鳥甲山 (とりかぶとやま)

(2,038m、長野)  138座

苗場山から見た鳥甲山。(写真は友人より借用)
中央右が山頂。左のピークが白クラ、右に同じような赤クラというピークがある。

切明温泉〜和山登山口〜鳥甲山往復

2005年10月16日(日)

相模原−川越IC−塩沢石打IC−津南町−切明温泉(泊)

 私は、この山が鳥甲山と書いてトリカブトヤマと読むことや、新潟と長野の県境にあることを最近知った。
 ガイドブックを見て、この山が苗場山の隣(西側)にあることを知った時、「あれか!」と思い出した山があった。それはもう7年も前になるが、苗場山へ登った時、山頂の奥に屏風のように屹立した山があって驚いた。それが鳥甲山だったようだ。標高は苗場より低いが、特異な山容が今でも脳裏に焼きついている。

 その鳥甲山について、「信州山岳ガイド」に次のように書いてあった。
『〜秋山郷にある中津川をはさんで苗場山と対峙し、信州百名山のひとつである。
  (中略)
かつて第2の谷川岳などと、玄人筋がひそかに注目していた山で、岩肌をむきだしにした山容は怪鳥が翼を広げたようだ。
  (中略)
中津川からせりあがる裾野の上に、まるでびょうぶのような姿で切り立ち、白クラ、赤クラ、万仏岩、布岩、カミソリ岩などの岩場を露出させて来る者を拒むようだ。多くの登山者を迎える女性的な苗場山と対照的に、玄人好みの男性的で荒々しい山である』。

 私はこれを見て、「ヨシ、行くぞ!」という気になった。
 さらに秋山郷は秘境中の秘境と言われ、ある人のホームページに「秋山郷の紅葉はカナダの紅葉にも劣らない」と書いてあるのを見て、どうせなら紅葉の時期に行こうと思った。

 その紅葉の見頃は、山頂付近が9月下旬、山麓の秋山郷は10月下旬だという。どうせならカナダの紅葉にも劣らないという10月下旬がいいのだが、山麓がいくら錦絵でも登っている山道が落葉のハゲ山ではつまらない。それに下旬では雪に降られる心配があった。
 そんな訳で、山の中腹が色づく10月中旬に出かけることにした。
                ☆
 朝、6時40分に家を出た。雨が路面を叩き付けていた。
 川越ICから関越道に乗り、高坂SAへ8時8分に着いた。思ったより早く着いた。昨夜までは現地が雨の予報だったので、草津、志賀を周ってのんびり紅葉狩りをしながら切明(きりあけ)温泉へ行くつもりでいたが、天気が回復するというので、急遽、塩沢石打ICから津南(つなん)経由で行くことにし、カーナビをセットし直した。早く現地へ行って鳥甲山の写真が撮りたいからだ。

 いつの間にか雨は止んだ。そして青空が広がり、赤城山や榛名山がバッチリ見えた。思わず榛名山から草津、志賀高原へ行きたくなるのを堪え、一路、塩沢石打ICを目指して行った。
 しばらくすると谷川岳が見えて来た。その谷川にも雪はまだ着いていなかった。

 塩沢石打ICで降り、津南からR405で中津川を遡って行く。道は舗装されているが、林道である。車のすれ違いに苦労する。

 運転しながら、「よくもこんな所に人が住んでいるものか」と思った。秋山郷はもともとは平家の落人が住み着いたと云われるが、落人の中でも最も気が小さく臆病だった先祖が、山奥へ山奥へと逃げ込んだのかも知れない、と思った。

 苗場山の登山口を過ぎると、さらに民家は少なくなった。鳥甲山の全景が見えるという上野原の「のよさの里」まで行ってみたが鳥甲山の上部はガスって見えない。20〜30分粘ったが回復する兆しがないので、切明温泉へ向かった。

 この辺は和山温泉や切明温泉が有名だが、R405は山の中腹を走っているため民家は見えない。切明温泉も小さな標識を頼りに、急な坂道を下って行く。「こんなに下っていいのだろうか?」と不安になるほど下って行くと雄川閣があった(12時ジャスト着)。観光バスやマイカーが止まっており、けっこう賑わっていた。(写真左)

 ここで昼食を摂ってから、まずは登山口を確認に行く。中津川に架かった赤い橋を渡って今度は坂道を登って行く。T字路を左に曲がるとすぐに登山口があった。止まっている車は2台。今日は日曜日だというのにたったの2台である。明日は月曜日なので山へ登るのは私一人かも知れない。

(写真右が登山口の標識と駐車場)

 ここから屋敷へ出て、再び上野原へ行って見た。しかし、依然として山にかかったガスは切れない。写真を撮るのを諦めて雄川閣へ戻った。

 この切明温泉は、河原を掘ると温泉が湧くので有名だ。以前テレビで見たことがあったのでぜひ行ってみようと思った。フロントでスコップを貸してくれるが、前の人が掘った穴があるだろうと思ってタオルとカメラだけを持って行った。

 河原には穴を掘って湯に浸かっている人が大勢いた。私も手ごろな穴をみつけて湯に浸かる。周りは峡谷で、これが紅葉していたら最高だろうと思った。


2005年10月17日(月)

切明温泉−和山登山口520−607尾根−645白クラ中峰−820白クラの頭835−1010鳥甲山1055− 1206白クラの頭1220−1300白クラ三峰1320−1417水場分岐1425−1432和山登山口

 朝、5時に宿を出た。まだ真っ暗である。登山口へ行くと車が一台止まっていた。今日は私一人かと思っていたのでホッとした。
 私が車を止めると、車の中からオジさんが出て来て挨拶を交わす。この方は昨夜ここへ着いて車の中で寝ていたという。私が起こしてしまったのかも知れない。

 5時20分出発。
 ヘッドランプを点け、熊除け鈴をジャラジャラ鳴らしながら登って行く。
 10分も登ると水場の標識があった。「水場左へ30m」の標識があったがそのまま素通りする。
 さらに10分もすると大分明るんで来た。木の少ない所はヘッドランプなしでも歩けるようになった。

 背後に、まだ明けきらない空に苗場山がシルエットになって見えた。(写真右)
 30分も歩くと暑くて厚手のシャツを脱いだ。もう汗だくだった。

 6時7分、尾根へ出た。暗いと足元だけしか見ないので気づかなかったが、振り返って見るとかなりの急登を登って来た。ここからも急登が続く。ここは尾根がヤセているので道が真っ直ぐについている。まるで階段を登っているようでシンドイ。

 だんだん紅葉が良くなって来た。赤色は少ないが赤みかかった色や黄色が多い。右手には赤クラの絶壁が見える。

 黄葉したトンネルを潜ると見晴らしのいい岩棚へ出た。ここで休憩。

 正面にはこれから目指す紅葉したピークが見えた。(たぶん第T峰だと思う
 右手には朝日に輝く赤クラの岩峰群と絶壁が見えた。

(右奥に朝日に輝く赤クラ)

 振り向くと、左手に苗場山が見えた。佐武流(さぶりゅう)山や白砂山なども見えているはずだが、どの山か分からなかった。
 さらに志賀高原の最高峰である岩菅山も見えているはずだが、どれだか分からなかった。

 ところで駐車場で会った人はどうしたんだろう。いつもは足の遅い私はすぐに追い越されてしまうのに、あのオジさんは一向に登って来る気配がない。

 最初の難関は5mほどの岩場にぶら下がったハシゴである。ホームページに「ブラブラして怖い」と書いてあったが、確かに根元が固定していないのでアブミのような感じだが、クサリもあるので特に問題はなかった。この程度なら高度恐怖症でなければ誰でも登れるだろう。

 白クラまでなかなか着かない。

 小さいピークを登っていると、背後から朝日を浴びた。そのピークを越えるとまた大きなピークが現れた。そのピークを登り切ると「白クラ中峰」と書いてあった(6時45分着)。

(実は登山口から先ほどの展望の良い岩棚までが1時間30分で、そこから白クラまでが2時間のコースであるが、私は白クラまでが1時間30分と勘違いしていた)

 紅葉はますます色鮮やかになって来た。登山道の両側がカラフルに色づき、左手の斜面は紅葉真っ盛りだった。はるばるやって来た甲斐があった。


(目が覚めるような紅葉の中を登って行く)

 ぜひここから佐武流山が見たいと何度も振り返ったが、どうも雲に隠れてしまったようだ。