天塩岳−2/2

 ここでのんびりしていたいが、まだ天塩岳のテッペンへ着いた訳ではないので、そうもいかない。ボチボチ出かけることにしよう。

 前天塩岳9時25分発。
 前天塩岳の山頂からいよいよ天塩岳をめざして下って行く。

 ここは何とコケモモが多いことか。斜面いっぱいにコケモモが広がっている。それに花が終わって小さな実を付けている、シャクナゲのようなのは何だろう。いずれにしても、ここはもう花の季節が終わり、すでに初秋の気配だ。

 それにしても天塩岳ヒュッテにいた、あの中年3人組はどうしたのだろう。余りに遅い気がする。早く来てくれるといいんだが・・・。この広い山中に私一人だけだと思うと心細い。とにかく熊に会わないようにカーブの手前でピーピーとホィッスルを吹き鳴らす。

 巻道と合流し、鞍部へ出た。振り返ると前天塩の山頂に2人の姿が見えた。2人? あの3人組の2人だとすると、あと1人はどうしたんだろう。

 時々、足元からカエルが飛び出す。その度に肝を冷やす。

 ワンピッチで登り詰めると、そこが肩で滝上町からのコースと合流し、その奥に緑の三角錐の山頂が見えた。


天塩岳の肩から見た山頂

天塩岳の肩から見た前天塩岳

 天塩岳、10時32分着。誰もいない山頂で写真を撮りまくる。風が強く冷たいので10mほど下った岩陰で昼食とする。

 11時03分、下山。
 再び山頂へ立つと、中年のご夫婦がいた。さっき前天塩にいた2人だったようだ。中年3人組について聞いてみると、「もうすぐ来ると思いますよ」とのことだった。

 ご夫婦が先に下り出したが、すぐに追い越して行く。
 避難小屋へ向って下りながら、ふと振り向くと今下って来たばかりの天塩岳が、何とピラミダルな山容に姿を変えた。ちょうど朝日連峰の大朝日岳のようだ。


天塩岳から避難小屋(白く光っている)を目指して下る

避難小屋近くからの天塩岳

 避難小屋着、11時27分。
 せっかくなので小屋の中の覗いて見ると、床はフローリングで綺麗だった。こんな小屋ならぜひ泊まってみたいと思った。ただ、ここは水がないのが難点なのだが。

 すぐ隣にはトイレもあった。ご夫婦も到着。ご婦人がトイレへ駈け込むのを見て、私は黙って出発。

 丸山へ登り、一旦下って無名の山頂で一服。ニコチンと水分補給である。ここから見る前天塩がすごくカッコイイ。知床の羅臼岳のように山頂が盛り上がっている。あんな所を登って来たかと思うと嬉しくなった。
 山は見る角度によって山容を変えるが、この天塩岳は特に変化が凄い。まさに「7変化」だ。



前天塩岳

 新道分岐へ12時38分着。ここでもしばし休憩。

 ここからは少し急な坂道を下って連絡路分岐へ13時12分着。

 ここからは今朝通った道なので安心感があった。でも熊だけは油断できないのでホイッスルを吹き鳴らしながら下って行く。
 天塩岳ヒュッテ、13時40分着。素早く身支度を解いで、今宵の宿、糠平温泉を目指して行った。