(1,157m、大分・宮崎)
2002年4月29日(月)
羽田720−宮崎空港−延岡−高千穂(泊) |
私は日本百名山を目指すまで、この山がどこにあるのか知らなかった。その後、この山が阿蘇山の近くにあり、しかも、宮崎県の高千穂峡とも近いことを知って嬉しくなった。高千穂峡は一度は行って見たいと思っていたからだ。そこで祖母山へ行く時は必ず高千穂狭へ寄ろうと決めた。
最初は「祖母サン」という山名が古臭く、あまり登高意欲もなかったが、山頂に神武天皇の祖母、豊玉姫を祀る祠があることや、九州の山では数少ない岩塊の山であることを知って、が然、ファイトが湧いて来た。
ガイドブックには、祖母山を登る場合は黒金尾根を登ると展望がよいと書いてあったが、私はまず高千穂峡へ行って、五ケ所の北谷から風穴コースを登って黒金尾根を下ることにした。
羽田7時20分発の飛行機は宮崎空港へ予定より10分ほど早く着いた。空には薄い雲の間から青空が見えた。その空を見上げながら、「今回こそ雨に降られませんように」と祈る思いだった。とにかく九州は3年連続で雨に降られているからだ。
延岡から憧れの高千穂鉄道に乗った。しかし、期待したほどの眺望もなく、宮崎駅で飲んだビールが効いたせいか、居眠りをしているうちに高千穂駅へ着いた。
まずは、タクシーで高千穂峡へ行った。写真で何度も見たことがある峡谷は、遊覧船が走っているかと思ったが甘かった。貸しボートを自分で漕がなくてはならない。一人でボートに乗った。子供の頃は近くの川でさんざんボートに乗ったので、ボートを漕ぐのはお手の物だ。
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高千穂町の「民宿あや」で、夕食の時、群馬県から来たという男女5人のパーティーと一緒になった。この人達も百名山を目指しているという。酒を飲みながら山談義となった。
高千穂500−(タクシー)−540北谷登山口〜(風穴コース)〜843祖母山910〜(黒金尾根)〜1340尾平−緒方−宮地(泊) |
朝、起きて窓を開けてみると、暗闇の中に月と数点の星が見えた。うれしい。九州の山へ来て、雨が降らない朝を迎えたのは初めてである。とにかく雨具を着ないで出発できるのがうれしい。
5時に予約しておいたタクシーで北谷登山口へ向かった。途中で白んできた空をみながら、「今日は一日もつだろう」と安堵した。
5時40分、北谷登山口着(写真左)。そこには不似合いなほど広い駐車場と休憩所、トイレ、水場などがあった。30〜40台も置けそうな駐車場にはすでに7台の車が止まっていた。きっと車の中で夜を明かした人達だろうと思った。
ここからは、北谷コースといわれる尾根伝いの道と、風穴コースといわれる谷沿いの道がある。風穴コースは祖母山への最短コースであるが、谷から一気に山頂へ突き上げるのでかなりきついらしい。しかし、変化が多く、この時期はアケボノツツジが美しいという。
私が着いてから左手の北谷コースを2人が登って行った。私はその北谷コースを見送って林道をまっすぐ進んで行った。100メートルほど行くと右手に下る道があった。その道を行くと沢沿いの道となった。
やがて道の両脇には、私の背丈を超えるササになった。これがスズ竹だろうか。しかし、道はしっかり踏まれており迷うような所はなかった。
3つ目の沢を渡ると杉とスズ竹の本格的な急登になった。さっきまで風が強いと思っていたが、汗ばんだ身体には爽やかだった。
人影は全くない。やはりここを登る人は少ないようだ。
ここは沢沿いのせいか小鳥のさえずりが多かった。ウグイスの声は分かるが、さかんにさえずっているのはヨシキリだろうか、それともホオジロだろうか。今度は野鳥の勉強もしなくては、と思った。
空は、さっきまで黒い雲に覆われていたが、また白い雲に変わり、青空も少し戻ってきた。今日は大丈夫だろうと思いつつも、雲と陽差しに一喜一憂する。
ロープがぶら下がった2メートルほどの滝を登るとまた沢沿いの道になった。しばらく登ると飛行機のような爆音が聞こえてきた。最初は風穴の音かと思ったが、どうも尾根の木々をならす風の音らしい。谷底にいるとあまり風を感じないが、稜線はすごい風のようだ。
足元にはスミレの花が咲いていた。クローズアップレンズを持って来ればよかったと思った。
風穴(写真左)へ7時00分に着いた。
風穴は夏でも氷を保存できると書いてあったが、特に冷たい風が出ているわけではなかった。中へ入ってみようかと思ったが、足元の岩が滑りそうなので諦めた。 |
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雲行きがだんだん怪しくなってきた。ガスが湧き出し、空も白い雲に覆われた。せめて黒い雨雲でないのが救いだった。
風の音がすごかった。ゴウゴウと鳴る音はまるで台風のようだった。身体に感じる風はそれほどでもないから、風穴から噴き出す音かも知れない。