帝釈山−2/2

 夏に謳歌したそれらの花々の咲き柄が、黄色く色づいて風に揺れていた(写真左)。

 草原にはもう花は咲いていないと諦めていたが、リンドウや名前の知らない小さな花が所々に咲いていた。感激! (写真右)。花の写真を撮りながら、やはりここは花が咲いている時に来るべきだと思った。

 それにしてもこんな広大な草原を、たった一人で見るのはもったいないと思った。ここは花の百名山にも選ばれ、初夏には大勢の人で賑わうというが、今、こうして一人ぼっちで歩いていると何か物寂しさを感じる。

 木道は一方通行になっていた。広い湿原を時計の反対周りで一周できるようになっていた。私は半周して帝釈山を目指して行った。

 避難小屋(写真左)は、小高い田代山の山頂にあった。見るからに小奇麗な小屋である。

 中へ入って見ると誰もいなかった。正面に田代山大明神と弘法大師、そして賽銭箱が並んでいた(写真右)。

 私は、やはりここへ泊まらなくてよかった、と思った。というのは、ここへ一泊しようか迷ったのである。しかし同宿者がいない場合、一人ぼっちでは気の弱い私にはつらいものがあるので、無理をしてでも日帰りすることにしたのである。
 この小屋は20人位なら泊まれそうだ。近くにトイレも見えた。

 避難小屋から一旦下って行く。針葉樹が茂った急な坂道は、ここまでの整備された道とは一変した。
 石と木の根で滑りやすい急な斜面を下ると、小さな流れがあった。避難小屋に水はないと書いてあったが、ここまで下れば水が得られる。(注意:涸れることもあるらしい)。

 その流れを越えると、だらだらした登りと下りを繰り返すようになった。帝釈山の写真を撮りたかったが、未だに山容を見せない。正面のボッテリしたのが山頂かと思うと、途中から巻いて行く。そんなことを何回も繰り返す。何とも捉えどころがない山だ。

 道もぬかるみが多く、靴はドロだらけである。そこで思ったことは、田代山は舘岩村であるが、帝釈山は桧枝岐村の守護神、駒御堂権現が祭られているという。桧枝岐の人達はきっと最短で登れる馬坂峠から帝釈山へ登ってしまうので、この辺は両村のグレーゾーンなので手入れがされてないのだろう、ということだった。

 途中で下りの男性2人組と会った。続いて中年のご夫婦も下って来た。これで田代湿原で一周して帰ったオジさんと合わせると、駐車場にあった3台の車の主が下ってしまったことになり、ここから先は私一人ということになる。

 斜面が急になると、大きな石や岩が現れるようになった。山頂はもう近い。

 誰もいないと思っていた山頂には8人のパーティーがいた。しかも山頂の標識の周りに座り込んで宴会をやっていた。山頂へ12時12分着。

 山頂からは、日光の山が正面(南)に見えた。しかし、尾瀬の燧ケ岳や反対側にあるはずの会津駒ケ岳などは雲に隠れて見えなかった。

(左の写真:山頂から見た日光連山。一番左が女峰山→拡大)

 私もここで昼食にした。
 宴会をしている8人のパーティーは、桧枝岐側の「馬坂峠」から登って来たという。馬坂峠からは50分のコースであるが、彼らは40分で来たという。実は私もこのコースを検討したが、余りにも早く着き過ぎてしまうのでトレーニングにもならないと思い、猿倉から登って来たのである。

 彼らは宴会が終わると、これから田代山湿原まで往復して来るという。私は急いで準備を済ませ彼らより先に山頂を後にした。

 私が下って行くと、登って来る人達がいた。3〜4パーティーとすれ違う。避難小屋近くで会った単独行は、駐車場へ戻るのに日没になってしまうのではないか、と心配した。

         (写真右:一足早い紅葉)

 避難小屋近くで雨がポツポツ落ちて来た。しかし、雨具を着るほどではなかった。

 避難小屋の前で一服していると、田代山湿原から5、6人のパーティーが登って来た。そして全員が小屋の中へ入って行った。私はもう一度小屋の中を覗いて見た。すると彼らは板の間に上がり込んで、すっかりくつろいでいた。彼らは田代山だけを目的に来たようだ。

 奥の方には、さっきすれ違った単独行の物と思われるザックとシュラフがデポしてあった。彼はここへ泊まるようだ。下山時に日没になってしまうだろうと心配したが、余計なお世話だったようだ。

 雨が本降りになる前に下ろう。13時40分発。
 乾いた木道が少しずつ雨粒で濡れて行く。木道の途中で本降りになってしまい、慌てて雨具を着た。そして、ストックをザックにしまって傘を差した。

 そして一気に下った。駐車場へ14時50分着。駐車場には10台の車があって驚いた。

 この山の名前は、「たいしゃくヤマ」、「たいしゃくサン」、「たいしゃくザン」という3通りの名前が入り乱れている。どれが正しいのか地元の人に聞いて来ようと思っていたが、聞くのを忘れてしまった。

 いずれにしても、この山が輝くのは初夏と紅葉の季節だろう。田代山は「花の百名山」にも選ばれているから、花の田代山へ登ったついでに帝釈山へ登って来れば、一日で「花の百名山」と「日本200名山」を登ることが出来る。