暑寒別岳(しょかんべつだけ)

(1,491m、北海道)  124座

箸別林道から見た暑寒別岳。山頂は右側。


箸別登山口から往復


2004年7月3日(土)

深川430−留萌−増毛−615箸別登山口630〜745二合目〜910五合目〜1143暑寒別岳1230−1635箸別登山口−厚田村(泊)

 暑寒別岳は、石狩湾の北方に位置する増毛(ましけ)山地の最高峰で、花の名山として知られている。
 ショカンベツとは、アイヌ語で「滝の上にある川」という意味だそうである。
 この山へ登るには3つのコースがあるが、出来ることなら、花が多く「北海道の尾瀬」とも言われている「雨竜沼湿原」の方から登りたかったが、往復12、3時間もかかるというので諦め、日帰り出来る増毛の方から登ることにした。

 4時30分、深川の宿を出発。
 空は高曇りであるが、所々に青空が覗いている。昨日、夕張岳の下りで痛めた足も特に問題なさそうである。

 深川という地名は東京にもあるが、そもそも東京の深川から移住した人達が住んでいる町で、町並みも東京の深川に似ているということを、司馬遼太郎の「街道を行く」で知った。
 近くに新十津川町というのもあるが、そこも同じく奈良の十津川村から移住した町だという。大峰山へ行った時に十津川村のすぐ近くまで行ったので親しみを覚える。

 がら空きのR233を走っていると、正面に目指す暑寒別岳が見えて来た(写真右:中央の山)。距離はかなりあるが車を止めて写真を撮った。これから留萌へ出て、あの山の反対側へ行かなくてはならない。

 留萌からR231で日本海沿いに南下する。5時25分、海が見えて来た。右手に日本海、左に残雪を抱いた暑寒別岳を見ながら増毛を目指して行った(写真左)。

 増毛という町名は、髪の毛が薄くなった私には、何か神社でもあればお参りしたくなるような名前だ。

 それにあるテレビ番組で増毛の町を紹介しているのを見て親しみを覚えるようになった。

 その増毛町の箸別(はしべつ)から舗装された林道を走って行くと、そこにも「熊出没注意」の標識が立っていた。明るい林道で、とても熊が出るとは思えない。
 やがて暑寒別岳が正面に見えるようになった。感激! 早速、車を止めて写真を撮った。

 6時15分、駐車場へ着いた。車は2台しか止まっていなかった。ご夫婦が出かけるところだった。

 増毛にはこの箸別コース以外に暑寒コースがあり、ほとんどの人はその暑寒コースを登るらしいが、私はあえてこの箸別コースを選んだのである。それは暑寒別岳の固有種である「マシケゲンゲ」という花が多いと聞いたからである。

 昨日、夕張ヒュッテで札幌から来たという22人の団体さんと雑談した時、私が明日は暑寒別岳を登ると言うと、
「どのコースから登るんですか」、と聞かれ、
「箸別コースです」と答えると、
「さすがですねぇ・・、目の付け所が違いますねぇ・・、お花がいっぱいですよ。あのコースは・・」と、嬉しくなるような言葉が返ってきた。

 しかし、登山者が少ないということは熊に注意しなくてはならない。
 ご夫婦を見送って、6時30分に出発。
 登山ポストに入山届けを出しながら、今日登っている人を数えたら5人いた。

 ダケカンバとシラビソのような針葉樹林が生えた登山道は、思ったより明るい。なだらかな道で歩きやすかった。
 しばらく歩くと、昨日痛めた左足が気になって来た。しかし歩けない訳ではない。

 30分ほど歩くと1合目。休憩にはちょうどいい。水分を補給しながら一服する。
 ここはブヨが多いとは聞いていたが、半端ではなかった。歩いているだけで身体の周りに40〜50匹がまつわり付き、立ち止まると100匹ぐらいになり、腰を下ろすものならアッという間に200匹ぐらいが身体やザックの中まで入り込む。

 したがって、休む場合は防虫スプレーを全身に吹きつけてから腰を下ろす。それでも鼻の中や目の中にまで入り込んで来る。こんなに虫が多い山は初めてだ。

 いつの間にか青空が消え、太陽が白く輝いて見える。ここは周りが明るいので日差しがなくても熊が出そうには思えない。

 (写真のような明るい道が続く)

 ウグイスが近くで鳴いていた。
 しばらく歩くとダケカンバの背丈が低くなり、目指す山頂が見えて来た。
 2合目へ7時45分着。

 今日は暑い。日本海側にあるので涼しいかと思ったが、湿度が高く汗だくだ。長袖を脱いでTシャツ1枚になりたいが虫が多いので脱げない。

 虫が襟の中や耳の中まで入って来る。タオルで頬っ被りする。ちょっとオジンくさいが、なりふりかまっていられない。

 アレと思うほど早く3合目へ着いた(8時10分)。そのまま素通り。
 再び樹木の間から山頂か見えた。大分近くなって来た。その山頂もすぐに樹木の陰に隠れてしまった。
 歩いていてもズボンの上から虫が刺す。たまらずスプレーを全身にかける。

 4合目へ着いて時計をみて驚いた。8時40分着。登山口にあった案内板では5合目まで2時間と書いてあった。すでに2時間10分も経っているのにまだ4合目である。
 今日は、昨日夕張岳を登った疲れが残っているせいか身体が重くペースが上がらない。それに時々左足にピリッという痛みが走るので、左足をかばいながら歩いている。まあ、時間がかかりすぎているのは足が痛いせいにしょう・・・。(^^)

 ここから5、6分も歩くと急斜面になり、すぐに視界が開け、近くに雪渓が見えた。雪渓が解けた所にザゼンソウが咲いていた。実はザゼンソウを見たのは初めてだった。良く見るとミズバショウも咲いていた。
 さらに登って行くと道端にスミレやシラネニンジンなどがいっぱい咲いていた。

 5合目へ9時10分着。駐車場から2時間のコースなのに、2時間40分もかかってしまったが、今日は「花紀行」なので時間を気にせず、のんびり行こう。

 涸れた沢沿いの急登になると、左足がまたヘンになってきた。
 やっと急登が終わり、開けたクマザサの台地へ出ると、正面に山頂が見え、背後には日本海、遠くに利尻岳まで見えた。
 写真を撮っていると、バタバタと音を立てて雨が降ってきた。急いで雨具を着込む。

 雨の中で下って来る単独行に会った。彼は雨具も着ずに、
「降って来ちゃいましたねぇ・・、もうすぐなんですがねぇ・・」と声をかけてくれた。

 7合目の標識は雪渓の中に倒れていた。
 いつしか雨も上がり、また青空が広がって来た。

 雪渓を越えると、植物が一斉に芽を出していた。さらに登って行くと植物の背丈も大きくなり、花が見られるようになって来た。雪解け順に花が咲いているようだ。

 カメラを出し、本格的に撮影モードになる。お花畑がすごい。山の斜面全体がお花畑である。思わず歓声を上げた。

 黄色のシナノキンバイ、白いエゾノハクサンイチゲ、さらには紅いエゾツツジやシオガマなど、とにかくすばらしい。