祖母山 2/2

 アケボノツツジが登山道近くにあった。やっと身近で見られるようになった。

 今度はスズ竹のトンネルになった。濡れたササで全身ビッショリになってしまった。

 40分も歩いた時、展望のよさそうな岩があったのでその上で一服。前方に右側がオーバーハングしたような山がボンヤリと見えた。あれが山頂だろうか。


(アケボノツツジ)

(あれが山頂?)

 しばらく休んでいると、突然、目の前に人が現れたのでビックリした。相手もビックリしたらしい。お互いにここは誰もいないという先入観があったのだろう。単独行の彼は、「北谷コースを登り、曙ツツジが多いと言われるこの道を下って来た」、と言った。

 ここからロープのある急登を15分も登ると稜線へ出た。しかし、ガスで何も見えない。
 山頂への最後の急登かと思った急斜面を登り切ると、その奥にさらに急斜面があった。しかし、そこから2、3分で標識が立った分岐点へ出た。分岐着8時42分。
 そこからもう人の声が聞こえてきた。分岐から20メートルほど行くと広い山頂があった。

 山頂には5人の先客がいた。その中の一人にシャッターを押してもらったが、眺望は全くなかった。

 私はここでガスが切れるまでしばらく待つことにして、早お昼にした。食事をしている間にもゾクゾクと登って来た。ビールで乾杯しているパーティーもいた。

 だんだん寒くなってきた。バスの時間も心配なので早々に下山することにした。
 9時10分下山。
 登ってきた時にあった分岐点の手前から左の急斜面を下る。

 岩塊の急斜面。クサリとハシゴの連続だった。岩が濡れているので「命がけの下山だな」と思った。しかし、15分ほど下ると平坦な道になった。そこで下から登って来た若者2人に会った。

 先に来た若者が、「ヤバイ!、ハシゴだよ!」と、驚きというかウンザリしたような声で後ろの仲間に言っていた。
 私は、「ここからはハシゴとクサリの連チャンだよ」と言い、「足元が滑るから注意してなあ!」、と言って別れた。

 途中に展望台と表示された分岐があった。せっかくなので行ってみたが、ガスで何も見えなかった。そこにはミヤマキリシマの群落があったが、まだツボミが固かった。

 さらに下って行くと、左手に「展望台、裏谷岩鼻入口60m」と書いてあった。騙されたと思って登って行くと、今度は正面に天狗岩が見えた。感激だった。急いで写真を撮った。さらに右手の遠方に連峰が見えた。きっと九重山だろうと思いながらも、阿蘇かも知れないと思った。


(天狗に見えるかな? 下がおでこ)

(九重かな?)

 振り向くと、今下って来た縦走路や山頂が見えた(写真右)。ただ東半分がガスで見えないのが残念だったが、それでも祖母の山頂を見ることが出来たので嬉しかった。

 展望台から少し下ると天狗岩とのコルで、そこに水場の表示があった。ここが分岐かと思ったが分岐はさらに登った所(天狗の肩)にあった。

 分岐着10時30分。そこには大きなアケボノツツジがあった。満開でピンクに染まった大木はまるで桜のようだった。
 分岐へ荷物を置いて展望台へ行った。天狗岩が目の前にあった。いかにもアルペン的で迫力があったが、天狗らしさはなかった。


(分岐のアケボノツツジ)

(迫力はあるが天狗らしくない)

 厚手のシャツを脱いで10時50分発。
 天狗の岩屋で休憩。岩塊が庇のように出張っていた。スペースはかなり広いが所々に水が滴れ落ちていた。

 そこから数分も下った所に天狗の水場があった。休憩したばかりだったが、せっかくの水場なので一口飲んだ。水場はいつも有りがたい。

 途中にアケボノツツジがいっぱい咲いていた。シャクナゲも咲き出しており感激だ! しかし、シャクナゲはその1本だけであとは見当たらなかった。

 ここは高度で100mごとに標高を表示している。1200mの所に『栂(ツガ)源生林』と書いてあった。ゲン生林のゲンの字は「原」の間違いではないかと思った。それにしてもこんな太い栂を見るのは初めてだった。

 900mを過ぎた所で沢水を飲んだ。冷たくておいしかった。ここで一服していると若者2人が登って行った。こんな遅い時間に、と驚いたが、シュラフが見えたのでテント泊だろうと思い、ホッとした。

 この辺は斜面が急なので下るのもシンドイ。それに、右下から沢の音が聞こえているがなかなか着かない。
 ガイドブックにも祖母山9合目の小屋が発信しているホームページにも、ここは急だから下らない方がよいと書いてあったが、まさにその通り。いささかウンザリしながら、やっと川上渓谷の分岐へ着いた。12時50分。

 ここからは沢沿いの道になった。宮原へ行く吊り橋をくぐって行くと、パッと視界が開け、背後に天狗岩(写真)が見えた。少しガスがかかっているのが残念だったが、天にそそり立った岩峰に感激。尾平へ下ってきた甲斐があったと思った。そして、天狗岩があんなに格好いいなら、登って来れば良かったと思った。

 尾平登山口へ13時40分着。
 広い駐車場に車が20台くらい止まっていた。

 もみ志や旅館でビールでも飲みながら食事でもしようと楽しみにしていたが、旅館というより民家のような感じで食事も出来ないと言われる。仕方なく坂の上にあった青少年旅行村へ行った。しかし、そこでも退屈そうにしていた若い店員から食事はできないと言われてしまった。オニギリもパンも持ってはいたが、ラーメンが食べたかったのだ。とにかく缶ビールを買って一気に飲み干した。

 その後、村営バスで上畑へ行き、バスを乗り継いで緒方へ出た。緒方から宮地へ出て「民宿みやぢ」へ宿泊。明日は阿蘇山の予定だ。

       
烏帽子岳、阿蘇岳へ続く