至仏山−2/3

2012年7月12日(木)

いよいよ至仏山へ

尾瀬ロッジ535〜542至仏山登山口〜627森林限界〜709中間点〜859至仏山907〜1004小至仏山〜1053笠ケ岳との分岐〜1206鳩待峠−(バス)−戸倉の駐車場

 昨夜は雨の音で何度も目が覚めた。昨夜の天気予報では朝6時から雨、降水量は1ミリ/hと報じていたが、こんなに早く、しかも本降りになるとは思わなかった。

 4時になるのを待って起き出した。そして玄関先の軒下でタバコをふかしながら思案にくれる。今日は5時半に出発して至仏山を登って笠ケ岳までピストンして来る予定だったが、この雨では笠ケ岳は諦めるしかない。

 左手のテ−ブルで自炊している方がいた。暗闇の中で挨拶を交わす。この方も5時前に出て至仏山を登るという。
 風雨ともかなり強いが、夜明けとともに弱まることを期待しよう。

 昨日コンビニで買って来たパンと缶コーヒ−で朝食を済ませ、5時35分に出発。小屋の方に「至仏山は滑りやすいので注意して下さいね!」と言われる。
 山ノ鼻から、昨日散策した研究見本園の木道を進んで行くと、至仏山の登山口があった。ここに「山ノ鼻〜至仏山は上りで利用し、下りには利用しないで下さい」と書かれた看板があった。

 ここからは木道、階段、石畳などになるが、石畳が滑って歩きにくい。また木道も滑りそうで怖い。
 20分も歩いた時、背後のガスが切れて一瞬、研究見本園が見えた。


(至仏山登山口)

(滑りやすい石畳)

(急な階段が続く)

 果てしなく続くような階段を登って行くと、道端にレンゲツツジやウラジロヨウラク、ミヤマダイモンジソウなどが咲いていた。風雨の中でそれらを写真に収める。

 6時27分、「森林限界」の案内板があり、「至仏山は蛇紋岩という、植物が育ちにくい岩で出来ているため周辺の山に比べ森林限界が低い位置にあります。この森林限界を超えると尾瀬ヶ原の大展望が開けます」と書いてあった。

 しかし、この天気では大展望など全く期待できそうもない。むしろ雨が強くなったようだ。
 土止めの階段が水浸しだった。ここは泥がないので靴は余り汚れないが、水溜りの中をジャブジャブと歩くのは頂けない。それにツルツル滑る石が厄介だ。

 前の二人が振り向いて何か大きな声を上げている。私も振り向いてみると、山ノ鼻から尾瀬ヶ原がボンヤリと霞んで見えた。


(水浸しの階段)

(木道も滑りやすい)

(尾瀬ヶ原がボンヤリと)

 やっと階段から解放され、ガレ場を登るようになった。しかし、蛇紋岩という岩がこんなに滑るとは思わなかった。とにかく岩全体がツルツルなのだ。大きな岩や石に乗るのは危険なので巻ながら登って行く。それでも時々、ツルンと滑る。

 ぼちぼち稜線へ出るだろう、と思っていると、「ここが中間地点です」と書かれた案内板があった。(7時9分)

 ここからは大きな岩が現れ、鎖場もあった。鎖がない大きな岩は四つん這いになって登って行った。普通の山なら何でもない岩や石だが、ここはまるでアイスバーンと変わらない。一歩一歩慎重に歩いて行った。

 木の階段を登ると ベンチがあった。しかし、強風が吹き抜ける中でとても休む気にはなれない。それよりも、もうすぐ稜線へ出るだろうと思い、そのまま登って行った。


(ガレ場を登り・・)

(鎖場を登る)

(吹きさらしの中にベンチが)


(ハクサンコザクラ)

(ホソバウスユキソウ)
 すぐにハクサンコザクラが咲いていたので感激!ハクサンコザクラが途切れることなく咲いている。万歳〜!

 さらにホソバウスユキソウの群落があった。雨の中で写真を撮りまくる。

 しかし、肝心なオゼソウはまだ見当たらない。オゼソウは至仏山と小至仏山あたりに咲くと聞いているので、この辺には咲かないのだろうか。

 それから2、3分ほど登った時、そのオゼソウが咲いていた。ついに見つけたゾ〜! そのオゼソウも登るにしたがって群落になって来た。特別可愛いとか、綺麗という花ではないが、尾瀬へ何回も来ていながら今まで一度も見たことがなかったので嬉しかった。


(オゼソウ)

(オゼソウの群落)

 さらに登って行くと、ヨツバシオガマやハクサンチドリが咲き、そしてタカネシオガマの群落になって来た。赤紫色のタカネシオガマと白いホソバウスユキソウが咲き乱れていた。バンザ〜イ! さすがは花の山だ。これだけの花を見ればもう言うことはない。


(タカネシオガマの群落)


(タカネシオガマとホソバウスユキソウ)


(山頂が見えた。中央奥)

(至仏山の山頂)
 花を見ながら登って行くと、正面奥に山頂らしきものが見えて来た。

 8時59分、ついに山頂へ到着。
 40数年ぶりに立った山頂は強風で吹き飛ばされそうだった。順番に記念写真を撮って、岩陰で小休止。とは言っても強風の中ではのんびりも出来ず、水分を補給しただけですぐに出発。

 ここは大きな岩がゴロゴロしていてアルペン的だ。鳩待峠や尾瀬ヶ原から見たあの女性的な山容とは大違いだ。
 下り出してすぐにヒナザクラの群落があった。写真を撮ろうとしたがデジカメの調子が悪い。雨の中で写真を撮っていたので水が入ってしまったようだ。

 さらに下って行くと、ヒメシャクナゲが咲いていた。今までコケモモやアカモノは何回も見ているが、このヒメシャクナゲを見るのは初めてだった。


(ヒナザクラ)

(ヒメシャクナゲ)

(一瞬、ガスが切れた)

 キバナノコマノツメが群落で咲いていた。調子が悪いデジカメで映るかどうか分からないがシャッターを押した。

 この辺は大きな岩が多く、アイスバーンのようにツルツルなので慎重に一歩ずづ下って行った。しかし、大きな岩を巻いて下ろうとした時、足が滑ってスッテンころりん。思い切りビテイ骨を打ってしまい、しばらく立ち上がれなかった。まったく蛇紋岩とはこんなに滑るもんなのか!

 小至仏山までなんと遠いことか。下から見た時は至仏山と小至仏山は、なだらかな稜線続きで10分か15分もあれば着くように見えたが、実際は稜線の裏側を巻いたり、表側を一旦下って登り返えしたり。コースタイム35分の所を1時間もかかってしまった。とにかく今日は安全第一ではあるのだが、本当に疲れる。

 小至仏山では記念写真を撮っただけで素通り。花も少なくなり、デジカメも調子が悪いので下ることに専念する。

 10分ほど下った時、20人位のツアーの団体さんが登って来た。今日初めて登山者に会った。Mさんが「至仏山まで行くんですか?」と声を掛けると、トップにいたガイドが、「至仏山までは行きません」とのこと。小至仏山で引き返すようだ。
 今日はこんな天気なので小至仏山で引き返すのも仕方ないが、「花の山・至仏山」を楽しむには、やはり山ノ鼻から登らねば、と思った。

 雪渓が現れた。その雪渓を下るとオゼソウが咲いていた。しかし山ノ鼻からの登りで見た群落には程遠い。

 途中にベンチがあったので小休止。風雨が少し弱まったようだ。もうシャリバテでぐったりだが、風雨の中で弁当を広げる気にはならない。

 ここから2,3分も下った所に分岐があった。晴れていれば行こうと思っていた笠ケ岳との分岐である(10時53分)
 ここからは、やっとツルツル滑る岩や石から解放された。しかし木の階段や木道が滑りそうで気を使う。

 鳩待峠まであと2Kmの標識から何と長く感じたことか。
 やっとの思いで鳩待峠へ着いた。12時6分。

 鳩待峠の小屋で昼食を摂り、12時45分発のバスで戸倉へ戻った。雨はすっかり上がり青空さえ見えた。思わず「コノヤロウー!」と怒鳴りたくなった。

 今回の山行は、至仏山は一日中雨で、しかも蛇紋岩というツルツルした岩に苦戦したが、オゼソウやヒメシャクナゲを初めて見ることが出来た。さらに、ハクサンコザクラやタカネシオガマの群落に感嘆。タカネシオガマの群落はアルプスでもあれほどの群落は見たことが無い。

 悔やむのは、アズマギクが沢山咲いていたのに写真を撮らなかったことだ。アズマギクは他の山でも見ているし、雨の中だったので撮らなかったのだが、このアズマギクは至仏山や谷川岳など地域限定の「ジョウシュウアズマギク」だったようだ。

 それにしても至仏山は実に花が多い山だった。いつの日か晴れた日にもう一度登ってみたいと思う。