ペテガリ岳

(1,736m、北海道・日高) 195座


ニセピ−クからボンヤリと霞んで見えるペテガリ山頂


神威山荘〜ペテガリ山荘〜ペテガリ岳往復

2011年7月30日(土)

【荻伏−神威山荘〜峠越え〜ペテガリ山荘】

荻伏交差点725−830ペテガリ山荘・神威山荘分岐−駐車場850〜911林道分岐〜947滝(5m位)〜1031峠〜1052伐採地1105〜1220ペテガリ橋〜1234ペテガリ山荘

 ペテガリ岳は日高山脈の中部にある奥深い山で、「遥かなる山」といわれている。
 私はこの山は日本百名山、二百名山の中でも難易度が高く、困難な山ベスト5に入る本当に「遥かなる山」だと思っている。

 それは、まず登山口であるペテガリ山荘へ行くアプローチが厄介なことである。
 静内からペテガリ山荘へ行く林道が通行止めのため、神威山荘から沢を詰めて峠を越えねばならず、雨が降ると沢が増水して登下山できなくなってしまう。

 それにペテガリ山荘から山頂を往復するのにコースタイムで12時間(昭文社、日本200名山を登る)というロングコースである。私の場合は13〜14時間位覚悟しなくてはならない。まさにお天気と体力勝負の山なのである。

 実はこの山へ挑戦するのは今回が初めてではなく数年前に神威山荘まで行ったことがあった。しかし、その時は最初の徒渉点であるニシオマナイ川が増水して渡れず、泣き泣き帰って来た。昨年までは神威山荘へ行くにもゲートがあり、1週間以上前に森林管理署へ申請してゲートの鍵を借りなければならなかったので天気予報を見てから出掛けるということが出来なかった。

 それが今年は林道が解放され神威山荘まで自由に行けるようになった。このチャンスを逃してはならない。「今度こそ何が何でも登らねば!」という悲壮感にも似た思いで出掛けて行った。

 昨夜は荻伏の吉田屋旅館に投宿。夜の天気予報で、明日は道内の大半に濃霧注意報と雷注意報が出されていた。週間天気予報を見て出掛けて来たのだが・・・、まあ、雨が降らないことを祈るしかない。

 朝起きると、予報通り濃い霧が立ち込めていた。視界は100mぐらいだろうか。
 朝食を頂いてから出発。視界もかなり利くようになって来た。

 荻伏交差点から神威山荘までは一直線。とにかく元浦川に沿って走って行けばいい。最初は左右に牧場を見ながら快適なドライブ。
 やがてダートになるが、特にひどい道ではない。ただ、すれ違いに困るので対向車が来ないことを願うしかない。

 1台の車が下って来た。路肩が広い場所で待って話を聞くと、やはりペテガリ山荘から下って来たという。そして今日はペテガリへ登っている人が2人いると聞いてホッとした。山荘へたった1人で泊まるのは寂しいからだ。

 約1時間でペテガリと神威山荘の分岐へ着いた。ここには標識が立っている。
 私はそのまま真っ直ぐ神威山荘まで行ってみた。山荘には3台の車があった。


(神威山荘・ペテガリ山荘分岐)

(神威山荘)

 再び分岐へ戻りペテガリ方面へ進むと、伐採跡地の路肩に3台の車があった。私も路肩へ車を止めた。すると和泉ナンバーの若者が車から降りて来た。彼は昨日ペテガリを登って今下って来たところだと言う。
 ペテガリについて尋ねると、
「とにかくヤブコギが凄い。かき分けるだけで疲れてしまう」と言い、

 水はどの位使ったかを聞くと、
「2リットル使った。4リットルもって登ったが・・・」
 とのことだった。
 やはりペテガリはヤブコギが大変なようだ。心して行こう。
 ホイッスルを首からぶら下げ、熊鈴を付けて8時50分出発。

 まずは最大の難関であるニシオマナイ川の徒渉であるが、気が抜けるような水量である。前に来た時は腰の高さまであったが、今日は登山靴でも渡れる。私は宿を出る時に沢靴に履き替えて来たので、何か物足りない感じだ。

 しかし、この川は一旦雨が降れば一気に増水する暴れ川なので、帰って来るまでは安心できない。
 この川を渡ると工事車両があった。そして岩に赤ペンキで←ペテガリの表示があった。右側はブルが工事をしていたので確認していないが、とにかく左側を進んで行った。(ここ重要)
 そこから20mも行くと、真っ直ぐブルでならした登り坂と、左の細い道が分岐する。ここを左へ入って行く。(ここ重要)
 5,6分ほど林道跡地を行くと、左手に細い道が現われて立ち止まった。標識もリボンもない。しかし、「沢沿いに行く」ということを思い出し、そのまま真っ直ぐ進んで行った。
(右手に沢がある。とにかく沢沿いに行く
 3,4分ほど歩くと林道が急坂になるのが分かる。ここがポイント。
 この急坂を登らず、左手の細い道へ入る。ピンクのリボンが付いている。(ここ重要、写真拡大可)

 ここまで駐車場から21分。
 ここからは、もう何も考えることはない。沢沿いにリボンを頼りに行けばいい。
 しかし、バカみたいにでかいフキの葉などが踏み跡を覆っているので、雨後などは濡れることは間違いない。

 20分足らずで1mほどの滝が現れる。湿気でムンムンする。もう汗だくだ。それに、ぬ〜と熊が出て来そうな感じがする。曲がり角ではホイッスルを吹きながら登って行った。
 さらに17,8分も歩くと5mほどの滝が現れた。ネットで見たことがある滝でホッとした。滝の左側の岩場をよじ登るが下りが心配になった(実際は巻き道があった)。

 次第に沢が細くなり、急登になって来る。沢が分岐する所にはリボンが付いているので迷うことはない。
 沢がチョロチョロになり、ぬかるんだ急登になれば峠は近い。

 その急登を登ると、今度はササヤブの急登が待っていた。ササに掴りながら登ると、そこが峠でリボンがいたる所に付いていた。10時31分着。しかし、ここはヤブの中で、とても休憩など出来る所ではなかった。
 リボンに導かれて右へ20mほど進んでから、今度は一気の下りになる。足元がぬかるんで滑りそうだ。慎重に慎重に下って行く。

 次第にチョロチョロした沢になる。どんどん下って行く。
 途中で沢から離れて右側のササヤブへ入って行く。10mか20mほどでパーと視界が開け伐採地へ飛び出した(写真左)。10時52分、峠から21分だった。ここで初めて一服する。ここまでくればひと安心。あとは林道を歩くだけである。
 実際は林道というより踏み跡程度の道であるが、リボンが付いているので迷うことはない。
 すぐにT字路の広い林道へ出た。ここは帰りに真っ直ぐ行ってしまう危険があるが、右側に棒で通行止めになっていた。これなら帰りも安心だ。
 標識やリボンを頼りに10分も下ると、さらに道幅の広い林道へ出た。ここが帰りに間違いやすいポイントで、ここを真っ直ぐ登ってしまったという方のレポを見たことがある。良く見れば赤いペンキ印やケルンなどがあるが、帰りにおしゃべりなどしていると見落としてしまうかも知れない。

 右側へ行かないように張った通行止めのテープが切られていたので、私がテープを繋いで張り直しておいたが、帰りはまた切られていた。(シカが通るので切られてしまうようだ)
 この先にも林道が分岐する所があったが、トラロープが張られていた。後は立派すぎるほどの林道を下って行けばいい。こんな山奥に何でこんな立派な林道があるのだろうか。
 ペテガリ橋まで来ればもう山荘は近い。

 遥かなる山ペテガリの前線基地、ペテガリ山荘へ12時34分着。実に立派な小屋だ。
 小屋には入口が3ケ所あり、手前がトイレ、玄関、奥が流し場になっていた。小屋には誰もいなかったが、ピストンしている2人の荷物がデポしてあった。今日あたりはツアーの団体さんがドーと来るかも知れない。

 私は持って来た缶ビールを冷やし、冷たいビールを飲みながら遅い昼食。後はたった一人でボ〜としている。
 先程から霧雨が降りだした。明日は例え大雨が降っても登るつもりだ。ここまで来たからには、何が何でも登らなくてはならない。こんな山奥へもう一度出直して来ることなど考えられない。

 ただ大雨が降ると沢が増水して帰れなくなってしまう方が心配だ。明日は絶対に降らないでほしい。

 15時ごろになって中年の男性2人がやって来た。明日、ペテガリへ登るのが私一人だけでなくホッとした。

 16時を過ぎてオバさん一人がペテガリから下って来た。雨で何も見えなかったという。それにヤブコギが凄く、急いでいると道を見失うかも知れないから、じっくりとルートハンティングする必要があるという。

 17時を過ぎてもまだ男性一人が下山して来ない。オバさんの話では朝4時に出発したという。この雨のなか大分苦戦しているようだ。他人事ではない。明日は我が身かも知れない。
 この方は18時半ごろ無事下って来た。やはりペテガリは手強いようだ。明日は4時には出発しよう。

 【山荘は管理費500円、水はじゃあじゃあ出ている。トイレットペ−パーあり、ストーブ・薪あり、床はフローリング、テーブルあり】