磁石で先程から気になっていた連峰を確認すると、やはり大峰山で、正面のボッテリした山が大普賢岳、その左手の槍のように尖った山が行者還(ぎょうじゃがえり)岳だった。
大蛇ぐら分岐へ11時45分着。分岐を右に曲がって下って行く。家族連れや団体さんで混雑しているが、ドウダンツツジが紅や黄色に色づき、近畿地方の紅葉も捨てたもんじゃあないと思った。
大蛇ぐらは、切り立った崖にオーバーハングして延びたヤセ尾根で、先端は岩塊になっていた。途中で動けなくなっているオバさんもいた。ここからの展望はバツグンだった。ここは一見の価値があると思った。
(写真右の先端が大蛇ぐら→拡大すると迫力があります)
分岐へ戻って1,2分歩くと広々とした草原になっており、そこが牛石ケ原だった。そこには不似合いなほど大きな岩がポツンとあった。それが牛石で、「これに触ると雨が降る」と書いてあったので雨に降られては大変なので触らなかった。
腹がぺこぺこだったので草原に座ってパンを食べた。
晴れた秋空の下、いたる所で家族連れやグループが食事をしている。ポツンと一人でアンパンをかじっているのが情けなく、恥ずかしかった。
今日は粟谷(あわだに)小屋まで行くので、のんびりもできず、すぐに出発した。12時35分発。
写真はもう何枚も撮ったが、まだ肝心な日出ケ岳(大台ケ原の最高峰)を撮っていないので落ち着かない。
ここは犬が多いので驚いた。いくら行楽地とはいえ、山へ来るのに犬まで連れて来ることもあるまい。
尾鷲辻から右の正木ケ原へ向かって行く。正木ケ原の紅葉は、関西風に言えば「この辺は大したことあらへんやなー」。
やがて木道になった。立ち枯れしたトウヒの中に木道が続く。木道はトウヒを保護するためらしい。
木道を登ってピークに立った時、やっと日出ケ岳が見えた。しかし、木道が山頂まで繋がり、その山頂には展望台のような建物があってガッカリした。
木道を下って行くと、紅葉したドウダンツツジが覆い被さってきた。半分はもうすでに散ってしまったが、あと3,4日早かったら、さぞかし見事だったろう、と思った。
(牛石ケ原の牛石) |
(正木ケ原) |
(紅葉にはちょっと遅かった・・・) |
最後の階段を登り、山頂へ13時35分到着。まずはコンクリート造りの展望台へ立った。大峰山がつながって見えた。
案内板を見て大峰山の八剣山や釈迦ケ岳を確認した。行者還岳がヤリのようで目を引く。釈迦ケ岳も200名山だけのことはある、と思った。
山頂で写真を撮っているとアッという間にガスが湧き出した。さすがに日本一の豪雨地帯である。雨が降らないうちに小屋へ着かなくてはいけない。急いで出発する。13時50発。
ここからは、今までとは一転して静かになった。すれ違う人もほとんどいない尾根の下り道。ここはシャクナゲが多く、花時はさぞかし見事だろうと思った。
ガスはすぐに消えて再び青い空が広がってきた。
太いトウヒの間に黄色くなった落葉樹、そしてシャクナゲ。ブナの木もあった。道もやっと登山道らしくなった。落葉で道が分かりにくい所もあった。
40人ほどの団体さんとすれ違うと、また静寂に包まれた。一人で歩いていると寂しいくらいだった。しかし、静かな山旅が出来て嬉しかった。
登山家の岩崎先生が書いた「日本百名山を楽しく登る」という本で、この大台ケ原のコースは、〈松〉が大杉谷を下る。〈竹〉が大蛇ぐら、牛石ケ原から正木ケ原を廻って日出ケ岳へ立って駐車場へ戻る。〈梅〉が駐車場から日出ケ岳を往復する、と書いてあった。私は〈竹〉と〈松〉のコースを組み合わせたことになる。
もし、日出ケ岳から駐車場へ戻ってしまったら、山へ来たというより遊園地へ来たという感じで物足りない。やはりここを下って正解だと思った。
時々、静寂を破ってワシかタカのような鳴き声が聞こえてきた。
急な坂道を足元だけを見ながら下っていると、時々、真っ紅に色づいたモミジの葉が落ちていた。頭上を見ると見事なほどの紅葉だった。ただ、紅葉した木がポツン、ポツンとしかないのが残念だった。
しばらく下ると分岐があり、右が本線、左が粟谷小屋の標識があった。粟谷小屋をめざして左手の道を行く。山へ来て「本線」と書いた標識を見たのは初めてだった。
ここは道が悪く、本当に小屋へ行く道だろうかと不安になった。人陰も全くなかった。
しばらくすると沢の音が聞こえて来た。水があるということは小屋も近いだろうと思った。小さな沢で水を飲んだ。その先で夫婦を追い越した。人がいてホッとした。
急坂を下り、なだらかになると小屋が見え、林道へ飛び出した。
小屋は60人収容で30人位の団体さんと他の客が7,8人だった。この小屋は海山物産という会社が経営していることもあって、談話室でビールを飲んでいると「おつまみ」に刺身を出してくれた。
ここまでは最高の小屋だったが、団体さんが夜11時を過ぎても宴会が続き、大声で騒いで眠れなかった。